情勢の特徴 - 2008年9月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「生コンクリートや鉄筋用棒鋼メーカーが値決め方式の見直しをゼネコン(総合建設会社)に求め始めた。現在は物件の契約時に決めた価格を工事終了まで据え置く『同一プロジェクト、同一単価』方式が主流。新方式は原料価格の急速な上昇を連動させて製品価格に反映させる狙いだ。『請負契約』と呼ばれる建設業界の‘伝統’の商習慣に風穴は開くのか。…『施主と一度決めた価格を途中で変更するのは日本ではタブーに近い』。現行方式はゼネコンや施主にとって予算や工期を早い段階で確定することができる利点があるが、世界的には珍しい。…新方式が広く浸透するかどうかは不透明だ。鋼材原料の鉄スクラップは高騰から一転、足元で半値近くまで急反落した。『生コンメーカーは原料が下がったときは本当に製品価格も下げるのか』。最近の素材市況の変調で、ゼネコンの間には疑問視する声が出始めた。現行の値決め方式は価格の上昇局面でも施主は予期せぬコスト高を回避できる。ただ建設費用を抑制しすぎれば、『不正な手段』でのコスト削減を生じさせる‘温床’になりかねない。『変動するコストを誰がどのように負担すべきなのか』。建設業界の関係者すべてに突きつけられた課題にまだ答えは出ていない。」(『日本経済新聞』2008.09.06)
●「政府が8月29日に打ち出した緊急総合対策で大きな柱となっていた、『中小企業金融対策』について、中小企業庁が10日公表した資金繰り対策で関係省庁の対策が出そろった。金融庁、中企庁は所管する金融機関に対して中小企業への配慮を求めたほか、国土交通省と中企庁が新たな資金繰り対策・既存制度拡充を打ち出しているのが大きな特徴。…金融庁は、2日に中小企業の金融円滑化を金融機関に要請し、その監視を強化することを骨子とした対策を公表。さらに金融庁が金融機関に対して行う今年度の監督方針として、中小・地域金融機関に対しては、きめ細かな融資判断と顧客への説明を求める『中小企業金融円滑化』を柱に据えた。一方、中企庁は自民党が9日に開いた会議で、政府金融機関に対して返済猶予などの配慮要請を行う考えを表明、10日には中企庁として正式に『中小企業対策』を公表した。具体的には、▽原材料価格高騰対応等緊急保証の導入▽セーフティネット貸付の強化▽返済猶予への対応など配慮要請―など資金繰り対策の拡充と、下請事業者保護の強化の2本柱。…新たな債務保証の枠組みを盛り込んだ国交省の地域建設業緊急支援事業が11月にもスタートすることに加え、金融庁や中企庁などの対策が今後、地方建設業界にどのような影響を与えるか関心が集まりそうだ。」(『建設通信新聞』2008.09.12)
●2009年度予算に対する公共事業関係費(国土交通省分)の概算要求額は6兆2629億円。02年度から総額が減らされているもとでも、財界や大企業が求める大敏と大型事業への投資が引き続き「重点化」されているのが特徴だ。「三大都市圏環状道路」や物流拠点と空港、港湾を結ぶアクセス道路整備といった大規模事業に総額1兆1597億円を計上している。…スーパー中枢港湾の整備に738億円(08年度予算の20%増)を要求している。コンテナ船の巨大化に対応した港湾施設の拡充を進めるとしている。政府と財界・業界団体が一体で推進するプロジェクトの1つだ。羽田空港など首都圏の空港整備にも784億円を計上。住民らが反対するダムの建設を維持する姿勢も示している。事業費として八ツ場(やんば)ダム(群馬県)に225億円、無駄な公共事業の典型とされる川辺川ダム(熊本県)に34億円を要求している。大型事業の予算が大幅増で確保される一方で、災害復旧や少子・高齢化対策など暮らしに密着した事業は、伸びが低く抑えられている。(『しんぶん赤旗』2008.09.13より抜粋。)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省の谷口博昭技監は4日に会見し、政府の総合的な経済対策について、契約後の個別資材の急激な価格変動分を請負金額に反映する単品スライド条項の対象品目を『(鋼材と燃料油の)2品目以外にも拡大する』ことを明らかにした。全品目を対象とし、価格上昇要因が明確で、個別協議で認められれば請負金額を変更する。…具体的には、『原材料費の高騰など価格上昇要因が明確な資材について、その価格上昇が工事の請負代金額に大きな影響を及ぼす場合には、発注者と受注者の個別協議に基づいて適用対象とする』とした。…アスファルト合材については、…現時点では『アスファルト合材の価格上昇は、地域によって工事総価に大きな影響を及ぼしている。データ的にも説明できる状況になった』と具体的な資材に言及。アスファルト合材の上昇がみられる地域では、適用される可能性が高い。…全国で唯一、アスファルト合材を単品スライド条項の適用対象品目にしていた長野県では、7月の9400円から8月には1万1000円に上がっており、すでに2件の申請が受注者から出されている。いずれも1割程度、値上がりしており、工事で使用する割合によっては、請負代金額の1%を超える可能性がある。」(『建設通信新聞』2008.09.05)
●「国土交通省は、発注者や業界団体などを対象に行った公共工事設計労務単価に関するアンケート調査の結果をまとめた。それによると、建設労働者の賃金への影響は、設計労務単価よりも各企業の経営状況や労働市場環境の方が大きく、『設計労務単価が最近の労務賃金の低下に影響を与えている』との懸念を否定する内容となった。一方で、労務費調査をめぐるさまざまな指摘もあったことから、同省は5つの論点を整理。『公共工事設計労務単価のあり方検討会』(座長・常田賢一阪大大学院教授)の場で、技能者の労働条件の改善も視野に議論を深める考えだ。…調査結果によると、ほとんどの発注者が労務費積算に設計労務単価を使っていたが、受注者は実行予算の労務費積算に自社単価(自社作成の材工込み単価)を使用する頻度が高く、下請代金の中の労務費相当額の決定には、下請業者からの見積が最大要素となっていることが分かった。直接雇用の建設労働者の賃金改定への影響は、設計労務単価よりも各企業の経営状況や労働市場での人材確保の難易度の方が大きかった。設計労務単価による影響は元請業者で2番目に挙げられたが、下請業者ほど影響は小さかった。…国交省は、今後の論点を▽設計労務費調査などの改善▽積算の適正化▽入札契約の適正化▽元請下請関係の適正化▽労働条件の確保・改善―の5項目に整理した。基本的には『設計労務費調査などの改善』の検討が中心になるが、他の論点も踏まえ、検討会で順次、議論を重ねる。特に建設業行政の立場として、技能者の適正な賃金確保に向けた労働条件の確保・改善に寄与する設計労務費のあり方を探る方針だ。」(『建設工業新聞』2008.09.10)
●「今年3月の知事選で、『9月に川辺川ダムへの賛否を表明する』と公約し当選した、熊本県の蒲島郁夫知事の結論は『計画の白紙撤回』だった。…知事は4月の就任以降、各分野の第一人者による『有識者会議』や流域市町村の首長らの意見聴取を通じ慎重に適否を検討。同会議は8月、『抜本的な治水にはダムが最も有力だが、ダム以外の治水対策もあり得る』とする最終報告をまとめていた。最大受益地の人吉市や建設予定地の相良村のトップも『ダム反対』の意向を表明していた。ただ、既に立ち退きした五木村の住民のようにダム推進派もいる。当初の農業用の利水や発電などの目的はなくなったものの、住民立ち退きや道路整備などすでに約2000億円もの巨額資金が投じられた。今後、治水対策の確立と、地域住民の財産と生活を守る具体策の提示が早急に求められることになる。」(『日本経済新聞』2008.09.11)
●「日本経済新聞社が都府県・政令指定都市の42道路公社が運営する有料道路を調査したところ、約8割の路線で需要予測を下回っていることがわかった。ガソリン高騰による有料道路の利用低迷も重なり、甘い需要見通しをもとに造った道路の借金が膨れあがり、自治体財政を圧迫する恐れも出てきた。調査では全国の148路線(2007年度時点、その後無料開放した路線も含む、県境をまたぐ路線は、公社ごとに集計)のうち、117路線で需要予測を下回った。交通量が計画の50%未満の有料道路が33路線あり、20%未満も6路線あった。…道路公社の有料道路は、国や金融機関から資金を借り、利用者から通行料をとって返済に充てる。原則として開通から30年後に借金を返済して無料開放する仕組みだ。…計画交通量を前提に事業計画を作るため、交通量が計画を割れば、無料開放の際に多大な未償還金が残る。これが『負の遺産』として自治体財政を圧迫する要因になる。調査で『税金の投入をせずに償還を終え、予定通り無料開放できるか』と聞くと『できない』との回答は15路線あった。…調査によると、道路建設や健全経営に対する公社独自の点検・評価委員を設けているところは11公社だけ。自治体の厳しい財政状態が続く中で、チェック体制の強化が求められる。」(『日本経済新聞』2008.09.15)

労働・福祉

●燃油下げろ、賃金単価上げろ。政治の責任で建設不況打開を―。首都圏の建設関連労働者の労働組合は12日、原油や資材価格の高騰による生活危機を突破しようと、東京・日比谷公園野外音楽堂で決起集会を開き、銀座へデモ行進した。主催者あいさつした東京土建一般労働組合の巻田幸正委員長は、建築基準法改定の影響で住宅着工が落ち込んだ上に、金融機関の貸し渋りや原油、資材価格の高騰が追いうちをかけていると指摘。「建設業は戦後最大の危機にある。要求実現のため、政府、地方に働きかけを強めよう」とよびかけた。集会は、首都圏の土建組合や、建交労、全建労など官民の労組が共同して構成する実行委員会が主催。@建設資材高騰の規制A燃料、物価の引き下げB中小業者への発注増C下請けたたきの防止、適正賃金・単価の確保D公共工事の労務単価引き上げ―などの要求を掲げた。(『しんぶん赤旗』2008.09.13より抜粋。)

建設産業・経営

●「政府の総合的な経済対策のうち、国土交通省が新しく創設する中小・中堅建設業向けの金融支援策のスキームが明らかになった。地域建設会社が保有している公共工事の請負代金債権を基に、事業協同組合か民間事業者が建設業振興基金から債務保証を得て金融機関から融資を受け、元請企業に転貸融資する。同じ債権の一部について保証事業会社が債務保証する仕組みによって、地域建設業者の信用力を金融機関に対するメッセージとしたい考えだ。枠組みは、11月ごろから活用できるように手続きを進める。…谷垣禎一国交相は閣僚会議終了後、記者団に対し、『(国交省が求めていた対策は)99%ぐらいは入っていると思う』とし、『原油価格高騰など対応に困っている企業、業界に対して、ある程度即効性のある手だてをしなければならない』と述べた。」(『建設通信新聞』2008.09.01)
●「秋田県建設業協会(菅原三朗会長)は8月29日、秋田県の西村哲男副知事に対し、最低制限価格・低入札価格調査制度の運用見直しなど4項目を骨子とした『入札契約制度改革提案書』を提出した。…建設工事の実態を関係機関、県民などに公表することで、地元建設企業が置かれている状況への理解促進をてこに、入札・契約制度改革の実現を目指す。秋田建協が29日、西村副知事に提案したのは、@最低制限価格・低入札価格調査制度の運用見直しA予定価格の事前公表見直しB入札・契約制度の抜本的見直しC対等で透明性の高い施工管理システムの構築―の4項目。提案の背景には、『秋田県建設工事コスト調査』で会員企業が2007年度に受注した県発注工事の半数以上が赤字工事なるなど、工事ベースで利益確保できない環境に追い込まれている実態がある。」(『建設通信新聞』2008.09.01)
●「不動産業の景況感がこの1年間で大幅に悪化していることが、民間調査会社の調べで分かった。同社がまとめた今年8月の景気動向調査によると、景気が『良い』と答えた企業の割合から『悪い』と答えた企業の割合を引いた景気動向指数(景気DI)は、不動産業では25.2と02年5月の調査開始以来、最低となった。07年8月(51.0)の半分以下で、同社は『不動産バブルの崩壊が顕著』と指摘している。…調査では不動産業者から『金融機関の融資引き締めで資金繰りが悪化。原価高で採算も悪化し、負の連鎖が始まっている』(不動産売買)との声も。不動産の業況悪化は、マンション建築分野に注力しているゼネコンの業績にも波及。同社は『不動産の落ち込みが建設業にさらに追い打ちを掛ける』とみている。」(『建設工業新聞』2008.09.04)
●「中堅・中小建設業の破たんがこの数年の減少傾向から一転して異例のペースで急増している。東京商工リサーチの調査では、倒産件数が2008年1月から8月まで8か月連続して前年同月比を上回ったほか、負債総額も暦年ベースで見ると8月累計(08年1-8月)時点で06年計、07年計を上回った。8月に入っても負債額が大きい中堅建設業と地場大手企業の破たんが相次いだことで、平均負債額が高いのも大きな特徴だ。…負債総額も…3ヵ月連続して負債総額1000億円を上回った。…3ヵ月連続して負債総額が1000億円を超えたのは、公共工事市場縮小傾向に加え、4月の1ヵ月間、道路特定財源の暫定税率執行による工事発注が遅れたことによる資金繰り悪化のほか、不動産業の資金繰り悪化による破たんが、中堅建設業や地場大手建設業にも影響したことがある。…地方建設業界からは、『昨年から金融機関の融資姿勢が厳しくなった』『改正建築基準法施行で建築着工が遅れている』などの声のほか、『取引先の不動業の破たんに戦々恐々としている』など景況感悪化と先行き不安感の深まりへの懸念が拡大していた。東京商工リサーチは今後の見通しについて、『建設業の景況悪化に歯止めがかからず、倒産の増加傾向は今後も続く』と分析している。」(『建設通信新聞』2008.09.09)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東京都内の自治体が実施する民間住宅の耐震改修への助成の利用が伸び悩んでいる。首都圏直下型の地震に備え手厚い制度を設けている自治体が多いが、助成実績がゼロという制度もある。老朽化した木造住宅に住む高齢者らが自己負担に二の足を踏んでいることや、マンション住民の合意形成が難しいことが背景にある。各自治体は住宅の耐震化を促すため補助制度の周知を急いでいる。…助成制度の利用が伸び悩んでいる背景には、自己負担への抵抗感がある。老朽化した木造住宅は高齢者世帯が多いため、『耐震診断で危険性を認識しても経済的な負担に二の足を踏む世帯が多い』(世田谷区建築調整課)。同区の助成の上限は100万円だが、木造住宅の改修には200万円から300万円かかる。マンションの改修は建物の規模が大きいため改修費用が膨らみ、住民の合意形成がさらに難しくなっている。助成制度の周知不足も利用が広がらない一因になっている。助成制度の利用を促すため補助を拡充する動きも出ている。」(『日本経済新聞』2008.09.02)

その他