情勢の特徴 - 2008年9月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省が18日発表した2008年の基準地価(7月1日時点)は、全国の全用途平均で前年に比べて1.2%下落して、07年より下げ幅が広がった。東京、大阪、名古屋の三大都市圏平均では上昇幅が縮小した。米サブプライムローン問題の影響で、金融機関が減少。景気の低迷で企業や個人の土地取得の動きも鈍っている。昨年大幅に上昇した都心部でも下落地点が出るなど、地価の低迷が鮮明になってきた。全国の基準地価のマイナスは17年連続。03年の5.6%下落を底に下げ幅が縮小していたが、今年は07年の0.5%下落から下げ幅を広げた。昨年16年ぶりに上昇に転じた全国の商業地が今年は0.8%マイナスとなったほか、住宅地の下げ幅も5年ぶりに拡大した。特に昨年5.1%上昇した三大都市圏の伸びが1.7%となり、減速が目立つ。三大都市圏の上昇は3年連続だが、景気の低迷で不動産を買い控える傾向が出ている。…地方圏では住宅地が2.1%下落、商業地は2.5%下落。仙台市など一部の地域中核都市や、積極的な企業誘致に成功した地域では上昇した地点があるものの、景気低迷と人口減少などが要因となって、全体としての地価下落に歯止めはかかっていない。」(『日本経済新聞』2008.09.19)
●「不動産投資信託(REIT)が4-9月に、投資口(株式に相当)発行に伴って調達した金額は約1600億円と前年同期比で44%減る見通しだ。…東京証券取引所などに上場するREIT42銘柄の公募増資額は約690億円。野村不動産オフィスファンド投資法人など3件にとどまり、前年同期の8件から減った。大和ハウス工業系REITが上昇承認を得た後に取りやめ産業ファンド投資法人は上場済みREITとして初めて公募増資を中止した。背景にあるのが相場低迷。世界的な信用収縮や不動産市況の悪化が重なり、東証REIT指数は昨年5月の算出来高値の半分以下に下落。損失が膨らんだ投資家の買い意欲が急速に低下した。また既存投資主が一口利益の希薄化を嫌った結果、増資発表後に売りがかさんで投資口価格が下落。…資金繰りが悪化した新興不動産会社は物件在庫の売却を急いでいる。主要な買い手だったREITの資金調達力の低下が続けば、そうした新興・中小企業の経営環境がさらに厳しくなる恐れもある。」(『日本経済新聞』2008.09.20)
●「国連貿易開発会議(UNCTAD)は24日、2007年の海外直接投資が前年比30%増の1兆8333億ドル(約190兆円)になり、過去最高だったと発表した。米国発の金融危機で足元の投資は減速に転じたが、08年も10%程度の減少にとどまり高水準が続くとみている。企業ごとの海外資産額では、トヨタ自動車が日本勢で初めて上位3社に入った。…07年は先進国向けが前年比33%増と大きく伸びた。…旧ソ連諸国などUNCTADが市場経済に移行中とする国も、豊富な資源への開発投資で50%増と急拡大。中南米などの発展途上国向けも21%増と順調に伸びた。一方、米国は信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)を契機とする金融危機で2%減となった。…08年の海外直接投資は一転して減少する見通しだ。ただ…金融危機がM&Aの機会を提供する場面も多い。UNCTADは『日本など新たな買い手が動き出しており、急激な落ち込みはない』とみる。このため08年の海外直接投資は10%減の1兆6000億ドル程度と予測。予測通りなら過去最高だった07年に次ぐ高水準で、世界経済に与える悪影響は限定的なものになりそうだ。」(『日本経済新聞』2008.09.25)
●「財務省が25日発表した8月の貿易統計速報(通関ベース)では、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支が3240億円の赤字となった。貿易赤字は正月の影響で輸出額が減る1月を除けば、1982年11月以来約26年ぶり。原油や石炭など資源価格が高騰し、輸入額が膨らんだことが主因。対米輸出が前年同月比21.8%もの大幅減となるなど、輸出額の停滞も響いた。…今回の場合、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の深刻化などを受けた世界経済の減速に伴う輸出のもたつきに、資源高が追い討ちをかける構図といえる。輸出総額は7兆559億円となり、前年同月比0.3%増とほぼ横ばいだった。…米国向けは12ヵ月連続で前年を下回り、減少率は比較可能な80年以降で最大となった。…欧州向けも2ヵ月ぶりに前年割れとなった。アジア向け輸出は6.7%増とプラスを確保した。…輸出総額は17.3%増の7兆3799億円と11ヵ月連続で増加。伸び率は3ヵ月連続で2ケタを記録した。…原粗油の輸入量は3.3%減っており、原油の消費量が減る中で、価格の上昇がそれを大きく上回る状態になっている。」(『日本経済新聞』2008.09.25)
●「建設用鋼材の市況二極化が鮮明になってきた。鉄筋に使う棒鋼の需要が先細りする一方で、鉄骨に使うH形鋼は大型物件向けが好調だ。他品目でも需要の強弱が分かれてきた。市中価格は軒並み過去最高値圏にあるが、今後の値動きには格差が出る公算が大きい。…棒鋼の値下がりを見込むゼネコン(総合建設会社)は発注を手控えた。『かいても売り手も様子見に徹し、新規商談は途絶えている』(商社)これに対してH形鋼は大型物件向けの需要が旺盛だ。…鋼材価格は今年前半、原料高の影響で品種に関係なく高騰した。だが『今後は需給を反映した値動きに移行する』(鋼材商社メタルワンの松岡直人専務執役員)との指摘は増えてきた。」(『日本経済新聞』2008.09.26)
●「日本の景気は2002年から6年にわたる戦後最長の回復が途切れ、後退局面に入ったとみられる。資源高と輸出鈍化で収益を圧迫された企業は生産と設備投資を抑え、消費者心理も冷え込んでいる。米国の景気は金融危機の直撃で一段の減速が予想され、新興国経済の足取りも重くなっている。内外需ともけん引役を欠く中で、日本の景気後退は浅くても、低迷が長引く恐れがある。…日本政府はすでに8月の月例経済報告で景気の後退局面入りを認めた。景気を下押しした要因は米景気の悪化をきっかけにした世界経済の同時減速と、資源価格の高騰に伴う日本から海外への所得流出の2つだ。…世界経済の復調しだいでは浅い調整で済む可能性がある。しかし米国経済の先行きには暗雲が広がっている。…しかも経済のグローバル化が進んだ結果、危機の波及スピードは格段に早くなっている。…経済の同時減速は外需頼みで成長してきた日本経済に打撃になる。…企業の減産を受け、設備投資にもかげりが広がっている。法人企業統計の設備投資は前年水準を下回っており、04年から続いた増勢が途切れた。…企業部門の停滞は家計も萎縮させる。春以降、実質賃金が伸び悩む中で生活必需品の値上がりが相次ぎ、消費動向調査の消費者心理は過去最低の水準に落ち込んだ。」(『日本経済新聞』2008.09.29)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省、総務両省は12日、政府が先月末に決定した総合経済対策『安心実現のための緊急総合政策』を踏まえ、公共工事の入札で予定価格の事前公表を取りやめることなどを求める緊急要請をまとめ、地方自治体に通知した。予定価格の事前公表は、ダンピング受注を助長するといった弊害がかねて指摘されてきたが、自治体を中心に依然として実施されているケースが多いため、事後公表への意向をあらためて求めた。公共事業の前払金制度の適切な運用や、最低制限価格の適切な見直しなども盛り込んだ。今回の通知は、建設業の疲弊への対応を主眼としており、こうした観点からの緊急要請は初めて。国交省は『産業新興という視点が必要。発注者は考え方を変えてもらいたい』(谷脇暁総合政策局建設業課長)としている。…予定価格の公表については、…国交省のまとめでは、都道府県で約8割、全自治体では約6割が事前公表を続けている。…通知は、各都道府県と政令指定都市に対して行い、都道府県には管内の市区町村に対する周知徹底を併せて求めた。国交省は、関係業界団体にも通知内容を周知する。」(『建設工業新聞』2008.09.16)
●「東京都の石原慎太郎知事は18日、京浜三港(東京港、横浜港、川崎港)の入港料の2009年4月の一元化について『(従来の港湾管理体制では)変化の激しい国際競争に負けてしまう』と、一体運営による合理化を通じ、京浜三港の国際競争力を高める考えを示した。都と両市は09年度中に、一体運営を加速するために工程表も策定する方針だ。石原知事と中田宏横浜市長、阿部孝夫川崎市長は、一体運営の工程表『京浜港共同ビジョン』の策定のため、ビジョンの内容を議論する官民連携組織『京浜港広域連携推進会議』を11月に立ち上げることも合意した。約500の荷主会社に対する3首長のトップセールスも来年2月に行う…東京都議会と横浜市議会、川崎市議会の議員は同日、京浜三港の連携を推進する超党派議連『京浜広域連携推進議員連盟』を設立した。参加議員は計212人。」(『日本経済新聞』2008.09.19)
●「国土交通省は18日、建設業法違反となる行為などを盛り込んだ『建設業法令遵守ガイドライン』の改訂版を公表した。…改訂版で追加したのは、工期と工期変更に伴う更新契約についての事例。工期については、▽変更が生じた場合、当初契約と同様に変更契約することが必要▽下請けに責任を負う理由がなく、工期が変更され下請け工事費が増加した場合、元請が負担する▽変更に伴う費用増を下請けに一方的に負担させることは法令違反の恐れがある―ことを明記し、適正な元下取引を促している。変更契約の事例では、元請が下請けからの協議に応じず、書面による変更契約を行わなかった場合を違反事例として示し、着工前の書面による適切な変更契約などを求めている。書面による契約締結のうち、当初契約の項目についても内容を充実した。…このほか、法令違反の恐れがある指値発注の事例も拡充。…ガイドラインは…07年6月に策定した。改定は策定後初めて。今後も随時事例を追加し、内容の充実を図る。」(『建設通信新聞』2008.09.19)
●「政府出資の旧公団で民営化された各高速道路で、入札による契約ができない『入札不調』を理由に、応札価格が予定価格を上回っても契約する新たな入札制度の導入が相次いでいる。…25日、阪神高速道路会社は、『工事入札不落札対策』と題した、新たな入札契約制度試行を発表した。これまで総合評価方式で導入していた予定価格(今回の対策で契約制限価格に名称変更)の事前公表を廃止するとともに、予定価格を上回っても契約ができる『契約目安価格による総合評価方式』試行導入が2本柱。…今回、阪神高速が、予定価格を契約目安価格と読み替えて、予定価格を上回っても契約が可能になる新方式を導入したことは、見方を変えれば公共調達の原則だった予定価格の自動落札・上限拘束性から一歩踏み出したことになる。同様の方式は既に、中日本高速道路会社が5月、西日本高速道路会社が7月にそれぞれ導入することを公表していた。…旧公団の民営化によって会計法・予決令の拘束がなくなったことが理由。ただ、公共工事入札契約適正化法などの拘束と会計検査院の検査は受ける。そのため、仮に予定価格を上回った応札者と契約した場合、『契約額の妥当性含め確認・検証していく』(阪神高速)ことになりそうだ。…予定価格を契約目安価格に置き換える新方式を導入したのは、『自らの積算基準を逸脱するわけにはいかない。でも市場価格とはかい離がある』(ある高速道路会社)現実に直面していることが最大の理由。」(『建設通信新聞』2008.09.29)

労働・福祉

●労働政策審議会の労働力需給制度部会は24日、日雇い派遣をはじめ30日以内の短期派遣の原則禁止などを盛り込んだ労働者派遣法見直しの建議をまとめ、舛添要一厚生労働相に提出した。規制緩和が続いてきた同法は制定後初めて規制強化に転じるもので、『使い捨て労働をただし、貧困をなくせ』と求める世論と運動が動かしたもの。厚労省はこれをもとに改正案をまとめるが、国会提出時期は流動的だ。建議は、日雇い派遣は「」社会的に問題ある派遣形態』だとして、通訳など専門性の高い18業務を除いて30日以内の雇用契約を結ぶことを禁止するよう提言した。…しかし、派遣労働を増大させた『登録型派遣』(仕事のある時しか働けない)は何ら規制強化せず、派遣元に常用化の努力義務を課すにとどめた。均等待遇の問題でも派遣先の賃金を考慮要素の1つにとどめ、違法派遣で派遣先に直接雇用義務を課す『みなし雇用』や、マージン(派遣元の手数料)の上限規制も認めなかった。一方で、常用化の促進として、期間の定めのない労働者について派遣先の特定行為を認め、直接雇用契約の申し込み義務を除外した。(『しんぶん赤旗』2008.09.25)
●「建設労働者や職人が加盟する、全国建設労働組合総連合(全建総連、伊藤義彰中央執行委員長)は29日、東京・永田町の社会文化会館で『建設不況打開生活危機突破緊急中央決起集会』を開いた。全建総連が開いた緊急集会では、▽中小・零細企業の地域での仕事づくり支援▽建設資材高騰への対策▽ガソリンの暫定税率廃止―を骨子とした決議を採択、その後デモ・請願行動を行った。首都圏単位、全国組織と相次いで建設系組合が集会を開いた背景には、『2ヵ月以上仕事がない』『(応援の仕事の間)車の中で寝泊りしている』など中小・零細建設業の経営と生活が『崖っぷちの状況』(全建総連の伊藤委員長)にあることが最大の理由。」(『建設通信新聞』2008.09.30)

建設産業・経営

●「2008年に入ってからの地方建設業界の経営環境が過去最悪の状況になりつつある。…全国建設業協会や東日本建設業保証いずれの調査でも、公共工事を主体とする企業倒産が過去最悪のペースで進んでいることが浮き彫りになった。全国建設業教会がまとめた、08年上半期に当たる6月期(08年1-6月)の会員企業倒産件数の累計は、調査開始以来2番目に高かった前年と比べ同期比で31.7%増の274件に達した。1995年の調査開始以来最悪だった02年の449件を突破し、500件を超える可能性も高い。…一方、前払い保証事業最大手の東保証が12日公表した8月累計(08年4月8月)の保証実績企業倒産も、年度計で890件という過去最悪を記録した02年度の8月累計件数400件を6件上回る406件を記録した。」(『建設通信新聞』2008.09.16)
●「大手建設会社が鋼材価格の上昇を受け、着工済み建築物の工事費引き上げ交渉に乗り出した。大林組は『新東京タワー』で最大2割程度の値上げを発注者に要請。清水建設や竹中工務店も大規模駅ビルプロジェクトで値上げを求め、工事採算の改善を目指す。鋼材価格は年初めから5割ほど高騰している。企業収益が悪化するなか設備投資の足かせとなり、景気を下押しする可能性もある。…鋼材価格の上昇前に契約を結んで着工していた場合、鋼材費は当初見積りより大幅に上がっている。大規模ビルの工事費に占める鋼材費の割合は約1割とされ、鋼材が5割値上がりすれば、工事費は5%程度、10億円単位で膨らむ計算。建設各社は採算悪化を避けるため工事費引き上げに動き始めた。…国土交通省は6月、公共工事で鋼材費上昇分の一部転嫁を認める『単品スライド条項』の発動を決めた。建設各社は転嫁を進めているが、建設投資の6割以上を占める民間工事でも値上げに動く。値上げ幅は建設会社と発注者との個別交渉で決まる。一部工事ではこの影響で、製造業を中心に企業の設備投資額が上振れし始めている。…国内景気の後退が濃厚になり、企業では工場の新増設先送りなど設備投資計画を修正・凍結する動きがある。今後、建築物の受注が減少したり建設資材費が下落に転じたりした場合、建設会社による工事費引き上げの交渉が難しくなる場面も出てきそうだ。」(『日本経済新聞』2008.09.22)
●「建設会社の9月中間決算は、売上高見込みが会計基準の変更などで若干伸びるが、営業利益率はほぼ横ばいとなる見通しだ。…日刊建設通信新聞社が、上場する3月期決算の建設会社のうち、表中の24.社(単体)を調べた。19日正午までに各社が公表した数値を集計した。売上高予想の合計値は、前年同期に比べて5.4%増の4兆7227億円を見込む。…前年同期に比べて、大手4社はいずれも売り上げが増える一方、残る20社は増加9社、減少11社と拮抗している。営業損益は13社が改善する見通しを立てている。営業利益率は前年同期比0.02ポイント増の0.37%とほぼ変わらない。経常損益は、受取配当金の減少などで前年同期よりも約3割減る。純損益は、大型の特損計上が一巡し、損失額が縮小する見通しだ。ただ、17社が純損失を予想している。…売上高のばらつきに対して販売費および一般管理費は年間を通じて一定のため、建設会社の中間決算は営業損失に陥りやすい。建設会社の業績に影響を与えそうなのが、多発する新興系ディベロッパーなどの破たんだ。建設会社は、銀行からの情報収集や与信管理の強化に取り組んでいるが、債権が現金化するまで気の抜けない状況が続いている。…各社は債権先の破たんに対応し、取引不能や遅延の恐れを公表しているが、金額が確定できず、業績修正に至っていないケースも多い。」(『建設通信新聞』2008.09.22)
●「不動産会社の経営破たんが相次いでいる。…なぜ不動産会社の経営破たんが相次いだのか。一つには、昨夏にサブプライムローン問題が顕在化してから、米系金融機関がファンドへの資金供給を止めた結果、主要な買い手だった外資系金融機関や投資ファンドの間で不動さんの買い控えが起きたことが大きい。…外資系金融機関やファンドが不動産投資を手控え始めた結果、アーバンコーポに代表される通商『カタカナ』新興企業は、開発した不動産の売り先を急に失った。地価の下落で資産価値が目減りしたことも各社の体力を奪った。純資産を『一千億円超保有していた』(房園博行アーバンコーポレイション社長)企業でも不動さんの換金売りができなくなると、すぐ資金繰りに行き詰まった。…分譲マンションを消費者向けに販売した場合、売り切るのには通常は半年から一年かかる。ファンドに直接販売すれば、その間の金利負担をなくせるうえ、モデルルームを設け、営業スタッフを抱えるといった販売経費も節約できる。ファンドが買い続ける間は、進行不動産各社は高い収益を上げることができたのだ。…かつての急成長モデルがここ一年の経済環境の激変に対応できないまま、行き詰まりを見せている。米証券大手リーマン・ブラザーズが経営破綻するなど米国発の金融危機が深刻さを増すなか、今後の日本の不動産投資は一段と冷え込みそうだ。」(『日本経済新聞』2008.09.24)
●「建設業情報管理センター(CIIC)の六波羅昭理事長は、建設工事契約のひな形である現行契約約款について、『片務性是正へ(甲乙問題を仲裁する)第三者機関が必要』との考ええを示した。…『工事請負契約約款をめぐる長い戦い』と題した研究発表として提案した。…1949年の建設業法施行から、翌年の公共工事標準請負契約約款策定以後、幾度にもわたった約款改正を経ても、発注者の優位性に基づく不公正な行為や約款上の片務的問題は是正されていないと指摘した。…発注者の優位性に基づく不公正行為の是正策として、建設業法第19条の5に基づく大臣または知事の是正勧告権を示した。ただ、具体的適用については、『適用基準を定める必要がある』とし、『追加工事の(発注者からの)強要も業法19条の3(不当に低い請負代金の禁止)に該当するかどうかは整理が必要』との考えを示した。六波羅理事長が指摘した業法19条の5は、公共工事で公共発注者が独占禁止法で禁止されている『優越的地位の乱用』に該当し、『特に必要があると認めるとき』に許可行政庁が国土交通相や都道府県知事名で公共発注者に勧告できる規定。いわば独禁法の優越的地位乱用(不公正な取引方法)が事業者を対象にしているため民間工事が対象であることに対し、業法19条の5は公共発注者向けの位置付けだが、適用事例はない。一方、甲乙間の立場が対等ではない契約の片務的課題については、甲乙協議での甲の優越的決定権や完成物引きわたしと代金支払いのタイムラグに問題があると指摘。そのうえで現行の紛争処理制度で、『理屈上はできても発注者を相手にした紛争処理はほとんどない』ことから、『海外では甲乙の間にエンジニアが中立的立場にある』ことを踏まえ、甲乙間の問題を仲裁する『第三者機関創設と、紛争手続きをしやすくする必要がある』と提言した。(『建設通信新聞』2008.09.25)
●「大成建設は25日、2009年3月期の連結最終損益が130億円の赤字(前期は244億円の黒字)になる見通しだと発表した。従来予想は170億円の黒字。資材価格の高騰などを受けて海外土木事業を中心に採算が悪化している。国内取引先の新興不動産会社の破綻などに伴う処理を特別損失として約90億円計上するのも響き、02年3月期以来7期ぶりの最終赤字となる。…総合建設(ゼネコン)大手の中で今期通期の最終損益を赤字予想とするのは大成建が初めて。マンションを中心とした国内の建設市場の冷え込みや、新興不動産会社の破綻、世界的な資材価格の高騰がゼネコンの業績悪化につながってきた格好だ。ただ、大成建では今回の処理などで来期以降は利益を安定的に確保できると判断している。従来予想通り年6円配当は据え置く方針だ。」(『日本経済新聞』2008.09.26)
●「2008年8月の建設業倒産件数は403件となり、2カ月連続の400件超えで倒産の増勢ぶりが目立った。…資本金別では、1億円以上が同500.0%増の12件(前年同月2件)となり、企業規模の大きな倒産増加が注目される。8月の倒産事例では、建設業としては今年最大の大型倒産となった、りんかい日産建設(株)(東京都・負債629億円)や宮崎県トップの地場ゼネコンである(株)志多組が、マンション分譲会社などの倒産による不良債権続発が影響して資金繰りに窮した。また大分の老舗ゼネコンである(株)後藤組も公共工事減少や資材価格高騰の影響を受け法的倒産を申し立てた。こうした大手企業や地場ゼネコンの倒産による関連業種への波及が懸念される。建設業の景況悪化に歯止めがかからず、先行き不安感が一段と深まっていることから倒産の増加傾向は今後も続くとみられる。」(『建設通信新聞』2008.09.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は19日、災害応急対策活動に必要な官庁施設と一般官庁施設の耐震診断結果を発表した。対象1150棟(約122万平方メートル)のうち、建築基準法より厳しい官庁施設独自の耐震基準を満たす施設は914棟(面積ベースで75%)で、震度6強以上の大規模地震で損傷する可能性があるとされる施設は236棟(同25%)だった。このうち耐震性を示す評価値が建築基準法で不適格の1.0に満たないものは229棟、同法では適法だが官庁施設基準を満たしていないものは7棟。同省は耐震化対策を重点的に進めることにしており、建築基準法で不適格の229棟については15年度末までに100%、官庁施設基準に満たない7棟については約9割の対策を完了させたいとしている。」(『建設工業新聞』2008.09.22)

その他