情勢の特徴 - 2008年5月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「大手銀行6グループの2008年3月期決算が20日、出そろった。連結純利益は合計1兆8600億円と前の期に比べ 34%減った。減益は2期連続。米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)関連損失は計9800億円に達した。投資信託などの販売が落ち込むなど手数料収入も前の期を下回った。今期はサブプライム関連損失が大幅に減るものの、景気減速で不良債権処理費用がかさむうえ、貸し出しも伸び悩むため13%の増益にとどまる見通し。系列ノンバンクの業績悪化で減益決算となった07年3月期にも届かない水準だ。…09年3月期は繰り延べ税金資産の関連費用がかさむりそな以外の5グループは増収を見込む。しかし、収益の押し上げ要因となる日銀の利上げが当面見込みにくいほか、企業業績が悪化するとの見通しもあり、業績の急回復は容易ではない。」(『日本経済新聞』2008.05.21)
●「冬柴鉄三国土交通相は20日の経済財政諮問会議で羽田空港の国際線を増やす方針を正式に表明した。2010年の空港再拡張に伴う措置で、国際線増便にあてる発着枠は当初計画から倍増し年6万回(1日約80便相当)とする。ソウルなどに限定していた就航先も欧米に広げる。『羽田空港の国際化』に従来より踏み込み、開港30年を迎えた成田空港との補完関係を目指すが、課題も多い。…まず成田空港の地盤沈下を警戒する千葉県など地元自治体との調整が難航する可能性がある。…国交省内に急激な自由化への慎重論もくすぶる中、国内空港の国際競争力強化に向けた取り組みが問われそうだ。…国交省の新方針を受け、航空各社は羽田の国際枠発着の獲得に動き出す。全日本空輸や日本航空など国内勢に加え、海外航空会社も利便性の高い羽田への就航に関心を示すのは確実で、限られた枠の争奪戦は激しくなりそう。」(『日本経済新聞』2008.05.21
●「建設業界で経営圧迫の大きな要因になっている資材価格高騰問題で、建築業界でも高騰分の価格転嫁について民間発注者の理解を求める動きが加速している。建築業協会(BCS、野村哲也会長)は6月に会員企業に対し鋼材を中心とした資材価格高騰調査を行うことを決めた。BCSは国土交通省の単品スライド条項適用基準策定の動きを踏まえ、民間発注者に対し資材高騰を理由にした価格転嫁への理解を求めていく。既に全国建設業協会のほか日本土木工業協会が資材高騰への対応を公共発注者に求めており、取り組みは建設産業界全体の問題となっている。BCSの野村会長は、26日の日本建設業団体連合会と建築業協会合同会見で、民間建築工事での鋼材を中心とする資材高騰の価格転嫁について『ほとんど進んでいない』と現状を説明した。」(『建設通信新聞』2008.05.28)

行政・公共事業・民営化

●「自民党の道州制推進本部(本部長・谷垣禎一政調会長)は29日、今後の議論の焦点となる同州の区切り案を固めた。道州数は9と11の両案とし、11とする案は建の区分でさらに3案に分かれる。東京の中心部を『特別行政区』とする構想もある。同党が具体的な区割り案を示すのは初めて。政府・与党は10年程度での移行をにらんだ議論の加速を目指す。区割り案は同日午後の推進本部会合で公表し、今夏にまとめる中間報告に盛り込む。地理的、経済的な結びつきを重視。…いずれの案を採用した場合でも、北海道、関西、九州、沖縄は独立した州を構成する方針が固まった。…道州制の区割りを巡っては、政府の地方制度調査会(首相の諮問機関)が2006年に『全国を9、11、13州』に分ける3案を提示。政府の道州制ビジョン懇談会(江口克彦座長)は中間報告で導入時期について『2018年までに完全移行』としつつ、区割りの検討を先送りした。」(『日本経済新聞』2008.05.29)

労働・福祉

●「肺がんなどの原因になると知りながらアスベスト(石綿)の使用を放置し健康被害を拡大させたとして、首都圏の建設労働者ら178人が16日、国と建材メーカー46社に総額約66億円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。弁護団によると、石綿被害で国やメーカーの責任を問う訴訟は各地で起こされているが、大規模な集団提訴は初めて。訴えたのは東京や埼玉、千葉の建設労働者とその家族。一人当たりの請求額は3850万円。原告は1960年以降、建設現場などで石綿を吸引し、82人が肺がんや悪性中皮腫などで死亡している。被告はニチアスやクボタなど石綿を含む建材を製造した主要なメーカー各社。…『勝訴するまで頑張りたい』。原告団長の宮島和男さん(78)は16日午前、提訴後に記者会見し、国やメーカーの責任を問う決意を述べた。…宮島さんは15歳で屋内配線など電気工事の仕事に就いた。1960年代後半ごろ、現場で建材に吹き付けられた灰色の物質を見るようになった。これが石綿だった。『当時は石綿に発がん性があることなど全く知らなかった。せき込むなど体の異変を感じたのは80年代ごろ。たばこが原因だと思っていたが、01年ごろに石綿被害特有の症状が肺に見つかり、その後に肺がんも見つかった。…原告の4割は被害者の遺族。生きている原告も高齢なため残された時間は多くない。宮島さんは『病気の原因が石綿と気付かず、苦しんでいる人も多いはず。訴えが石綿被害の警鐘になればいい』と話している。』(『日本経済新聞』2008.05.16)

建設産業・経営

●「鹿島、大成建設、大林組、清水建設の上場大手ゼネコン4社は15日、08年3月期の連結決算を発表した。売上高は4社そろって1兆6000億円を突破したが、受注競争の激化と鋼材をはじめとする資機材の高騰で工事採算が悪化し、鹿島、大成、大林の3社が2けたの大幅な営業減益となり、清水も小幅増益にとどまった。今期は4社そろって1兆8000億円を越える売上高を見込み、清水以外の3社は粗利益率の改善も予想。『08年3月期を底に業績の回復を目指す』(鹿島)とするが、原油価格や鋼材価格が一段と上昇する懸念もあり、予断を許さない状況が続きそうだ。」(『建設工業新聞』2008.05.16)
●「住宅大手8社の2007年度連結決算が19日出そろった。営業利益はミサワホームなど5社が減少した。建築基準法改正による着工の遅れや、住宅市場の低迷による受注不振が続いたため。08年度は法改正の反動による回復や改築・修繕需要の増加で7社が増収・営業増益を見込む。しかし、景気減速懸念で先行き不透明感は根強い。」(『日本経済新聞』2008.05.20)
●「準大手・中堅ゼネコン(総合建設会社)14社の2008年3月期連結決算が19日出そろい、4社が経常赤字、7社が経常減益だった。公共投資の縮小や『脱談合』後の競争激化が収益を圧迫。マンション工事では建築確認の厳格化による着工遅れや資材高が響いた。各社は人員削減など収益体質強化を急ぐが、業績回復は容易ではない。」(『日本経済新聞』2008.05.20)
●「国土交通省直轄工事における資材価格の平均上昇率は『鉄筋』で35.2%増。日本土木工業協会(葉山莞児会長)がまとめた『建設資材高騰が工事に与える影響に関する実態調査』で、『鉄筋』と『鋼材』の応札価格をことし4月1日時点単価と比較すると、いずれも平均で 20%以上上昇していることが明らかになった。既に2008年3月期決算でも多くの企業で資材高騰による工事採算悪化が浮き彫りになっている。今後、土公協が調査結果をもとに資材を中心とした単品スライド適用を強く求めていくことは確実だ。」(『建設通信新聞』2008.05.20)
●「日本企業の2007年度海外建設工事受注が2年連続で過去最高額を更新した。海外建設教会(竹中統一会長)が21日に公表した、『2007年度海外建設受注実績(会員企業45社)』で明らかになった。02年度の7584億円から06、07年度と2年連続で1兆6000 億円台を確保するなど、この6年間の急激な増加ぶりが鮮明になりつつある。…地域別では受注額けん引役の『アジア』が1844億円増で全体シェアの半分を占めた。また昨年度受注額シェア2位となった『中東』も417億円減少したものの4727億円でシェア28%で2位を維持した。…ただ一方、海外建設工事の経営リスクも鮮明になりつつある。既に公表された上場ゼネコンの08年3月期決算でも、工事進行基準の厳格化によってドル安に伴う為替差損、世界的な原油高と資源高による建設資材高騰による損失引当金積み増しによって、海外工事の収益悪化が明らかになっていた。そのため今後は各社とも受注額拡大だけでなくリスク回避による収益回復という国内工事と同様の対応が求められそうだ。」(『建設通信新聞』2008.05.22)
●「東京商工リサーチがまとめた2008年4月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は前年度同月比11.9%増の 328件となった。これによって、4ヵ月連続での増加となっている。負債総額は、9.4%減の597億2700万円。平均負債額は、19.1%減の1億 8200万円。昨年6月の改正建築基準法の施行の影響を受けた倒産は7件で、累計では60件に達した。業種別では総合工事業が13.9%増えて196件を占めており、このうち、舗装を除く土木工事業が94件含まれている。…原因別では、受注不振が前年同月比27.5%増の213件(構成比64.9%)と全体の6割を占めた。次に既往のシワ寄せが同13.6%減の38件(同11.5%)、運転資金の欠乏が同30.4%増の30件(同9.1%)、他社倒産の余波が同21.7%減の18件(同5.4%)と続く。…資本金別では、1000万円以上5000万円未満が前年同月比1.2%減の152件、100万円以上 500万円未満が同21.7%増の84件、個人企業他などが同24.3%増の46件となり、1億円以上は1件だった。」(『建設通信新聞』 2008.05.29)
●「全国建設業協会(全建、淺沼健一会長)がまとめた07年度の会員企業の倒産状況調査によると、傘下の各都道府県建設業協会加盟企業の倒産は482件と前年度比で97件増え、95年度の調査開始以来、最悪となった。公共投資削減による市場縮小と受注競争の激化などで、地方の建設会社が窮地に追い込まれている現状が改めて浮き彫りになった。…資本金階層別の倒産件数は1000万〜5000万円が98件と全体の7割を超え、資本金が1億円を超える企業の倒産も3件発生した。都道府県の格付けでA等級の企業の倒産が31件、B等級が27件、C等級が20件など上位ランク業者の倒産が目立つ。倒産原因は『受注減少』が82件と前年同期比27件増加。『赤字累積』も21件あり、受注環境の悪化が倒産の引き金になったケースが多い。」(『建設工業新聞』2008.05.30)
●「総合建設(ゼネコン)大手の2009年3月期の海外売上高が軒並み拡大しそうだ。大成建設(単独ベース)は前期比 1.4倍の2330億円となる見通し。国内建設需要が縮小する中で、新興国など海外での受注を拡大してきたためだ。ただ、海外工事は商習慣や地質の違いなどのリスクが高く、採算管理の徹底が必要になる。…海外工事の重要性が増すのは各社とも事情は同じ。海外で過去に受注した工事のうち、既に施工した分を差し引いた繰越工事高は大成建を筆頭に、鹿島や清水建設も高水準を維持している。…各社ともここ数年、海外での受注を拡大している。日本建設業団体連合会によると、主要企業の海外受注額は大型工事が相次いだ06年度に1兆円を超え、07年度も9645億円と高水準だった。公共工事の減少など国内市場の縮小が続く中、新興国やインフラ未整備国など、海外に打って出ている構図が鮮明だ。」(『日本経済新聞』2008.05.30)

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