情勢の特徴 - 2008年4月後半
●「国土交通省は、コンサルタント業務の低価格入札対策を強化する。低入札価格調査を行った案件を対象に、業務の実施状況や現場作業状況などを重点的に調べるよう各地方整備局に近く通達を出す。加えて、業務完了後に詳細な業務コスト調査も実施し、入札価格と実際のコストを比較。赤字受注が横行し品質確保に問題があることが確認されれば、新たな対策の導入を検討する。その際は、品質と価格との相関関係を調べるため、低入札価格調査案件についても、簡易な業務コスト調査を実施する。…こうした調査により、成果品などの品質に問題が発生する価格水準について検証。仮に、安価での受注でも品質に問題なく履行可能と判断した場合には、実態に沿う形で積算基準を引き下げるとしている。」(『建設工業新聞』2008.04.17)
●「発注工事の監督・監理業務などを民間に委託する動きが自治体を中心に広がってきた。公共施設の老朽化などで業務量は増える傾向なのに対し、団塊世代のリタイアなどもあって自治体が抱える技術職員の数は減少。工事の品質低下を招きかねない低価格受注の増加で監督・監理業務の重要性が高まっていることなどがその背景にある。だが、行政と民間の役割分担の明確化や委託業務の質確保が課題と指摘する行政担当者は少なくない。…工事監督補助業務の民間委託について検討を始めた自治体は複数ある。本年度からの実施を計画している自治体の担当者は『資格要件で限定して競争入札にかければ(業務の質の確保は)大丈夫だと思う』と話す。業者選定を適切に行うことで民間側の大成整備が進む側面もある。行政の試行錯誤は続きそうだ。」(『建設工業新聞』 2008.04.21)
●「国土交通省は、47都道府県の入札参加資格審査のうち主観点数の活用状況をまとめた。全体の9割以上が主観点数のうち工事成績の評価項目の割合を21%以上に設定しており、社会貢献など工事成績以外の配点割合が大きいのは1割以下にとどまっている。また、約3割の自治体が新分野進出や企業提携を評価項目に加えている。主観点と客観点の重み付けは、主観点を合計の1割以下にしているのが17の自治体、1-2割が16の自治体となっている。青森県だけ、国と同様に主観点と客観店を『1対1』で評価している。…都道府県の4割が、建設マスターの顕彰者の採用や技術者数などを技術力として評価項目に加えている。災害発生時の緊急対応への協力や除雪関係作業、県産品など、地域貢献や社会性の項目は約3割が導入している。」(『建設通信新聞』2008.04.24)
●琵琶湖・淀川水系の河川整備事業計画原案を審議している国土交通省近畿地方整備局の外部有識者会議『淀川水系流域委員会』(宮本博司委員長)は22日、同省が原案でもりこんでいる4つのダムの建設・再開発に対し、4ダム建設を認めず、原案の見直しと再提示を求める意見書をまとめた。1997年の河川法改正を受けて設置された第三者委員会で、国の原案が否定されたのは初めて。流域委はこれまでダムの治水効果のデータなどを整備局に開示させ、検証。大戸川ダムは200年に一度の洪水時に淀川の水位を19センチしか下げる効果がないことなどを明らかにしてきた。一方で事業費は大戸川、天ヶ瀬、川上の3ダムで計2740億円かかる。丹生ダムは治水目的か渇水対策か型式が決まっていないため、事業費は不明のままだ。意見書は「整備局の説明は、ダムが必要であることについて十分な内容になっていない」として、現時点では建設計画を河川整備計画に位置付けるのは「適切でない」と結論づけた。その上で、「堤防強化とその他の対策(ダムなど)を組み合わせた事業費を明示し、優先度の検討を行い、破堤による壊滅的な被害を回避・軽減する具体的な計画を示すこと」を求めている。(『しんぶん赤旗』2008.04.24より抜粋。)
●「手抜き工事」を指摘した男性社員を懲戒解雇した、建設会社轟組(本社・高知市)は17日、解雇を撤回する和解案を提示し、男性社員側もこれを受け入れ、合意した。解雇を撤回させたのは、Aさん(46)。合意内容は、轟組は懲戒解雇を取り消し原職復帰させる、Aさんは円満退社する、というもの。「手抜き工事」が行われたのは、上信越自動車道熊坂トンネル(長野県中野市)工事。ピーエス三菱と北野建設の共同企業体が元請けで、下請けが轟組だ。Aさんは、同工事の現場監督だった。トンネル内のコンクリート巻厚不足に気づき、2006年9月、元請けに訴えましたが、修正されることなく、作業が終わった。07年11月、会社側は、「無断欠勤」を理由にAさんを解雇した。Aさんは「手抜き工事を内部告発したための解雇」と、建交労や日本共産党の穀田恵二衆院議員などに訴え、問題が明らかになった。同工事を発注した東日本高速道路は、巻厚不足、すき間を確認している。(『しんぶん赤旗』2008.04.18より抜粋。)
●「国土交通省が21日まとめた建設労働・資材の需給状況に関するアンケート調査(3月分)によると、基礎・躯体系の専門工事業者のうち、技能労働者が『過剰』と回答した企業が47.8%に上った。『不足』との回答も21.7%あった。基礎・躯体系では、先月分の調査結果よりも、『過剰』との回答割合が8.5ポイント増えており、技能労働者の稼働率が100%に満たない企業が全体の約7割となっている。過剰となった要因については、『改正建築基準法の施行の影響』との回答が91.7%と大部分を占めた。資材需給の面では、鋼材について『ひっ迫』とする傾向が強まっている。…基礎・躯体、設備、仕上げの計84社の専門工事業者が対象で、このうち46社から回答を得た。回収率は54.8%。…技能労働者が過剰になった場合の対応については、各業種とも『同業他社との協力の応援に行かせた』という回答が最も多かった。このほか『倉庫整理』や『設備の手入れ』などの仕事をさせているケースもあった。…先月の調査結果と比較すると、基礎・躯体系と設備系で、回復時期を『09年以降』とする回答が増えており、見込みよりも遅れると予測する傾向が強まっているようだ。」(『建設工業新聞』2008.04.22)
●総務省は29日までに、住民基本台帳に基づく2007年の都道府県の人口移動状況を明らかにした。地方から首都圏を中心とした大都市への人口集中が加速しており、転出が転入を上回る転出超過となったのは、北海道(2万267人)、青森(1万274人)、長崎(1万64 人)など40道府県に上った。転入が転出を上回ったのは、東京、神奈川、愛知、千葉など7都県。転入超過の割合は、東京都が0.76%で最高だった。首都圏の人口に対する転入超過の割合は0.45%で、バブル期の1988年以来19年ぶりに0.4%を超えた。(『しんぶん赤旗』2008.04.30)
●「セメントの国内価格が4年ぶりに上昇した。値上がり幅は1割にのぼり、第二次オイルショック直後以来の大きさ。燃料の石炭高騰が理由だ。鋼材など素材価格上昇をもたらした世界的な資産高が価格安定の代表品目であるセメントにも波及した。公共工事や住宅着工が減少している建設業界に影響が広がりそうだ。太平洋セメント、宇部三菱セメント、トクヤマの大手3社などが打ち出した値上げを需要家である生コンクリートメーカーが相次いで受け入れた。東京での価格は1トン1000-1200円上昇し9600-10000となった。…セメントは需要減少に加え、最終的な需要家であるゼネコンの価格交渉力が強く、コスト増の転嫁が難航していた。今回は大幅なコスト増を受け『値上げできなければ出荷しない』(宇部三菱)と強い姿勢で要請。東京の生コンメーカーは『通告に近く、受け入れるしかなかった』という。」(『日本経済新聞』2008.04.18)
●「全国建設業協会(全建、前田靖治会長)は、揮発油(ガソリン)税などの暫定税率が3月末で失効し、国や地方で道路整備事業が滞っている影響を把握するために、傘下の都道府県建設業協会を対象に緊急調査を実施。17日までにまとめた中間集計によると、前年度からの継続工事の中止や、落札した工事の契約直前での計画見直しといった影響が出ていたほか、08年度予算執行の先行きが不透明で受注計画が立てられず、企業経営に深刻な影響が及ぶと危機的状況を報告する協会もあった。同日には都内で、道路整備促進を求める自治体などが総決起大会を開き、暫定税率復活へ気勢を上げた。全建の調査には、17日までに32道府県の協会から回答があった(回答率68.1%)。…道路特定財源の税収が減った影響では、発注の凍結・停滞が企業経営の悪化要因になりつつある現状に危機感を募らせる回答が多く、『先行きが不透明で受注計画が立てられず、雇用や資金繰りなどが心配。会社の存続すら危ぶまれる』と危機的な状況を報告する協会もあった。暫定税率を復活させる税制関連法案などが衆院で再議決された場合でも、『工事発注が同時期に集中すると受注競争が激化し、低価格落札が増加する懸念もある』と指摘する声も上がった。」(『建設工業新聞』2008.04.18)
●「3月の建設業倒産は、前年同月比16件増、4.6%増の362件となり、2007年11月の359件以来4ヵ月ぶりに350件を上回った。これに対して負債総額は同225億8300万円減、27.2%減の602億2400万円で、平均負債額が同30.5%減の1億 6600万円となった。このほかに改正建築基準法関連倒産は9件(2008年3月時点累計53件)発生した。…原因別では、受注不振が前年同月比1.7%増の233件(構成比64.3%)と全体の6割を占めた。次に既往のシワ寄せが同21.7%増の55件(同15.4%)、運転資金の欠乏が同30.4%増の30件(同8.2%)、事業上の失敗がどう90.0%増の19件(同5.2%)と続く。…資本金別では、1000万円以上5000万円未満が前年同月比 14.6%増の172件、100万円以上500万円未満が11.7%減の83件、個人企業他などが61件となり、1億円以上は1件だった。…従業員数別では、5人未満が前年同月比6.8%増の202件(構成比55.8%)、また5人以上10人未満が同2.2%増の92件だった。」(『建設通信新聞』 2008.04.22)
●「07年度下半期(07年10月〜08年3月)のゼネコン各社の海外受注活動は、東南アジアや中東などの旺盛な需要を背景に引き続き順調に推移した。竹中工務店はかつて新築工事を手掛けたシンガポール・チャンギ国際空港第1ターミナルで、総額370億円の大規模増改修を受注した。大成建設もアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで受注した大型複合施設の建設工事に本格着手した。準大手では、五洋建設がシンガポールで複数の大型工事を受注し、7期ぶりに海外受注高が1000億円を突破した。…海外の市場拡大に向けたゼネコン各社の取り組みをみると、鹿島は米国の建設会社バトソン・クック社を買収。建設需要が旺盛な同国南東部での建設事業の強化・拡充を目指す。前田建設は、建設投資が活況を呈するベトナム・ホーチミン市に現地法人『MAEDA VIETNAM』を設立。同国に進出する日系企業だけでなく、現地資本の建設工事に対しても積極的な営業展開を図る方針だ。…各社は、中長期的に縮小する国内事業の補完として、拡大を目指してこれまで積み上げた海外の手持ち工事の消化に注力し、受注を手控える動きも出てきている。そのため、下半期の受注を見る限り、06年に鹿島や大成によるアルジェリアの道路プロジェクトのような超大型工事の受注には、一服感が見られる。国内以上にさまざまなリスクが潜在すると言われる海外事業。特に最近では、ドバイなど建設需要が旺盛な地域での建設資機材の高騰が深刻化していることが報道されるほか、円高基調を背景にした為替差損に伴う海外事業の採算悪化も懸念されるなど、環境は一段と厳しさを増している。」(『建設工業新聞』2008.04.23)
●「自民党の中小企業調査会(金子一義会長)は23日、中小建設業を取り巻く状況について、関係する省庁、団体からヒアリングした。関係団体からは中小建設企業の危機的な状況を訴える声が相次ぎ、出席議員からは『中小建設業者は、(道路特定財源の)暫定税率失効、改正建築基準法の施行、原油・原材料高、『貸し渋り』の『四重苦』で深刻な状況にある』と対応を求める声が上がった。金子会長は今後、▽中小向け金融(資金調達・資金繰り)▽建設業の疲弊(中小建設企業の受注機会確保)▽地方中小建設業に対する発注者の意識(企業育成政策の視点)――の問題に取り組みたいと説明した。…出席議員からは『落札率が90%以上は談合と言われるが、根本的な問題は単価表の信頼性であり、その信頼性が高ければ落札率が100%でも問題ない。落札率90%以上というのがおかしいとなれば、そのしわ寄せは労働者にいく』『地元建設業は、災害時にただ働きしているにもかかわらず、国が災害復旧工事をランク別に発注しているために受注できない。ランクの見直しをお願いしたい』『貸し渋りは実際に起こっている。金融庁にはしっかりとした対応をお願いしたい』といった声が上がった。」(『建設通信新聞』2008.04.24)
●「三菱地所の2009年3月期の連結営業利益は前期推定比12%増の1900億円前後と、4期連続で最高益を更新しそうだ。昨年開業した新丸の内ビルディング(東京・千代田)の収益が年間を通して寄与することなどからオフィスビルの賃貸事業収益が引き続き拡大。藤和不動産など関連会社の子会社化も収益の押し上げ要因になる。東京・丸の内を主力とするオフィスビルの賃貸事業は好調に推移中。…分譲マンションなど住宅事業も、利益率の高い都心部の高額物件の引き渡しが増えることなどから増益の見込み。海外事業や資産開発事業も堅調に推移する見通しだ。…子会社化による利益の押し上げ効果が営業利益と比べて小さくなるため、計上利益や純利益は営業利益ほど伸びないが、増益を確保しそうだ。」(『日本経済新聞』 2008.04.26)
●「不動産経済研究所(東京・新宿)が15日に発表した2007年度の首都圏のマンション新規発売戸数は、前年度比 17.8%減の58156戸と大きく落ち込んだ。近畿圏も7.6%減の28592戸となり、いずれも14年ぶりの低水準となった。建築費や用地取得費の上昇で販売価格が上がり、所得の伸び悩む消費者が購入を控えている。08年度は一段の減少が見込まれ、景気の下押し要因になりそうだ。…首都圏の年6万戸割れは14年ぶりだ。実際に売れた戸数を発売戸数で割った契約率も両地域で66.3%に低下。好不調の目安となる70%を割り込み、『発売しても売れない』(同研究所)状況だ。発売が落ち込んだ最大要因は、販売価格の上昇。…不動産会社が高値での用地取得に走ったほか、鋼材など建築費も高騰。各社がコスト増を販売価格に転嫁し、07年夏ごろから消費者の買い控えが鮮明になった。株式市場低迷による逆資産効果で消費者心理も悪化。景気減速で金利の先高観も遠のき、住宅ローンの活用を考えるマンション購入予定者は先送り姿勢を強めている。売れ行き低迷を背景に不動産会社は発売戸数を絞り込んでいる。…08年度も発売戸数は低空飛行が続く見通しだ。…同研究所は『発売単価が現在から1割程度下がらないと需要は回復しない』とみる。不動産業界では新規発売より在庫削減を優先する動きも拡大。…大手は価格設定を見直し始めた。ただ足元では鋼材価格上昇で建築費がさらに上がっており、経営が悪化する中堅・中小事業者も増えている。」(『日本経済新聞』2008.04.16)