情勢の特徴 - 2009年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「内閣府と財務省が23日発表した1−3月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数はマイナス51.3と、2004年に調査を始めて以来の最低水準を更新した。輸出減が内需の不振につながり、多くの企業が減収減益に陥っている。09年度の設備投資の見通しは前年度比29.4%減となり、企業は景気の先行きにも慎重な姿勢を強めている。」(『日本経済新聞』2009.03.23)
●「国土交通省が23日発表した2009年1月1日時点の公示地価は全国平均(全用途)で前年比3.5%下落し、3年ぶりに前年を下回った。金融危機による投資マネーの減少と景気の低迷が重なって不動産を買い控える動きが広がり、4年ぶりにすべての都道府県でマイナスとなった。特に前年の調査で地価が急上昇した東京都や名古屋市の中心部では10%を超える下落地点も目立った。」(『日本経済新聞』2009.03.24)
●「政府が4月にまとめる経済成長戦略の原案が27日、明らかになった。『低炭素社会』の実現に向けてハイブリッド車など次世代自動車の購入を補助金で促すほか、介護で20万人の雇用を創出するために人件費の補助制度を盛り込んだ。2011年度までの3年間に集中投資する方針を打ち出し、最大60兆円の需要創造と200万人の雇用創出を目指す。08年度の補正予算、成立した09年度予算に続き、追加経済対策の検討が政府・与党で本格化する。」(『日本経済新聞』2009.03.28)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、4月1日から適用する09年度の土木工事積算基準などの改正概要をまとめた。・不調・不落工事が増加していることから、新たに『大都市補正』を導入。3大都市圏で実施する鋼橋架設工事と舗装工事、電線共同溝工事、道路維持工事を対象に、共通仮設費の率分と現場管理費について、上乗せ補正を実施する。ほかの大都市でも、有意なデータが収集・分析できた場合には対象都市として追加していく。…大都市補正は、東京23区と横浜、川崎、名古屋、大阪各市の市街地が対象となる。」(『建設工業新聞』2009.03.24)
●「国土交通省は25日、市区町村の2008年度総合評価方式実施状況調査の結果をまとめた。2月までに251自治体が総合評価方式を導入した。これにより、市区町村の719自治体が総合評価方式を導入した。さらに29自治体が08年度内に導入する予定だ。ただ、719自治体のうち約6割に当たる424自治体が低入札価格調査制度を「活用していない」という結果になった。…調査対象は、08年12月に実施した08年度入札契約適正化実態調査で、総合評価方式を導入済みか年度内に導入予定と回答した759市区町村(全1793市区町村の42.3%)。調査時期は2月で、748自治体が回答した。…総合評価方式の対象工事すべてで低入札価格調査制度を活用していると回答したのは719自治体中139自治体、一部の工事で活用しているのは134自治体となっており、約6割に及ぶ424自治体は「活用していない」と回答した。低入札価格調査制度を活用していると回答した273自治体でも、約半数に及ぶ139自治体が失格基準を「導入していない」と回答した。…地方自治体の総合評価方式では、最低制限価格を設けることができないが、低入札価格調査制度と失格基準を併用することで最低制限価格と同様の機能が果たせる。国交省は総合評価方式を導入している地方自治体に対して低入札価格調査制度と失格基準を活用するよう要請しているものの市区町村では広がっていない状況が浮き彫りになった。…導入した工事での課題については、前年度の調査と同じく約8割の自治体が『入札手続きにかかる日数』と『発注者の事務量増加』を挙げた。」(『建設通信新聞』2009.03.26)
●「国土交通省の関克己官房技術審議官は、社会資本の維持管理・更新の必要性について、『予算がないからと先延ばしすることはできない』と、建設後50年以上を迎える社会資本の高齢化に対応する必要性を強調した。…関技術審議官は、建設後50年以上経過する社会資本の割合が2016年度に、道路橋(橋長15b以上が約15万橋)約20%、水門など河川管理施設(約8000施設)約23%、下水道管きょ(総延長約39万`b)約5%、港湾岸壁(約5000施設)約14%だったものが、10年後の26年度には割合が2倍以上になる試算を披露。関技術審議官が維持・管理について、『数の多さだけでなく確実に対応する必要がある』ことを強調したのは、高齢化する社会資本の維持・修繕への対応の遅れによって発生した事故や損害の過失責任を発注者が問われかねないことも理由にある。ただ今後急増する維持・修繕市場について関技術審議官は河川施設の点検・修繕を例に、『確実に対応しなければならない一方、企業側の技術者が少なくなっているミスマッチの問題が起きかねない』と懸念を示した。」(『建設通信新聞』2009.03.30)
●「金子一義国土交通相は27日の会見で、地域建設業の振興に関する緊急対策の一環として、…低入札価格調査の基準価格見直し▽公共工事労務費調査の適正化▽公共工事の労働者への賃金支払い適正化のための立ち入り検査の強化−を挙げ、低入札価格調査の基準価格見直しについては、『最低基準価格を引き上げるというもので、かなり大きなテーマだ』と述べた。国交省は、08年3月にも調査基準価格の見直しを行い、おおむね予定価格の75%から80%へと引き上げた。中央公共工事契約制度運用連絡協議会も調査基準価格モデルを改正し、同様の対応を取ったが、平均落札率を押山し上げる即効性を期待して、建設業界からはもう一段の引き上げを求める声が上がっていた。」(『建設工業新聞』2009.03.30)
●「国土交通省は31日、2009年度に凍結する建設中の直轄国道18件の具体名を公表した。内訳は北海道と沖縄県がそれぞれ3件で最も多く新潟県や高知県、鹿児島県が2件で続く。道路を建設するには渋滞解消などの『便益』が『費用』を上回るのが条件。08年に『道路需要の将来推計』を下方修正した上で、今ある道路整備計画を見直し、18件は『費用対効果』の条件を満たさなくなったと判断した。…国交省は今後、凍結することにした18件の建設計画を再検討した上で、09年度中に外部の有識者などで組織する『事業評価監視委員会』に再評価を求め建設再開を目指すとしている。例えば片側二車線の道路を一車線に変える、今の道路を一部活用するようにするなどしてコストを下げ、費用対効果の条件を満たすようにする。」(『建設通信新聞』2009.03.31)

労働・福祉

●「政府、日本経団連、連合の政労使三者は23日午前、首相官邸で会合を開き、雇用の安定・創出に向けた緊急対策で合意した。雇用情勢の急激な悪化に歯止めをかけるため、日本型のワークシェアリング(仕事の分かち合い)の導入を推進することや、職業訓練期間中に生活費を支給する制度の創設を盛り込んだ。雇用を巡る政労使合意は2002年以来7年ぶり。深刻な景気後退に対し、政労使が協力して雇用の安定確保に動きだす。…合意文書はまず『実効性のある雇用の安定・創出策を強化していくことが喫緊の課題である』と強調。その上で『政労使の三者が一体となって雇用の安定・創出の実現に向けて一致協力して取り組む』と明記した。合意は雇用安定・創出のための『5つの取り組み』で構成する。その柱の一つが雇用維持で、文書では『労使は最大限の努力をおこなう』と確認。休業や残業の削減などを組み合わせた日本型のワークシェアリングを推進することをうたっている。政府は休業手当の一部を助成する雇用調整助成金を拡充して労使の負担を軽減する措置を盛った。第二の柱が雇用の安全綱の拡充・強化。失業手当が切れた長期失業者や、就業時間が短いなどで雇用保険に入れない失業者に対し、職業訓練を条件に生活費を支給する制度を新設することを盛り込んだ。雇用保険という安全網から漏れてしまう非正規労働者を支援する狙いがある。失業者の再就職を支援する取り組みでは、全国ネッ一トワークを持つ公共職業安定所(ハローワーク)の拡充を明記。新たな雇用を創出するため、『ふるさと雇用再生特別交付金』に企業が資金を出しやすくすることもメニューに並べた。…政府・与党は今回の政労使合意の内容を09年度予算の成立後につくる追加経済対策の柱に据える方針。」(『日本経済新聞』2009.03.23)
●「全国基礎工業協同組合連合会(全基連、梅田巌会長)は、建設労働者雇用改善法に基づく『建設業務労働者就業機会確保事業』を来年度にスタートさせる。労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会が24日に開いた会合で、全基連が提出していた同事業の実施計画に合意した。これを受け厚労省は近く、同計画を認定。全基連は計画に沿って首都圏で建設労働者の融通事業を行う。全国組織が同事業に取り組むのはこれが初めてで、首都圏での事業化も初となる。厚労省は「モデル性が非常に高い。しっかりバックアップをしていきたい」(職業安定局建設・港湾対策室)としている。…同事業は既に、みやぎ建設総合センター(仙台市)、大阪府建団連(大阪市)と沖縄県建設業協会(沖縄県浦添市)の3団体が取り組んでおり、全基連で4例目となる。ただ、これまでの3団体の事業では、みやぎ建設総合センターで労働者融通の実績があるだけで、浸透には至っていないのが実情。全国組織による取り組みが首都圏で始まることで、今後の広がりにつながる可能性もある。」(『建設工業新聞』2009.03.25)
●国際労働機関(ILO)は24日、経済危機が雇用に与える影響などを調査した『金融・経済危機−ディーセントワーク(人間らしい仕事)が答え』と題する報告書を発表した。その中で失業しながら失業手当を受給できない労働者の割合が、先進国で日本が最悪の77%(210万人)になっていることが明らかになった。同報告では経済協力開発機構(OECD)に加わる30カ国の半分で、50%以上の失業者が失業手当を受け取れていないと指摘。悪い水準上位の日本、米国、カナダについては、「他国よりも失業手当の受け取り基準が厳しい」と名指した。(『しんぶん赤旗』2009.03.26より抜粋。)
●「建設コンサルタントなど建設関連業の賃金が下げ止まってきた。建設関連業大手の労働組合で構成する全国建設関連産業労働組合連合会(建設関連労連)がまとめた最新の『賃金白書2009』によると、所定内賃金や年齢別平均賃金などが2006年調査を底に下げ止まり、平均残業時間も減少傾向で、労働環境が改善する傾向が出始めている。ただ、賃金白書でも『企業間格差が広がっている』と指摘するなど、国土交通省直轄のコンサルタント業務のプロポーザル方式や総合評価方式の導入・拡大によって、大手企業と中小企業の格差は広がっているとみられる。」(『建設通信新聞』2009.03.26)
●「国土交通省と農林水産省が27日に発表した09年度の公共工事設計労務単価(基準額)は、全51職種平均の単価が前年度と同額の1万6726円となった。都道府県の平均で見ると、主要12職種中5職種、全51職種中27職種で前年度より単価が上昇した。今回の調査では、一部職種で資格審査を厳格化したほか、請負契約による労働者(一人親方)の経費と賃金の分離をするために必要な資料を明示するなど調査方法を改善した。…今回の調査の有効工事件数は1万1428件、有効標本数は11万7531人で、棄却率は前年度比0・5%増の38・8%だった。」(『建設通信新聞』2009.03.30)
●「国土交通省の『公共工事設計労務単価のあり方検討会』は27日、最終報告書をまとめた。雇用保険・社会保険に加入の元請事業者を格付けで評価することや、下請けへのしわ寄せが懸念される案件で、元下取引での積算時の労務賃金と常時雇用者への賃金の支払いを調査することなどを盛り込んだ。低入札価格調査対象工事を調査対象から除外するよう求める声も業界などから挙がっていたが、報告書では「特定の工事だけで賃金水準を引き下げることは考えにくい」などを理由に除外すべきでないと結論付けた。」(『建設通信新聞』2009.03.30)

建設産業・経営

●「金融機関の建設業向け貸出残高が2008年9月を境に大手から中小、小規模企業まで急増していることが東京商工リサーチの調査や財務省の企業法人統計などで分かった。建設業の資金調達の環境悪化は、同じく9月のリーマンブラザーズ破たん以降、より鮮明になっていた。また10月以降、企業規模が大きいほど金融機関からの借入額の積み増し額も大きい。統計的には資金繰り難が緩和されているように見えても、倒産件数の増加に歯止めがかからず、景気低迷の深刻さを物語っている。」(『建設通信新聞』2009.03.19)
●「長崎県建設業協会が構築し開始する、受注者が発注者の業務を評価する制度いわゆる『長崎方式』に対して、他地域の地方建設業界から肯定・否定を含め、評価が大きく分かれていることが日刊建設通信新聞社の取材で分かった。『発注者を評価するのは問題』 『報復される』など懐疑派と『長崎方式の効果が分からない段階では評価できない』など様子見の地方業界が全国の半数以上を占める一方、『やるべき』『ユニーク』と肯定的な評価も46都道府県建設業協会のうち10建協以上に上った。ただ懐疑・様子見・肯定いずれの見方もともに長崎方式への関心が強いことだけは一致している。」(『建設通信新聞』2009.03.24)
●「太陽光発電や燃料電池という新エネルギーの家庭への普及をめざす企業の商戦が熱を帯びてきた。政府が住宅用太陽光発電装置への設置補助を1月に復活、東京都など各自治体も独自に助成を打ち出しているのが追い風。住宅各社は新エネ装置を安価で提供して不振の住宅販売のてこ入れを狙うほか、大手ガス会社などは家庭用燃料電池を5月から本格販売。不況下の需要創出と二酸化炭素(CO2)の排出削減という「一石二鳥」を狙う官民の動きが本格化してきた。」(『日本経済新聞』2009.03.26)
●「東京商工リサーチがまとめた2008年(1−12月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年比11.1%増の4467件となり、3年連続して前年を上回った。また、前年比では00年の33.6%増以来8年ぶりに2桁増となり、増加ぶりが目立った。また、負債総額は57.1%増の1兆2765億2800万円で、04年の1兆1036億7800万円以来、4年ぶりに1兆円を上回った。平均負債額は41.0%増の2億8500万円となった。このほか改正建築基準法関連の倒産は、08年12月末時点の累計で160件となった。」(『建設通信新聞』2009.03.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境

その他

●「世界貿易機関(WTO)は23日、2009年の世界全体の輸出の実質伸び率が前年比マイナス9%に落ち込むとの予測を発表した。WTOは『第二次世界大戦後で最大の減少幅』としている。世界的な景気悪化に伴う需要の減少に加え、金融危機で貿易決済に必要な資金が不足し、関税の引き上げといった保護主義的な動きが広がり始めているためだ。」(『日本経済新聞』2009.03.24)