情勢の特徴 - 2009年3月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「財務省が5日発表した2008年10-12月期の法人企業統計によると、企業の経常利益は前年同期に比べて64.5%減り、5兆533億円となった。減益率は第一次石油危機だった1974年に記録した過去最悪に並ぶ。売り上げの落ち込みが収益を圧迫し、自動車など多くが赤字に転じた。世界経済の急速な落ち込みで、日本の企業部門は歴史的な危機に直面している。…売上高は前年同期比11.6%減で4期連続の減収減益となった。…経常利益は全体で前年同期に比べ64.1%減った。製造業の経常利益は94.3%減と過去最も大きい減益率を記録。」(『日本経済新聞』2009.03.05)
●「財務省が9日発表した2009年1月の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資など全体の取引状況を示す経常収支は、1996年1月以来13年ぶりの赤字となった。赤字額は1728億円で、比較可能な1985年1月以降で最大。輸出が大幅に落ち込んで貿易赤字額が膨らんだことに加え、海外から得る投資の稼ぎも円高や国際的な金利低下で大きく減ったことが響いた。」(日本経済新聞』2009.03.10)
●内閣府が12日発表した昨年10-12月期国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値は、物価変動の影響を除いた実質が前期比3.2%減、年率換算で12.1%減となり、速報値の前期比3.3%減、年率12.7%減から小幅上方修正されました。第一次石油ショック後の1974年1−3月期(年率13.1%減)以来約35年ぶりの二ケタのマイナス成長が事実上、確定しました。…マイナス成長は4−6月期から三・四半期連続。民間エコノミストの予測では、足元の1−3月期についても10%前後のマイナス成長が見込まれ、過去に例のない二・四半期連続のニケタマイナス成長に陥る可能性もあります。(『しんぶん赤旗』2009.03.13より抜粋。)
●追加経済対策は『雇用』『公共事業』『環境』」の三分野が軸になりそうだ。…雇用対策の柱になりそうなのが、国が企業の休業手当の一部を支援する雇用調整助成金の拡充。企業業績が急速に悪化するなかで、従業員解雇を抑えることを狙う。数1000億円を積み増し、3年で300日という支給日数の上限もなくす方向だ。…公共事業は選択と集中が課題だ。公立学校の耐震化事業の推進が有力だ。経済界などには、国際競争力の強化のため羽田空港の拡張や成田空港から首都圏へのアクセス改善を求める意見が強い。環境分野では、電気自動車や省エネ家電への買い替え促進策などが課題だ。…財源も難問だ。08年度の経済対策で使った特別会計の埋蔵金の活用にも限界があり、大半を国債増発に頼ることになる。大量増発による長期金利上昇を防ぐため、日銀の長期国債買い取りなど国債の安定消化策も課題だ。自民党内では利息はつけず相続税がかからないようにする無利子国債の発行案なども浮上している。(『しんぶん赤旗』2009.03.13より抜粋。)

行政・公共事業・民営化

●「全国知事会(会長・麻生渡福岡県知事)は、都道府県の緊急雇用対策について、前回公表した1月14日以降の各都道府県の取り組み状況をまとめた。2月26日までの約1カ月の間に、8自治体が公共事業の追加・前倒しなどの取り組みを新たに決めたほか、岩手県や埼玉県、愛知県が総合評価方式などで雇用を確保する企業を優遇する措置を導入した。…公共事業での対策として目立つのは、年度内の支出はゼロとなるが契約はできる債務負担行為(ゼロ債)の活用による年度端境期での事業量確保だ。…工事の追加・前倒し発注も広がっており、青森県は県立学校の耐震診断・耐震補強工事の発注を前倒しし、市町村による耐震診断・補強経費を補助する制度を創設した。東京都は上下水道工事の年度内発注量を増やし、秋田県も公共事業を追加・前倒し発注する。高知県も、治山工事の発注を前倒ししており、宮崎県は補正予算で防災対策や中山間地域の環境改善に直結する工事を追加で実施した。沖縄県は、観光地にアクセスする道路維持管理業務を増やし、兵庫県は公共工事の分離・分割発注を推進することで、中小建設業への事業量を確保している。」(『建設通信新聞』2009.03.02)
●「国土交通省が、インフラ整備の方向性や政策目標を示す『社会資本整備重点計画』の次期計画案をまとめた。08〜12年度の5カ年に取り組むべき課題を網羅的に提示しており、63項目で具体的な数値目標を掲げた。3月6日まで一般からの意見を募集しており、その結果も踏まえて政府は3月中に閣議決定する予定だ。地方ブロックごとの個別事業などを示す重点整備方針(地方重点方針)も、今夏をめどに取りまとめる。…次期計画では、重点目標分野として、『活力』『安全・安心』『暮らし・環境』『ストック型社会への対応』の四つを掲げた。重点目標分野の一つに盛り込むことで、社会資本のストックを重視する方向を強く打ち出した点が大きな特徴といえる。活力の面では、交通ネットワークの充実による国際競争力強化や、地域内外の交流強化による地域の自立と活性化、にぎわいの創出、都市交通の快適性向上などに取り組む。…安全・安心の分野では、大規模な地震や水害への備えや、交通安全対策などが柱になる。…暮らし・環境の分野では、景観に関する目標を新たに盛り込んだのが特色だ。…重点目標として新設したストック型社会への対応では、道路橋などのインフラの長寿命化・老朽化対策が柱になる。」(『建設工業新聞』2009.03.02)
●「資材価格の変動に伴い契約済み工事の請負金額を変更する単品スライドの減額措置について、日刊建設工業新聞社が全国の都道府県にアンケート調査を実施したところ、半数を超える25団体が減額措置への具体的な対応を行っていることが分かった。減額措置を「導入済み」は18団体だったが、「導入予定」と回答した7団体がすべて2月中の対応を予定していた。青森、山形、香川、熊本の4県では、浚渫、河川工事、除雪業務で減額に向けた具体的動きが見られるなど、都道府県レベルで最近の資材価格下落への対応が進みつつある。」(『建設工業新聞』2009.03.03)
●「全国の都道府県のうちの20団体と、5政令指定都市が、低入札価格調査の基準価格を、中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)モデルと同等またはそれ以上の水準に設定していることが、国土交通省の2月1日時点でのまとめで分かった。厳しい経済・雇用情勢を踏まえ、地方自治体の工事発注でも低入札調査基準価格の見直しが相次いでおり、多くは中央公契連モデルと同等レベルのおおむね予定価格の75%から80%への見直しだが、佐賀県のように調査基準価格を予定価格の90%程度まで引き上げる自治体も現れた。九州では、長崎県が2月から最低制限価格を設計金額の90%程度まで引き上げており、これに続く積極的ダンピング対策となる。」(『建設工業新聞』2009.03.04)
●「国土交通省は、建設コンサルタント会社などが受託することが想定されている発注者支援型CM(コンストラクション・マネジメント)方式でのCMR(コンストラクション・マネージャー)の役割として、これまでの個別工事の監督官補助に加え、関連工事の全体調整や事業の課題抽出・助言・改善案の立案など、発注者が担っている業務の支援を担えるようにする考えを固めた。11日に開く「直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会品質確保専門部会」(部会長・福田昌史高知工科大客員教授)で提示し、了承を得られれば、4月から実施する考え。役割が明確になることで、発注者に不足している部分を補完する発注者支援型CMが導入しやすくなるとみられる。(『建設通信新聞』2009.03.04)

労働・福祉

●「長野県建設労働組合連合会は、昨年実施した現場賃金調査の結果、公共工事に従事する職人の賃金が、『公共工事設計労務単価』を大幅に下回ったことを重く見て、県に対して現場労働者の賃金が公共工事設計労務単価を下回らないよう具体的な施策を行うことを要望している。…県発注の公共工事の平均落札率は85%程度で、低価格入札が基調となっている現状では、賃金額は公共工事設計労務単価を常に下回ることになることから、同労連では設計労務単価のあり方や入札制度の見直しを求めている。」(『建設工業新聞』2009.03.05)

建設産業・経営

●「建設コンサルタント業務での低価格入札が続いている。2008年12月時点の低価格入札発生率は、07年度と比べ8ポイント高い33.2%となった。測量での発生率は下がっているものの、土木、地質ではともに10ポイント以上、上昇している。…国交省では、08年12月には、低価格調査基準価格を下回った落札者への業務履行中の監督強化や第三者による業務内容の妥当性確認などの対策を打ち出しており、効果がどれだけあるか、様子を見る必要はあるとしている。ただ、今後も低価格での競争に歯止めがかからない場合には、品質の確保に向けたさらなる対策実施の可能性もある。」(『建設通信新聞』2009.03.02)
●「東京商工リサーチがまとめた2008年11月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比5.0%減の341件となり11カ月ぶりに前年同月を下回った。ただ、年次(1-12月)ベースでは、11月時点で累計4092件に達し、既に前年(4018件)を上回った。負債総額は93.4%増の1198億7000万円になった。上場企業の大型倒産が影響した。年次ベースでは、11月時点で累計1兆1993億円にのぼり、04年(1兆1036億円)以来4年ぶりに1兆円を上回った。このほか改正建築基準法関連倒産は8件で、累計は148件となった。」(『建設通信新聞』2009.03.03)
●「日本建設業団体連合会(梅田貞夫会長)の単月受注実績が過去最大の減少幅を示した。日建連会員企業51社を対象に調査した1月の受注実績によると、受注総額は5530億円で前年同月に比べて過去最大の38.7%減少した。…景気の低迷による設備投資の抑制で民間が前年同月比40.8%減も落ち込み、官公庁も14.6%減となった結果、実に25年ぶりに6000億円を下回った。発注者別でも2007年8月以来の全発注者減少となり、国内受注は34.9%減の5520億円で、うち民間は40.8%減の3880億円、官公庁は14.6%減の1630億円だった。…08年4月-09年1月累計の受注総額は前年同期比6・8%減の9兆1420億円で、民間が12.6%減の6兆6930億円、官公庁が31.l%増の1兆8900億円、海外が22.3%減の5330億円だった。」(『建設通信新聞』2009.03.03)
●「積水ハウスは2日、2010年1月期の連結経常利益が前期比で50%減の385億円になる見通しだと発表した。不動産市況の悪化で分譲マンションの販売が減少するほか、注文住宅も低迷する。新規の大型再開発案件が一巡することも響く。ニケタの経常減益は2期連続。今期の年間配当は前期比4円減の20円とする方針だ。」(『日本経済新聞』2009.03.03)
●「住宅大手が設計図や修繕記録などを記した「家の履歴書」の整備に乗り出す。大和ハウス工業は2009年度をめどに自社物件の購入者へのサービスとして住宅履歴を作成。パナホームは買い取り時の査定に履歴情報を使って中古住宅の再生事業に参入する。少子高齢化や景気悪化で住宅建設の伸びが見込めないなか、中古住宅の価格決定を透明にし、市場拡大につなげる。」(『日本経済新聞』2009.03.05)
●「日本土木工業協会(葉山莞児会長)は5日、『真に意義のあるプロジェクトと参画のための仕組みつくり』と題した報告書を発表した。一般の有識者などへのアンケート結果から社会的に意義のあるプロジェクトを抽出し、そこで建設企業が果たすべき役割や参画する仕組みを提言したもので、具体的なプロジェクトとして、大深度地下を利用した地下河川・放水路の整備促進、再開発による省エネ・省資源型都市形成、リニア中央新幹線建設事業などを例示し、これらに参画するには、産・学・官の連携、技術開発・工事一体型調達方式の早期試行導入などが必要と訴えている。」(『建設通信新聞』2009.03.06)
●「長崎県建設業協会(谷村降三会長)が受注者側から発注者の業務を評価する制度を構築し、会員企業が県または県内市町から受注した工事に適用することを明らかにした。発注者が受注者の能力を評価する『工事成績評定』を逆転させたような仕組みで、大きく分けて・契約の内容・契約の履行・担当監督員の対応――の3つを100点満点からの減点方式で採点する。谷村会長は『受発注者がお互いに評価することで、(工事案件ごとに)何が問題だったのかが浮き彫りになる』と訴える。…長崎建協は『いかに公正性、客観性を持たせ、またどこまで公表していくか』を今後の課題に挙げており、谷村会長は「最終的には、受発注者が同じテーマや項目でお互いを評価し合うのが理想」と明かした。」(『建設通信新聞』2009.03.13)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東京都内の自治体が一般家庭の太陽光発電など太陽エネルギー利用を促すため、相次いで独自の助成制度の新設・拡充に乗り出した。2009年度予算案に太陽光発電や太陽熱温水器の導入費への助成制度を新設・拡充する市区が多いほか、電力会社への売電価格を上乗せする市区もある。国と東京都がともに09年中に補助制度を導入することが市区の支援策に弾みを付けており、国・都の助成金との併用で家庭の省エネ投資を促す。(『日本経済新聞』2009.03.13)

その他

●「国土交通省や産業界が、ベトナムでの高速道路に関するPPP(官民パートナーシップ)事業の実現へ向けた取り組みを加速させている。「ベトナム国道路官民研究会」(座長・岡素之住友商事会長)は、産官連携による「ジャパン・パッケージ」での支援の枠組みを示した中間取りまとめを作成。先月に、ベトナムのゴ・ティン・ドゥツク交通運輸省(MOT)副大臣らベトナム政府道路関係者が来日した際には、東京都内で意見交換会が開かれ、具体化への協議を行った。国土交通省とMOTとの間で、道路整備での連携を図る覚書も締結された。ベトナムでは、昨年12月に22路線、計画延長5873`の高速道路開発計画が承認された。このうち、120`は供用済みだが、残りは20年までに2512`(事業費206億j)を、それ以降に3241`(235億j)を整備する計画となっている。日本は、豊富な技術力を生かした国際貢献や、国内建設市場の縮小への対応といった観点から、ベトナムの高速道路開発計画を支援していく方針だ。こうした状況を踏まえて、同研究会は具体策を検討。政府開発援助(ODA)や民間資金など複数の施策を組み合わせた「ジャパン・パッケージ」を取りまとめた。」(『建設通信新聞』2009.03.09)
●「アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、人口の約9割を占める外国人労働者の失業問題が深刻になっている。外国から資金や人材を呼び込み、中東随一の高成長を遂げたが、金融危機の影響を受け、開発計画の多くが見直しを迫られているからだ。職探しをあきらめ本国に帰る人、収入を下げてもとどまろうとする人……。労働者は苦難の選択を迫られている。…ドバイの外国人労働者は約130万人。約150万人の人口のほとんどを占める。就業者の5割が不動産関連事業で働き、高層ビルの建築ラッシュに象徴されるドバイの急成長を支えてきた。しかし金融危機に伴い、開発事業に急ブレーキがかり、柔軟に雇用調整できる外国人労働者が次々と職を失っている。労働者の中には、特殊な技能を持つ高所得層もいるが、中間層や低所得層と別扱いされるわけではない。…外国人の労働力をフルに活用し、驚異的な発展を遂げたドバイ。労使の『蜜月関係』が転機にさしかかっている。」(『建設通信新聞』2009.03.09)