情勢の特徴 - 2008年11月後半
●来年度から道路特定財源が『一般財源化』されるのに向け、政府・与党内の協議が進むにつれ、さまざまな問題が表面化している。そのひとつが、年内にも策定される『道路中期計画』(2009−13年度)の内容をめぐる問題だ。特定財源が一般財源化されるに伴い、中期計画で総額方式をやめるのは当然のことである。しかし、重要なのは中期計画の中身で、その核心は、道路予算の4割以上を高速道路建設に使っている道路行政を転換するかどうかだ。国交省の09年度予算概算要求では、高速道路建設に、08年度よりも多い計2兆3733億円を要求している。・・・根本には、特定財源の一般財源化にあたり、高速道路建設の予算をどれだけ削減するのかまったく議論されていないことがある。(『しんぶん赤旗』2008.11.18より抜粋。)
●「不動産投資信託(REIT)の値動きを示す東証REIT指数が20日急落した。時価総額上位銘柄を中心にオフィスビル市況の悪化などを嫌気した売りが膨らみ、10月28日に付けた算出来安値を下回る場面もあった。大引けにかけ買い戻されたが、当面は不安定な値動きが続きそうだとの見方が出ている。・・・日本ビルファンド投資法人など主にオフィスビルを運用する大型銘柄が軟調で、指数の重しとなっている。『オフィス賃料など不動産市況の悪化が意識されている』 (大和総研の鳥井裕史アナリスト)」(『日本経済新聞』2008.11.21)
●「国土交通省が21日発表した10月1日時点の全国主要150地点の地価動向で、3カ月前に比べて地価が上昇した地点がなくなった。前回調査(7月1日時点)では地価の上昇地点は13%あったが、その後の米国発の金融危機や国内景気の低迷などで不動産市況が一気に悪化した。・・・全国の150地点中、地価が下落したのは128地点で全体の85%を占め、前回調査の38%より大幅に増えた。国交省は地価下落の主な理由について、国内景気の低迷や国内外の金融環境悪化、不動産市場の冷え込みなどを挙げている。その上でこれらの要因が改善しない限り、地価上昇は望みにくいとの認識を示した。」(『日本経済新聞』2008.11.22)
●「ヘッジファンドの運用成績悪化が続いている。米調査会社ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によると、今年1−10月の運用成績はマイナス15.48%にのぼり、1990年の調査開始以来の最低ペースで推移している。一部のヘッジファンドには経営不安説も浮上し、金融不安の新たな火ダネとなりかねないため金融当局は監視体制を強化。……米証券リーマン・ブラザーズ破綻後に金融混乱が世界中に広がった影響で、株式や債券などほとんどの投資で運用成績が悪化。借用収縮を背景に投資家らの資金引き揚げが増加し、投げ売りを余儀なくされていることも響いたとみられる。」(『日本経済新聞』2008.11.12。)
●「株式を上場する地方銀行87行・グループの2008年9月中間期決算は、連結純利益の合計が約1200億円にとどまり、前年同期から71.6%減った。約3分の1にあたる27行が最終赤字となった。不動産・建設業向けを中心に不良債権処理損失が増加したほか、金融市場の混乱を受けて株式など保有有価証券にからむ損失も膨らんだ。・・・本業のもうけを示す実質業務純益は約6600億円と前年同期比24.5%減少した。上場地銀全体で500億円以上保有していた米リーマン・ブラザーズ債や投資信託の減損損失が大きく響いた。地銀が新たな収益源と位置づけるリテール業務も不振で、株式市場の低迷を背景に金融商品の販売が低迷したため、手数料収入などによる役務取引等利益も約2割減と落ち込んだ。本業が苦戦するなかで、さらなる重荷となったのは不良債権処理だ。・・・そのうえに有価証券の減損処理が収益の足を引っ張った。・・・09年3月適期決算に向けた先行きも不透明だ。」(『日本経済新聞』2008.11.23)
●「全国の市と東京23区のプライマリーバランス(基礎的財政収支)を日本経済新聞が計算したところ、2007年度は87%に当たる702市区で黒字を達成していたことが分かった。黒字額が最も大きかったのは神戸市で784億円。・・・政府は国と地方を合わせたプライマリーバランスを11年度に黒字化する目標を立てている。毎年30兆円近い新規財源債を発行する国は黒字化のメドが立たないが、地方の借金残高はすでに減少に転じている。市区でみても78%に当たる631市区が07年度に地方債残高を減らした。」(『日本経済新聞』2008.11.25)
●「信用組合の上部組織である全国信用協同組合連合会(全信組連)が26日発表した2008年9月中間期業績は最終損益が32億円の赤字だった。前年同期は26億円の黒字。破綻した米リーマン・ブラザーズ債の売却損が響いた。全信組連は自己資本比率の低下を補うため来年1月末までに300億円程度の資本増強を実施する方針だ。全信組連が中間赤字に転落するのは中間期業績の開示を始めた02年度以降で初めて。」(『日本経済新聞』2008.11.26)
●「年末に向けて中小企業を中心に資金繰りが厳しくなるとの見方が強まっている。世界的な金融危機が直撃し、銀行が敵資を絞ってきたためだ。追加経済対策を裏付ける今年度第二次補正予算案の提出先送りも響く。金融庁は銀行の貸し渋り回避へ、中小企業向け融資の姿勢を検査対象に加えて厳しくチェックする方針を決めた。倒産が相次ぎ、銀行が損失拡大で貸し渋りを強め、それが倒産を招く悪循環を断ち切れるかが、景気後退長期化を防ぐカギを握る。金融庁が銀行など金融機関を検査する際の指針として新たに実施するのは、中小企業向け融資が適切に実施されているかどうかのチェック。不良債権を中心とした資産査定の検査などとは別に、中小企業向け融資の実績や融資態度を点検。『貸し渋り』や不当な融資回収の有無を調べる。悪質な場合は行政処分の対象とする。近く実施する検査から本格導入する。」(『日本経済新聞』2008.11.27)
●「米国発の金融危機に端を発した世界的な景気後退を受けて、内需拡大による景気てこ入れ策として積極的に公共事業を行うべきだとの声が建設業界内で高まってきた。日本建設業団体連合会(日建連)の梅田貞夫会長、日本土木工業協会(土工協)など土木4団体の葉山莞児会長は先週、冷え込む景気を刺激するためには公共事業が必要だと相次ぎ発言。葉山氏は21日、会長を務める日本ダム協会のパーティーで『ここ数年言わずにいたが、これからは積極的に言っていく』などと述べ、公共事業の必要性について団体活動を通じて活発に情報発信していく考えを明らかにした。・・・今後、こうした声が国民にどの程度理解され、どのように政策に反映されていくのか、大きな注目点となる。」(『建設工業新聞』2008.11.26)
●「東京都建設局は、今年度から積算業務の一部を民間コンサルタントに委託している。2008年度は35件で試行する予定で、既に24件を契約した。試行結果は、今年度中に検証し、09年度以降の試行に反映させる方針だ。ベテラン職員の大量退職に備えて実施したもので、民間企業に限った同業務の委託は『全国的に珍しい』という。委託内容は、同局が委託用に作成した簡易な設計単価表を使い、直接工事費などを算出する。同局は、委託の成果を踏まえ、予定価格を設定することになる。今年度は、原則として実施設計を委託した企業に積算業務を委託している。」(『建設通信新聞』2008.11.27)
●「東京都国分寺市は、公共事業で労働者の適正な賃金確保などを目的にする公契約条例の制定を目指す。公共工事などで元請業者と下請業者間の契約など、民間事業者間の契約に市が踏み込むことが特徴となる。『調達に関する基本指針』の推進計画に、実現に向けた20施策を盛り込んでいる。条例策定の検討は2009年4月から着手し、10年3月に素案をまとめる。11年度の策定を目指す。施策は可能なものから順次、適用していく。全施策の具体的な運用基準などを09年10月までにまとめ、12年3月までに実施する予定だ。」(『建設通信新聞』2008.11.27)
●「上場ゼネコン各社の08年4〜9月期決算が14日までに出そろった。この数年続く厳しい受注競争の影響を受け、売上高は軒並み前年同期を下回った。年度後半に収益計上が偏る業界特有の事情や、今夏まで続いた資材価格・人件費の高騰などマイナス要因もある中、半数超の企業は前年同期を上回る利益を上げたが、一方、営業赤字を計上した企業も10社超を数えた。相次ぐ新興デベロッパーの破たんも重なり、純損益は期初予想よりも大幅に低下した。景気の先行きに不透明感が増す中、建設市場も一層厳しくなると見込まれ、通期の業績も堅め予想に見直す動きが相次いでいる。」(『建設工業新聞』2008.11.17)
●「マンションの販売低迷が続く中で、ブランドカや営業力で強みを持つ大手不動産が供給抑制に動き始めた。大京が2008年度当初6500戸を計画していた発売戸数を2割減の5200戸に下方修正したのを始め、三井不動産も計画戸数を1割減らした。消費者の購買意欲は大幅に減退しており、売り出す物件を絞り込むことで採算悪化を回避する。」(『日本経済新聞』2008.11.18)
●「日本建設業団体連合会(日建連、梅田貞夫会長)は、経済情勢が厳しさを増す中で都市再生を継続的に進めていくための提言をまとめた。米国から広がった金融危機が日本にも影響を及ぼしている状況を踏まえ、民間主導の都市再生プロジェクトを着実に進める方策として、金融面での公的支援を強化するべきだと指摘。具体例として『都市再生促進税制の適用期限の延長・拡充』などを挙げている。・・・『都市再生事業の継続的かつ着実な実施が内需振興からも重要だ』と強調。事業推進に不可欠な4項目を挙げ、必要な措置を講じるよう求めた。・・・▽成田空港へのアクセス改善▽首都圏3環状道路の整備−など、優先度が高く、大きな波及効果が期待できる事業に予算を重点配分するべきだと指摘。・・・民間による都市再生事業に対する支援も重要だとし、促進税制の期限延長・拡充以外に、民間都市開発推進機構や都市再生ファンドによる支援業務など、民間都市開発事業に関係する金融面の支援を強化するための予算確保も求めている。」(『建設工業新聞』2008.11.20)
●「2009年1−3月に決算(6カ月)を迎える不動産投資信託(REIT)の主要大手5社の業績は、3社が純利益減となる見通しだ。不動産不況が都心のオフィスビルなどの賃料収入に及ぼす影響は大手ではまだ限定的で、全社が増収を維持する。物件取得や簿価以上の売却ができるREITもある。だが資金調達環境の悪化による支払利息の負担増が利益を圧迫する。」(『日本経済新聞』2008.11.22)
●沖縄県の仲井真弘多知事と沖縄市の東門美津子市長は海瀬干潟の埋め立てをめぐり、県と市に公金支出差し止めを命じた那覇地裁判決を不服として、福岡高裁那覇支部に控訴する方針を決定した。 東門市長は27日に記者会見を行い、埋め立て工事を予定している2区域について「第一区域推進、第二区域推進困難」とのこれまでの市の立場を改めて強調。事業計画を見直して継続する必要性があるとして控訴する方針を明らかにした。12月2日に臨時会を開き、市議会の議決を経て控訴する見通し。「埋め立て事業に経済的合理性はない」「県知事、沖縄市長は今後、埋め立て事業の公金を支出してはならない」。那覇地裁(19日)の判決。 「ムダな公共事業」をこれほど明快に断罪した判決に抵抗、埋め立て事業推進に固執する自治体首長の姿勢はあまりにも時代錯誤だ。(『しんぶん赤旗』 2008.11.28より抜粋。)
●「米国の住宅市場の下振れが続いている。物件の値下がりが需要を刺激せず、むしろもっと下がるとみる買い控えによって建設、販売の双方が冷え込む悪循環が起きている。当初は年内にも始まるとの見方があった市況の回復は、来年以降もしばらく見通せない状況だ。米連邦準備理事会(FRB)は25日、住宅ローン担保証券などを買い取る新たな金融対策を発表したが、住宅投資の底上げにどこまで寄与するかは不透明だ。」(『日本経済新聞』2008.11.26)
●「米連邦準備理事会(FRB)は25日、個人向けの信用収縮を和らげるのを目的に、最大で8000億j(約77兆円)に上る新たな金融対策を発表した。ローンを裏付けに発行した証券化商品を買い入れるのが柱。住宅ローン関連で6000億j、自動車、クレジットカード、学資などの消費者ローンと一部の小企業向けローンで2000億jの資金枠をそれぞれ設定した。金融危機の影響で資金調達に苦しむ個人を支援するとともに、金融機関の経営を安定させ個人消費や住宅投資のてこ入れをねらう。」(『日本経済新聞』2008.11.26)
●中南米6カ国でつくる地域機構「米州ボリバル代替構想」(ALBA)の首脳会議が26日、ベネズエラの首都カラカスで開かれた。会議は、米国流の「カジノ資本主義」を批判し、中南米独自の銀行(ALBA銀行)の具体化など金融面での地域協力を強めることを目指す宣言を発表した。 ・・・各国代表は、新興国の意見を反映したIMF改革や金融規制強化など、15日にワシントンで開かれた金融サミットの合意実行を求めるとともに資本主義の限界にも触れた。(『しんぶん赤旗』 2008.11.28より抜粋。)