情勢の特徴 - 2008年7月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省が30日発表した5月の新設住宅着工数は前年同月比6.5%減の9万804戸で11ヵ月連続で減少した。耐震偽装の再発を防止するため建築確認を厳しくした改正建築基準法施行の影響は薄れているが、景気の足踏みの影響などで住宅需要は低迷している。加えて資材価格の高騰、住宅ローンの金利上昇など外部環境の悪化が目立っている。」(『日本経済新聞』2008.07.01)
●国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる2008年分の路線価(1月1日現在)を公表した。全国約38万地点の標準宅地の平均路線価は、前年を10.0%上回る14万3000円となった。3年連続の上昇で、上げ幅は前年の8.6%を上回った。仙台や横浜などの中核都市や大都市周辺で上昇率が拡大、全体を底上げする一方、昨年高騰した東京、大阪、名古屋の中心部では伸びが鈍化した。多くの地方では下落が続き、都市と地方の地価の二極化傾向が強まった。都道府県庁所在都市の最高路線価は、上昇が25都市と前年の20都市から増加した。(『しんぶん赤旗』2008.07.02より抜粋。)
●「海外建設協会(海建協、竹中統一会長)は、会員企業の海外事業を支援するため、中東や東南アジアの公的発注機関などに対し、契約書に価格調整条項を盛り込むよう働き掛ける。海外事業を一層拡大するには、建設資材や労務費の高騰に対応して工事代金を変更する仕組みが不可欠と判断した。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ道路交通局(RTA)などに対し、契約条件書に同条項を追加するよう要請する。海建協は日系民間企業の発注工事や政府開発援助(ODA)の工事についても、関係機関を通じて発注者に同様の措置を求める方針だ。…昨年度の会員企業の海外受注総額は過去最高の1兆6813億円を記録。潤沢なオイルマネーを背景に建設需要が旺盛な中東や、経済成長が著しい東南アジアなどの市場で事業規模を拡大させている。一方で、各社は建設資材や労務費の高騰による工事採算の悪化に直面。契約条件書に価格調整条項を設けていない発注機関も存在するため、一層の事業拡大には二の足を踏んでいる企業もある。こうした状況を受け、海建協は、道路や橋梁の工事で日本の建設会社の進出を求めてきたRTAに対し、価格調整条項を設けるなど片務的な契約を改善するよう求める内容の要請書を在ドバイ日本領事館を通じて提出する。」(『建設工業しんぶん』2008.07.07)

行政・公共事業・民営化

●「資材価格の変動に合わせて発注済み工事の請負金額を変更する『単品スライド』の適用が全国の公共工事に拡大してきた。日刊建設工業新聞社が支社・総局を通じて調査したところ、…30都道県で単品スライド適用に向けた具体的な動きが見られた。ただ、単品スライド適用の方針を公表しているものの、運用基準の詳細を内部で検討中のところもある。未適用の県の中には、適用の意向は持ちながら実際の運用方法が分からずに戸惑っているところも多く、適正な運用の定着にはもう少し時間がかかりそうだ。…国交省の適用基準をそのまま運用するケースが多いが、…詳細な適用基準を策定中のところもある。…内容への理解を促進するため、国交省は…単品スライドに関する発注者向け説明会を開いてきた。ただ、説明会を聞いただけでは適用基準が理解できず、意向はあっても適用に踏み切れない自治体担当者も多いようだ。…政令市でも静岡や新潟、横浜、名古屋の各市などが単品スライドを適用済みだ。…高速道路会社や都市再生機構も適用を表明しており、公共工事での資材高騰への対応が広がってきた。(『建設工業新聞』2008.07.04)
●「政府は4日、今後おおむね10年間の国土づくりの方向性を示す国土形成計画(全国計画)を閣議決定した。全国を計8の広域ブロックに分け、各地域が自立的な発展に向けてそれぞれ特色を生かした国土づくりを目指すとしている。全国計画の閣議決定を受けて今後は、各ブロックごとの『広域地方計画』が決定されることになる。…各広域ブロックでは、成長のエンジンとなる都市機能や産業の強化と、各地域が連携して相互補完する仕組みの構築を図るとし、広域ブロックの外に向かっては、東アジア地域との交流・連携や、太平洋、日本海、東シナ海の活用促進などを掲げた。計画の実現に向けては、『東アジアとの円滑な交流・連携』『持続可能な地域の形成』『災害に強いしなやかな国土の形成』『美しい国土の管理と継承』の4つの戦略的目標を提示。…これらの戦略を推進する支店として、『新たな公』を基軸とした地域づくりが必要だと指摘。NPOや企業、行政といった多様な主体が参画した地域サービスの供給促進も打ち出した。」(『建設工業新聞』2008.07.07
●「7日にPTの会合が開かれ、5月に都道府県と受注者に対して行った調査の結果が報告された。…一般競争入札の拡大については47都道府県のうち22団体が対応済みだった。調査結果によると、1年間に落札率は全国平均で2.2ポイント低下。一般競争入札の全面導入時期が早いところほど落札率が低くなる傾向にあった。…落札率と低価格入札については、一般競争拡大との相関関係を認めた。一方、…一般競争の全面導入と倒産割合に『明らかな相関は認められない』とした。むしろ、…『公共事業費の増減と倒産割合に相関が認められる』との見方を示した。だが、受注者に対する調査では、一般競争による影響として『利益率が低下した』『競争性が高まり、なかなか受注できなくなった』『地元企業の受注が難しくなった』などの回答が多く、『受注機会が広がった』という回答は少ない。…今回の調査結果について、PTのメンバーでもある齋藤弘山形県知事は『一般競争や総合評価方式導入の影響にはタイムラグがあり、2〜3年みないと正確な傾向がわからない』との見解を明らかにした。一般競争や総合評価方式は導入からまだ長い時間がたっていないため、企業倒産や工事品質、地元企業の受注確保などへの影響を推し量るには時期尚早との見方だ。」(『建設工業新聞』2008.07.08)

労働・福祉

●建設現場でのアスベスト(石綿)暴露によって肺がん、中皮腫、石綿肺などの健康被害を受けた神奈川県の建設労働者と被害者の遺族43人が30日、国と建材メーカー46社を相手に被害者1人当たり3850万円の賠償を求めて横浜地方裁判所に提訴した。東京、埼玉、千葉の建設労働者と被害者遺族が東京地裁に提訴した訴訟に続き、発がん性など石綿の危険性を知りながら利潤追求を優先しアスベスト含有建材を供給してきた建材メーカーと、その使用を積極的に推進した国の責任を問う。同日横浜で開かれた首都圏建設アスベスト訴訟支援横浜大集会には約900人が参加。(『しんぶん赤旗』2008.07.01より抜粋。)

建設産業・経営

●「全国中小建設業協会(岡本弘会長)は、会員企業の金融機関からの『貸しはがし・貸し渋り実態調査』の結果をまとめた。金融庁は6月に入って中小企業金融円滑化パンフレットを公表するなど資金供給円滑化への取り組みをPRしているが、全中建調査によって地方中小建設業に対して融資引き延ばしや、融資資金を途中で引き上げる『貸しはがし』が依然として行われている実態が浮き彫りになった格好だ。…建設業に対する金融機関の融資姿勢の変化は昨年から、『地銀合併や(金融庁の)検査を受ける金融機関は確実に融資姿勢が厳しくなっている』(県建設業協会会長)ことが指摘されている。…全中建は調査結果を金融庁に提出したほか今後、予定している要望に、『金融機関は事業活動に支障があるような貸し渋り・貸しはがしをなくす』ことを盛り込む予定。」(『建設通信新聞』2008.07.02)
●「熊谷組は8月をメドにパート労働者などを正社員に登用する制度をはじめる。大手の総合建設会社(ゼネコン)では初の取り組みという。現在約160人いるパートなど非正社員のうち30人前後が正社員になる見通し。設計など専門技術者も含まれており、作業環境を改善することで優秀な社員を確保する狙いがある。全社員の6%にあたるパート労働者120人、準社員20人、派遣社員20人を対象に7月末まで募集。登用には3年以上の勤務経験があるほか、支店長など所属部門のトップの推薦や登用試験をクリアするなど一定の基準を設ける。…給与体系が変わるため固定費として年間1000万-1500万程度を上積みする。パート時より年収は増え、既存の正社員との給与格差は無いという。…建設現場では作業員の高齢化などを背景に人手不足が深刻化している。ゼネコン各社は経験豊富な人材を確保するため中途採用枠を増やしているが、パート社員の中には発注業務に精通するなど現場運営に不可欠な人材も多いという。正社員に登用することで人手不足の一助にする考えだ。」(『日本経済新聞』2008.07.05)
●「建設業の倒産に歯止めがかからない。8日公表された、東京商工リサーチ、帝国データバンクの『2008年上半期(1-6月)建設業倒産』でも件数増加が顕著になった。公共工事を中心とした建設市場縮小に加え、金融機関の貸し出し額減少や1カ月間の道路特定財源の暫定税率失効が市場縮小に拍車をかけたことが大きな要因。建設業の大半を占める中小企業の景況感の悪化も拡大しており、厳しさも一層増している。…ことしに入って都道府県建設業協会会長会社や幹部企業など地方建設業界で老舗と言われる地場大手ゼネコンなどが相次いで破たんし、今春以降、自民党内でも…地方建設業の苦境が問題視されていた。企業破たんと先行きの景況感悪化の要因は、市場縮小と競争激化に加え、『建築用鋼材価格の上昇で経営環境は一層厳しさを増している』(東京商工リサーチ)ほか、金融機関の建設業向け融資残高の減少が全国各地で顕著になっていることもある。…金融機関の融資姿勢が厳格化した背景には、昨年10月からスタートした信用保証協会の保証制度改正によって、保証協会の100%保証が80%保証に変わり、金融機関が20%分のリスクを負うことになったことのほか、『公共事業削減を背景に貸し倒れ懸念で査定が厳格化しているのではない』(東京商工リサーチ)との分析もあり、今後の建設業向け貸出残高の伸びは鈍くなるとの見方も広がっている。」(『建設通信新聞』2008.07.09)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「群馬県内の分譲マンションが、バブル崩壊後のデベロッパーの撤退、投げ売りや投資マンション化の影響で管理水準が著しく低下し、一部で‘スラム化’が進行するなど問題が深刻化していることが分かった。県内分譲マンションの実態を研究している松本恭治高崎健康福祉大学教授がこのほど、都内で行った講演『21世紀のマンション居住の展望』でその実態が報告された。講演で松本氏は、『北関東地域(茨城・栃木・群馬)は、都内のマンション建設が行き詰まると業者が進出する傾向にある。しかし、地元に恒常的なマンション需要はないため1、2棟建設して撤退する業者が多く、大半のマンションは、全国展開型の業者による進出・撤退の繰り返しで蓄積されたものだ』と分析した。90年代のバブル崩壊直後は、竣工物件が売れず、投げ売り、投資マンション化、工事・販売途中での業者倒産、撤退が相次いだことについては『業者が、100戸のうち9割を保有し賃貸化した例もある。また、売れ残り物件を大都市居住のサラリーマン向けに投資物件化した場合、当初から管理組合の機能が弱く、投資の失敗から滞納も多くなる。業者の倒産で40戸のうち、20戸が1戸5万から10万円で工場経営者に売却された例もあった(現在は外国人労働者用の宿舎に)』と市場の混乱ぶりを指摘。…『全戸空き家化したマンションが2カ所あるが、1カ所は20戸の管理組合が崩壊し、電気・水・エレベーターが止まり、玄関口は転居した人が残したごみの山ができている。最近6年間で10戸が競売となったが落札は1件だけ。もう1カ所は、14戸のマンションで数年前まで満室だったが、アスベスト使用が発覚し、全員転居した。開発業者はいずれも倒産している』とマンションスラム化の例を報告。このほか、前橋、高崎、伊勢崎、太田の各市内で同様の生々しい実例が多数紹介された。」(『建設工業新聞』2008.07.04)

その他

● 地球温暖化対策として注目されている再生可能エネルギーの1つ、風力発電をドイツ政府が大幅に増やす計画が6日、明らかになった。ドイツのティーフェンゼー運輸・建設相が同国紙ウェルト日曜版6日付で公表したもの。政府計画によると、同国の北海とバルト海の海上に30のウインドファーム(風力発電機を集中させた風力発電所)を建設、(総発電力1万1千メガワット)を設置する。建設費用は約300億ユーロ(約5兆円)の見込み。ドイツでは地球温暖化対策の1つとして、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスをほとんど発生させない風力、太陽光、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーに力を入れてきた。ドイツは太陽光発電も風力発電も世界一だが、風力発電は陸地における設置がほぼ限界に達し、04年以降の伸び率はにぶっていた。今回の計画は、風力発電機を海上にも展開するというもの。隣国のデンマークでは海上風力発電が普及しており、独政府は技術や環境問題もクリアできるとみている。海上風力発電は地形や建物の障害がなく、より安定した発電が可能とされている。(『しんぶん赤旗』2008.07.08より抜粋。)
● 「米連邦預金保険公社(FDIC)は11日、米地方銀行で住宅ローン大手、インディマック・バンコープの業務停止を発表した。FDICが管財人となり、預金や資産を引き継ぐ。…直ちに金融市場の混乱を招く恐れは小さいものの、住宅ローンで急成長した大型金融機関の破綻は米金融システムへの懸念をさらに強めそうだ。米国で業務停止となった金融機関としては、FDICの資産の調べで1984年のコンチネンタル・イリノイに次ぐ過去2番目の規模。…インディマックはカリフォルニア州が拠点。『オルトA』と呼ばれる住宅ローンで業務を拡大してきた。オルトAは信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)と優良な貸出先の中間にあたる顧客層へのローン。サブプライムと並んで焦げ付きが膨らんでいた。インディマックに関しては経営不安に言及した上院議員の発言で、預金の流出が加速したとの見方も出ている。」(『日本経済新聞』2008.07.12)