情勢の特徴 - 2009年1月前半
●2009年度の公共事業関係予算は、7兆701億円。08年度当初予算比で5.0%の伸びとなった。特別会計に直入されていた地方道路整備臨時交付金相当額が今回、一般会計に計上されたことが増加の要因だ。重点化されたのは、集中豪雨対策や「地方活性化」に向けた交付金などと並び、「成長力強化」をうたうスーパー中枢港湾の整備(620億円・前年度当初比3.2%増)や、羽田空港の再拡張(334億円・同4.6%増)の大型事業だ。…一方で、住宅対策(同4.3%減)、上・下水道(同4.9%減)、農村整備(同26.3%減)、都市公園(同4.9%減)など地方や暮らしに身近な事業は厳しく抑制されている。(『しんぶん赤旗』2009.1.08より抜粋。)
●麻生太郎首相は6日、斉藤鉄夫環境相と会談し、グリーン・ニューディール構想の日本版の策定を指示した。その場で示された素案は、「緑の経済と社会の変革」というスローガンを掲げるものの、中身は▽都道府県などの温暖化防止事業の支援▽省エネ家電、二酸化炭素排出量の少ない自動車や住宅などの普及▽環境対策に取り阻む企業への出資の促進−など、周辺的な措置の羅列にとどまっている。今後、各界の声を集め、3月末ごろをめどにとりまとめるとしている。日本は、2013年以降の温曖化防止の国際協定策定のために20年ごろまでの中期削減目標の提示を求められているが、政府は今日までそれに応じず、早期に表明する用意もないままだ。削減目標が明確でないため、削減目標を達成する方策である再生可能エネルギー普及の目標も事実上ない。素案は、このような政府が直接責任を負うべき根本的な温暖化対策には何も言及していない。(『しんぶん赤旗』2009.1.12より抜粋。)
●「個人マネーが株式や投資信託から、預金など安全資産へのシフトを加速している。定期預金の残高が昨年11月末時点で前年より6%近く伸びる一方、投信は4割ほど減った。金融混乱で家計が保有する株や投信で100兆円を超える評価損が発生。相場の変動で元本が目減りするリスクを再認識した個人は安全志向を強めている。資金調達では大企業も社債などから借り入れにシフトしており、マネーの銀行依存が一段と鮮明になってきた。」(『日本経済新聞』2009.1.13)
●「不動産投資信託(REIT)市場で、2008年に増資(株式に相当する投資口を発行)で調達した金額は約2700億円と前年に比べて47%減ったことが分かった。金融危機で買い手不在の状況が長期化しているためで、公募増資は7月を最後に半年近く途絶えている。新規株式公開(IPO)は初めてゼロになった。」(『日本経済新聞』2009.1.14)
●「日本と米国が毎年、相手国に対し政策改革を求める、『規制改革及び競争政策イニシアティブ』で、2008年規制改革要望として米国が日本に対し……談合への対応として盛り込んだのは、▽調達の利益相反防止▽官製談合排除取り組み改善▽行政措置減免制度の拡大▽調達慣行の改善−−の4項目。……このうち官製談合排除取り組み改善では、『官製談合の事例を摘発する追加措置を含め、官製談合排除の効果を高める措置を08年度末までに実施する』ことを求めている。さらに調達慣行改善では、地方自治体を含め総合評価方式の採用拡大と、談合事件を含む入札慣行に関する苦情受け付け窓口設置などを盛り込んでいる。一方、競争政策全体としては公正取引委員会の審査手続きに言及。具体的には、09年中に必要な措置を行うことを視野に、事後審判制度全体の見直しを盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2009.1.15)
●「国土交通省などがまとめた公共発注機関の入札契約制度の実態調査結果を基に、日刊建設工業新聞社が分析したところ、07年度に市区町村が行った競争入札の平均落札率が、地域によって大きく異なっていることが分かった。平均落札率が低い下位100団体の地域分布をみると、半分近くに当たる46団体が近畿地方に集中。次いで東北地方(13団体)が多かった。都道府県別の分布では、兵庫県内が最も多くなっている。都道府県の発注案件での平均落札率が低い場合には、管内の市区町村の平均落札率も低くなる傾向があることも明らかになった。……国交省は、こうした状況も踏まえ、各発注機関に対し『ダンピング対策を講じるよう、引き続き強力に要請したい』 (総合政策局)としている。」(『建設工業新聞』2009.1.08)
●「文部科学省は、学校施設などにおける吹き付けアスベスト(石綿)の対策状況をフォローアップした調査結果をまとめた。2008年10月21日時点で14万5630の調査対象機関のうち、13万4086機関の調査が完了、調査完了率は92.1%だった。また、アスベストなどの粉じんの飛散により、ばく露の恐れがある室などを保有する機関は56機関で、その総延べ床面積は2万0977平方メートルだった。この56機関は使用禁止などの応急措置を実施済みとなっている。」(『建設通信新聞』2009.1.15)
●「全国的に雇用情勢が悪化する中で、緊急の雇用対策が都道府県で広がっている。全国知事会(会長・麻生渡福岡県知事)が14日に開いた第1回の緊急雇用対策本部会議で示した調査結果によると、雇用対策として中小企業向けの融資制度を拡充・創設した都道府県は29自治体、公共事業の追加・早期発注などの取り組みを実施している都道府県が44自治体に上った。入札契約制度でも、岐阜県が一般競争入札の地域要件で地域内に本店があることを原則としたほか、長崎県が指名競争入札を暫定的に拡大するなど地元企業を優遇する取り組みが目立っている。」(『建設通信新聞』2009.1.15)
●「失職者の宿泊所の提供だけでなく、就職支援も――。全国建設産業教育訓練協会の才賀清二郎会長代行と菅井文明専務理事は7日、厚生労働省を訪問し、同協会が運営する富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)での失職者受け入れを提案……志村幸久職業安定局建設・港湾対策室長、高野浩文職業能力開発育成支援課長に提案の内容について説明した。才賀会長代行は『センターでは宿泊でき、食事もある。さらに就職のための資格も取得できる。また、建設産業専門団体連合会の会員団体を通して傘下企業への就職のあっせんができる。訓練センターにハローワークに出張してきてもらい、建専連とタイアップして取り組めば、就職にもよりプラスになる』と説明した。……志村室長は『国だけでなく、都道府県にも声をかけて、連携を促し、複合的に考える必要もある。ニーズの把握もしなければならない。予算措置を講じて施策を実施していることもあるので、公的な部分とのすりあわせ、申し出に答えられることはどういうことがあるのか検討したい』とし、『いろいろな団体から助けをもらって対策を進めなければならない』と答えた。」(『建設通信新聞』2009.1.8)
●「建設鋼材の需要が大幅減少している。マンションの鉄筋に使う小形棒鋼の2008年11月の出荷量は前年同月比27%減の69万6000トンと、約33年ぶりの低水準となった。景気悪化に先安観が重なり、需要家の買い意欲が冷え込んでいる。ビルや工場の鉄骨に使うH形鋼の11月の出荷量も前年同月比22%減の30万7000トンと、約2年半ぶりの低水準となった。」(『日本経済新聞』2009.1.6)
●「生コンクリートを共同販売する首都圏の生コンクリート協同組合が値上げ前の大量の駆け込み注文に苦慮している。ゼネコン(総合建設会社)からの注文は1年分以上という膨大な量。長年容認していた駆け込み注文の条件を厳格化しようという動きも出始めた。……『三カ月条項』と呼ばれる長年の商慣習は3ヵ月以内に生コンの納入が始まることを条件に値上げ前の旧値での出荷を認める内容だ。……受注が欲しい生コン側がこうした出荷形態を容認してきた面もあるが、原材料が急激に上昇し始めた06年前後から『3ヵ月条項の適用が問題視され始めた』 (神奈川生コンクリート協同組合)。……東京地区協組は3ヵ月条項を認める条件として、具体的な出荷数量を決めるなどの条件見直しに入る。1月中にも見直し案を固め、ゼネコンに申し入れる見通しだ。一方、ゼネコンも建設需要が落ち込む中で受注競争は激しく、採算が急速に悪化している。コスト上昇につながる条件の厳格化には反発の声も上がりそうだ。」(『日本経済新聞』2009.1.07)
●「建設業法に基づいて都道府県が行う建設業者への立ち入り検査が07年度に大きく増えたことが、国土交通省のまとめで分かった。07年度の実施件数は1398件と06年度(1065件)より大幅に増加。同じ建設業者に対して複数回実施するケースが増えているという。……07年度の監督処分件数は、指示が269件(06年度186件)、営業停止が290件(同368件)、許可取り消しが98件(同109件)だった。……勧告は、05年度に166件だったのが、06年度に351件、07年度は447件と大きく増える傾向にある。」(『建設工業新聞』2009.1.7)
●「国土交通省は8日、樹脂サッシ大手のエクセルシャノン(東京・港)など5社が防火窓の性能試験で偽装工作し、不正に国交相の認定を受けていたと発表した。不正に認定を受けたのは27種類の防火窓で、北海道などの寒冷地の2戸建て住宅を中心に全国の約5500棟に使われている。いずれも耐火基準を満たしていないとみられる。……ほかの4社は、三協立山アルミ(富山県高岡市)▽新日軽(東京・江東)▽PSJ(東京・中野)▽在シンガポール法人のH.R.D.SINGAPORE。エクセルシャノンは『コストが安くなるため偽装した』などと説明。国交省は性能確認や改修を指示した。」(『日本経済新聞』2009.1.09)
●「建設工事の受注が大きく落ち込んでいる。国土交通省がまとめた08年11月の建設工事受注動態統計調査によると、建設業者の総受注高は前年同月比4.5%減の3兆8306億円にとどまり、00年度の調査開始以来、11月としては最低を記録した。民間発注工事の受注減が全体を引き下げている形で、特に住宅工事(1件5億円以上の建築・建築設備工事)の受注は総額701億円と前年同月の半分以下に落ち込み、単月実績としては調査開始からの最低記録となった。」(『建設工業新聞』2009.1.13)
●「国土交通省は、住生活基本法に基づいて2008年9月に閣議決定した住生活基本計画(全国計画)を見直す。政府の緊急対策に盛り込まれた長期優良住宅やリフォームの促進を計画に明確に位置付けることで、住宅投資の活性化を促す。基本計画の見直し案は13日に開かれた社会資本整備審議会(国交相の諮問機関)住宅宅地分科会に提示された。見直し案は3月中旬をめどに閣議決定する。」(『建設通信新聞』2009.1.14)
●「東京商工リサーチが13日発表した08年(1〜12月)の企業倒産(負債1000万円以上)集計によると、建設業の倒産は4467件(前年比11.2%増)と3年連続で前年を上回り、00年以来8年ぶりの2けた増を記録した。負債総額は1兆2765億円(同57.1%増)と2年連続で増え、04年以来4年ぶりの1兆円超えとなった。上場中堅ゼネコンのほか、地方の有力ゼネコンや老舗建設会社などの倒産が相次ぎ、市場縮小など経営環境悪化の影響が小規模・零細企業から中堅企業にも広がったのが特徴。……倒産企業を資本金規模別に見ると、1000万以上5000万円未満の企業の倒産が2255件(同16.4%増)と2けたの増加となる一方、10億円以上の企業の倒産も10件と前年の2件から急増。経営環境悪化の影響が企業規模を問わずに広がってきたことをうかがわせている。」(『建設工業新聞』2009.1.14)
●ドイツの上場大企業30社の人事担当役員とショルツ労働社会相(社会民主党)は9日、ベルリンで会合を開き、30社が今年は景気悪化のなかでも会社都合の解雇を回避するために全力を尽くすとの共同声明を発表した。共同声明は、各社が「2009年に会社都合の解雇を回避するために、雇用確保のためのあらゆる手段を完全に行使する」ことを誓約している。(『しんぶん赤旗』2009.1.11より抜粋。)