情勢の特徴 - 2009年2月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「2008年11-12月期の国内総生産(GDP)が大幅なマイナスとなったことで、企業経営者の間では不況の長期化に対する警戒感が一段と強まってきた。『他国と比べても落ち込みが非常に激しく、日本経済の状況は想像以上に厳しい』(三菱重工業の大宮英明社長)との認識が広がり、『需要に見合った生産に徹する』(新日本製鉄の宗岡正二社長)と生産の縮小を急ぐ企業も目立つ。政府・与党に早急な経済対策を求める声も相次いでいる。…政府には早急に経済対策を打ち出すべきだとの注文が相次いだ。目立つのは企業の活性化につながる税制優遇や中小企業への資金繰り対策。雇用不安への手当てを求める声も多く、…このほか中長期的に成長を促す対策として、環境や医療などへの重点投資を求める意見も出た。…未曽有の危機に直面したことで、企業は経営体質の転換を急いでいる。」(『日本経済新聞』2009.02.17)
●「政府・与党は16日、追加経済対策に向けた2009年度補正予算案の編成で、多年度にわたる公共事業計画を09年度に集中実施する方向で検討に入った。光ファイバー綱整備や公共施設の耐震化などが浮上しており、08年10-12月期の国内総生産速報値の落ち込みを受けた需要創出や雇用促進に重点をおく。民主党も独自の追加経済対策を打ち出す方向だ。」(『日本経済新聞』2009.02.17)
●「財務省が25日発表した1月の貿易統計速報(通関ベース)で、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支が9526億円の赤字となり、赤字額は過去最大を更新した。2008年4月から09年1月までの貿易収支は、累計で7800億円の赤字となる。2、3月も輸出が振るわなければ、年度を通じて貿易赤字に転落する可能性が高い。」(『日本経済新聞』2009.02.26)
●「住宅の柱や梁(はり)に使う構造用木材の卸値が一段安になっている。住宅着工の減少で需給が緩み、主要品目は1カ月で5-6%下落した。住宅メーカーなど需要家が買い控えを強めているのに加え、輸入品の増加も需給緩和につながった。住宅需要侶さらに落ち込むとの見方が多く、当面下げが続く公算が大きい。」(『日本経済新聞』2009.02.27)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、2008年度から5年間の次期社会資本整備重点計画の素案をまとめた。当初は08年夏に閣議決定する予定だったものの、道路中期計画が一員、白紙になった影響で遅れていたもので、3月16日までパブリックコメントを募集し、都道府県から意見聴取した上で、次期計画を閣議決定する予定だ。次期計画の特徴は、重点目標分野として活力、安全・安心、暮らし・環境に加え、ストック型社会への対応を盛り込んだこと。重点分野ごとに12項目の重点目標を設定し、各重点目標に約60の指標を設定している。」(『建設通信新聞』2009.02.17)
● 「安全基準や耐震基準を下回っている土木構造物が、財政的な問題を要因の1つとして、必要な対策が実施できず残されている。新規整備や改築・更新に比べれば優先度が下がる劣化対策や耐震化だが、いずれは対策を実行に移していかなければならない。景気の悪化が深刻さを増す中、地方自治体の負担を軽くすることで対策を前倒し、内需を拡大する必要性を求める声も上がっている。与党は、景気・雇用創出ニューディール推進プロジェクトチームの会合を23日に開き、公共事業の前倒しや地方負担軽減策などを検討する見通しだ。…対策がこれまで早期に進まなかった理由の一つに財政的な問題が挙げられる。構造物の強化や耐震化、修繕などは、注目度が高いほかの分野や新規整備、改築・更新に比べれば優先度が下がる。公共事業費の削減が続き、予算執行にメリハリが求められる中で、こうした対策に予算が回らなかったという背景がある。また、地方自治体の厳しい財政状況も理由の一つに挙げられる。河川堤防の強化や下水道管渠の耐震化については、工事に当たって用地買収などが少なく早期に実行できるものの、工事費の一部は、たとえ国直轄の構造物でも地方自治体が負担しなければならない仕組みになっている。地方自治体にとっても、福祉や少子化などほかの分野との予算執行の優先順位をつけながら進める中で、改修や耐震化にまで予算が回らないという事情がある。自民党の景気・雇用創出ニューディール推進プロジェクトチームでは、災害対策などを先行的に進める事業を検討する方針だ。地方負担についても、『国の負担率を時限的にでも上げるべきだ』と、地方負担率を一時的に下げることで急ぎ防災対策などを国の負担で進める施策を考えている。」(『建設通信新聞』2009.02.23)
●「47都道府県の09年度当初予算案が24日出そろった。日刊建設工業新聞社のまとめによると、一般会計の総額は前年度比0.2%増の48兆2631億82百万円。景気後退による企業業績の急速な悪化で税収減が見込まれるため、基金の取り崩しや起債で減収分を補い、緊急経済対策に予算を充てる自治体が大半を占めている。ただ、緊急経済対策は雇用対策や中小建設業向けの工事発注に主眼が置かれており、大型公共事業の比重が高い投資的経費は前年度比3.6%減の7兆0421億83百万円にとどまるなど、建設業界にとってはインパクトに欠ける内容となった。」(『建設工業新聞』2009.02.25)
●「国が道路や河川、港湾などを建設する際にその経費の一部を地方自治体が負担する、直轄事業負担金に対する見直し要請が自治体から相次いでいる。慢性的な財政難の中、国が実施する事業への財源支出が大きな負担となっており、大阪府の橋下徹知事を始めとする首長から負担金制度に対する不満が高まっている。国土交通省は首長などからの要請を踏まえ、早ければ3月下旬にも全国知事会と制度見直しに向けた協議を進める。ただ、現行制度に対する国と地方の考えには大きな開きがあり、制度見直しに向けた協議は難航する可能性もある。…直轄事業負担金は、受益者負担の観点から地方財政法で自治体の負担が規定されている。事業に対する国と自治体の負担割合は、1992年12月に閣議了解された『公共事業等の補助率等の取り扱いについて』に基づいて事業ごとに決められている。この取り扱いでは、国直轄事業に対する国の負担割合を3分の2、補助事業に対する国の負担率は2分の1を基本に恒久化することが定められている。取り扱いに基づく国と地方の負担率は93年度から適用されており、これまで変更されていない。一方、政府・与党内では、09年度予算成立後に自治体の財政負担を求めない新たな国直轄事業を創設する動きも出始めている。地方負担ゼロの直轄事業創設に向けては、与党の景気・雇用創出ニューディール推進プロジェクトチーム(PT)で検討が進められており、追加経済対策として09年度内に限定した措置として導入する案が浮上している。」(『建設通信新聞』2009.02.26)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)は、09年春闘の基本構想をまとめた。景気後退が深刻化する中で、賃金水準の現状維持を主眼とせず『定期昇給の確保と着実な水準向上』を目指す。一時金については、『前年と同等の生活水準を確保する』との観点から、年収ベースで日建協個別賃金水準に見合った額まで引き上げを求める。初任給は他産業に見劣りしない金額を形成することが優秀な人材の確保につながるとして、明確な目標を定めて各加盟組合にその実現を求める。…日建協によると、2月時点でベースアップの要求を検討している組合は全体の2割にとどまっていた。(『建設工業新聞』2009.02.23)
●「基幹技能者制度推進協議会(会長・向井敏雄向井建設社長)は25日、同協議会幹事会との合同会議を開き、登録基幹技能者の不足や地域偏在の解消に向け、各資格運営団体の『技能開発計画』を2009年度中をめどに見直すことを決めた。…基幹技能者について協議会が、08年に発注者や元請企業などを対象としてアンケートを実施した結果、基幹技能者数の不足と地域偏在、能力の担保、認知度・評価が課題として上がった。各資格運営団体の現行の技能開発計画では、育成予定人数が合計で10万7850人で、08年8月末時点では3万0599人、うち登録基幹技能者数は同年12月末時点で5299人となっている。基幹技能者数は増えているが、職種によっては、全国の1地域にしか登録基幹技能者がいない状況になっている。…能力の担保については、アンケートで『基幹技能者でなくても一定水準以上の能力がある職長がたくさんいる』といった課題が上げられた。…このためまず、基幹技能者を現場で使うことで発揮される効果や能力を定量的に検証する。検証結果を受け、講習テキストや試験問題を継続的に見直す形を目指す。登録講習の厳格化なども進め、一般の職長を超える技能者としての位置付けを明確にできるようにする。(『建設通信新聞』2009.02.26)

労働・福祉

●「東京都内の下請従事者・職人15万5000人が加入する全国建設労働組合総連合東京都連合会(渡邊守光執行委員長)は25日、2009年度の要求賃金を発表した。経済危機・建設不況の深刻化で仕事不足を訴える声が組合員から上がっている中、建設労働者の標準賃金として『1日2万6000円』を目標値に設定し、交通費や駐車場代など自己負担している諸経費は別枠で要求する。同日、東京建設業協会に提出し、27日には東京都に提出する。…また、公共工事で採用される労務単価の金額がそのまま、現場労働者に支払われることを目的にした『公契約条例(法)』の制定を国や地方自治体に強く求めていく。 都連が実施したアンケート結果(回答1万5251人)によると、回答の94・l%がゆとりのない生活を実感しており、例年の80%台前半よりも1割多く、不況の影響が色濃く表れた。」(『建設通信』2009.02.27)

建設産業・経営

●「道路舗装事業を手がける上場大手7社の08年4〜12月期の決算が13日、出そろった。公共事業の縮小や原材料費の値上げなどに苦しむ各社の業績は、経常減益または損失幅の拡大となり、昨年4月に道路特定財源の暫定税率が失効した影響がいまだ尾を引いている状況だ。その中で製品販売事業は、価格転嫁の交捗が単価アップの形で実を結んでおり、ほとんどの会社が受注増額となっているのは好材料といえる。1月以降、原材料費の下落局面で単価をどれだけ持ちこたえられるかが、通期業績の明暗を分けることになりそうだ。」(『建設通信新聞』2009.02.16)
●「東京商工リサーチがまとめた2008年10月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比3.0%増の402件で10カ月連続して前年同月比増となった。また、10月としては03年以来、5年ぶりに400件を上回り、7月以降は増勢傾向が続いている。負債総額は、98.2%増の1611億0900万円で、2カ月ぶりに1000億円を上回る結果となった。また、建設業の上場企業倒産が新井組、山崎建設、井上工業の3件発生した。平均負債総額は4億円。改正建築基準法関連倒産は7件発生し、累計で140件となった。」(『建設通信新聞』2009.02.17)
●「東京商工リサーチがまとめた『銀行119行 2008年9月中間期単独決算ベースの不動産業・建設業向け貸出残高調査』で、三井住友銀行(銀行勘定のみ)の建設業向け貸出残高が08年3月期と比べ1226億8100万円減と最大の減少となっていることが分かった。銀行119行全体の建設業向け貸出残高は8035億4700万円の減で、三井住友銀と減少幅2位のみずほ銀行の2行だけで全体減少額の25.3%を占めた。相次ぐ建設業破たんの理由として金融機関の融資姿勢厳格化が上げられていたが、東京商工リサーチ調査でも建設業向けの金融収縮が浮き彫りになった形だ。」(『建設通信新聞』2009.02.17)
●「合併した中堅ゼネコンの経営破たんが止まらない。一昨年のみらい建設グループ、昨年のりんかい日産建設、オリエンタル白石に続き、19日にはあおみ建設が廣京地裁に会社更生法の適用を申請、受理された。合併の背景はそれぞれで異なるが、ゼネコンの合併が少ない理由として指摘されてきた『1+1が2にならない』という業界の『常識』を、いずれも覆すには至らなかった。景気の急激な冷え込みで建設市場も混迷の度合いを増す中、生き残りをかけた各社の経営改革のスピードを上回る速さで淘汰(とうた)の波が押し寄せている格好だ。」(『建設工業新聞』2009.02.23)
●「不動産会社の在庫(棚卸し資産)評価損が拡大している。三菱地所など大手5社と主要マンション分譲9社の合計で、2009年3月期に計上する評価損額は1527億円の見通しと、前期の6.4倍に拡大する。不動産市況が一段と悪化したことが主因。評価損計上が業績の足かせになっており、各社は在庫の削減を急ぐ方針だ。」(『日本経済新聞』2009.02.24)
●「地域を支えてきた老舗建設企業や中核建設企業の疲弊が改めて浮き彫りになった−。全国建設業協会(浅沼健一会長)が調査した会員企業の倒産状況調査結果によると、2008年(1−12月)の倒産件数は前年に比べて146件も多い580件、前年比33.6%増となり、過去最多だった02年の449件を大きく上回った。県ランクでA、Bの上位ランク企業の倒産が過半数以上を占め、資本金階層別でも前年は発生しなかった「10億円以上」の大型倒産が6件発生するなど優良といわれた企業の倒産が顕著に表れている。その倒産原因は「受注減少」が全体の7割を占める408件で、これに『赤字累積』(47件)、『売掛金回収難』 (10件)を加えた不況型倒産は全体の8割を占めた。」(『建設通信新聞』2009.02.24)
●「3月期決算の上場ゼネコン上位25社の08年4〜12月(第3四半期)決算が出そろった。公共投資の長期的な縮減や昨年秋からの世界同時不況、マンション市況の悪化などを要因に、15社が前年同期(07年4〜12月)の売上高を下回った。マンション工事のウエートが高い長谷工コーポレーションや三井住友建設などが売上高を大幅に落とした。経常損益は4社が増益を確保したほか、4社が前年同期の赤字からの黒字転換を果たしたものの、利益の少ない傾向が続いている。通期業績は16社が前年度より減収するが、24社が経常黒字を確保する見通しだ。」(『建設工業新聞』2009.02.27)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「市町村など地方自治体が管理する下水道管渠の耐震化が全国的に遅れている。阪神大震災後に強化された耐震設計以前に施工された下水道管で、避難地と下水道処理施設を結んでいるなど、重要な幹線に位置付けられている下水道管約2万5000`のうち、耐震化が完了しているのは約1割にとどまっている。国土交通省が耐震化促進に向けて自治体への補助を進めているものの、地方負担分の予算が耐震化まで回らないことが大きな要因の一つに挙げられている。こうした住民の安全を確保する事業の前倒しでの推進が求められそうだ。」(『建設通信新聞』2009.02.19)
●「国土交通省は、質の高い建築物の整備に必要な目標や基本理念などを盛り込んだ『建築基本法案』(仮称)を早ければ2010年の通常国会に提出する方向で検討を進めている。同法案は建築基準法や建築士法の上位に位置付けるいわゆる理念法で、質の高い建築物の整備目標や関係者の責務などを規定する考え。法案に盛り込むべき内容については、社会資本整備審議会(国交相の諮問機関)建築分科会の基本制度部会で検討を進める。同部会は今後、検討を具体化し、09年内をめどに一定の方向性をまとめる見通し。(『建設通信新聞』2009.02.25)

その他