情勢の特徴 - 2008年4月前半
●「国土交通省が31日発表した2月の新設住宅着工戸数は前年同月比5.0%減の8万2962戸となった。8ヵ月連続で減少したが、1月に続いて1ケタの減少幅にとどまった。耐震偽装の再発防止のため建築確認を厳しくした改正建築基準法施行の影響は小さくなりつつある。一方、建物を建てる前に取る『建築確認』の申請件数で前年同月比の下落幅が拡大するなど、景気低迷の影響とも取れる動きが出てきた。…地域別では1月に回復していた首都圏に加え、中部圏、近畿圏も総戸数がプラスに転じた。同省は『法改正の影響は解消しつつある』とみる。ただ三大都市圏を除く地方は20.7%減だった。住宅着工の先行指標である建築確認の申請件数は5.0%減で、1月(3.9%減)より下落幅が拡大。…同省は『景気動向が影響した可能性もある』と述べ、3月以降の動向を注視する考えを示した。」(『日本経済新聞』2008.04.01)
●「建築用鋼材の市中価格が東京市場で一段高となっている。代表品種のH形鋼は初めて1トン11万円台に乗せ、一般形鋼の山形鋼は約34年ぶりの高値をつけた。需要は鈍いが、原材料の高騰と調達難を背景にメーカーが供給を削減し、流通市場で需給が引き締まっている。大阪では目先上昇が一服しているが、先高観は根強い。…東京製鉄や新日鉄など鉄鋼メーカーは2月契約分から建築用鋼材の出荷価格を段階的に引き上げている。改正建築基準法施行による着工遅れやマンションの成約率低迷が響き、建築用鋼材の需要は盛り上がりを欠く。しかし、鉄スクラップや合金鉄など原料価格が一段と上昇。鉄鋼メーカーは減産を強化するとともに、流通業者への供給を減らしている。」(『日本経済新聞』2008.04.05)
●「政府は4日、経済対策閣僚会議を開き、建設業・住宅産業の体質強化、公立学校耐震化事業の早期実施、『200年住宅』の促進などを盛り込んだ『成長力強化への早期実施策』を決定した。建設業・住宅産業の体質強化では、建設企業の生産性向上や地方自治体の総合評価方式導入、住宅産業の競争力強化などを支援する。…経済的な打撃の大きい中小企業や地方に目配りした施策を盛り込んでいるが、08年度予算で既に決まっている政策を例年より早く執行するケースがほとんどで、経済効果は未知数だ。」(『建設通信新聞』2008.04.07)
●「国土交通省と公正取引委員会は、建設業者による独占禁止法違反行為に関する情報の収集・交換について協力関係を結ぶ方向で調整に入った。…『公共工事の品質確保の促進に関する関係省庁連絡会議』が3月28日にまとめた『公共工事の品質確保に関する当面の対策』に不当廉売や不公正取引などに対する監視の強化が盛り込まれ、公取委が各発注者と連携する方針を打ち出したことなどを受けた措置。ダンピング受注や下請業者へのしわ寄せに対し、両者が協力して厳しく対処できるようにする狙いだ。…公取委が他省庁と協力のスキームを構築するのは、3月25日の経済産業省に続いて2件目となる。国交省との間では、対象を建設業者の行為に限定し、不当廉売や優越的地位の乱用などの違反被疑行為に関する情報収集に協力して取り組む。…国交省の立ち入り調査などで法令違反の疑いがある行為が明らかになれば、公取委への通報・連絡がスムーズに行われ、独禁法違反での摘発も行いやすくなる。国交省は3月末までに、建設業法19条に禁止規定がある『不当に低い請負代金』についての考え方を整理しており、これに該当する取引が発覚すれば、公取委に措置請求する方針も固めている。」(『建設工業新聞』2008.04.09)
●「国土交通省は1日、08年度からの5ヵ年の『公共事業コスト構造改善プログラム』を策定した。…プログラムではコスト構造を改善するため、合意形成・協議手続きの改善や事業の重点化・集中化、用地補償の円滑化などを掲げるとともに、計画・設計・施工の見直し、民間技術の積極的な活用、社会的コストの低減、調達の最適化などを盛り込んだ。…これまでに打ち出してきたさまざまな低価格入札対策の拡充検討も盛り込んだほか、技能者や下請業者などの技術力を適切に評価して技能者の育成を推進することも打ち出した。」(『建設工業新聞』2008.04.02)
●「日本PFI協会(植田和男理事長)は、1999年1月から2007年度末までに全国で公表されたPFI実施方針を調査した結果をまとめた。実施方針の累計は345件で、内訳は地方自治体が264件、国が51件、独立行政法人などが30件となっている。…地方自治体が公表した264件を分野別でみると、文化ホールなど教育・文化関連施設が37件、複合公共施設が31件、公営住宅・宿舎22件、義務教育施設など20件、学校給食センターが20件、廃棄物処理施設20件となっている。国と独立行政法人などによる計81件は、大学・試験研究機関が32件、宿舎・住宅が26件、宿舎が12件、その他は11件。地域別では1都3県や大阪府のほか、北海道、宮城、静岡、愛知、京都、兵庫、広島、福岡などの府県で2桁台の実績を持つ。大都市圏や地方中核都市などでの件数が多いが、総じて‘東高西低’の傾向もみられる。一方、群馬、和歌山、鳥取、宮崎の4県では、実施方針の公表実績がない。年度ごとに実施方針の公表件数をみると、02年度以降は、年間50件前後で安定的に推移している。」(『建設通信新聞』2008.04.03)
●「国土交通省は、同省発注工事の入札で、低入札価格調査を行うかどうかの判断ラインとなる調査基準価格の見直しを、各地方整備局などに正式に通知(3月31日付)した。調査基準価格の設定範囲は、予定価格の3分の2〜85%で従来と同じだが、算出のベースになる値を見直し、▽直接工事費の95%▽共通仮設費の90%▽現場管理費の60%▽一般管理費の30%−の合計額から算出。算出した値が予定価格の3分の2〜85%の範囲を超えた場合は、3分の2または85%を調査基準価格とする。最近の入札では調査基準価格は予定価格の75〜76%に設定されており、見直し後はこれが5%程度高くなるという。調査基準価格の見直しは、行き過ぎた価格競争を防止する対策の一環。同省は、公共工事を発注する国の機関で構成する中央公契連(公共工事契約制度運用連絡協議会)にも同日付で通知。近く中央公契連モデルを改正する。他省庁も新しい計算式の採用で追随する見通しだ。新しい計算式は、今月以降に入札公告を行う予定価格1000万円以上の工事の入札が対称になる。」(『建設工業新聞』2008.04.09)
●「自民党の雇用・生活調査会と中小企業労働者問題プロジェクトチーム(PT)は9日、公共工事の適正な設計労務単価の設定や建設業のダンピング(過度な安値受注)対策強化、官公庁による中小・地元企業向け契約目標の『最大限上積み』などを盛り込んだ提言をまとめた。適正な労務単価の設定は、その位置付けや内容を幅広く検討することを求めている。…提言では、建設業の下請けの適正な賃金、労働条件確保に向けた取り組みとして、▽公共工事でのダンピング対策▽適正な予定価格の設定に向けた労務単価のあり方の検討▽元請け・下請け関係の適正化▽技能労働者の育成▽建設労働安全対策の充実―の5点を打ち出している。労務単価については、国発注工事の予定価格作成に『見積りを活用する積算方式』の導入・拡大や、調査方法の見直しを求めている。」(『建設通信新聞』2008.04.10)
●「建設経済研究所が、都道府県、政令指定都市、県庁所在市、中核市の114自治体を対象に行った一般競争入札と総合評価方式の導入状況の調査によると、一般競争入札の導入率は99.1%、総合評価方式の導入率は78.1%となり、大規模自治体のほぼすべてで一般競争入札が導入されていることが分かった。総合評価も未導入の都道府県はなく、入札契約の透明性を高める制度改革が進んでいるとみている。一般競争入札は、すべての都道府県で本格導入済み。政令市・県庁所在市・中核市では67のうち62が本格導入、4自治体が試行導入している。…1000万円以上の工事での一般競争入札については、都道府県は15、政令市・県庁所在市・中核市は26自治体で実施。多くの団体は予定価格の大きな工事だけに導入しているとした。…総合評価方式を採用した工事で、最低価格提示者以外が落札者となる逆転落札の工事があったかどうかの調査では、回答した74自治体のうち48自治体があったと回答。全発注工事のうち14.3%(各自治体ごとの発生率の単純平均)で逆転現象がみられた。」(『建設工業新聞』2008.04.14)
●「東京商工リサーチがまとめた2008年2月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、325件で前年同月比 10.9%の増加になった。1月に続いて2ヵ月連続で前年同月を上回った。負債総額は755億1700万円で65.2%という、大幅な増加になった。負債額が50億円を超す倒産が3件発生したことが大きく影響した。業績低迷が続く中にあって、昨年6月20日に施行された改正建築基準法により、建築確認申請手続きの厳格化で、資金繰りが苦しくなり倒産したケースが9件起こっている。…原因別では、受注不振が前年同月比5.2%増の201件(構成比 61.8%)と全体の6割を占めた。次に既往のシワ寄せが同66.6%増の55件(同16.9%)、運転資金の欠乏が同4.1%減の23件(同 7.0%)、他社倒産の余波が同6.2%増(同5.2%)の17件と続く。…資本金別では、1000万円以上5000万円未満が前年同月比13.0%増の 156件、100万円以上500万円未満が2.7%減の70件、個人企業他などが49件となり、1億円以上は4件だった。…建築現場は、公共工事縮減傾向に加えて昨年の改正建築基準法施行の影響による住宅着工の大幅減少で大きな混乱が生じた。さらに最近は建築用鋼材が軒並みに値上がりし、建築業者はさらなる収益圧迫を強いられている。このため今後の倒産動向には目が離せない。」(『建設通信新聞』2008.04.04)
●「大手ゼネコンが公共事業の減少に対応して、国内土木部門を縮小する。…公共工事のあり方が議論を呼ぶなか、海外や大都市圏での民間工事の受注・施工に経営資源を重点的に投入する。大成は国内土木の営業担当者60人程度を国内の施工部門に配置転換する。…竹中土木は水戸市や宇都宮市など『地元企業への優先発注などで、公共工事の発注量が少ない』(同社)5カ所の営業所を1日付けで閉鎖した。…大林組は土木部門の施工担当者のうち20-30人程度を建築部門の工事に従事させる取り組みを始めた。…半面、オイルマネーに沸く中東などで大手ゼネコンは大型土木工事を相次いで受注している。06年度の日建連加盟会社の海外土木工事の受注額は前の年度比1.5倍の6913億円に拡大。国内土木工事受注額の4分の1の規模になった。…鹿島も海外で施工管理を担当する外国人マネージャーの人数を現在の約50人から1-2年内に60人に増やす。」(『日本経済新聞』 2008.04.05)
●「東京商工リサーチがまとめた2007年度の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年度比5.5%増の4090 件となった。03年度以来4年ぶりに4000件を突破した。また、負債総額は18.0%増の8375億6000万円で、平均負債額は11.4%増の2億 400万円となっている。改正建築基準法関連の倒産は53件発生した。従業員数別では、5人未満が2119件と全体の51.8%を占めた。」(『建設通信新聞』2008.04.09)