情勢の特徴 - 2009年4月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「経済産業省中小企業庁が1日に公表した1−3月期の中小企業景況調査で、建設業の景況感がバブル経済崩壊以降最悪となった2008年10−12月期を更新し、さらに悪化していることが分かった。業況判断DI(好転から悪化を引いた指数)、資金繰りDIともに、現行方式で調査を始めた1994年以降、最悪の数値となり、マイナス幅が拡大している。また、今期直面している経営上の問題点を聞いたところ、建設業は回答企業の6割近くが需要の停滞を挙げており、内需の拡大が求められている状況が改めて浮き彫りになった形だ。」(『建設通信新聞』2009.04.02)
●「政府・与党が追加経済対策に盛り込む住宅市場の活性化策が明らかになった。住宅金融支援機構の長期固定金利の住宅ローンを利用する際、耐震性などに優れた家なら金利優遇(0.3%)期間を20年に延長する。普通の家でも2011年度末までは頭金なしでローンを組めるようにする。中小の不動産業者の資金繰りも支援する。」(『日本経済新聞』2009.04.06)
●民間信用調査会社の東京商工リサーチが8日発表した2008年度の全国企業倒産(負債額1000万円以上、私的整理含む)は07年度比12.3%増の16146件であった。3年連続で増加した。負債総額は前年の約2.4倍の14兆189億円で戦後5番目。上場企業の倒産は年度最多の45件であった。世界的な金融危機の実体経済への波及を反映し、年度後半から製造業の倒産が増加している。(『しんぶん赤旗』2009.04.09より抜粋。)
●「2008年度の第2次補正予算で政府が創設した『地域活性化・生活対策臨時交付金(6000億円)』について、道府県に配分された交付金が純粋な事業の増加につながっていないことが分かった。日刊建設通信新聞社が46道府県(不交付団体除く)に緊急聞き取り調査した結果、新規事業に交付金のすべてを使った自治体がある一方で、既に08年度予算で支出を決めていた事業の財源に交付金を充当したり、09年度に使用する分を当初予算の純増につなげなかったりした自治体もあった。…08年度に比べて事業量が純増しなかった地方自治体は『財政が厳しく、交付金がなければもっと減額していた可能性もある』『県税の減収で、基金分が増額にならなかった』などとした。ただ、『県の単独事業を減らして交付金の事業を執行することにした』とする県もあり、県の財政健全化に交付金を活用している例がみられた。…08年度の補正予算ですべて執行した自治体は6府県あった。…聞き取り調査で確認できた範囲では、神奈川県が12億円、愛知県が2億円程度、静岡県が4億9555万円、滋賀県が5億円、高知県が52億円をそれぞれ『当初予算の事業の財源に充てた』としている。…全体的には、自由度の高い制度にした結果、ハード・ソフトなどの使途、財政健全化と事業増などの使い方が、自治体によって大きく異なっている。」(『建設通信新聞』2009.04.10)
●「政府は10日、15兆4000億円の財政支出を盛り込んだ追加経済対策(経済危機対策)を正式決定する。事業規模は56兆8000億円に上る見込みで、具体的な対策項目には、3大都市圏の環状道路整備や、羽田空港のC滑走路延伸、中央新幹線の調査促進などインフラ整備も多数掲げられた。公共投資の地方自治体負担額などに応じて配分する『地域活性化・公共投資臨時交付金(仮称)』と、地域の実情に応じた事業実施に向けた『地域活性化・経済危機対策臨時交付金(仮称)』の創設も挙げた。09年度当初予算の公共事業も上半期の契約率8割を目指して前倒し執行する。政府は直ちに09年度補正予算案の編成作業に入る。」(『建設工業新聞』2009.04.10)
●「国土交通省は、政府の追加経済対策で盛り込まれた2009年度当初予算の過去最高水準の前倒し発注実現に向け、手続きの迅速化や工事関連情報の提供量増加、発注者側の体制強化を進める。施工体制確認型総合評価方式で低入札価格調査基準価格を下回った応札者がいた場合の審査日数を現行の約3週間から8日以内に短縮する。現場説明会などの情報交換の場についても一部で復活する予定だ。」(『建設通信新聞』2009.04.15)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省が07年度に発注した全直轄工事(港湾空港工事、北海道開発局の農業部門を除く)のうち、工事場所の都道府県内に本店を置く地元建設会社との契約が占める割合を示す金額ベースの『地元契約率』は52・9%だったことが、2日開かれた自民党の『公共工事品質確保に関する議員連盟」(品確議連、会長・古賀誠選対委員長)の総会で明らかにされた。…国交省がまとめた同省直轄工事の07年度の契約実績を見ると、一般土木や建築、設備工事などを含めた全工種(港湾空港工事、北海道開発局の農業部門を除く)の契約総額は1兆7722億円で、うち52.9%に当たる9368億円分を地元建設会社が受注していた。政府調達協定対象工事を除いた地元契約率は67.3%に上昇する。地元契約率には地域差があり、全工種で見ると、施工場所が北海道、青森、東京、山梨、長野、岐阜、鹿児島の工事では7割を超えていた。逆に地元契約率が3割未満だったのは、施工場所が埼玉、千葉、神奈川、大阪、奈良の場合だった。同省では、09年度から政府調達協定対象工事に参加できる業者を拡大するなどして、さらに地元建設会社の受注機会確保に努める考えだ。一般土木工事については、引き続き適切な発注ロットや地域要件の設定、総合評価方式での地域貢献度や地元精通度の評価に取り組むとしている。」(『建設工業新聞』2009.04.03)
●「国土交通省が3月末にまとめた地域建設業の振興に関する緊急対策の実施へ向け、同省や関係省庁は3日、出先機関や地方自治体などに通達を出した。…国土交通、総務両省は、公共工事の入札・契約手続きをさらに改善するよう地方自治体に要請した。最低制限価格と低入札価格調査基準価格について、国交省が低入札価格調査の基準価格を引き上げるのを踏まえ、各自治体も算定式を変更して適切に見直すよう求めたほか、予定価格の事前公表取りやめについてもあらためて要請事項に盛り込んだ。…国土交通省は、直轄工事の低入札調査基準価格の引き上げを各地方整備局などに通達した。最新データに基づき、現場管理費について70%(従来は60%)をベースに基準価格を算出するよう改める。同省直轄工事では、予定価格のおおむね81〜82%に設定されてきた調査基準価格が2%程度引き上げられることになり、併せて、調査基準価格を設定できる範囲も予定価格の70〜90%(従来は予定価格の3分の2〜85%)へ改めた。…国土交通、文部科学両省は、学校の耐震改修を促進するため手続きの迅速化を図るよう都道府県を通じて地方自治体に要請した。早期の事業推進や適切な施工に必要な対策を入札契約制度の面から列挙。自治体の契約担当部局と教育委員会に対応を求めた。…引き上げに伴い、低価格入札に伴う『特別重点調査』の実施対象も変更。現場管理費については70%(従来は60%)に満たない場合に特別重点調査を実施する。」(『建設工業新聞』2009.04.06)

労働・福祉

●「雇用情勢が厳しさを増している。総務省が31日発表した2月の完全失業率(季節調整値)は4.4%と前月に比べて0.3=3悪化した。…2月の完全失業者数は前年同月比33万人増の299万人と、2005年10月以来の高い水準となった。離職理由の内訳を見ると、倒産やリストラなど勤め先都合が94万人と前年同月比で33万人増えた。前年同月を上回るのは4カ月連続だ。…厚生労働省によると、昨年10月から今年6月の間に職を失ったり、失う予定だったりする非正規労働者数は3月調査で19万2061人。これに対し、正規社員の離職は昨年10月から今年4月までで12502人と少なくみえる。だが正規社員への波及はこれからだ。企業は希望退職など解雇をなるべく伴わない形で、雇用調整してきたが、今後は『工場閉鎖など正規社員の本格リストラが始まる』との指摘もある。」(『日本経済新聞』2009.04.01)
●「建設関連企業で1日、新卒採用者の入社式が一斉に行われる。日刊建設工業新聞社が独自に行ったゼネコン35社のアンケート調査によると、今春の採用総数は2839人で、前年に比べ65人増えていることが分かった。07年度から始まった団塊世代の大量退職に伴う人材不足を補おうと、引き続き積極的な採用を行った結果が表れた。しかし、来春の採用計画については、3分の1の企業が未定や検討中と回答。『具体的な採用者数は現況を注視しながら決める』(準大手担当者)など、で今後の事業規模をにらみながら慎重に採用計画を進めていく企業が多いようだ。」(『建設工業新聞』2009.04.01)
●「建設業界の就業者数減少に歯止めがかからない。総務省が3月末に公表した2月労働力調査で、建設業の就業者が前年同月比26万人減少し519万人にとどまっていることが分かった。日本経済再生へ向けた新たな景気対策が議論されている中、雇用維持と新たな確保が期待されている建設業の就業者減少は、雇用問題の深刻化に一層拍車をかけかねなない。…主要産業別就業者数で見ると、建設業の減少人数は最大。…現在、政府・与党では雇用創出のための新たな景気対策を検討中で、公共事業も景気と雇用対策の一つとして挙げられているが、急激な市場縮小と今後の不透明感を反映して、雇用受け皿と期待される建設業界では既に就業者数の大幅な減少問題に直面しつつある。」(『建設通信新聞』2009.04.03)
●「建売り住宅の下請けをしている下請工務店や一人親方または建築大工は、着工時に買手が決まっていない場合(売れていない場合)には、元請負人と見なされ、その下で働く職人や労働者に対する労働保険料を今年から支払わなければならなくなった。従来は、ハウスメーカーや不動産会社の分譲住宅の下請けをしていた工務店や一人親方等は、着工時点でその住宅が売れていようが売れまいが、下請けと見なされ、労災保険料等の労働保険料は発注者即ち不動産会社やハウスメーカー、デベロッパーが負担していた。 ところが、昨年夏の裁判で『建売り住宅の買い手(購入者)が付かない場合は、ハウスメーカー(不動産会社)と言えども発注者(施主)と見なされる』という判決が出たことで、厚生労働省もそれに従い、この方針をとったもの。ただし、着工時に買い手(購入者)が決まっている場合の下請けは、下請けとして見なされ、労働保険料は、従来通り発注者(ハウスメーカーや不動産会社等)が負担しなければならない。」(『日本住宅新聞』2009.04.05)
●「急速な雇用情勢の悪化で、失業給付が急増している。厚生労働省によると、2009年2月に失業給付を受けた人は約69万3000人と前年同月比33.8%増加した。増加率は1975年11月以来、約33年ぶりの大きさ。急激な景気後退を受けた雇用調整で、08年末に職を失った多くの人が失業給付の受給を申請したことが背景。雇用不安は足元で正社員まで広がりを見せており、今後も受給者数は増加しそうだ。」(『日本経済新聞』2009.04.05)
●「厚生労働省は9日、失業者に住宅手当を最大6カ月間支給する制度を創設する方針を固めた。地域によって変わるが、支給額を月額数万円とし、2009年度の補正予算案に1000億円程度を盛り込む見通し。職と住宅を同時に失う失業者を救済する狙い。住宅の取得を促し、就職活動がしやすい環境を整備する。低所得者向けに生活費を貸し付ける制度も拡充する。…支給対象は就職活動をしている求職者とし受給要件を生活保護よりも緩和。預金などをある一程度持っていても手当を受けられるようにする。」(『日本経済新聞』2009.04.10)

建設産業・経営

●「景気の急速な悪化を受けて民間事業者による都市開発事業が途中段階で頓挫するケースが増えていることから、国土交通省は、都市再生機構による民間開発支援を強化する。同機構が民間事業者から土地などを取得して基盤整備を行い、その後に整備敷地を売却したり定期借地権を設定したりして民間開発事業の実施につなげる手法を想定している。都市機構による都市再生事業は、政府の独立行政法人整理合理化計画に基づき縮小させる方向にあるが、景気後退への緊急対応として支援を強化する必要があると判断した。国交省は「地方都市も含めて対象事業を選び取り組む」(佐々木基官房審議官)としている。」(『建設工業新聞』2009.04.09)
●「民間調査会社の東京商工リサーチのまとめによると、08年度の建設業の倒産は4540件(前年度比11.0%増)で、5年ぶりに4500件を上回った。負債総額は1兆3984億円(67.0%増)と5年ぶりの1兆円超え。負債100億円以上の大型倒産が17件と前年度(4件)を大きく上回った。「運転資金の欠乏」と「他社倒産の余波」による倒産が増えたのが特徴で、同社は、金融機関の融資姿勢の厳格化や不動産デベロッパーの相次ぐ倒産が建設業に波及したとみている。」(『建設工業新聞』2009.04.09)

まちづくり・住宅・不動産・環境

その他