情勢の特徴 - 2008年7月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「首都圏のマンション市場の冷え込みが顕著に―。不動産経済研究所が15日発表した08年上半期(1〜6)月の首都圏マンション市場動向によると、新規発売戸数は前年同月比23.8%減の2万1547戸で、首都圏各都県で2けたのマイナスとなった。発売戸数の急減について同社は『改正建築基準法の影響よりも、市場の悪化が原因』と分析している。初月契約率の平均は、同11.3ポイント低い63.9%と、好不調の目安とされる70%を大きく割り込んでおり、上期としては92年以来の60%台となった。1戸当たりの平均価格は4820万円(前年同月比3.7%上昇)、1平方メートル当たりの単価は64.9万円(同5.5%上昇)だった。同社によると、地価上昇に伴う高値での用地取得や建築コストの上昇を背景にマンションの販売価格が上がったために売れ行きが鈍化。在庫が増加して新規供給が抑制されるという悪循環に陥っている。下半期についても、好転の兆しはないとみており、08年の年間発売戸数は約4.9万戸と予測。前回発表(今年1月時点)よりも約5000戸下方修正した。」(『建設工業新聞』2008.07.16)
●「日本企業がアジアで稼ぐ収益構造を鮮明にしている。日本経済新聞社が上場企業の2008年3月期の地域別営業損益を集計したところ、アジア・オセアニア地域の営業利益は前の期比で4割増となり、過去最高を更新。1割減だった米州を初めて上回った。09年3月期も米国経済の減速を新興国需要で補う構図は変わらす、『アジア依存度』は高まりそうだ。地域別営業損益が5期連続で比較可能な3月期決算の上場企業(金融・新興3市場除く)514社を対象に集計。決算短信で開示する所在地別営業利益(内部取引消去前)を使った。国内の営業利益は13兆9071億円と7%増えた。海外営業利益は20%増の6兆9268億円となった。けん引役はアジア・オセアニア地域。…特にアジアがけん引したのは自動車だ。トヨタ自動車とホンダのアジア地域の営業増益額は合計で米地域での減益額を上回った。…インフラ整備需要を取り込んだ総合電機もアジアで伸ばした。…09年3月期もアジア・オセアニアが存在感を強めそう。」(『日本経済新聞』2008.07.24)
●「建設経済研究所は30日、09年度の建設投資見通しを発表した。投資総額は48兆9600億円と予測。08年度比で0.2%増とほぼ横ばいになるとした。公共事業の削減で政府建設投資の減少傾向は続くものの、民間建設投資は引き続き伸びるとみている。09年度の建設投資見通しのうち、政府部門は15兆5700億円(前年度比5.9%減)、民間住宅部門は18兆5800億円(同3.7%増)、民間非住宅部門は14兆8100億円(同2.8%増)と見込んでいる。国・地方とも公共事業の削減が続く政府部門は11年連続で投資が減少する一方、住宅、非住宅部門は景気回復に支えられて伸びが予測されるとした。…同時に発表した08年度の建設投資見通しでは、投資総額の見込みを、4月の前回発表時の50兆5700億円から48兆8500億円(同0.4%増)へと下方修正した。…景気の回復基調は続いているものの、設備投資や住宅着工が当初予想より伸びないとみて予測値を引き下げた。」(『建設工業新聞』2008.07.31)

行政・公共事業・民営化

●「山形県議会は、公共調達制度に関する重要事項を調査審議するための第三者機関『公共調達評議委員会』の設置などを盛り込んだ。『県公共調達基本条例』を6月定例議会で可決した。これを受けて県は、18日付で同条例の施行を予定。早ければ10月にも同委員会を設置する。県レベルで公共調達全般にわたる条例の制定は、全国初という。同条例は、入札契約制度に対する県民の信頼を確保するとともに、県発注工事などの品質および価格の適正化を図るために制定した。基本理念には、談合などの不正行為の排除徹底や、公正な競争の促進、透明性の確保などを挙げている。また、公共調達のうち、特に建設工事などについては、経済活動の基盤となる社会資本を整備する社会経済上重要なサービスと位置づけ、これを担う健全な建設企業などの育成は、県民経済を発展させる上で重要としている。このため、建設工事などの入札契約制度は技術のほか、法令順守状況や環境保全対策、従事者の安全衛生および福利厚生に対する取り組み、社会貢献活動などを適切に評価し、入札契約の過程で反映するべきとしている。さらに、基本理念に基づき、入札参加者の資格の見直しや、制度改善に関する重要事項を調査審議する公共調達評議委員会の新設を盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2008.07.17)
●「国土交通省は16日、主要な工事材料価格の著しい変動で契約金額の変更を可能にする単品スライド条項の運用マニュアル(暫定版)を策定し、各地方整備局などに送付した。申請書の様式や手続きの流れを示したほか、リース契約の鋼材や施工に伴う鋼材のロスも適用対象とすることなど詳細に記載している。国交省は、自治体での適用は『発注者として適切な判断』として自らの判断を求めているものの、国交省のマニュアル待ちとなっているのが実態。今回、マニュアルがまとまったことで、全国の自治体で実適用が広がりそうだ。…暫定版としており、今後の協議事例を踏まえ、随時追加・修正する予定だ。対象材料は、鋼材がH形鋼、異形棒鋼、厚板、鋼矢板、鋼管抗、PC鋼線、ライナープレート、防護柵、鉄鋼2次製品、ガードレール、スクラップで、燃料油が軽油、混合油、重油、灯油。」(『建設通信新聞』2008.07.17)
●「東京都と千葉、神奈川両県は23日に開いた羽田空港の国際化に関する分科会で、国が示した羽田、成田両空港の国際線機能の拡充計画に大筋で同意した。都などが羽田の国際化を強く求めた結果、国の当初案より国際線の本数を倍増させる方向が鮮明になった。会合で都や神奈川県はアジアでのハブ空港の地位を巡る競争を視野に、羽田を発着する国際線の便数や就航都市をさらに増やすよう要求。国側も2010年10月の羽田再拡張後に、国内・国際線の発着枠の配分で配慮する姿勢を示した。…千葉県内では羽田の国際化で地元にある成田空港の地位が低下しかねないとの懸念が強い。千葉県は冬柴プランに『反対しない』と述べたが、成田・羽田空港を結ぶアクセス拡充や成田地域の街づくり、騒音対策などに国が協力するよう念を押した。」(『日本経済新聞』2008.07.24)
●「国土交通省は、地域を代表する建設会社の倒産が全国で相次いでいることから、現状把握と対応策の検討に乗りだす。地域ブロックごとに全国建設業協会(全建)傘下の建設業協会や地域の代表企業、地方銀行にヒアリングを行い、倒産が相次いでいる要因や企業の現状認識などを調査。高い技術力を持ち、地域経済の活性化に重要な役割を果たしてきた地元建設会社が健全に発展していける条件整備を検討する方針だ。…小澤建設流通政策審議官は会見で、地方建設業界のこうした現状に懸念を表明。地元建設会社の役割を『地域の活性化に不可欠で、優秀な技術をもって災害に対応したり建機を拠出するなど、いろいろな活動を展開してきた』と評価した上で、『金融・経済情勢に飲み込まれて倒産するなら残念であり、防がなければならない』と述べた。…小澤建設流通政策審議官は、具体策には踏み込まなかったものの、公共工事での一般競争入札の拡大と倒産増の因果関係について、自治体の工事発注で、一般競争入札が拡大したものの総合評価方式の導入が遅れている点を指摘。…自治体でも特別簡易型を中心に総合評価方式の入札を普及させたいとの考えを明らかにした。また、地域の建設会社がさまざまな形で地域に貢献してきた現実を踏まえ、『貢献活動をどう(施策に)取り入れて経営の健全化につなげるかは考えなければならない』とも述べた。」(『建設工業新聞』2008.07.24)

労働・福祉

●千葉県柏市でダンプカーの運転手だった川井正雄さん(66)が仕事中に脳内出血を発症し、労災認定を求めていた事件で、労働保険審査会は7月14日、柏労働基準監督署の不支給決定を取り消し、労災と認める裁決を出した。井川さんは2003年9月に倒れ、労基署に療養・休業補償を申請したが、「手待ち時間」と呼ぶ待機時間を労働密度が低いからといって労働時間と認めず、不支給とされた。審査会は、「手待ち時間」を労働時間だと認め、労災認定基準を上回る時間外労働をしていたとして労災と認定した。弁護団の玉木一成弁護士は、「待機時間を労働時間として認定したことが極めて画期的です」とのべ、「待機時間は、自由な利用が許される休憩時間とはいえず労働時間だと認めたことは、ダンプ運転手全体の問題で同じような状況にある労災認定が受けやすくなった」と報告した。(『しんぶん赤旗』2008.07.23より抜粋)
●厚生労働省の「今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会」(座長・鎌田耕一東洋大学教授)は28日、日雇い派遣の原則禁止など規制強化を盛り込んだ報告書をまとめた。1985年の制定以来、規制緩和が続いてきた労働者派遣法は、抜本改正を求める世論が広がるなかで規制強化へとかじを切らざるをえなくなった。厚労省はこのあと、30日から労働政策審議会で議論し、10月はじめにも法案を国会に提出する予定だ。報告書は、派遣労働は「雇用の安定、待遇の改善、違法派遣への対処で課題がある」と指摘。「常用雇用の代替防止を前提として臨時的・一時的な労働力需給調整システム」の位置づけは維持しつつ、事業規制と労働者保護の両面から対策を講じるべきだとした。日雇い派遣については「労働者保護の観点から禁止すべきである」と指摘。危険度が高い業務などを禁止対象とし、禁止期間は、日雇い派遣に関する厚労省指針が「30日以内」を対象としていることを参考に短期雇用についても禁止するよう要請している。派遣会社をつくってグループ内に派遣するやり方も、正社員を派遣会社に転籍(解雇)させるなど「労働条件の切り下げが行われている」として、派遣割合の上限を設け、解雇後の一定期間は禁じるべきだとしている。(『しんぶん赤旗』2008.07.29より抜粋)
●6月の完全失業率は4.1となった。就業者数が減少しつづける中で、失業率が上昇しており、今後、さらに雇用情勢が悪化することが懸念される。就業者数はこの間、中小・零細業者が経営悪化、倒産に追い込まれることによって、2月以来、自営業主・家族従業者の減少が続いている。6月は前年同月比で40万人減少。減少幅は2003年2月以来の大きさだ。完全失業者数は、前年同月に比べて24万人増加の265万人。3カ月連続の増加。3カ月連続増は2002年10月以来のことだ。このうち、解雇など「勤め先都合」による失業が前年同月比で4万人増加の59万人。「新たに収入が必要だが就職できない人」が8万人増の40万人、「自己都合」は7万人増加の101万人だ。また、厚生労働省が発表した一般職業紹介状況によると、雇用の先行指標とされる新規求人数は、前年同月比で17.9%の大幅な減少となっている。主要産業別では、9カ月ぶりに全業種で新規求人が減少となった。(『しんぶん赤旗』2008.07.30より抜粋)

建設産業・経営

●「大手建設会社が鋼材価格の高騰に対応した建設手法の転換に乗り出した。鉄骨を使う建設構造から鉄筋コンクリート(RC)への転換で耐震性などを維持しつつ鋼材使用量を大幅に減らす戦略。鹿島が今後、倉庫建設での顧客提案を鉄骨造からRC造に全面的に切り替える方針を打ち出したほか、大成建設などはRC造の超高層ビル建設を始める。これにより5-10%の工事費削減をめざし、事業採算の改善を狙う。」(『日本経済新聞』2008.07.19)
●「ゼネコンの労働組合で組織する日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)は、今年の各組合の賃金交渉結果をまとめた。受注競争の激化や資材価格の高騰で各社の利益率が悪化している状況を背景に、交渉を終えたゼネコン各社の給与は、定期昇給は確保したものの、一時金を大きく引き下げるケースが多く、日建協は『年収ベースで前年を下回る水準になった』としている。一方、新規学卒者の給与は、産業間で採用競争が激化していることもあり、大卒初任給を1万円程度引き上げる動きが顕著になった。…一時金を業績と連動させる考えが企業側に定着する中で、厳しい業績にもかかわらず昨年水準を維持したゼネコンもあり、日建協は『賃金の減少による人材の流出を危ぐしているのではないか』と見ている。」(『建設工業新聞』2008.07.22)
●「北海道建設業信用保証、東日本建設業保証、西日本建設業保証は23日、2008年度第1回(4-6月)の建設業景況調査をまとめた。保証事業会社と取引関係にある地方大手建設会社を対象とした調査で、有効回答3010社のうち77%の企業が景気が『悪い』と答え、昨年同期比で11ポイント増加し、地方建設業者の苦境が浮き彫りになった。資金繰りや銀行などの貸し出し傾向でも『厳しい』と答える企業が多い傾向が続いている…受注量減と資材高の中で、銀行の貸出が厳しいことが、地方大手企業のマインドを覚ましている状況だ。」(『建設通信新聞』2008.07.24)
●「日本建設業団体連合会(梅田貞夫会長)は24日、法人会員52社(現会員数は51社)を対象に実施した2007年度の決算状況調査結果を発表した。売上高は前年度比1.6%減、うち完成工事高は1.8%減で、建設投資(6.2%減)に比べて減少率は小幅にとどまったが、完成工事総利益、営業利益、経常利益は1979年の調査開始以来の最低水準を記録し、税引き後の当期利益は3年ぶりの赤字(損失)となった。調査は、法人会員の単体決算を対象に07年4月から08年3月までの本決算を集計。…完成工事高総利益の総額は、3年連続の減少となる23.2%減の6820億円で、受注競争の激化や鋼材など建設資材価格の高騰が影響し、調査開始以来の最低水準となった。完成工事高総利益率も低下傾向に歯止めがかからず、調査開始以来最低だった06年度(6.5%)を大きく下回る5.0%となった。営業利益総額も51%減の1660億円と大幅に減少し、最低水準を記録した。…経常利益総額は45.5%減の1930億円で、営業利益と同様に調査開始来の最低水準だった。」(『建設通信新聞』2008.07.25)
●「日本建設業団体連合会の梅田貞夫会長は…理事会後の会見で…2009年度の予算編成で公共事業費の5%削減が持ち上がっていることに対し、『11年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化するという目標の達成が難しい状況になっている。取れるところから取ろうという考えなのだろうが、そういう考え方には絶対反対』と強調した。その上で『原油価格の高騰は想定外だったろうし、この際、プライマリーバランスの目標年度を2年後退させるといったことが必要なのではないか』と提案した。」(『建設通信新聞』2008.07.25)
●「優良なストック住宅の流通活性化を目的に、ハウスメーカー9社は29日、優良ストック住宅推進協議会を設立した。優良住宅を定義するとともに、査定マニュアルに基づいて、共通の基盤でストック住宅の価値を判断する。査定は構造躯体(スケルトン)と内装、設備(インフィル)に分け、協議会が認定する資格者が実施する。優良ストック住宅は、住宅履歴データを備え、建築後50年以上にわたって点検・補修を実施する制度の対象となる戸建て住宅を認定、『スムストック』のブランド名で普及させる。協議会が認定する『スムストック住宅販売士』が、スケルトンとインフィルに分けて査定する。償却期間は、スケルトン50年、インフィル15年で、償却期間後の残価はそれぞれ10%とし、住宅履歴データに基づいて加減する方式をとる。…協議会には、旭化成ホームズ、住友林業、積水化学工業、積水ハウス、大和ハウス工業、トヨタホーム、パナホーム、三井ホームの9社が参加している。」(『建設通信新聞』2008.07.30)
●「29日、建専連と国土交通省が開いた意見交換会の席上、才賀建専連会長は、ダンピング(過度な安値受注)競争激化による下請けへのしわ寄せが技能労働者への賃金に影響を与えていることへの懸念を示したうえで、…元請けの破たんによる下請けの破たんを防ぐ、新たな連鎖倒産防止策を強く求めた。元請けから下請けへの代金支払いは、通常1カ月程度先となる。そのため、技能労働者への賃金を支払う下請け企業にとって、元請けが破たんすると、仮に元請けに対する債権が回収できても大幅にカットされるケースもある。このことが既に技能労働者に賃金を支払っている下請けにとって、キャッシュフロー(現金収支)の悪化につながることを、才賀建専連会長は『往復ビンタ』と例えた。…元請けの破たんが即キャッシュフローの悪化につながる下請けにとって、今後も予想される公共事業削減と元請けの競争激化による影響懸念に加え、民間発注者と元請けの破たんの可能性が最大のリスクになると言えそうだ。」(『建設通信新聞』2008.07.30)

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