情勢の特徴 - 2008年3月後半
●「資源価格の高騰を受けて建材各社が4月受注分から製品価格を再値上げする。…資材高に見舞われているゼネコンやマンションデベロッパーなどにとって新たなコスト増要因となりそうだ。…改正建築基準法施行の影響で住宅着工件数が減少するなか、集合住宅向けを中心に建材各社の2008年の受注は減少が予想される。原燃料価格の高騰に加え、工場の稼働率低下で操業コストも増加するため、再値上げは不可避と判断した。」(『日本経済新聞』2008.03.18)
●「24日公表された08年の公示地価では、3大都市圏での上昇率の鈍化が顕著になった。…07年の前半と後半の比較でも上昇率の鈍化が鮮明になっている。都心部では、上昇率が10%以上の地点でも、07年後半の方が上昇率が小さくなる傾向が見られる。…東京都心部の住宅地では、…豊島区内の1地点を除いて、07年前半よりも後半の方が上昇率が下がっている。…商業地についても、10%以上の上昇率を記録した28地点のうち25地点で後半の上昇率が落ち込んでおり、千代田区の丸の内地区など3地点だけが、減速せずに上昇している。こうした傾向は、大阪市や名古屋市など他の大都市でも見られた。このほか、東京都心の超一等地以外の住宅地でも、高い上昇率を記録する地点が目立ってきたのも特徴といえる。」(『建設工業新聞』 2008.03.25)
●「文部科学省はPFIを活用して公立学校の耐震改修を迅速化するため、実施方針策定や民間事業者選定などの手続きを短期化し、自治体がPFIを使いやすくする検討に着手した。…煩雑な手続きを簡素化することで、財政難に悩む自治体が民間資金を勝つようしやすい状況を整備し、公立学校の耐震化を急ぐ。全国の公立小中学校12万9559棟のうち、耐震診断で耐震性不足が判明しながら未改修の施設は4万5041棟に上る(07 年4月時点)。耐震診断さえ未実施なものを加えると、耐震性に懸念がある施設は5万3636棟に及ぶが、補助金や交付金、地方債では賄えない一般財源負担が自治体にのしかかり、耐震改修は進んでいない。文科省では、緊急を要する学校施設の耐震化を促進するには、初期投資が少なくて済み、多くの施設整備が見込めるPFI事業の活用が有効と判断。公立学校の耐震化に特化して、PFI導入に関する調査研究を進めることにした。…07年度中に最初の段階である導入可能性調査について、作業期間短縮に向けたマニュアルを作成する。…導入可能性調査のマニュアルは08年度早期に公表し、自治体の学校耐震改修へのPFI 導入検討を促すとともに、実施方針策定以降の段階の期間短縮についても4月から検討に入る考えだ。」(『建設工業新聞』2008.03.17)
●「文科省の調査によると07年4月時点で、耐震診断で耐震性がないとされながら未改修の公立小中学校施設は4万 5041棟を数える。耐震診断すら行われていない8595棟を加えると、全体の約4割に当たる5万3636棟が耐震性に問題を抱えていることになる。…だが、耐震性を加速させるには、国費を確保しても大きな壁が存在する。財政難の自治体が、補助金や地方債では賄えない一般財源負担、いわゆる裏負担を確保できないのだ。…06年度の実質公債比率が18%以上だった市町村は全国に518団体あり、日本PFI協会のまとめによると、これらの市町村には『耐震性がないと診断されながら未改修の施設』が1万2622棟も存在する。17%以上で区切ると693団体、2万808棟に上り、その多くが起債や借り入れを増やしたがらず、耐震改修を遅らせる一因になっている。学校耐震改修で国が補助するのは整備費の2分の1.残りは地方債や一般財源で賄わななければならず、解決策の一つとなるのが民間資金の活用だ。文科省も、緊急を要する公立学校の耐震化を促進するには、初期投資が少なくて済み、多くの施設整備が見込める PFIの活用が有効と判断。公立学校の耐震化に特化して、PFI導入に関する調査研究に着手した。」(『建設工業新聞』2008.03.24)
●「国土交通省は、工事の低価格受注による下請業者へのしわ寄せを排除する対策として、建設工事における『通常の原価』の考え方を示し、原価割れ受注をした業者を不当廉売で公正取引委員会に措置請求する際の基準として活用する。…同省が設置した『低価格受注問題検討委員会』(平林英勝座長)が27日の会合でまとめた報告書案で、6項目の対応策の中の一つとして盛り込まれた。検討委が考え方を整理した『通常の原価』は、建設業の会計処理での『工事原価』とは異なり、▽直接工事費▽共通仮設費▽現場管理費▽利潤相当額を含まない一般管理費―の合計額としている。建設工事の場合、着工後に工事費が増減するのが一般的なため、契約変更などが反映された最終的な請負額がこの『通常の原価』を下回っていれば建設業法19条で禁止している『不当に低い請負代金』に該当するとして公取委に措置請求する。」(『建設工業新聞』2008.03.31)
●「厚生労働省と社会保険庁は、建設工事現場などでの事故を隠ぺいする『労災隠し』の発見や予防を図るため、今月から情報共有を開始する。労災隠しの疑いがあるケースには健康保険が支給されないため、こうした事例を社会保険事務所が厚労省に報告する仕組みを構築した。厚労省は、該当者に労災保険給付の請求を勧奨する一方、事業主に対して指導を行う。既に、情報共有に向けた調整作業を始めている。加えて、同省は、『労災報告の適正化に関する地方懇談会』を立ち上げ、来年度中をめどに地域ごとに意見を取りまとめる。厚労省のまとめによると、労災隠しは、03年に132件(うち建設業分100件)、04年に132件(同99件)、05年に115件(同73件)、06年に138件(同85件)発生しており、その多くを建設業が占めている。」(『建設工業新聞』2008.03.21)
●「総務省が28日発表した2月の完全失業率(季節調整値)は3.9%と前月と比べ0.1ポイント悪化した。厚生労働省が同日発表した2月の有効求人倍率も前月を0.01ポイント下回る0.97倍。厚労省は雇用についての基調判断を6ヵ月連続で据え置いたものの『雇用情勢が悪くなってきており注視が必要』とした。…雇用者数は前年同月より14万人少ない5454万人で3年ぶりに前年同月を下回った。うち製造業の雇用者数は減少幅も24万人と大きい。有効求人倍率は3ヵ月連続で1倍割れ。」(『日本経済新聞』2008.03.28)
●「国土交通省と農林水産省は28日、2008年度の公共工事設計労務単価(基準額)を公表した。51職種の平均単価は前年度比1.5%減の1万6726円で、11年連続のマイナスとなった。…全職種の平均単価はピークだった1997年度の2万3295円から7割程度の水準に落ち込んだことになる。51職種のうち、単価が上昇したのは、板金工、サッシ工、ダクト工、保温工、設備機械工の6職種にとどまり、前年度実績の14 職種を大きく下回った。…平均単価を地方ブロック別にみると、すべての地域で前年度比マイナスとなっている。近畿と中国ではマイナス幅がゼロ%台にとどまっているものの、東北、沖縄では2%台となり、地域間に開きがみられる。」(『建設通信新聞』2008.03.31)
●「全国建設業協会(全建、前田靖治会長)は、傘下の都道府県建設業協会の会長・副会長会社などを努める地場大手業者の倒産が相次いでいるのを受け、14日に国土交通省幹部との緊急の意見交換会を開いた。全建側は地域の経済・産業の中核を担ってきた有力建設会社が立て続けに姿を消すという異例の事態に強い危機感を表明。国交省側に、地域の建設産業の崩壊を防ぐための早急な対応を要請した。同省側は、企業の地域貢献度評価を高めた新たな経営事項審査(経審)を4月に導入するなど、地方建設会社重視の施策を積極展開する方針を強調し、理解を求めた。」(『建設工業新聞』 2008.03.18)
●「昨年6月の改正建築基準法の施行による着工の遅れの影響が長引いている上に 最近の鋼材価格の急騰が加わり、鉄筋業界で困惑が広がっている。東京都鉄筋業協同組合(内山聖理事長)の調査によると、確認申請の遅れによる工事の中止・延期で会員の労務稼働率は現在、80%と低迷。5月の予測でも90%にとどまるとの見方をしている会員が多いことが分かった。…工事の減少は単価にも影響を及ぼし始めている。…鉄筋工事の契約単価は、適正単価を要望する鉄筋業界の運動もあり、昨年後半から上昇傾向にあったが、一転して予断を許さない状況になっている。さらに、鉄筋業界にとって深刻なのは、先の見通しが立たないことだ。…最近の鋼材価格の急騰も大きな不安の種。既に『建築確認の遅れと最近の鉄筋の大幅値上がりにより、ゼネコンから単価抑制の動きが出ている』という。『現状でもきちんと精算してくれるのか』といった不安の声も出始めている。」(『建設工業新聞』 2008.03.21)
●「中小企業庁がまとめた『2007年(1-12月)中小企業実態基本調査』で、建設業は法人企業の従業員数が前年比で2桁の減少となった一方、個人企業は微増となっていることが明らかになった。…調査は、07年度決算をもとに07年9月に実施した。建設業は、資本金3億円以下か従業者300人以下の企業が対象。調査結果によると、建設業の従業者数は前年比10.9%減の343万8949人となった。このうち法人企業は、 12.9%減の285万9544人で、個人企業が0.1%増の57万9396人と微増となった。…産業大分類別の9業種中、法人企業が減少し個人企業が増加したのは、建設業の1業種だけだった。…今回の調査では、中小企業の建設業従事者数は法人・個人合わせた総数と法人企業が2桁の減少となった一方で、個人企業が微増となったことは、『企業破綻の分裂化』や『一人親方』の増加を物語る一端と言えそうだ。一方、中小企業の建設業売上高は、前年比8.4%減で、このうち法人企業は7.9%減に対し、個人企業は16.7%減と減少率は個人企業が法人企業と比べ2倍以上落ち込んだ。」(『建設通信新聞』 2008.03.26)
●「米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローンローン問題の表面化や、原油価格の高騰、世界的な株安の進行など、景気の先行きは不透明な要素も多いが、将来の人員構成対策を中心に、採用意欲は依然として高水準にある。2008年4月に続き、09年卒の新規採用の市場もバブル期並みの『売り手市場』が予想され、建築設計事務所、建設コンサルタント、ゼネコン、設備会社とも大学生を中心とした新卒採用はここ2、3年同様、予定枠の確保に苦労しそうだ。また、初任給についても大手ゼネコンを中心に08年度から09年度採用にかけて15、16年ぶりに引き上げるなど、数年前の ‘就職氷河期’から一転、優秀な人材を確保するために、他産業に引けを取らない水準に引き上げる動きもある。日刊建設通信新聞社が今回、調査、回答を得たゼネコン33社の09年採用計画は、半数近くが今春を上回り、大多数が今春並み以上の計画を立てている。…ことし4月の新卒採用は、21社中、5社が最終的に予定数を確保できずに終わったほか、予定数を確保した14社の中でも7社は『学生の売り手市場』『内定辞退者が例年以上に多く、予定数の確保に苦労した』という。中途採用者数も2年連続で回答のあった17社中、10社は前年度実績を上回る採用をしている。建設コンサルタントは、ことし4月の新卒採用状況について回答があった19社のうち約半分の9社は『予定通り確保できた』が、『予定枠の確保に苦労した』『予定枠を確保できなかった』が4社ずつあった。…設計事務所は、今春の採用者数を増やしているところが多い。調査対象18事務所のうち13事務所が前年を上回った。」(『建設通信新聞』 2008.03.27)
●「昨年6月の改正建築基準法施行後の建築確認の遅れによる住宅着工の減少が、ようやく回復の兆しを見せる中、建設業界に新たな懸念が生じている。耐震偽装問題を契機に制定された『特定住宅瑕疵(かし)担保責任履行確保法』(受託瑕疵担保履行法)の施行が09年10月と決まり、その前段となる住宅販売業者の『資力確保措置』が4月1日にスタートするからだ。同法では、販売した住宅に欠陥が見つかって販売業者に瑕疵担保責任が生じる場合を想定。保証金の供託や保険への加入のない販売契約は禁止される。販売業者にとっては事前に準備しなければならない資金が増加。負担増を嫌って販売戸数を絞ることになれば、持ち直し始めた住宅着工に再びブレーキがかかるとの見方も出ている。…09年10月以降に新築住宅を引き渡すハウスメーカーやマンションデベロッパー、注文住宅を請け負う建設業者は保証金の供託や保険への加入が必要になる。」(『建設工業新聞』2008.03.27)