情勢の特徴 - 2008年8月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●国土交通省は二十日、全国主要都市の住宅地、商業地の合計百地点を対象にした地価動向報告を発表した。七月一日時点の地価が三カ月前に比べて下落したのは三十八カ所にのぼり、前回調査(四月一日時点)の九カ所から大幅に増加した。逆に上昇地点は四十一カ所から十三カ所へ急減。前回見られた3%以上の上昇地点は姿を消した。景気「減速」の影響やマンション市況の悪化を背景に、地価の下落傾向が顕著になった。・・・地域別に見てみると、東京、大阪、名古屋、の三大都市圏すべてで下落地点が増えた。地方圏でも下落地点が前回のゼロから三になり、横ばいも増えた。(『しんぶん赤旗』2008.08.22 より抜粋)
●「国土交通省は27日、09年度予算の概算要求をまとめた。一般会計の要求総額は前年度比17.7%増の6兆9372億円で、うち一般公共事業費には5兆9008億円、災害復旧や国土形成事業調整費や災害対策等緊急事業推進費などを含めた公共事業の総額では同18.8%増の6兆2629億円を要求する。「安全・安心で豊かな社会づくり」「地球環境時代に対応した暮らしづくり」「地域の活力と成長力の強化」の三つを重点的に推進する分野に掲げた。財政投融資の要求額は前年度比17.8%減の2兆9953億円。各高速道路会社に対する財政投融資は09年度が最終年度となる・・・安全・安心な社会づくりでは、高度成長期に集中投資した道路、河川、下水道、港湾などの社会資本ストックの長寿命化に4632億円を計上。・・・地球温暖化に伴う災害リスク増大への緊急的対応の強化として1207億円を計上。・・・高齢者が安心して暮らせる住宅セーフティーネットの充実として2686億円を要求。・・・地域の活力と成長力の強化では、幹線道路網の整備と有効活用に1兆1597億円を要求。高速交通ネットワークや都市圏の環状道路の整備を進める。空港や港湾などの物流効率化・流通活性化を通じた地域活性化には956億円を計上。・・・新幹線整備の着工区間には812億円を要求。・・・都市鉄道ネットワークの充実には113億円を計上。」(『建設工業新聞』2008.08.28)
●「国土交通省は、地域の経済・雇用を支える存在でありながら建設投資の減少などで厳しい経営環境に直面している中堅・中小建設会社の経営を支援する緊急対策に乗り出す。個々の建設会社の経営努力を地域活性化や雇用維持に結びつけるため、新分野進出企業が異業種などと連携して行う販路拡大や人材育成を支援し、建設業の『地域総合産業化』を後押しする。併せて、地域の中小建設会社の資金繰りに配慮し、緊急金融円滑化支援事業も実施する方針だ。必要な費用を09年度予算の概算要求に盛り込んだ。…経営支援緊急対策は▽地域総合産業化支援▽緊急金融円滑化支援▽緊急経営相談―の3本柱で構成する。…緊急金融円滑化支援では、金融機関による建設業向け貸出枠が絞り込まれる中、地域の中小建設会社が公共発注者に対し持つ工事請負代金債権の流動化を促進することで、資金繰りの円滑化につなげる。」(『建設工業新聞』2008.08.28)

行政・公共事業・民営化

●「国が道路や河川、ダムを整備する際に、地元が拠出しなければならない「直轄事業負担金」の廃止を求める声が地方で高まっている。大阪府の橋本徹知事らが廃止を求める意向を表明。全国知事会も早急に廃止するよう国に申し入れた。地方へのツケ回しや裏負担といわれ、税金の無駄遣いの温床との指摘もある制度への不満が財政難の中で噴き出した形だ。「負担金は速やかに廃止すべきだ」。七月三十日、総務省。全国知事会の石井正弘総務常任委員長(岡山県知事)は増田寛也総務相に、二〇〇九年度予算編成に向けた提案・要望書を手渡した。・・・直轄事業負担金は地方財政法に基づく制度。地方負担金の割合は事業により異なるが、通常の道路整備なら三分の一となる。国の直轄事業費は年間三兆円を超え、〇八年度の地方財政計画には総額一兆千五百億円の負担金が計上された。・・・地方の不満は何十年も前からくすぶり、近年も知事会が廃止を求める決議をしたり、政府の地方分権改革推進委員会が廃止を提唱したりした。だが、問題の分かりにくさと、自らも無駄遣いを続けてきた自治体への批判が壁となり、アピール力を欠いた感は否めない。」(『日本経済新聞』2008.08.18)
●「国土交通省が4月に低入札調査基準価格を引き上げた効果が、入札参加者の応札状況に表れ始めた。国交省がまとめた調査結果によると、引き上げ後の6月の契約状況は、引き上げ前の3月と比べ、調査基準価格周辺に集まった応札者の入札価格が、5%程度上昇しており、80%未満での応札者の割合も約5%まで減った。国交省は、施工体制確認型総合評価方式などで調査基準を下回れば実質的には受注できないという厳しい姿勢を示しており、基準価格の引き上げとそれに伴った取り組みが適正価格での応札につながっている。・・・すでに中央公共工事契約制度連絡協議会(中央工契連)でも調査基準モデルを改正しており、9月にも立ち上がる発注者協議会などを通じて地方自治体に広がるとみられている。調査基準価格を引き上げて落札率を上昇させることが、建設業界の適正価格での応札にもつながりそうだ。」(『建設通信新聞』2008.08.21)
●「建設系ソフトウエア会社のワイズは、建設業者が受ける経営事項審査で、今年4月に施行された新たな審査基準で再審査を受けた企業の新旧の評点を調査・比較分析した結果をまとめた。それによると、土木一式工事の総合評定値(P点)は、完成工事高100億円以上の企業の平均が84点上昇したのに対し、同5000万円未満の企業の平均は103点下降。大手業者の点数が上がる一方で、小規模業者の点数が下がる傾向が読み取れ、全体として改正前より業者間の点差がつきやすくなったと指摘。特に完工高が5000万円未満の階層の点数の落ち方が大きいことから、今回の基準改正を「国土交通省がポイントの一つとしていた小規模業者間で評点に差がつくような変更だった」と分析している。調査分析では、再審査データが公開された1万2593社の評点について、改正前の評点と改正後の評点を比較した。」(『建設工業新聞』2008.08.27)

労働・福祉

建設産業・経営

●「上場ゼネコン30社の08年4〜6月期(08年度第1四半期)決算が15日までに出そろった。好調だったマンション工事の低迷など景気減速を受けて、半数の企業は前年同期より売上高を落とした。工事採算を示す完成工事総利益(粗利益)率はほとんどの社で前年同期より悪化しており、競争激化や資機材価格の高騰で各社の収益環境が厳しさを増していることをうかがわせている。前年同期との比較では、比較的好調だった大手4社に対して、それ以外の準大手クラスの業績が厳しい。長谷工コーポレーションや銭高組などが前年同期よりも3割近く売上高を減少させたほか、三井住友建設、奥村組、鉄建、飛島建設なども2けたの減収となった。損益面でも大手4社を除いた大半の社が損失を計上するなど明暗を分けた。…工事の採算を示す粗利益率は、大半の社が前年同期を下回り、採算を悪化させている。…収益の先行指標となる受注高も、前年同期を上回ったのは奥村組やナカノフドー建設など数社だけだった。…市場の縮小と、公共工事の入札への総合評価方式の普及で、各社とも受注計画を立てづらくなっている上、原油や資材の価格高騰に景気減速も加わり、今後、業績見通しを見直す企業も出てきそうだ。」(『建設工業新聞』2008.08.18)
●「建設会社の株主構成が変化している。右肩上がりだった海外投資家の比率が過去1年間で減少に転じた。株式持ち合いなどで事業会社比率が高まる一方、金融機関のゼネコン離れは続いている。株主分類上でもっとも比率の高い個人投資家はさらに伸び、存在感を強めた。ただ、事業会社や個人投資家も上昇の勢いは鈍い。外国法人が大規模に取得を進めた2006年度までのようなけん引役が見当たらず、建設会社の株価低迷につながっているようだ。上場建設会社25社を対象に、日刊建設通信新聞社が有価証券報告書で03−07年度末の普通株式所有者状況を集計した。…比率が前年度末に比べて2.0ポイント低下した『金融機関』は、年金や投資信託などの資産管理を専門に扱う信託銀行の所有株式減が響いた。…海外投資家の比率は、過去1年で1.1ポイント減った。株価上昇のけん引役として期待する声がある一方、『短期志向が強い』(あるゼネコン)など警戒感も根強い。…米国の低所得者層向け(サブプライム)住宅ローン問題が深刻化する中、中長期的な視点で保有する株主を確保する工夫が従来以上に問われている。」(『建設通信新聞』2008.08.26)
●「東京商工リサーチがまとめた2008年上半期(1−6月)の建設業の倒産(負債総額1000万円以上)は、前年同期比7.7%増の2120件となった。上半期としては3年連続で前年同期を上回り、04年上半期以来、4年ぶりに2000件を上回った。負債総額は14.9%増の4515億9800万円で、2年続けて前年同期比増となり、3年ぶりに4500億円を超えた。公共工事の削減に建築用鋼材価格の上昇が加わり、建築業者を取り巻く経営環境は一段と厳しさを増した。また、負債額10億円以上の倒産も増加傾向を示し、地場の中堅・有力企業の破たんが目だってきている。…原因別では、受注不振(販売不振)が前年同期比9.9%増の1366件(構成比64.4%)と全体の6割を占めた。次に既往のシワ寄せが同9.4%増の290件(同13.6%)、運転資金の欠乏が同27.6%増の157件(同7.4%)、他社倒産の余波が同16.0%減の105件(同4.9%)と続く。…資本金別では、1000万円以上5000万円未満が前年同期比10.3%増の1013件、100万円以上500万円未満が同3.1%減の495件、個人企業他などが同8.7%増の299件となり、1億円以上は14件だった。…5月(107件)には4年7ヵ月ぶりに月次倒産が400件を上回り、6月(389件)も最近では高井水準で推移した。負債10億円以上の大型倒産が前年同期比16.3%増の71件(前年同期61件)となったように、地場の中堅・有力企業の破たんが目立ってきたのが注目される。地方を中心に業界の疲弊を訴える声が日増しに大きくなっていることから、今後の倒産動向を注視する必要がある。」(『建設通信新聞』2008.08.27)
●「建設・不動産各社が、企業の土地や建物を活用した再開発などのコンサルティング事業に参入する。三菱地所が開発を提案・受注する総合サービスを始めたほか、清水建設や日本土地建物は資産価値を高める支援事業を拡充する。国債会計基準への対応から土地・建物など資産の有効活用をめざす企業が増えている。マンションなど不動産市況の冷え込みで取引が低迷するなか、建設各社は新たな市場を開拓する。…企業側も国際会計基準への対応に伴い、事業用不動産や投資用不動産の収益率をきめ細かく開示することを求められる。企業が『低収益資産』を持ち続けることに対して株主が異議を唱える場面も想定され、『今後、CREマネジメントの需要は拡大する』(中島久彰日本土地建物社長)との声が多い。…企業の保有資産を有効活用する事業に建設・不動産各社が参入するのは、上場企業や不動産投資信託(REIT)の取引額が大幅に落ち込んでいることが背景にある。…不動産や建設各社は、取引企業を丸ごと抱え込みながら、資産の一元管理や評価、設計・開発といった自社がもつノウハウを提供。ビルや土地などの最適な活用手法を指南する。」(『日本経済新聞』2008.08.30)
●「神奈川県や埼玉県など首都圏の生コンクリート協同組合が相次ぎ値上げを表明した。各協組は4月にも値上げを実施したが、セメントや骨材(砂利や砂)などの原料や燃料である軽油の上昇が浸透幅を上回ったためだ。ただ建設需要は低迷が続いており、原燃料高を理由にした値上げ交渉は難航も予想される。値上げを表明したのは神奈川生コンクリート協同組合(横浜市)と埼玉中央生コン協組(さいたま市)。それぞれ来年1月受注分から1立方メートル当たり1500円(15%前後)引き上げる方針。既に12月受注分からの値上げを打ち出している東京地区生コン協組(東京・中央)に追随する。湘南生コン協組(横浜市)、東関東生コン協組(東京・足立)も値上げする方針を固めており、近く需要家に要請する。…需要家は『値上げの背景は理解するが、(現在の需給環境で)簡単には受け入れられる状況にはない』(ゼネコンの資材調達担当)。協組が主張する大幅値上げが浸透するかは不透明感が強い。各協組は値上げと併せてゼネコンなどの需要家に生コンの値決め方式の変更を求める。」(『日本経済新聞』2008.08.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は2009年度の税制改正で財務省に住宅ローン減税の拡充を要望する方針を固めた。断熱材が厚いなど省エネ性能の高い住宅や長期間住める優良な『200年住宅』、二世帯住宅を対象に税優遇を新設。こうした住宅を買った人の住宅ローンについて、所得税の控除対象となる借入限度額を現行の一般住宅向けの2000万円より広げるのが柱。購入にあたっての消費者の負担を軽減し、冷え込む住宅市場をてこ入れする狙いだ。」(『日本経済新聞』2008.08.16)

その他