情勢の特徴 - 2008年6月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「経済産業省中小企業庁は12日、官公需法に基づく2007年度の中小企業者向け契約実績をまとめた。工事・物件・役務すべての国などの契約目標率50.1%に対して、契約実績は47.8%だった。目標率を2.3ポイント下回ったものの、実績では、前年度を0.3ポイント上回り、過去最高の契約率となった。07年度の官公需実績総額は8兆7601億円で、中小向け契約実績額は4兆1906億円となっている。」(『建設通信新聞』2008.06.13)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省のまとめによると、建築工事や機械設備工事、鋼橋上部工事で、不落・不調工事が増加傾向にある。建築工事では、07年度上半期の不落・不調の発生率が38.7%で、06年度の24.4%を大きく上回った。耐震補強や維持保全など受注額が比較的低いにもかかわらず手間が大きい案件で発生件数が増えている。地域別では、関東地方整備局の発注工事で07年度上半期の発生率が28.8%と最も多かった。関東地方では、民間建築が旺盛なことが影響していると同省は分析している。…国交省は、見積り活用方式など実態に即した積算を徹底するなどの対策に取り組むとしている。」(『建設工業新聞』2008.06.05)

労働・福祉

●「関東地方整備局と建設産業専門団体連合会(建専連)関東地区連合会(向井敏雄会長)との意見交換会が10日、同局内で開催された。…技能労働者の労働条件の現状については、向井建専連関東地区連合会会長が、…『社会保険負担を軽減するため、直用を外注化し、一人親方が増えて、さらに重層下請け化が進行している。一人親方が労災特別加入に入っていない場合も多く、実際の現場での死傷者数にカウントされていない。調査して、(一人親方の)労災死傷者数を明らかにしてほしい』と要請した。構成団体のひとつ東京建設駆体工業協同組合からは、『技能労働者の年収が生活保護基準額を下回るケースも多く発生している。ダンピング進行で設計労務単価が低下しており、生活できる視点に立って設計労務単価のあり方を検討するとともに、基幹技能者の評価・活用を図るモデル事業を設定し積極的に推進してほしい』との要望が出された。」(『建設工業新聞』2008.06.11)
● 「持続可能で、希望のもてる輸送業界へ」―。軽油価格の高騰などでトラック輸送業界の窮状が続くなか、全日本建設交運一般労働組合(建交労)の運輸関係職場の労使で構成する建交労中央運輸労使協議会は8、9の両日、香川県琴平町で第31回労使共同セミナーを開き、全国から145人が参加した。分散会討論では、軽油価格高騰分を含む適正な運賃収受が輸送の安全、経営の安定、労働力確保にとって不可欠であることや、他の分野で広く導入されている「燃料サーチャージ制度」(燃料価格の上昇・下落によるコスト増減分を別建ての運賃として設定する制度)をトラック業界でも早急に導入する必要性などが話し合われた。9日の全体会では、石油製品の実効ある価格安定策や適正取引、燃料サーチャージ制導入への世論を喚起することなどを政府・関係省庁に要求する「労使共同緊急アピール」を採択した。(『しんぶん赤旗』2008.06.13)
● 東京都板橋区の電気工、村井浩さん(61)が、電気工事の仕事で石綿(アスベスト)粉じんを吸い込み、石綿肺になったとして労働災害認定を求めていた事件で、労働保険審査会は5月20日付で労災と認める決定を出した。労働者だった期間より事業主の基幹が長い場合は労災と認めない厚労省の通達を制限し、期間が短くても認定に道を開く内容になっている。池袋労働基準監督署は04年、労働者である一人親方の期間を事業主とみなし、事業主期間が長いとして厚労省通達を理由に不支給を決定。審査請求も認められないため、審査会へ再審査請求するとともに、06年に東京地裁に認定を求める訴訟を起こした。審査会は今回、労働者期間の長さではなく、「どちらの期間に発症したかが問題」とし、村井さんは「労働者として従事した期間に石綿にばく露したことは否定しがたい」として認定した。田門浩弁護士は「通達の適用範囲を大幅に限定した点に大きな意義がある。通達で泣かされた労働者も救済される内容だ」と指摘。(『しんぶん赤旗』2008.06.14)

建設産業・経営

●「建築業協会(BCS、野村哲也会長)は、昨年12月以降、鋼材の市場価格が急激に上昇している問題について、民間建築工事の鋼材価格と既契約分の価格転嫁状況の実態調査を始めた。…BCSは16日に調査結果をまとめ、会員企業の民間発注者との契約額変更交渉の支援に役立てる。公共工事で単品スライド適用への道筋ができたことで今後は、建設市場シェア最大で鋼材高騰の影響が工事採算に大きい民間建築工事で、価格転嫁がどう進むかが大きな焦点になりつつある。…民間工事も『民間連合協定工事請負契約約款』でスライド条項が規定されているが、条項を適用するための受・発注者のリスク分担割合など適用基準はない。また民間工事では、『契約約款のスライド規定を盛り込まない契約もあるほか、公共工事で認めていないことを理由に民間発注者が価格転嫁を拒否するケースもあった』(関係者)ことから、既契約分の鋼材高騰を理由にした契約額変更が進みづらいことが、問題視されていた。… 鋼材高騰問題については、既契約分については、既契約分について高騰分の価格転嫁が進まないほか、新規工事についても見積り段階と契約段階で価格上昇し異なるケースや、鋼材供給側が調達時点での価格設定を拒否するなど、元請けにとって工事採算悪化リスクが極端に高まっていた。また民間建築工事の場合、鋼材高騰に加え、後工事の主要である設備工事費が設備企業の価格転嫁に対する強い姿勢によって上昇基調にあることも、元請けの工事採算悪化傾向を加速させている。そのため今後、公共工事の単品スライド適用やBCS調査結果をもとに、民間発注者に対して鋼材高騰を理由にした価格転嫁の理解を個別企業ごとに行うことになるが、先行きについては不透明だ。ただ、鉄鋼や鉄筋を扱う下請業界からは、中小企業疲弊を理由に公共工事だけでなく民間工事でも下請契約額のアップを、与党や行政に強く今後も働きかける動きが出始めている。」(『建設通信新聞』2008.06.06)
● 「東京商工リサーチがまとめた2007年度の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、4090件で前年度比5.5%増。年度としては4年ぶりに4000 件の大台を突破した。2年連続の増加になっている。負債総額は8375億6000万円で、18.0%増。増加の要因は、負債額が10億円以上の大型倒産が 31.0%増と、大きく増えたこと。建設業界を取り巻く経営環境は、公共工事の削減が続くのに加えて、改正建築基準法による手続きの厳格化が影響している。…原因別では、受注不振が前年度比4.7%増の2587件(構成比63.2%)と全体の6割を占めた。次に既往のシワ寄せが同12.8%増の589件(同14.4%)、運転資金の欠乏同26.5%増の262件、他社倒産の余波同5.3%減の231件(同5.6%)、事業上の失敗185件(同 4.5%)、金利負担の増加72件と続く。…資本金別では、1000万円以上5000万円未満が前年度比7.1%増の1983件、100万円以上500万円未満が同1.6%増の949件、個人企業他が同3.2%減の568件となり、1億円以上が20件(前年度17件)だった。…都道府県別では26都道府県で件数が前年度を上回り、地区別では9地区すべてで前年度比増加となった。…また地区別の年度倒産に占める建設業倒産の構成比では、最も比率が高かったのが四国の39.8%。次に東北38.2%、九州38.1%、北海道38.0%と続く。従業員数別では、5人未満の小規模企業倒産が前年度比2.3%増の 2119件(構成比51.8%)と過半数を占めたが、こうしたなか、従業員数50人以上300人未満は、同66.6%増の40件(前年度24件)となって、やや規模の大きな企業倒産が増えていることが注目される。…公共工事縮減傾向に、最近は建築用鋼材の高騰などが続き、収益圧迫から刀折れ矢尽きた状況で息切れしていることを浮き彫りにした。さらに道路特定財源となる揮発油税などの暫定税率の失効を受けて、すでに新規道路工事発注の一時凍結や公共工事自体の発注抑制を打ち出す地方自治体が出ている。このため地方を中心に建設業界に危機感が広がっていることから、今後の倒産動向には注意が必要である。」(『建設通信新聞』2008.06.11)
● 「10日に行われた建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)の関東専建連(向井敏雄会長)が国交省関東地方整備局と開いた意見交換会で、資材高騰の余波や、元請けの経営悪化による専門工事業の苦境が深刻化している状況が浮き彫りになった。直近で大きな問題となっている鋼材価格高騰で、期待感が高まっている単品スライドと全体スライド適用について、…単品スライド適用による増額分が下請けに反映されるよう国交省に対して監視の注文をつけた。…また内山全鉄筋会長は、『ゼネコンの手形が町場(市中銀行以外の金融機関)に流れており、地方業界の盟主の企業破たんも含め、われわれ専門工事業は元請けの破綻におびえている』と専門工事業の不安感を代弁した。これまでも元下関係適正化・是正は大きな問題となっていたが、景気減速が指摘されるなか、改正建基法の影響や、相次ぐ地方の大手元請けの破たんなどを受け、専門工事業界でも先行きへの不安感が高まっている。」(『建設通信新聞』2008.06.12)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●学校施設の耐震化を促進するための法案が、日本共産党はじめ5会派の共同で国会に緊急提出されることが決まった。4日の衆院文部科学委員会理事会で、共産、自民、公明、民主、社民各党が合意した。6日に衆院を通過し、来週の参院での審議を経て、今国会で成立する見通しだ。法案は、@市町村が行う耐震補強工事への国庫補助率を現行の2分の1から3分の2に、改築への補助率を現行の3分の1から2分の1へ引き上げるA市町村に耐震診断実施と結果公表を義務付けるB私立小中学校についても配慮する―などが柱。学校耐震化には耐震診断だけで1校数百万円、耐震補強工事には1校1億円前後と多額の費用がかかり、財政の厳しい自治体が二の足を踏む状況が続いてきた。国庫補助率の引き上げは、こうした事態の改善につながるものだ。日本共産党は政府に予算の抜本増を求め、すべての学校施設の耐震化が早急に進むよう、取り組みを強める方針だ。(『しんぶん赤旗』2008.06.05)
● 「14日朝に起きた岩手・宮城内陸地震の規模はマグニチュード(M)7.2。震源の直下にあった活断層が動き、大きな揺れをもたらしたとみられる。東北地方の内陸を襲う大きな地震は珍しく、地震学者も十分に警戒していなかったが、震源周辺には複数の活断層が知られていた。四川大地震も発生前は注目されていなかったが、『十分に起こりえる地震だった』と東京大学地震研究所の加藤照之教授は説明する。…巨大地震はプレートに圧力が加わり、プレート同士の境界やプレート内の古傷である活断層が一気にずれて発生する。…世界を見渡してみると、不運なことに日本を含む東アジアが典型的なプレート密集地帯。地震の巣といえる。世界のM6級以上の地震のうち、日本だけで2割、アジア全体では3割以上が集中する。…地震の巣といえる東アジアで比較的に少ないのが、タイやベトナム、北京や上海など中国沿海部。理由はプレートの境界から離れているうえ、目立った活断層がないためとされる。ただプレート境界から離れた地域でも油断はできない。四川大地震では、遠く離れた北京やタイ・バンコクでも揺れを感じたという。東大地震研の纐纈(こうけつ)一起教授は『地震波を伝えやすい地盤が続くと、ゆったりとした揺れが減衰しないで遠くの地域を揺らす』と警鐘を鳴らす。経済発展が著しい東アジア諸国だが、地震対策は日本に比べてまだ手薄だ。ささいな揺れでも大きな被害をもたらす恐れもある。地震と向き合い、震災に備える工夫が大切だ。」(『日本経済新聞』2008.06.15)

その他

●韓国で10日、ソウルをはじめ全国百以上の地域で、米国産牛肉の輸入再開反対を掲げた「百万人ろうそく大行進」が開かれた。1750の市民団体が共同で呼びかけたもので、全国で数十万人が参加。牛肉輸入問題にとどまらず、「朝鮮半島大運河」計画や公営企業民営化など、李明博(イ・ミョンバク)政権の主要政策の撤回を求め、国会全般への批判が噴出した。集会は1987年に軍事独裁政権を終わらせた「6月民主抗争」が始まった日に合わせて行われ、これまでの最大規模となった。全国共通スローガンは「牛肉輸入の全面再交渉」「李明博政権審判」。主催団体は「国民の声を無視し続ける政権への抗議と警告」だとしている。李大統領は「経済の再生」を最優先課題としてきたが、国際的な原材料価格の高騰や通貨ウォンの下落などで、消費者物価は上昇を続けている。学費、食品、ガソリンなどの値上げは庶民生活をさらに圧迫し、政権批判に拍車をかけている。(『しんぶん赤旗』 2008.06.11)
● 韓国のトラック輸送運転手でつくる「貨物連帯」(全国運輸産業労組所属)が13日、燃料となる軽油の値下げや運送料引き上げなどを求めてストライキに入りました。スト参加者のうち約4割が労組未加入の運転手だという。貨物連帯は▽軽油価格が1リットル当たり1500ウォン(156円)を超えた場合に価格上昇分の半額を補助する▽5年間凍結されている運送料を30%以上引き上げる▽最低賃金に相当する運送料ガイドラインを法制化する―ことを求めている。運送料ガイドラインは昨年11月、当時の盧武鉱(ノ・ムヒョン)政権が導入を約束していたが、李明博(イ・ミョンバク)政権は「企業に対する規制に当たる」として白紙化していた。(『しんぶん赤旗』2008.06.14)