情勢の特徴 - 2009年5月前半
●「国土交通省は、住宅や建築物の耐震化を緊急的に促進するため、支援策を強化する。住宅と多数の人が利用する建築物の耐震化について、住宅・建築物安全ストック形成事業による補助率を現行の15.2%から23%に引き上げる。住宅の補助対象は、緊急輸送道路や避難道路沿いの物件に限定していたが、この要件を撤廃。耐震性能が低く倒壊の危険性が高い住宅・建築物に対しては、補助限度額を1.5倍に引き上げる。加えて、09年度中の着手という条件を課した上で、地方自治体が多額の財政負担をせずに民間建築物への支援やソフト対策を行うことができるモデル事業も実施する。」(『建設工業新聞』2009.05.01)
●「国土交通省が4月30日発表した建築着工統計によると、08年度の新設住宅着工戸数は103万9180戸(前年度比0.3%増)で、建築基準法の施行の影響で大きく落ち込んだ07年度よりは若干回復したものの、07年度を除くと1966年度以来の低水準となった。着工床面積は8634万4000平方メートル(2.3%減)と07年度を下回った。国交省は、住宅価格の上昇や在庫の増加に年度後半の景気の急速な悪化が重なり、着工低迷につながったとみている。」(『建設工業新聞』2009.05.01)
●「政府は政府開発援助(ODA)の中核事業である円借款の仕組みを見直す。発展途上国のインフラ整備で、調査から融資実行を経て完成まで平均7年かかっている事業期間を半分程度に短縮する。返済不要な無償資金協力や民間の投融資と組み合わせる『混合型援助』も推進。道路、電気などの基礎インフラだけでなく、病院や学校などの施設建設まで一体的に支援する。早ければ来年度から実施し、日本の国際貢献をアピールする。」(『日本経済新聞』2009.05.04)
●「財務省は8日、国債と借入金、政府短期証券を合計した『国の借金』の総額が2009年3月末時点で846兆4970億円になったと発表した。昨年3月末から2兆7426億円減少した。09年4月1日時点の推計人口(概算値)の1億2760万人で計算すると、一人あたりの借金は約663万円になる。国の借金の内訳をみると、国債は昨年3月末よりも3兆8796億円少ない680兆4482億円、借入金は4072億円多い57兆5661億円。一時的な資金不足を補う政府短期証券は7298億円多い108兆4826億円になった。」(『日本経済新聞』2009.05.09)
●「2009年度補正予算に計上され複数年度にわたって事業を行う、新規30基金のうち建設事業に結びつく可能性のある基金として少なくとも6基金が浮上している。いずれも国土交通省関係以外。医療施設の耐震化や農業・林業土木が中心で、6基金合計額は4402億円。この10年間で急激に縮小した公共工事市場にとって、複数年にわたる事業が確保される新たな基金創設は市場拡大の追い風になりそうだ。新規30基金のうち建設工事発注の可能性が高いのは、▽医療施設の耐震化基金▽社会福祉施設などの耐震化基金▽耕作放棄地再生利用基金▽地域資源利用型産業創出緊急対策基金▽森林整備加速化・林業再生基金▽地域グリーンニューディール基金−−の6基金。ただ国費・事業費ベースともに最大規模の09年度補正予算と基金創設は、雇用・金融対策含め景気回復政策のため、拡大する公共工事市場を中長期的に維持するのは難しいとの見方が一般的だ。そのため与党や建設業界の一部からは、公共工事市場が回復するこの時期にこそ、供給過剰含めた産業構造の問題に取り組むという、先を見喝えた対応が問われているとの声も出始めている。(『建設通信新聞』2009.05.14)
●「日本土木工業協会(土工協、中村満義会長)は、公共工事の設計変更の実態を把握するため会員30社を対象に行った調査の結果をまとめた。それによると、発注者側に建設変更を求めた要因として最も多かったのは『施工条件と実際の工事現場の不一致』。建設変更が認められた割合は『一部』を含め回答数の8割を超えたものの、2割程度は認められず、その理由には『前例がない』や『議会承認が下りない』など、受注者にとっては納得し難いものもあった。設計変更に必要な書類は、受注者が作成するケースが大半で、発注者との割合分担が不適切との見方もある。」(『建設工業新聞』2009.05.07)
●「自民党の『公共工事品質確保に関する議員連盟』(品確議連、会長・古賀誠選対委員長)は、13日に総会を開き、公共事業の発注機関に対する緊急アピールをまとめた。政府の追加経済対策(経済危機対策)の実施により公共事業の発注増が見込まれている中で、地域の建設産業の再生や労働者の所得と雇用の確保を図ることや、最低制限価格の引き上げを実施するよう求める内容。地域の建設業者が継続的に経営できる公共工事の受注価格水準は少なくとも予定価格の90%以上であり、適正な価格水準を確実に担保することが必要だと強調している。」(『建設工業新聞』2009.05.14)
●「国土交通省は、同省発注工事の請負業者に対して行う工事成績評定の要領を一部改定し、適用を開始した。出来形や品質、地域への貢献などの評価を細分化するとともに、施工体制や施工状況の点数配分などを見直すことで、施工状況の良否によって成績評定に大きな差がつくよう要領を改めた。プラス側の配点を大きくしている項目が多く、施工が優れていた場合に、より高い点数を獲得できる形。総合評価落札方式の導入案件では、技術提案の履行の確認評価結果も明記するとした。維持管理工事で原則チェックする項目も明確化した。新要領は4月1日以降の中間技術検査・完成検査から適用している。各地方整備局を通じて、地方自治体にも周知する。」(『建設工業新聞』2009.05.15)
●総務省が1日発表した労働力調査(速報)によると、3月の完全失業率(季節調整値)は前月に比べ0.4上昇し、4.8%となった。悪化幅は、一時的に失業率が上昇した1967年3月の0.5ポイントに次ぐ最悪の水準。2月にも0.3ポイント悪化しており、同省は「これまでにみられなかったような雇用情勢の急速な悪化状態が続いている」としている。 完全失業者数は、335万人と前年同月比で67万人増。増加幅は過去最大。このうち、解雇など「勤め先都合」は、前年同月比で50万人増の160万人。年度末の企業のいっせい解雇を裏付けている。(『しんぶん赤旗』2009.05.02より抜粋。)
●人事院は1日、民間で夏季一時金の大幅削減がみられるとして、すでに決まっている国家公務員の夏季一時金(期末勤勉手当)を0.2ヶ月分減額するよう、国会と内閣に臨時勧告を行った。勧告通りに実施されると、6月に月給の2.15ヶ月分支給される予定だったのが1.95ヶ月分となり、一般行政職で平均約8万円も減額される。公務員は労働基本権がはく奪されているため、人事院が民間の賃金を調べて8月に勧告をだしているが、前倒しで減額を勧告するのは初めて。一時金カットは与党がもとめていたもので、政治的圧力に追随し、内需拡大による景気回復に逆行するものである。(『しんぶん赤旗』2009.05.02より抜粋。)
●大手ゼネコンの大成建設(本社・東京)で11年間、偽装請負で働かされ、解雇されたのは違法だとして、都内の男性(40)が7日、同社に正社員化などを求め、東京地裁に提訴した。製造業と並んで偽装請負が横行するゼネコン業界での告発として注目される。男性は、全労連・全国一般東京地本一般合同労働組合の組合員。訴状などによると、男性は1997年5月から大成建設の建築設計業務に従事。所属する下請けの設計会社がかわっても、大成建設の社員から日々の業務や時間外労働などを指揮・命令され、報酬も時給で支払われた。2008年11月、派遣契約などへの切り替えを拒むと、「業務が終了した」との名目で解雇された。 大成建設との間には事実上の使用従属関係があり、「黙示の労働契約が成立している」としている。(『しんぶん赤旗』2009.05.08より抜粋。)
●「建設業界の雇用情勢悪化に歯止めがかからない。これまで低い入職率をあらかじめ見越して統計上、実態以上に高い数値を示していた『建設躯体工事の職業』など建設関係の職業別有効求人倍率の減少が続いているほか、3カ月連続で建設業の就業者が平均して前年同月比20万人超の減少となった。昨年秋以降、製造業の雇用情勢悪化が大きな問題となっていたが、受け皿ともみられていた建設業界は、主要産業の中で製造業に次ぐ雇用情勢の厳しさに直面しつつある。2008年度公共工事市場は、主要前払保証3社の統計で10年連続減少に歯止めがかかったほか、今年度は大幅な公共工事市場拡大が見込める。そのため、民間工事需要の急激な落ち込みを公共工事で今後どの程度カバーし、日本経済回復につなげるかが、建設業界の雇用情勢のカギを握ることになりそうだ。」(『建設通信新聞』2009.05.15)
●「日本建設業団体連合会(梅田貞夫会長)が会員企業51社を対象に調査した2008年度受注実績が24年ぶりに12兆円割れを記録し、バブ崩壊後最低額となった。08年度受注総額は前年度比14.8%減の11兆5280億円で、減少額2兆円の約7割が不動産業からの受注減となっており、マンション不況の影響が色濃く表れた。国内受注額は、13%減の10兆9290億円で、うち民間は21%減の8兆1130億円と6年ぶりに落ち込んだ一方、官公庁は22.4%増の2兆7770億円と4年ぶりに好転した。 民間の内訳は、非製造業が22.5%減の6兆3530億円、製造業が15%減の1兆7590億円で、単月の推移を見ると、非製造業は7月以外はすべて減少し、製造業は11月以降5カ月連続で減少した 非製造業では、不動産業が37.2%減の2兆3100億円と過去最大の減少幅を記録し、その減少額は1兆3660億円と全体の減少額の約7割を占める結果となった。」(『建設通信新聞』2009.05.01)
●「日本土木工業協会(土工協、中村満義会長)は、著しい安値での受注競争が激化している公共工事について、適正な受注活動を実現するための取り組みを強化する。協会としての考え方をまとめた通知を理事会で決定、8日付で会員会社に送付した。通知では、ダンピング受注による工事品質の低下や労働条件の悪化といった悪影響にあらためて懸念を表明。『独占禁止法で禁止されている不当廉売行為に該当する恐れがある行為で、公共工事の積算基準も低下させる』と警鐘を鳴らし、合理的で公正な受注活動に徹するよう各社に自制を促している。」(『建設工業新聞』2009.05.11)
●「国土交通省は、2008年度の建設工事受注動態統計調査報告を公表した。受注高は、前年度比9.4%減の47兆9373億4100万円で、2000年の調査開始以降、初めて50兆円を割り込んだ。公共機関からの受注3.7%増となった一方で、民間などからの受注が17.3%減と大幅に減少し、民間の減少分を公共発注で支えることができなかった格好だ。民間からの受注が減少した要因としては、建築・建築設備(1件5億円以上)の不動産業が41.2%減の2兆1608億5500円で、調査開始以降初めて前年度比が減少したことが響いた。不動産業の中でも特に、住宅が前年度比15.5%減の1兆990億700万円で、過去最低値記録した。一方で、公共機関からの受注工事(1件500万円以上)では、国の機関からの受注が6.5%増の3兆9793億3900万円、地方の機関が1.2%増の5兆7611億9600万円と増加した。」(『建設通信新聞』2009.05.13)
●「不動産大手5社の2009年3月期連結決算が出そろった。全社が経常利益で過去最高を更新した前年から一転、マンションの販売低迷など市況悪化の影響で全社が減益となった。 オフィスビル事業は比較的堅調で、売上高を押し上げた。10年3月期は、投資家向け物件販売の落ち込みなどから、三井不動産と野村不動産ホールディングスが減益を見込んでいる。5社すべてが減益となった背景には、増加したマンション在庫の評価損がある。」(『建設通信新聞』2009.05.14)
●「国土交通省は13日、3月末(08年度末)時点の建設業許可業者数を発表した。業者数は50万9174宅前年度末に比べ0.3%、1646業者増えた。08年度に許可の更新期を迎えた業者が少なく、許可失効の件数が減ったことが微増の要困。新規に許可を取得した業者は前年度比7.5%減の1万8902業者で、新規許可業者が2万業者を下回るのは04年度以来2度目で、国交省は『業者数が減る傾向は変わらない』としている。08年度の新規許可取得業者数は、最も少なかった04年度の1万8220業者に次ぐ低い数字。」(『建設工業新聞』2009.05.14)
●「民間調査会社の不動産経済研究所は、超高層マンションの建設・計画状況(09年3月末時点)をまとめた。09年以降に完成を予定している20階建て以上の超高層マンションは、全国で463棟あり、総戸数は14万3826戸と、前回調査(08年3月末時点)よりも95棟、2万5980戸の増加となった。超高層マンションは人気が高く、値崩れが起きにくいと言われており、『人気ぶりが、大都市圏から地方中核都市・県庁所在地などにまで波及している』(同社)という。ただし、同社は、マンションの販売不振やデベロッパーの供給計画縮小などが影響し、09年の竣工をピークに徐々に減少するとみている。」(『建設工業新聞』2009.05.12)