情勢の特徴 - 2009年6月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「課徴金の適用範囲を拡大することを盛り込んだ改正独占禁止法が3日成立したことで、小売業界で広がる不当な安値競争などに幅広く網をかけやすくなる。産業構造のサービス化の流れをにらみ、独禁当局は大手製造業や建設業だけでなく、規模や業種を問わず透明な商慣行を求める姿勢を鮮明にしている。一部では独禁当局の権限強化を警戒する声も出ている。」(『日本経済新聞』2009.06.04)
●「上場企業の2009年3月期決算は、最終損益が7年ぶりの赤字に転落した。世界的な景気後退による急速な需要の冷え込みが直撃したためだ。今回は製造業全体の不振が主因で、通信など限られた業種が足を引っ張った02年3月期とは『質的な変化』が目立つ。企業は6年連続の増益局面で自己資本を積み上げ、財務内容はなお底堅いうえ、リストラ前倒しなど建設工業経営を模索している。」(『日本経済新聞』2009.06.07)
●「日本経済新聞社がまとめた2009年度の設備投資動向調査で、全産業(対象1475社、連結ベース、国内外合計)の当初計画が08年度実績比で15.9%減となった。2年連続のマイナスで、減少幅は1973年の調査開始以来で最大。基幹業種の電気機器や自動車の投資抑制で製造業が24.3%落ち込むのが響く。在庫調整の進展で足元の生産には底入れの兆しも出ているが設備過剰の状況は続きそうで、10年度も本格的な回復は期待できない。」(『日本経済新聞』2009.06.08)
●「2009年度補正予算に計上され複数年度にわたって事業を行う、新規30基金のうち建設事業に結びつく可能性のある基金として少なくとも6基金が浮上している。いずれも国土交通省関係以外。医療施設の耐震化や農業・林業土木が中心で、6基金合計額は4402億円。この10年間で急激に縮小した公共工事市場にとって、複数年にわたる事業が確保される新たな基金創設は市場拡大の追い風になりそうだ。新規30基金のうち建設工事発注の可能性が高いのは、▽医療施設の耐震化基金▽社会福祉施設などの耐震化基金▽耕作放棄地再生利用基金▽地域資源利用型産業創出緊急対策基金▽森林整備加速化・林業再生基金▽地域グリーンニューディール基金−−の6基金。ただ国費・事業費ベースともに最大規模の09年度補正予算と基金創設は、雇用・金融対策含め景気回復政策のため、拡大する公共工事市場を中長期的に維持するのは難しいとの見方が一般的だ。そのため与党や建設業界の一部からは、公共工事市場が回復するこの時期にこそ、供給過剰含めた産業構造の問題に取り組むという、先を見喝えた対応が問われているとの声も出始めている。(『建設通信新聞』2009.05.14)

行政・公共事業・民営化

●「政府の追加経済対策(経済危機対策)を受け、全国の自治体でさまざまな入札契約制度改革が進展してきた。地域の建設業者を適正に評価するため、佐賀県では入札参加業者の地域要件を細分化。新潟県では一定の工事について地元貢献企業への優先発注を開始した。中小企業の厳しい経営環境を踏まえ、福岡市では工事完了検査体制を強化して代金支払を迅速化。福島、宮崎、岐阜の各県では総合評価方式の入札を拡充した。国土交通、総務両省では、官公需法に基づく09年度の中小企業向け契約目標が来週にも閣議決定されるのを待って、適正な入札契約の実施をあらためて要請する通達を自治体に出すことにしており、こうした先進事例を合わせて紹介する考えだ。」(『建設工業新聞』2009.06.05)
●「国土交通、文部科学の両省は、公立学校の建物の耐震化を促進するため、建築技術の専門知識が不足しがちな全国の教育委員会を対象に、CM(コンストラクション・マネジメント)方式の普及・啓発に乗り出した。…学校の建物改修工事は、地元の建設会社が請け負うことが多いものの、耐震化の技術を保有する建設会社は地域には少ない上、多くの工事が夏休み期間に集中して消化しきれなくなりやすいのも現状。CM方式を導入して耐震技術の保有会社がCMR(コンストラクション・マネジャー)として事業に参画するようになれば、こうした課題も解決にもつながるとみている。地元建設業者の活躍の場が広がることは、工事の受注機会の確保・拡大につながり、景気対策としての度重なる補正予算の効果を地域経済にもたらすメリットも期待できる。…国交省は、学校の建物の耐震化の取り組みが加速していることでCM方式の導入ニーズが高まっているとみており、『市町村への普及の一つのきっかけにしたい』(総合政策局建設業課)と説明した。」(『建設工業新聞』2009.06.10)
●「東京都と横浜市、川崎市は2009年中に、京浜3港(東京港、横浜港、川崎港)の基本指針を策定する法定協議会を設置する。合併など自治体間の重要な計画を決める法定協における議論で、強制力≠フある経営戦略や設備投資計画をまとめる。港湾管理関連の法定協の設置は全国でも珍しい。11年度をめどに基本指針の策定を目指す。都と2市は各議会の議決を得て、法定協『京浜港連携協議会』(仮称)を発足する。法定協は地方自治法に定められた組織。協議会に参加する自治体は、協議会が作った総合計画を守らなければならない。都と2市は今春、3港に続けて入っても入港料が1港分で済むよう見直した。港湾コストを引き下げ、国際競争力を高めなければ国際海運の基幹航路を維持できないとの危機感からだ。…都と2市は、法定協が京浜3港の港湾計画や規制監督の受け皿となり、管理・運営を埠頭会社・埠頭−公社連合が担当することで、世界的に競争力の高い港湾の経営体制に近付く道筋を付けたい考えだ。」(『日本経済新聞』2009.06.11)
●「自民党の道州制推進本部(本部長・保利耕輔政調会長)がまとめた『道州制基本法案』の骨子が11日、明らかになった。2016年にも現行の都道府県を再編し、道州制へ移行することを明記。行政の基本単位で、現在の市に相当する『基礎自治体』は原則として『人口30万人以上』とすることもうたった。次期衆院選のマニフェスト(政権公約)に盛り込み、地方分権推進をアピールする。…道州制への移行を円滑にするために必要な『基礎自治体』については」約1800市区町村の現状よりさらに合併を加速。規模は原則として『人口30万人以上』とし、『700〜1000程度に再編』する。ただ、地方の実情にも配慮し、『少なくとも人口川万人以上』との基準も設ける方向だ。全国の区割りに関しては、具体案は見送る方向だ。」(『日本経済新聞』2009.06.11)
●「東京都は、東京外かく環状道路(外環、関越自動車道〜東名高速道路約16キロ)の整備に伴う用地取得に着手する。近く、国土交通省と業務受託の協定を結び、用地測量などの業務を発注する予定だ。2009年度6月補正予算に、関連経費5000万円と地方負担金25億円をそれぞれ計上している。また、今回同区間が整備計画路線に格上げされたことを受け、東名以南の構想について、09年度内にも両者が検討開始に向け正式に合意する模様だ。」(『建設通信新聞』2009.06.12)
●「関東地方整備局ら国のブロック機関、関東地域を中心とした都県政令市は11日、法律などに基づく『首都圏広域地方計画』原案、『関東ブロックの社会資本の重点整備方針』素案をまとめたと発表した。広域地方計画はおおむね10年後の将来像として国際競争力の強化など五つの目指すべき方向を明示。重点整備方針は12年度までの5年間が対象期間で、広域地方計画の目指すべき方向にほぼ連動した重点5戦略、首都圏3環状道路の整備率78%というアウトカム指標を掲げている。いずれも今年4月に圏域の市区町村提案を受けており、7月10日まで一般からの意見を受け付けた上で成案化する。」(『建設工業新聞』2009.06.12)
●「都市再生機構への土地の持ち込みが急増している。都市機構がまとめた月別の土地持ち込み状況によれば、昨夏までは1けた台だったのが、昨年9月から急増し、今年3、4月には、100件を超えている。地域別で見ると、昨年4月〜今年4月の土地持ち込み件数(567件)のうち約8割を東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県が占め、中でも東京23区が7割弱を占めている。住宅市場の低迷や経済状況の急激な悪化により、良問プロジェクトが停滞するケースが生じている中、都市機構の活用が進んでいる状況がうかがえる。」(『建設工業新聞』2009.06.12)
●「政府は12日、『官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律』(官公需法)にもとづき、2009年度の『中小企業者に関する国等の契約の方針』を閣議決定した。中小企業向け契約目標率は、08年度目標率を1.4ポイント上回る過去最高の52.4%となった。補正予算を含む官公需総額は9兆9239億円のため、中小企業契約目標額は5兆1993億円となる。このうち、工事の総予算額は4兆3573億円で、中小の契約目標額が2兆3311億円、契約目標率は53.5%と全体の目標率を1.1ポイント上回っている。…09年度の契約方針で新たに盛り込まれた国などの措置は▽災害協定などによる地域貢献について、地域の企業を適切に評価▽工事などに加えて、役務の発注でも総合評価方式の導入・拡大▽官公需情報を一括して検索可能とするシステムの構築▽各府省の数値に加え、192あるすべての独立行政法人ごとに契約実績と目標を公表−など。」(『建設通信新聞』2009.06.15)
●「国土交通省は、社会資本整備重点計画に基づいて各地ブロックごとに策定する『社会資本整備重点方針』の案をまとめた。北海道と沖縄を含めた全国10のブロックごとに、道路や空港、港湾などの社会資本の具体的な整備目標や主要施策などを示した。関東ブロックでは、東京外かく環状道路と首都圏中央連絡自動車道といった高規格道路の整備、近畿ブロックでは国営飛鳥平城宮跡歴史公園の設備事業などが主要プロジェクトに挙がっている。国交省は、7月10日まで同案に対する意見を募集しており、今夏に正式決定する。」(『建設工業新聞』2009.06.15)
●「関東地方整備局は08〜12年度の5年間を対象期間とする『道路の中期計画案(関東地方版)』をまとめ、ホームページ上での公表を11日から開始した。計画案では重点5戦略、具体的な10の施策を掲げるとともに、改めて首都圏3環状道路の重点的整備を打ち出している。国際競争力の強化や地域間格差の是正などに寄与する道路整備への期待が依然として高い中、選択と集中、徹底したコスト縮減をテーマに着実な整備と管理を実施する。…▽首都圏中央連絡自動車道▽束京外かく環状道路=東京都世田谷区〜練馬区、埼玉県三郷市〜干葉県市川市(09年度一部開通)▽川崎縦貫道路=殿町〜大師JCT(10年度完成)▽中央自動車道▽中天環状品川線▽中央環状新宿線(09年度完成)」(『建設工業新聞』2009.06.15)

労働・福祉

建設産業・経営

●「建設事業の採算性を示す単体の完成工事総利益(粗利益)率で、09年3月期は主要ゼネコン30社のうち海外事業での採算悪化の影響を受けた大手などを除き、全体的に改善が進んだ。準大手クラスを中心に3分の2以上の社が前期に比べて粗利益率が上昇。工種別でみると、建築は数年前から徹底してきた選別受注などの効果が表れる一方、土木は公共投資が減少する中で競争が激化し、活路を求めた海外事業でも利益確保に苦慮する姿が目立つ。今期については先行きの不透明感が強まり、半分以上の社が厳しい予想を立てている。」(『建設工業新聞』2009.06.03)
●「全国中小建設業協会(岡本弘会長)が行った『地域建設業経営強化融資制度利用調査』で、同制度利用が回答企業の1割程度にとどまっていることが明らかになった。理解不足のほか、中小・零細企業の主要取引金融機関の信用金庫・信用組合が、同制度利用の対象外になっていることも大きな理由。全中建は調査結果を踏まえ、『中小・零細企業で地域建設業向け融資制度の利用がなぜ進まないのか、国土交通省もきちんと検証してほしい』と話している。」(『建設通信新聞』2009.06.05)
●「東京商工リサーチがまとめた2009年5月の建設業倒産は、前年同月比21・3%減の320件にとどまった。3カ月連続の減少で、直近1年間では最小件数となった。金融機関の融資リスクを事実上政府が保証する『緊急保証制度』が昨年10月禾から導入されており、同制度の効果が表れた形。…ただ今後の見通しについては、建設業と関係の深い製造業が9カ月連続、不動産業も6カ月連続して前年同月比で増加するなど、設備投資や不動産投資の低迷を踏まえ、『金融支援による資金環境緩和で当面は資金繰りがしのげても、夏場に発注工事が減少するいわゆる夏枯れ″時期を控え、先行きの不透明感は払しょくできない』としている。」(『建設通信新聞』2009.06.11)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「高齢者が安心して住み続けられる住宅の供給を促進するため、高齢者居住安定確保法(高齢者住まい法)が今国会で改正された。住宅分野と福祉分野の政策を連携させ、ソフト・ハードの両面から一体的に取り組むようにするのが狙いだ。…改正法では、所管省庁が従来の国交省単独から、厚生労働省との共管に変更されており、より総合的な取り組みが可能となった。回が住宅と福祉の両面を備えた基本方針を策定し、これに沿って都道府県などの地方自治体が『高齢者居住安定確保基本計画』を作成する仕組みが設けられた。高齢者生活支援施設と一体となった『高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)』の供給促進や、高齢者円滑賃貸住宅(高円賃)の制度改善なども図られる。大部分は、8月に施行される予定だ。…基本方針では、高齢者向け賃貸住宅と老人ホームの供給目標や、供給促進方策、高齢者居住支援体制の確保などについて、国全体としての方向性が示される。…自治体が策定する高齢者居住安定確保基本計画には、地域ごとの高齢者向け賃貸住宅と老人ホームの供給目標や、必要な施策などが盛り込まれる。改正法では、都道府県などに基本計画の作成義務を課してはいないが、両省は全都道府県に作成を求めている。」(『建設工業新聞』2009.06.10)
●麻生太郎首相は10日、2020年までの日本の温室効果ガス排出量削減の中期目標を05年比で15%にすると発表した。これは、温暖化対策の国際交渉で基準となってきた1990年比で、わずか8%。主要先進国で、ほぼ最後に最低水準の目標を出したとして、内外の厳しい批判を招くことは必至だ。13年以降の新たな温暖化対策に日本は本気で取り組む覚悟があるのかが問われる。(『しんぶん赤旗』2009.06.11より抜粋。)

その他