情勢の特徴 - 2008年12月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は1日、経済情勢の悪化の影響で、年末に向けて建設会社の資金繰りが厳しくなると予想されることから、国交省の新しい融資制度や中小企業庁の保証・貸付制度などの各種資金繰り対策の情報を建設業団体に送付した。あわせて、資金繰り対策実行のための市町村への要請を再徹底するよう地方整備局に指示した。例年の『下請契約及び下請代金支払の適正化並びに施工管理の徹底などについて(盆暮通達)』とは別に対策を通知するのは異例で、厳しい経済情勢下で迎える今年末に向けて、取り組みの周知徹底を図る。」(『建設通信新聞』2008.12.02)
●三大メガバンク(みずほ、三菱UFJ、三井住友)に、りそなを加えた大銀行4グループの中小企業向け貸し出しの減少額が、1年間で約3兆7千億円、2年間で約5兆7千億円にのぼることが、各グループの9月中間決算で分かった。…2年前と比べもっとも多く減らしたのが、みずほフィナンシャルグループ(FC)で、同月末比で2兆8895億円の減少。三菱UFJFGが1兆9480億円、三井住友FGが4658億円、りそなグループが3614億円のそれぞれ減少だった。(『しんぶん赤旗』2008.12.03より抜粋。)
●「企業の収益力が大幅に低下している。財務省が4日発表した2008年7-9月期の法人企業統計は3・4半期連続の減収減益。特に経常利益は前年同期比22.5%減と7年ぶりに大きな減益幅となった。原油高に伴うコスト増に加え、世界的な需要後退を受けた売上高の減少が追い打ちをかけている。米欧発金融危機が深刻化した10月以降、輸出を軸とした需要減は鮮明で、収益の下振れから企業活動の縮小は避けられそうにない。」(『日本経済新聞』2008.12.05)
●「日本経済新聞社が4日までに集計した主要製造業38社の派遣・期間社員の削減数は約2万1000人に達した。非正規社員を中心にした雇用調整が急速に進んでいる。……自動車・部品(17000人)が最多。秋以降、機械・精密(1800人)や電機(1300人)の削減が増えている。製造業大手は派遣などの浸透で雇用全体の3分の1を占めるようになった非正規社員の削減で、世界同時不況を乗り切ろうとしている。しかし一部では雇用調整が正社員にも及ぶ。08年1月から12月1日までに正社員の早期・希望退職を実施した製造業の上場企業は20社、応募者は2841人。年末までにさらに増え年間では「07年の3685人を超える可能性が高い」(東京商工リサーチ)という。」(『日本経済新聞』2008.12.05)
●「政府の09年度予算編成の基本方針が3日に閣議決定され、小泉政権以降の歳出抑制路線を実質的に転換する方向が固まった。削減が続いてきた公共事業費が今後どの程度上積みされるかは不透明だが、11月の金融・世界経済に関する首脳会合宣言を踏まえ、既に各国は次々とインフラ整備による内需拡大政策を打ち出している。シーリング(概算要求基準)とは別枠での財政出動を視野に、与党は5日に雇用対策をまとめるが、1兆円の公共投資には約13万人を超える雇用創出効果があるとの試算もある。……基本方針では、世界的金融危機を打開するための11月の首脳会合宣言を踏まえ、機動的かつ弾力的に内需拡大を図るとの方向も示された。……米国ではかつて、増税なしで社会政策に力を入れようと、インフラ投資を抑制した結果、深刻な国土の荒廃を招いた経験がある。……著書『荒廃するアメリカ』でインフラ投資の削減に警鐘を鳴らした米国の経済学者、パット・チョート氏によると、インフラは目に見えて劣化するわけではなく、表面上は予算の歳出と収支が均衡したように見えたが、『気付かぬうちに長期的費用が生じ、米国経済を弱める結果となった』という。 国際競争力を維持し、『荒廃する日本』を回避するためにも、公共事業のあり方を見直す時期に来ていることは間違いなさそうだ。」(『建設工業新聞』2008.12.05)
●道路特定財源の一般財源化を骨抜き″にしようという動きが政府・与党内で大きな流れとなっている。一般財源化に伴う議論の最大の焦点は、年内にも策定される今後5年問の「道路中期計画」の中身である。11月26日に同省が社会資本整備審議会に提出した「道路の将来交通需要推計」。「中期計画」の基になる同推計は、2020年の車の通行台数を、前回の推計よりも13%引き下げた。一方、同書議会には、新たな「中期計画」の骨子も示された。そこでは「選択と集中」を基本とし、道路施策を特定分野に重点化するとし、その分野として、▽生活に身近な道路▽高速道路の基幹ネットワーク整備−の二つを挙げた。 道路建設を含めた今後10年間の国土計画の方向を定めた「国土形成計画 (全国計画)」(7月閣議決定)は、2万`超の高速道路網をつくり続けることを明記している。同計画に即せば、「中期計画」は、生活道路よりも高速道路網建設により重点化される危険がある。一方、国交省が地方自治体の首長から集めた「道路施策として重点的に取り阻むべき事項」に関するアンケートで、ほとんどの首長が「身近な道路」を一位に挙げている。年間2兆円以上にのぼる高速道路建設予算を抜本的に見直し、真に地方が求めている生活道路や福祉や、教育の分野に回す議論こそ、いま必要だ。」(『しんぶん赤旗』2008.12.08より抜粋。)
●「政府が15日にもまとめる不動産業界向けの緊急対策の概要が判明した。資金繰りに苦しむ中小の不動産開発業者に一社20億円程度を上限にする新しい融資制度を作るほか、不動産投資信託(REIT)向けの新たな融資制度も設ける。金融機関が不動産向け融資に慎重になるなか、運転資金不足で破綻する「黒字倒産」を防ぐ狙い。個人向けには住宅ローンの金利優遇制度を広げる。……政府が不動産業者の救済策に乗り出すのは、健仝な不動産会社やREITが資金繰り難で経営破綻に追い込まれる例が出できたためだ。健全企業の破綻を放置すれば、日大の金融システムにも悪影響が出かねない。米欧の金融危機による信用収縮が政府を異例ともいえる業者救済に突き動かした格好だ。」(『日本経済新聞』2008.12.10)
●「日銀が15日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)がマイナス24となり、2002年3月以来、6年9カ月ぶりの低水準となった。9月の前回調査(マイナス3)から21ポイント下がり、第一次石油危機直後の1975年2月と並ぶ約34年ぶりの悪化幅となった。金融危機によって企業の資金繰りが厳しくなっているほか、雇用や設備にも過剰感が広がっている。」(『日本経済新聞』2008.12.15)
●「中小企業庁が12日に公表した10-12月期の中小企業景況調査で、建設業の景況感がバブル崩壊以降、最悪となったことが分かった。業況判断DI(好転から悪化を引いた指数)、資金繰りDIともに、現行方式で調査を始めた1994年以降、最悪だった98年7-9月期のマイナス幅より拡大した。中小建設業にとって現在は、10年前に問題となった相次ぐ銀行破たんによる金融危機を受けた景況感と資金繰り悪化をさらに上回る環境悪化になっていることを示した格好だ。」(『建設通信新聞』2008.12.15)

行政・公共事業・民営化

●「日本土木工業協会の葉山莞児会長は2日、国土交通省の谷口博昭技監と会談し、高度技術提案型総合評価方式の見直しや高速道路会社でのダンピング(過度な安値受注)防止徹底の指導、技術開発を促進する仕組みの導入などを要望した。これを受け谷口技監は、高度技術提案型総合評価方式で施工体制確認型を導入する考えを示した。2008年度内に一部で試行し、09年度から適用する考えだ。…さらに葉山会長は、公共工事発注での競争が激化して、入札参加者の利益率が厳しい状況にあることや、国際競争力強化のため、技術開発が必要であり、技術開発が進められる仕組みを入札・契約制度で導入するよう要望した。国交省は、大手ゼネコンの国際競争力強化の必要性を認識した上で、中部地方整備局が立ち上げた『建設ICT導入研究会』の取り組みを紹介し、あわせて、技術開発一体型工事発注方式の08年度内の試行に向け検討を進める。」(『建設通信新聞』2008.12.03)/FONT>
●「政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は8日、国の出先機関の統廃合案などを盛り込んだ第2次勧告を麻生太郎首相に提出した。国土交通省の各地方整備局と北海道開発局、農林水産省の各地方農政局など6機関を統合。地域ブロックごとに企画・立案機能を担う『地方振興局(仮称)』と、直轄公共事業の実施機能を担う『地方工務局(仮称)』を設ける案を示した。政府は今後、勧告内容を具体化するための工程表を年度内に策定する方針だ。…現在、これら出先機関で公共工事の発注、管理などの実務を担っている人員は当面、2つの新組織に移すが、将来的には都道府県への委譲も含めて削減を検討するとした。…勧告提出後に記者会見した丹羽委員長は、『北海道開発局は原則として将来的には廃止して北海道庁に統合する。どうしても残さなければならない部分については今後の検討課題とする』とした上で、国の出先機関改革で将来的には約3万5000人の人員を段階的に削減していきたいとの考えを示した。」(『建設工業新聞』2008.12.09)

労働・福祉

建設産業・経営

●「東京商工リサーチがまとめた2008年度上期(4-9月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、2353件で前年同期比15.6%増だった。年度上期としては3年連続しての増加になった。負債総額は7158億0700万円の61.1%増で、04年度上期以来、4年ぶりに5000億円を上回る結果になった。これに伴い平均負債総額も39.4%増の3億0400万円となり、02年度上期以来6年ぶりに3億円を上回っている。…資本金別では、1,000万円以上5,000万円未満が同21.3%増の1,212件、100万円以上500万円未滞が2.8%増の509件、個人企業他が同13.7%増の282件となり、1億円以上は同210.0%増の31件(前年同期10件)に急増した。…年度上半期は上場企業のほか、地方の有力地場ゼネコン、老舗建設会社の倒産も相次いだ。建築業者を取り巻く経営環境は、公共工事削減と建築用鋼材価格の上昇で厳しさを増しているが最近持さらにサブプライムローン問題に端を発した金融・不動産市場の悪化から、マンション分譲・建て売りなど不動産業の倒産が増加傾向にあり、建設会社への波及が懸念されている。加えて金融機関のなかには受注残や受注計画の見通しが立っていないと融資に難色を示すケースもあるという。金融機関の融資姿勢が厳しくなるなかで今後の倒産増加が懸念される。」(『建設通信新聞』2008.12.01)
●「年度上半期は上場企業のほか、地方の有力地場ゼネコン、老舗建設会社の倒産も相次いだ。建築業者を取り巻く経営環境は、公共工事削減と建築用鋼材価格の上昇で厳しさを増しているが最近はさらにサブプライムローン問題に端を発した金融・不動産市場の悪化から、マンション分譲・建て売りなど不動産業の倒産が増加傾向にあり、建設会社への波及が懸念されている。加えて金融機関のなかには受注残や受注計画の見通しが立っていないと融資に難色を示すケースもあるという。金融機関の融資姿勢が厳しくなるなかで今後の倒産増加が懸念される。」(『建設通信新聞』2008.12.01)
●「景気後退が鮮明になる中、内需拡大による景気てこ入れ策として公共事業費の増額を求める声が日増しに強まってきた。日本土木工業協会(土工協)など土木4団体の葉山莞児会長は3日、東京都内で開いた4団体の支部長会議で『公共事業のあり方について大きな政策転換を図る時だ』と指摘、『内需主導型経済のけん引車である公共事業を積極的に発動するのが本筋だ』との考えを強調した。業界内では、葉山会長以外に日本建設業団体連合会(日建連)の梅田貞夫会長や全国建設業協会(全建)の浅沼健一会長も『内需拡大には公共事業費の積み増しが必要』との考えを表明。自民党内でも、公共事業予算削減への反対論が台頭し、小泉政権下で始まった公共事業の縮小に抜本的な転換を迫る流れが広がっている」(『建設工業新聞』2008.12.04)
●「ゼネコン各社の工事採算が、回復の兆しを見せている。11月に上場各社が発表した08年4〜9月期決算で、売り上げ計上した工事の採算を示す単体の完成工事総利益率(粗利)は、3月期決算企業の上位23社中16社が前年同期を上回った。海外での損失によってマイナスの利益率となった大手があったものの、多くは一連の安値受注問題歯止めがかかり、各社とも採算好転の理由に『低採算工事の計上が、前期までにほぼ終わった』と、口をそろえる。通期予想を下方修正する企業が相次いでいるが、前年度実績よりは高めに見ており、長く続いた採算低下傾向もようやく反転しそうだ。…ただ、世界的な景気減速と国内不動産不況の影響は大きく、『今期は利益の出るものを取っているが、来期以降の発注マインドを予測するのは難しい』(土屋達朗フジタ常務執行役員経営本部長)などとし、来期以降の業績に直結する今期の受注量および採算確保に、不透明感も漂っている。」(『建設工業新聞』2008.12.05)
●「マンション市況の悪化が地方を地盤とするゼネコン(総合建設会社)の業績の足かせとなっている。取引先の経済破綻などで債権回収に懸念が生じ、損失処理が膨らんでいるからだ。短期的には市況回復を見込めず、生き残りへの競争は新たな段階に入っている。……地方ゼネコンの業績がマンション市況の悪化に左右されやすくなった背景には公共工事の縮小がある。そこで「公共事業縮小に伴う受注減を補おうとマンション建設に進出する地方ゼネコンが増えた」ところが07年度にマンション市場が減少に転じて以降、かえって損失を被る結果となった。真柄建設、新井組、井上工業など経営破たんした地方ゼネコンはいずれもマンション建設を手がけており、資金繰り悪化の大きな要因となった。……民間建築の落ち込みを補う手段は限られており、結局、公共工事に活路を見出さざるを得ない。もっとも、公共工事では技術力に重点を置いた総合評価方式の導入が進んでおり、「価格だけでなく提案力でも中堅以上のゼネコンと競わなければならない」(準大手証券アナリスト)厳しい状況にある。」(日本経済新聞 2008.12.10)
●「地方中小を含む建設業の疲弊が改めて浮き彫りになった。東日本建設業保証がまとめた『建設業の財務統計指標 2007年度(08年版)決算分析』によると、調査対象企業平均の売上高経常利益率は5年連続の赤字となるマイナス1.03%で、06年度は前年度並みのマイナス0.73%を維持していたが、そこから大きく下降した。東保証は「収益が悪化しているの一言」と指摘し、全建会員企業の倒産件数が1-9月累計時点で年間最多だった02年度を上回り、過去最悪となるなどの現状を考慮すると、09年度も収益の悪化に歯止めはかかりそうにない。」(『建設通信新聞』2008.12.05)

まちづくり・住宅・不動産・環境

その他

● 「米労働省が5日発表した11月の雇用統計 (季節調整済み)によると、非農業部門の雇用者数は前月に比べ53万3000人減少し、第一次石油危機の影響で景気が急激に悪化した1974年12月(60万2000人減)以来、約34年ぶりの大幅な落ち込みとなった。失業率(軍人を除く)も6.7%と前月から0.2ポイント上昇。金融危機が実体経済に波及し、米雇用情勢は急激に厳しさを増している。……雇用者数の内訳は民間部門が54万人減、政府部門が7000人増。製造業(8万5000人減)、建設業(8万2000人減)、小売り(9万1000人減)など主要業種が軒並み不振だった。サービス部門全体で37万人減となり、雇用調整が先行した建設、製造業からサービス業にリストラの波が広がっている。」(『日本経済新聞』2008.12.06)