情勢の特徴 - 2009年1月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「日銀は16日、全国の経済情勢を点検した地域経済報告を発表、この中で国内全9地域の景気判断を下方修正した。全地域の下方修正は前回の昨年10月の報告に続き2度目。総括判断も2005年の報告開始以来、初めて『悪化している』とした。金融危機に伴う海外経済の減速や円高による輸出急減が主因。企業の生産活動や雇用情勢にも深刻な影響が及び、地域経済は急速に疲弊している。…悪化が目立つのは自動車をはじめ輸出関連産業の割合が大きい東海・近畿などの地区。…輸出の急減は各地域で生産減→雇用減という負の連鎖を引き起こしている。…景気悪化を受けて各地域の企業からは政策面での対応を求める声も増えている。各支店長からは『為替の安定を求める声が増えている』『資金繰りの支援策に期待する企業が多い』などの報告があった。」(『日本経済新聞』2009.01.17)
●「不動産経済研究所(東京・新宿)が20日発表した2008年のマンション市場動向によると、首都圏の発売戸数は前年比28.3%減の4万3733戸だった。バブル崩壊後の1992年以来16年ぶりの低水準。09年は価格下落などで若干回復が見込めるものの、前年比7.5%増の4万7000戸程度にとどまる見通し。マンション分譲各社は対応を急ぎ始めている。」(『日本経済新聞』2009.01.21)
●「建設経済研究所と経済調査会経済調査研究所は27日、2008・09年度の建設投資見通しを公表した。08年度の建設投資見通し(名目ベース)は前年度比2.1%減の47兆6300億円、09年度の建設投資見通し(同)は3.4%減の46兆円で、それぞれ前回予測(10月)から3200億円、1兆6200億円下方修正した。…両研究所は、08年度の日本経済について、企業収益の大幅な減少や個人消費の弱含みなどによる景気後退が一段と深刻になっており、『世界的金融危機の長期化などの景気下押しリスクは当面続く』としている。」(『建設通信新聞』2009.01.28)

行政・公共事業・民営化

●「公共工事市場縮小のなか、地域建設業に『公立中学校武道場整備』という新たな市場が、地域建設業の活性化へ向けた追い風になりそうだ。文部科学省が、2009年度から13年度までの5年間で全国の約2300校の武道場新規整備を本格化させるのが理由だ。09年度予算案で武道場新規整備分が学校づくり交付金として新規に認められたほか、12年度から武道必修が決まっており、公共事業縮小で苦境に陥っている地域建設業にとっては、確実な市場が全国各地で生まれることになる。」(『建設通信新聞』2009.01.19)
●「長野県は16日、緊急経済対策に伴い発注する建設工事に限り、現行とは異なる入札参加資格要件を設定する方針を打ち出した。予定価格3000万円未満の工事(建築工事除く)は、災害復旧工事などと同様、地域要件を原則として「地方事務所管内」にするとともに、資格総合点数の要件を拡大する。地元企業の受注機会を確保し、同対策の効果を高めることが目的だ。」(『建設通信新聞』2009.01.19)
●「国土交通省は20日、川辺川ダム(熊本県相良村)や大戸川ダム(大津市)など国のダム建設計画に地元知事が相次ぎ反対を表明した問題を受け、ダム事業の進め方について検証する有識者を交えた研究会『ダム事業プロセス検証タスクフォース』を発足させ、22日に初会合を開くと発表した。…閣議後の会見で金子国交相は「年内にある程度の結論を出したい。どのようなところを見直すかという大枠をまずつかんだ上で、細かな検討をしたい」と述べた。…構想から建設まで長い年月がかかるダム事業では、社会・経済情勢の変化で地元の意向も変わることがあり、金子国交相はこうした変化に河川管理者としてどう対応すべきかを検討する必要があるとして、事業プロセスの検証を指示した。同省は、今回の研究会とは別に、今年1月8日に河川事業の見直しを検討する『河川事業の評価手法に関する研究会』も設置。ダムを含む河川事業全般について、同省が現在用いている費用便益分析などの事業評価手法を時代に合ったものに見直すための作業を始めている。」(『建設工業新聞』2009.01.21)
●「26日に成立した2008年度第2次補正予算のうち、国土交通省関係の配分総額は事業費ベースで5777億円となった。内訳は一般公共事業費が5696億円(うちゼロ国債2475億円)、官庁営繕費が82億円。一般公共事業費は、政府の経済対策『生活対策』に基づき、安全・安心の確保や地域経済の活性化、住宅投資などに重点配分する。…直轄事業には総額2847億4900万円、補助事業には2929億1700万円をそれぞれ配分する。…事業別配分額は、治水が970億0300万円、海岸が100億1500万円、道路整備が1651億4900万円、港湾が454億9500万円、空港が99億440万円、都市・幹線道路が367億7800万円、航路標識が25億3400万円、住宅対策が353億1000万円、市街地整備が496億1000万円、道路環境整備が343億2400万円、都市水環境整備が31億6600万円、下水道が394億5500万円、都市公園が211億7100万円。」(『建設通信新聞』2009.01.27)
●「07年度に全国の市区町村が行った競争入札の実態を、国土交通省などが発表したデータを基に日刊建設工業新聞社が分析したところ、平均落札率が低い自治体の多くが近畿地方に集中していることが分かった。一方、北海道や東北の西側、中部、九州の各地方には、低落札率の自治体が少ない傾向が見られた。こうした地域ごとの偏在には、都道府県のダンピング対策の取り組みに温度差があることが影響しているとの指摘も。極端な安値受注は、工事の品質低下や下請へのしわ寄せなどの弊害をもたらす懸念もあるが、低落札率の自治体の多くが安値受注の防止策を特には講じていないのも実態だ。…一方で、低落札率の悪影響が今後出かねないとの不安から対策を進める自治体もあった。ある自治体では、応札が最低制限価格に集中することを避けるため、有効入札金額の平均値に85%を掛けた額を最低制限価格とする方法を導入した。…別の自治体では、特に落札率が低い案件について、最低制限価格を設けることで、若干の改善効果が見られたという。…ある自治体の担当者は、「落札率はもう少し上がった方が良い。そして、現場に細かく目を配って仕事をしてもらいたい」と発注者としての本音を話す。ダンピング受注の影響で工事の品質が下がったり、建設業者が疲弊して雇用機会が減ったりすれば、そのツケは最終的には地域住民が引き受けることになる。『安上がり』のメリットを発注者はどこまで享受すべきか、その判断は難しい。」(『建設工業新聞』2009.01.27)
●「公共事業の入札で、予定価格を事前に公表している自治体では落札者をくじ引きで決める『くじ引き発生率』が、予定価格を事後公表または非公表の自治体の4倍以上に及ぶことが、国土交通省の調べで明らかになった。特に、一般競争入札の導入が進む都道府県と政令市ではくじ引き発生率が高く、一般競争入札で予定価格が事前公表されると、くじ引きに至る傾向が強くなるという。国交省は、以前から適正な競争を阻害するとして自治体に予定価格の事前公表をやめるよう要請してきたが、今回、くじ引き発生率との因果関係が具体的に裏付けられたことから、さらに働きかけを強める方針だ。」(『建設工業新聞』2009.01.27)
●「国土交通省は、28日に成立した第2次補正予算で創設する『建設業と地域の元気回復事業』の制度概要を固めた。建設業と地方自治体、異業種で構成する協議会を組成し、合意形成を図った上で、建設業が保有する人材や機材、ノウハウを活用して地域の活性化を促進する新しい事業を実施する。2月から全国各ブロックで説明会を開き、補助交付を受けるための事業を3月中旬から5月中旬まで募集する予定だ。採択は6月になる見込み。」(『建設通信新聞』2009.01.29)
●「国土交通省と林野庁は、地域の建設業と林業とが連携する「林建共働」の推進を図るよう求める連名の通知を全国の都道府県と政令指定都市に27日付で出した。…林建共働は、政府の地方再生戦略が昨年12月に改定された際、推進すべき取り組みとして位置付けられた。建設業の人材や資機材を活用して、森林組合などによる間伐の実施を拡大する狙いで、地域経済や雇用への波及効果もあるとみられている。国交省と林野庁は、都道府県などの建設部局と林政部局の連携を促してこうした取り組みを活発化させる方針で、連名での要請は『おそらく初めて』(国交省総合政策局)という。」(『建設工業新聞』2009.01.29)

労働・福祉

●「全国基礎工業協同組合連合会(梅田巖会長)は、時期や地区によって過不足する建設技能労働者を融通し合う、「建設業務労働者就業機会確保事業」を始める。まず、関東甲信越の1都9県を対象に2月中に厚生労働省に申請し、許可後、4月から事業化する。次いで北海道、東北、近畿を申請し、拡大する。19日現在、関東甲信越の参加希望者は21社あるが、ほか15社が加わる予定だという。流動化≠キる技能者は、3年間の累計で1社当たり15人前後、関東甲信越だけで延べ540人程度とみている。」(『建設通信新聞』2009.01.20)
●製造業で働く派遣・業務請負労働者の失業が今年3月末までに40万人に達する見通しであることが27日、業界団体の試算で分かった。製造業への派遣・請負会社が加盟する日本生産技能労務協会、日本製造アウトソーシング協会の2団体が共同でまとめた。…06年に製造業派遣となった労働者は今年3月以降、次々に最長3年の契約期限切れを迎えることになるが、違法な中途解除が横行している。厚生労働省の通達は、契約満了の「雇い止め」でも、乱用すれば違法になる場合があるとし、雇用維持のための「啓発・指導」を各都道府県労働局に指示している。(『しんぶん赤旗』2009.01.28より抜粋。)
●2008年12月の雇用情勢は、完全失業率が0.5ポイント上昇し、4.4%になるなど、これまでになく急速で大幅に悪化しった。…12月の完全失業者は、前年同月比39万人増加の270万人。このうち、解雇や倒産など「勤め先都合」で失業した人は77万人。前年同月比で25万人増と、他の失業理由と比べて飛び抜けて増加しており、企業の解雇による雇用情勢の悪化を裏付けている。(『しんぶん赤旗』2009.01.31より抜粋。)

建設産業・経営

●準大手ゼネコン「西松建設」(東京都港区)の裏金事件は、前社長・国沢幹雄容疑者(70)=20日付で辞任=の逮捕(外為法違反容疑)で、経営トップもかかわる刑事事件に発展した。…国沢容疑者は、同容疑ですでに逮捕されている元海外担当副社長・藤巻恵次容疑者(68)と共謀し、2006年2月から7年8月までの間に、裏金の一部を税関に無申告のまま国内に持ち込んでいた疑いがもたれている。…同時に注目されているのが西松運設と政界との接点。…さらに、同社をめぐっては、福島県内の原発関連事業の受注にからみ、地元建設業者にむけ不透明な資金提供がされていた問題も浮上している。同社は電力業界に影響力があるとされるこの業者に対し、国沢容疑者の指示で2億数1000万円を融資。しかし、これまで返済されておらず、融資は同社による利益提供だった疑いがある。(『しんぶん赤旗』2009.01.22より抜粋。)
●「海外建設協会(海建協、竹中統一会長)は、会員企業の08年度第3四半期末まで(4〜12月)の海外受注実績をまとめた。受注総額は前年同期比11・5%減の9739億56百万円と、中東や北米での受注が大きく落ち込んだことなどが響き、2けたの減少となった。ここ数年続いた海外受注の急拡大にブレーキがかかっている。」(『建設工業新聞』2009.01.26)
●「景気後退が深刻化する中、中小建設業者にとって資金繰りが経営上の大きな課題になっている現状が、全国中小建設業協会(全中建、岡本弘会長)の調査であらためて浮き彫りになった。会員企業に対し協会活動に対する要望を聞いたところ、公的融資制度に関する意見が数多く寄せられた。公共工事の請負代金債権を利用した融資制度として昨年11月に国土交通省などが新設した『地域建設業経営強化融資制度』については『制度の利用を逆手に取られ、銀行に融資枠を狭められる懸念がある』など、運用面での課題を指摘する声が多く上がった。…全中建は今回の調査結果を踏まえ、『中小建設業の健全な発展に向けた融資制度の拡充』『安全・安心に必要な公共事業予算の確保』やなどを協会活動の目標に揚げ、国交省などに実現を強く求める方針だ。」(『建設通信新聞』2009.01.27)
●「日本建設業団体連合会(日建連、梅田貞夫会長)、日本土木工業協会(土工協、葉山莞児会長)、建築業協会(BCS、野村哲也会長)の3団体は、景気対策に関する要望を政府・与党に提出した。景気後退の長期・深刻化が懸念される中、『財政の積極的な出動による思い切った内需喚起策が必要』と指摘。経済波及や雇用吸収の点で公共投資の活用が効果的だと主張し、景気回復のめどが付くまで『公共投資を大胆に追加し、機動的に実施するべきだ』と強く訴えている。…3団体は、公共投資の増額と集中実施が景気対策だけでなく将来の経済発展や国民生活の充実、安心・安全の向上など多方面に好影響を与えるとしており、実現に向けた活動を一段と活発化させていく方針だ。」(『建設工業新聞』2009.01.29)
●「景気後退がゼネコンの受注を直撃している。日本建設業団体連合会(日建連、梅田貞夫会長)がまとめた会員企業51社の昨年12月の受注総額は前年同月比で30.3%減の8200億円と低迷。世界的な不況と円高で業績が急速に悪化した輸出関連産業で設備投資を手控える動きが相次ぎ、製造業からの受注が同36.1%も減った。…不動産業を中心とする非製造業からの受注もマンション不振で低迷を続けており、ゼネコン各社の受注を支えてきた国内民間工事の曲がり角が鮮明になっている。」(『建設工業新聞』2009.01.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、既存住宅のリニューアルや流通の促進を図るため、非破壊検査を軸とした住宅品質の検査制度と、品質が確認された物件の瑕疵(かし)担保責任を保証する仕組みを構築する。省内の検討組織と日本非破壊検査工業会、建築研究所などが連携して詰めており、技術的な問題点などがクリアできれば、今夏をめどに、制度化に向けた検討を社会資本整備審議会(国交相の諮問機関)に諮問する。住宅品質確保促進法(住宅品確法)で診断方法や評価方法を位置付け、住宅瑕疵担保履行法で既存住宅を対象とした瑕疵担保責任保険を規定することを視野に入れており、来年の通常国会への法案提出を目指す。…国交省は、既存住宅の流通の増加により、地場ゼネコンや工務店などが得意とするリフォーム・リニューアル市場が拡大し、『地域産業の育成にもつながる』(住宅局)とみている。」(『建設工業新聞』2009.01.20)

その他

●「米民主党のペロシ下院議長は15日、大型減税や公共事業を柱とする2年間で総額8250億j(約74兆円)の景気対策法案の概要を発表した。米経済再生ヘインフラ整備に900億j(約8兆1000億円)を投じるほか、エネルギー、科学技術、教育など8分野に戦略的に重点投資。オバマ次期米大統領が目標に掲げる300万−400万人の雇用創出・維持の実現を目指す。」(『日本経済新聞』2009.01.16)
●「国際労働機関(ILO)が28日発表した年次報告によると、2008年末時点の世界の失業者数(速報値)は過去最高の1億9020万人に達した。前年末比1070万人増で、増加人数はこの10年で最多。金融危機が実体経済に波及し、世界各国の企業が雇用調整に動いているためだ。08年末の世界の失業率は6.0%で、前年末比03ポイント上昇。ILO 09年中にさらに4000万は『最悪のシナリオでは人の失業者が発生する』と分析している。」(『日本経済新聞』2009.01.29)