情勢の特徴 - 2008年12月後半
●「マンション販売の不振が深刻だ。2008年の首都圏の発売戸数は前年比31%減の4万2千戸程度にとどまる見通しとなった。これはバブル崩壊後の1992年以来、16年ぶりの低水準。11月まで15ヶ月連続の前年割れは過去最長。地価や資材価格の上昇などを反映してマンションの発売価格が高止まりしていることが響く。景気の減速感の広がりで、購入に慎重な家庭も増えている。建設、住設、家電など周辺産業にも影響が広がりそうだ。」(『日本経済新聞』2008.12.16)
●「米連邦準備理事会(FRB)は16日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を現在の年1.0%から大幅に引き下げ、年0.0-0.25%にすることを全会一致で決定、即日実施した。米国として史上初めて事実上のゼロ金利政策に踏み込む。同時に長期国債の買い入れ検討なども表明。市場への資金供給量の拡大を金融政策の柱とする量的緩和の導入を正式に決めた。」(『日本経済新聞』2008.12.17)
●「政府の規制改革会議(議長、草刈隆郎日本郵船会長)は22日、麻生政権発足後初めての第3次答申を決定する。改革の柱だった労働分野で、雇用情勢の急激な悪化を受けてこれまでの路線を修正し、労働者保護や政策評価などに軸足を移すのが特徴。…昨年の第2次答申から最も変わるのは労働分野だ。…答申案は雇用情勢の急速な悪化に触れ『労働市場の環境変化を意識した労働者保護政策が必要だ』と労働者保護に異例の言及をした。…昨年の答申にあった『派遣期間の制限、派遣業種の限定の完全撤廃』との提言は消え、政府の雇用対策にある雇用保険の非正規労働者への対象拡大など『労働市場のセーフティーネット』の拡充を明記。労働者派遣制度については、雇用情勢に与える影響を監視すべきだとした。」(日本経済新聞 2008.12.20)
●「金融庁は中小企業の資金需要が高まる年末や年度末を控え、金融機関の融資体制に対する監督や検査を一段と強化する。信用保証協会が返済を保証する『緊急保証制度』を使おうとする企業に金融機関が適切に対応しているかを調査。支店への抜き打ち検査も検討していく。資金を円滑に供給する金融機関の取り組みをチェックし、『貸し渋り』が起こらないようにする。」(『日本経済新聞』2008.12.21)
●「トヨタ自動車は世界の生産体制を抜本的に見直す。2010年3月期の設備投資を今期計画より3割少ない1兆円を下回る水準まで圧縮する。米欧金融危機に端を発した世界的な販売減と円高が直撃、今期の連結営業損益が1500億円の赤字になる見通しになったためだ。国内の製造業でトップの利益を稼いできたトヨタの赤字転落は、外需に依存してきた日本の製造業が転換点を迎えたことを示している。」(『日本経済新聞』2008.12.23)
●「国土交通省関係の2009年度政府予算案は、国費総額が前年度比7.9%増の6兆3573億円となった。行政経費が1.5%増の5677億円。公共事業関係費は8.7%増の5兆7324億円と見かけ上は増加しているものの、道路特定財源の一般財源化で、これまで特別会計に計上されていた地方道路整備臨時交付金相当額が一般会計計上に変更したことにより、4.2%減の5兆0499億円となった。重点課題推進枠で集中豪雨・緊急推進対策224億2300万円などを獲得したものの、前年度の3.1%減からさらに1.1ポイント減少する結果となった。」(『建設通信新聞』2008.12.25)
●「急速な企業業績の悪化が大企業や下請け企業の工場が集まる企業城下町の税収を直撃している。特に自動車、電機など地方景気のけん引役だった輸出型産業の立地する裕福な市町村で法人住民税の落ち込みが目立つ。ホール建設中止など事業削減に動き出しているが、地方景気が冷え込む中、雇用や中小企業支援の好策費が重くのしかかっている。企業城下町を含め、行政サービスの充実を競い合い支出を膨張してきた多くの自治体は事業の抜本的縮小を含め税金を投入すべき事業の見極めを求められている。」(『日本経済新聞』2008.12.27)
●「金融危機の影響で、外資による国内企業買収や日本法人の設立といった対日直接投資に急ブレーキがかかっている。2008年4-10月の直接投資額は前年同期に比べ約4割減少し、08年度は03年度以来5年ぶりに前年実績を下回る見通しとなった。資金面での余力が急減した海外勢が、自国を中心に内向きの投資に傾いているのが背景。」(『日本経済新聞』2008.12.30)
●「2008年の日経平均株価は、30日の大納会の終値が8859円56銭となり、1年間で42%下落した。下落率は1990年の39%を上回り、戦後最大。米国発の金融危機の深刻化で、円相場が一時1j=87円台と13年ぶりの円高水準となるなど市場が混乱。グローバル企業の業績不安につながり、歴史的な株安を記録した。世界経済の後退懸念が強まっており、来年の株式相場も波乱含みとの見方が多い。」(『日本経済新聞』2008.12.31)
●「長野県は、16日に開いた同県建設業協会との『地域を支える建設業検討会議』で、工事コスト調査の結果を踏まえ、予定価格の80-85%とする現行の失格基準価格を改定せず、同価格の偏りを是正するため、計算方法を改定する方針を示した。“赤字受注”を排除する入札を促すことが目的で、予定価格の82.4%相当額以上の応札者を対象に、基本的には応札価格の低い下位8割の業者の価格平均と0.97の掛け率を用いて算定する。このほか、低入札価格調査基準(予定価格の82.5%)以下の落札者には、配置技術者(専任)の増員、契約後確認調査の義務付けを実施するとともに、自ら積算を促す方式を実施する。」(『建設通信新聞』2008.12.17)
●「2008年度の入札契約適正化法に基づく実施状況調査は、これまで国と都道府県、人口5万人以上の市・特別区だった対象を、国、都道府県・政令市、全市区町村に拡大した。一般競争入札の導入が、国・特殊法人のすべて、地方自治体の61.9%に広がる中で、総合評価方式の導入は地方自治体の44.4%で、国土交通省は、『一般競争入札と比較すると不十分』と認識している。予定価格の公表も、都道府県の68.1%がまだ事前公表だけで、今後、調査結果を基に、改善を地方自治体などに求める。」(『建設通信新聞』2008.12.19)
●「国土交通省は、地方整備局や自治体、建設会社を対象に行った『公共工事における総合評価方式の実態調査』の結果をまとめた。発注者、受注者とも同方式の導入効果を認めているものの、発注者は『手続きに伴う時間・事務費用」、受注者は「技術提案内容の予定価格への反映」『技術提案の費用負担』『技術評価結果のばらつき』への問題意識が高かった。『地域精通度や地域貢献度』の評価については、大手と地元建設会社で意見が分かれた。」(『建設工業新聞』2008.12.22)
●「国土交通省は22日、『公共工事設計労務単価のあり方検討会』(座長・常田賢一阪大大学院教授)の6回目の会合の議事概要を明らかにした。9月の第3回会合で整理した五つの論点(設計労務費調査などの改善、積算の適正化、入札契約の適正化、元・下関係の適正化、労働条件の確保・改善)のうち、労働条件の確保・改善について議論した。会合では、厚労省が、▽一部自治体が実施中の女性の積極活用や障害者雇用などに貢献している企業の公共工事入札参加登録の際に加点するといった『ポジティブアクション』を参考に、国交省と自治体が連携してインセンティブを導入する施策を展開できないか▽欧州では建設技能者の横断的な最低賃金を取り決める動きが活発だが、日本の建設業でも技能者の最低賃金を決める制度を検討する必要がある▽基幹技能者の教育訓練にも建設雇用助成金が活用できるようにするべきだ――などの問題提起を行い、これらを引き続き議論していくことを確認した。……国交省は来年2月中旬に開く7回目の会合で、これまでの検討を踏まえたとりまとめ方針と、最終報告書の骨子案を整理する。最終報告書は3月にまとめる予定。」(『建設工業新聞』2008.12.24)
●輸出大企業を先頭に横行する「派遣切り」など非正規労働者の解雇・雇い止めで、来年3月までに職を失う非正規労働者が8万5012人に達することが分かった。厚生労働省が26日、企業からの聞き取り調査の結果を発表した。11月の前回調査の約3万人から1ヶ月で2.8倍に増加した。産業別では製造業が8万1240人で96%と大部分を占め、県別では愛知県が1万509人と最多。自動車・電機など大企業の雇用責任が問われる。雇用形態別では、派遣労働者が5万7300人と大半。このうち、中途解除が2万9451人と過半数であり、依然として遵法解雇が横行し、増加している。(『しんぶん赤旗』2008.12.08より抜粋。)
●厚生労働省は26日、労働者派遣事業所が提出した2007年度事業報告の集計結果を発表した。それによると、派遣労働者数は過去最高の延べ約384万人に上り、前年度比19.6%増加した。正社員から低賃金の派遣社員に置き換える企業が増え、派遣の受け入れ先は約127万件と47.6%増加した。派遣労働者が急増する一方で、事務などの一般的業務で派遣会社が受け取る料金(8時間換算)は平均1万4032円で9.9%減少。労働者の平均賃金(同)も9534円で9.8%減った。減額は、賃金の安い製造業などへの派遣が増えたことが一因となったようだ。(『しんぶん赤旗』2008.12.27より抜粋。)
●「セメント最大手の太平洋セメントは来年4月から予定していたセメント値上げの上げ幅を圧縮する方針を明らかにした。10月に表明した際に30%程度としていた値上げ幅を10-15%に圧縮する。燃料価格が引き上げ発表時から下落に転じたことや、景気の悪化によるセメント需要の落ち込みを織り込んだ。同値幅の値上げを打ち出していた3位の住友大阪セメントも1月中に上げ幅を修正する公算が大きい。」(『日本経済新聞』2008.12.16)
●「建設経済研究所は16日、大手から中堅までの主要ゼネコン39社が対象にした08年度の中間決算分析結果を発表した。…対象企業は、04〜07年度の単体平均売上高が、1兆円超を「大手」(5社)、4000億円超を「準大手A」(5社)、2000億円超を「準大手B」(8社)、1000億円超を「中堅A」(8社)、1000億円未満を「中堅B」(13社)に分類した。…利益率は、大手と準大手Aで大きく低下している。官庁工事では、総合評価方式の導入効果などにより利益率が回復傾向にあるが、民間工事は原材料価格高騰が原因で採算が悪化した。大手と準大手Aでは、海外土木工事で多額の損失が計上されたことも響いた。純損益が黒字だったのは39社中15社だけで、全体では404億円の赤字となった。不動産不況の影響で貸倒損失も大幅に増加している。期初の業績目標値との比較では、全体的に下方修正の傾向にあり、同研究所は『景気悪化や不動産市況の深刻化で、下期はさらに下振れ懸念がある』とみている。」(『建設工業新聞』2008.12.17)
●「国土交通省は19日、『2008年度下請取引実態調査』の結果を公表した。建設工事を下請負人に発注したことのある建設業者1万2754者のうち、建設業法に基づく指導を行う必要がない建設業者は、2・6%の327者にとどまった。建設業法令違反の疑いがある建設会社に対し、19日付で指導票を送付し、不当なしわ寄せをしたとされる建設業者には経済情勢を踏まえた資金繰り対策の観点から、『追加・変更契約の締結』『支払期間』『現金比率』などについて重点的に立ち入り検査する。」(『建設通信新聞』2008.12.22)
●「建設コンサルタント各社が厳しい受注環境にあえいでいる。今春の道路特定財源の暫定税率失効で発注が出遅れた影響が尾を引き、年間の業務発注量が予定より減少。納期の大幅短縮を迫られて労働環境が悪化している業者も多い。さらに発注方式がプロポーザルから総合評価に、指名から公募にシフトする傾向が強まり、安値受注が加速。地方では発注者に無理難題を押し付けられた『請け負け』状態の業者も増えているという。体力勝負の様相を呈してきた業界で今後、再編・淘汰(とうた)の動きが強まる可能性もある。」(『建設工業新聞』2008.12.17)
●「上場企業を含む中国不動産10社が経営再建中の不動産ファンド大手、パシフィックホールディングスに資本参加する方針を固めたことが26日、明らかになった。事実上傘下に収めることで日本市場に参入し、投資利益を追求する。不動産市場では急速な信用収縮が起き、国内や欧米のファンドが資金余力を低下させているが、新たなリスク資金の出し手として中国マネーが浮上してきた。資本参加を決めたのは香港市場に上場する不動産大手、緑城中国控股公司のほか、寧波華瑞房地産開発公司など非上場9社。パシフィックが来年2月末に発行する優先株約470億円をいったん国内の受け皿会社が引き受け、その会社に10社が出資する形をとる。…中国資本が日本の不動産市場に本格参入する初のケースとなる。パシフィックが傘下の上場不動産投資信託(REIT)、私募ファンドなどで運用する9000億円規模の不動産価値を割安と見たようだ。不動産運用のノウハウを吸収する狙いもあるとみられる。」(『日本経済新聞』2008.12.26)
●「世界同時不況を受けて雇用情勢が急速に悪化し、財政出動を含む雇用対策を強化する動きが各国で相次いでいる。…年明け1月20日に発足するオバマ次期政権は雇用創出を最優先に掲げる。オバマ氏は『就任後2年間で250万人』としていた雇用創出目標を300万人に上積み。…雇用対策の柱は『1950年代以来、約半世紀ぶりの規模』(オバマ氏)と説明する公共事業だ。道路や橋の建設・修繕のほか、学校や図書館など公共施設の近代化工事を進める。失業給付の延長・拡充なども盛り込む見通しだ。…独政府の対策は被雇用者への直接支援が主体となる。工場の操業時間短縮などに伴って給与が減った従業員への所得補てんを09年1月から拡充、職業訓練や社会人教育の費用も助成する。…フランスでは、…従業員が10人以下の企業が、…従業員を新規雇用した場合には、企業が負担する社会保障費の一部を国が肩代わりする軽減措置を導入する。…英国では、…失業などで住宅ローンを返済できなくなった場合に最長2年間、返済負担を減免する支援策を09年に導入する方針を表明している。…中国共産党はこのほど開いた『中央農村工作会議』で、出稼ぎ労働者(農民工)の雇用対策を打ち出した。雇用対策を2009年の農村政策の基本方針に定めた。企業を雇用の受け皿としてできる限り活用しつつ、農村に帰った農民工には税の減免措置なども設けて起業を支援する。」(『日本経済新聞』2008.12.30)