情勢の特徴 - 2008年11月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「世界の不動産投資信託(REIT)市場が急速に縮小している。日米欧など主要国のREITの時価総額は合計で約30兆円と、昨年5月末のピークから7割近く減った。急速な円高もあり、金融危機が深刻化した10月だけで25兆円分が消失した計算。不動産市場への投資マネーの流入減が不動産価格の下落に拍車をかける恐れもある。『信用収縮で現金を手元に確保したい投資家の換金売りが多い』(みずほ証券)。」(『日本経済新聞』2008.11.03)
●「中川昭一財務・金融担当相は7日、閣議後の記者会見で、銀行などの自己資本比率規制を見直し、保有する有価証券の含み損の一部を算入しなくて済むルールを決めたと表明した。2008年12月期から、12年3月期まで適用する。なかでも多くの地域金融機関は株式や債券などの含み損を算入しなくて済むようになり、株価急落が自己資本比率を押し下げる影響を回避できる。銀行の貸し渋りを防ぐ効果もあるとみている。…地銀など国内基準行はこれまで株式や債券などの有価証券の保有に伴って発生した含み益は自己資本に算入せず、含み損はTier1(中核的資本)から差し引くことになっていたが、含み益と同様に算入しないことにする。」(『日本経済新聞』2008.11.07)
●「経済産業省中小企業庁は7日、中小企業の将来における資金需要にこたえることや資金調達の支援を目的に『予約保証制度』を創設することを明らかにした。あらかじめ金融機関と信用保証協会の審査を受け、将来の保証付融資の予約を可能にする。21日から実施する。事実上、企業が金融機関との間で、事前に決めた範囲内で、必要な金額の融資を受けられる「コミットメントライン(特別融資枠)」の中小企業版。……中企庁は、いざという時の資金需要に対応した資金調達手段が中小・小規模企業には不十分で、『黒字倒産』の要因の一つにもなっていることから制度を創設することにした。……昨年導入された責任共有制度(信用保証協会の債務保証割合は8割)の対象だが、500万円までは信用保証協会が100%債務保証する。通常の保証料に0.2%程度上乗せすることで、1年間は予約した金額(上限2000万円)まで融資を受けられる。……今回の予約保証制度が適用されれば、突然の資金ショートによる破たんは避けられる可能性が高い。」(『建設通信新聞』2008.11.10。)
●「ヘッジファンドの運用成績悪化が続いている。米調査会社ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によると、今年1−10月の運用成績はマイナス15.48%にのぼり、1990年の調査開始以来の最低ペースで推移している。一部のヘッジファンドには経営不安説も浮上し、金融不安の新たな火ダネとなりかねないため金融当局は監視体制を強化。……米証券リーマン・ブラザーズ破綻後に金融混乱が世界中に広がった影響で、株式や債券などほとんどの投資で運用成績が悪化。借用収縮を背景に投資家らの資金引き揚げが増加し、投げ売りを余儀なくされていることも響いたとみられる。」(『日本経済新聞』2008.11.12。)
●「不動産経済研究所(東京・新宿)がまとめた10月のマンション市場動向によると、首都圏の発売戸数は前年同月比26.0%減の4240戸で14ヵ月連続で前年実績を割り込んだ。近畿圏も同18.3%減の2164戸。マンション価格の上昇が続いたため、消費者の購買意欲が減退。2008年の首都圏の発売戸数は93年以来15年ぶりに45000戸の大台を割り込む公算が高くなった。
 首都圏の発売戸数が減少したのは、『大型の住宅減税が施行されるまで様子見をするデベロッパーが多かった』(企画調査部)ことが主な理由とみられ、各社が発売戸数を抑制したようだ。売れ行きも依然として鈍く、発売に占める契約戸数の比率である契約率は首都圏が62.5%、近畿圏も62.0%と、いずれも好不調の目安である70%を割り込んだ。」(『日本経済新聞』2008.11.14。)
●「銀行の中小企業向け貸し出しの落ち込みが鮮明になってきた。日銀が13日まとめた国内銀行ベースの9月末の貸出残高は179兆円となり、前年同月末より3.2%減った。減少幅は三年半ぶりの大きさ。米金融危機をきっかけに世界景気の先行きへの懸念が強まり、銀行が融資に一段と慎重になっている。中小企業の間では政府系金融から借りる動きが広がる一方、政府の追加経済対策の早期発動を求める声も強まってきた。」(『日本経済新聞』2008.11.14。)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省が淀川水系で進める大戸川ダム(大津市)の建設計画について大阪府、京都府、滋賀県は中止を求める方針を固めた。…環境への影響や治水効果が低いとの理由に加え、自治体財政の悪化でダムに代わる治水対策の検討を求める。…国交省は30年以内に大戸川ダムを完成させるため、河川整備計画に同ダムを含む淀川水系の4ダム計画を盛り込むことへの同意を3府県に求めていた。だが専門家で構成する京都府の技術検討会が9月に『緊急性が低い』と結論づけていた。知事意見に法的拘束力はないが、3府県の協力が得られなければ国交省は計画の見直しを迫られる可能性が高い。…3府県は今後、大戸川ダムがないことを前提とした治水対策を国に要求していくことになる。」(『日本経済新聞』 2008.11.08。)
●「国土交通省は、住宅瑕疵(かし)担保履行法に基づいた公営住宅の予定価格算定に当たっての考え方をまとめ、都道府県、政令市に通知した。建設業などに対しては、2009年10月l日以降に引き渡される新築住宅に供託、または保険加入による資力確保が義務付けられることから、予定価格への保険費用の上積みを要請。保険費用の算定に当たっては、工事原価に0.45%の『資力確保費用率』を乗じた額を一般管理費に別途加算し、必要経費として適切に反映するよう求めている。」(『建設通信新聞』2008.11.10。)
●「政府・自民党が道州制論議を前倒しする。理念や移行への工程を示す『道州制基本法案』は年内に骨子をまとめ、来年1月召集の次期通常国会に法案を提出する方向で検討する。当初は『1−2年の検討期間を設けて2010−11年に国会提出』と想定していたが、次期衆院選もにらみ麻生内閣の重点政策と位置付けて成立を急ぐ方針だ。…議論の前倒しは麻生太郎首相が道州制の推進論者であることが背景にある。…道州制移行には各省庁などの強い抵抗も予想されるため、調整を前倒しする必要があると判断した。自民党は次期衆院選のマニフェスト(政権公約)でも道州制を看板政策と位置付ける。国の役割は外交、防衛、司法などに限定。公共事業や農業垢興は「道州」、身近な社会福祉や初等教育、水道事業、一般道路の整備は「基礎自治体」が担当する。中央省庁の役割を地方に移譲し、行政機構のスリム化をねらう。民主党の小沢一郎代表は道州制に否定的で、国と300の基礎的自治体からなる『二層制』が持論。」(『日本経済新聞』2008.11.11。)
●「国土交通省は、入札の不調・不落対策として試行している『見積もり活用積算方式』の実施状況をまとめた。2007年度に入札が不調・不落となったため、同方式を採用して再入札した113件(港湾空港関連を除く)のうち、落札となったのは65件だった。65件中実際に参加者の見積もりを採用した41件では、当初の予定価格より見積もりを活用した予定価格の方が、平均で1割程度上昇した。国交省は、予定価格に実勢価格を反映する同方式の試行で『一定の効果が出ている』としているものの、『まだ課題も残っている』との認識を示しており、さらなる不調・不落対策に取り組む考えだ。」(『建設通信新聞』2008.11.13。)
●日本経団連は14日、都道府県を廃止し、2015年に道州制を導入することを求める提言を発表した。提言では、15年に道州制導入とともに、中央省庁を解体・再編すると明記。国の統治機構そのものを相本から見直す「究極の構造改革」と位置づけた。また市町村合併もさらに大規模にすすめ、「十程度の道州と千程度の基礎自治体の体制」をつくることを提起した。…提言では、道州制導入によって、国と地方の公務員大削減と公共投資の「効率化」が可能とし、5兆8483億円の財源を生み出せると試算。「新たな財源」をもとに、道州が道路や港湾などの「インフラの整備を自主的に行う」ことができるとした。…また、道州制によって、現在の都道府県議会議員数(約2800人)を「半数程度、あるいは3分の1にする」などの案も提示。…「道州制推進基本法(仮称)」の制定については、当初予定より一年前倒しして、〇九年の成立を要求。制度の推進を加速させることをうたった。(『しんぶん赤旗』2008.11.15より抜粋。)

労働・福祉

●「改正建築士法で資格が創設される『構造設計1級建築士』と『設備設計1級建築士』の地域分布を、日刊建設工業新聞社が国土交通省のデータを用いて検証したところ、地域によって資格者の業務量にかなりの差が生じる可能性があることが分かった。資格取得のための『見なし講習』の合格者1人当たりの想定対象物件数(年間ベース)を都道府県ごとに比較すると、構造では、最も少ない奈良が1.4棟なのに対し最多の沖縄は12.1棟、設備でも、大半の地域が1〜3棟に収まる中で岩手のように11.0棟という地域があった。…国交省は、資格者の関与が義務付けられる地域ごとの物件数を直近の統計を基に想定。今回、このデータを用いて、各都道府県ごとの構造・設備1級建築士1人当たりの年間該当物件数を算出した。…国交省は『全国ベースでは(資格者は)間に合っているが、地域ごとにアンバランスがあると問題が生じる』(和泉洋人住宅局長)とみて、資格者のあっせんなどを行うサポートセンターを必要に応じて立ち上げていく方針で、09年度予算の概算要求に必要経費を盛り込んでいる。ただ、長期的な視点からは『各地での人材育成が必要』(住宅局建築指導課)としている。」(『建設工業新聞』2008.11.04)
●厚生労働省が7日発表した「就業形態の多様化に関する実態調査」(2007年10月実施)によると、全労働者のうち、契約社員や派遣労働者ら非正社員が占める割合は37.8%で、03年の前回調査より3.2ポイント上昇した。派遣は全労働者の4.7%と前回の2.0%から倍増。非正社員のなかで最も多いパートタイムは22.5%。非正社員を雇う理由(複数回答)では「賃金の節約」が40.8%でトップ。非正社員として働く理由は、「自分の都合の良い時間に働ける」が42.0%で最も多かったものの、派遣の37.3%は「正社員として働ける会社がなかった」と回答した。調査は、従業員5人以上の企業約1万6千社と従業員が対象(有効回答率69.0%)。(『しんぶん赤旗』2008.11.08より抜粋。)

建設産業・経営

●「横浜建設業協会(横建協、工藤次郎会長)と神奈川県建設業協会横浜支部(神建協横浜支部、小俣務支部長)は、横浜市内の有力な建設業者が相次いで倒産や廃業に追い込まれている状況を重く見て、地元建設業に対して緊急総合対策の実施を求める要望書を市に提出した。中小・中堅建設業者の資金繰りを支援する『地域建設業経営強化融資制度』が4日からスタートしたことを受け、横浜市の工事請負代金の債権譲渡を認めるよう求めているのが柱。適正価格での契約を推進するため、予定価格の事前公表廃止や、総合評価落札方式案件での最低制限価格制度の導入なども要望事項に盛り込んだ」(『建設工業新聞』2008.11.06)
●「麻生太郎首相は6日、首相官邸で地方分権改革推進委員会の丹羽宇一郎委員長(伊藤忠商事会長)と会談し、農林水産省の地方農政局と国土交通省の地方整備局を、基本的に廃止する方向で検討するよう指示した。…これを受け、分権委は年内に出す予定の第2次勧告で、地方自治体への権限移譲に向けた出先機関の抜本的な見直し案を打ち出す方針。」(『建設通信新聞』2008.11.07)
●「住宅大手が分譲住宅向けの用地購入を大幅に削減する。首位の積水ハウスは戸建て向けで新規取得の凍結を決めた。…2位の大和ハウス工業も今年度、マンション向けを含めた分譲用地の調達を同4割程度削減する。住宅市場の長期低迷を受けた措置で、供給戸数の絞り込みで販売価格の下落を食い止める狙いもある。大手2社が分譲用地の購入を大幅に減らすのはバブル崩壊直後以来という。同様の動きが住宅各社に広がる可能性がある。建設資材に加え、住宅販売と連動性の高い家電など幅広い業種に影響を与えそうだ。」(『日本経済新聞』2008.11.09)
●「民間信用調査会社の東京商工リサーチが11日発表した倒産集計によると、10月の建設業の倒産は402件(前年同月比3.0%増)で、4ヵ月連続で400件台となった。建設業では新井組、井上工業、山ア建設の上場3社が倒産。不動産不況や金融不安などを背景に、Jリート(不動産投資信託)初の倒産としてニューシティ・レジデンス投資法人が破たんし、ダイナシティなど新興マンション業者の倒産も相次ぐなど不動産業者の業況悪化が波及する形で中堅建設業者を追い込む構図が続いている。」(『建設工業新聞』2008.11.12)
●「大手ゼネコンの採算悪化が下げ止まらない。し烈な国内の受注競争や急激な資材高騰に加え、海外の大型土木工事での損失計上が追い打ちをかけている。12日に開示した上場4社の2008年9月期中間決算で、単体の完成工事総利益(工事粗利)率は、大林組以外の3社が前年同期実績を下回った。清水建設、大成建設は土木の工事粗利が赤字に転じ、鹿島は3.6ポイント減の4.3%に落ち込んだ。通期の09年3月期に期初予想を達成するのは5.0%を見込む大林だけ、残り3社は下方修正し、3-4%台にとどまる見通しだ。」(『建設通信新聞』2008.11.13)

まちづくり・住宅・不動産・環境

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