情勢の特徴 - 2009年6月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「不動産経済研究所が16日発表した5月のマンション市場動向は首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の発売戸数が前年同月比19.4%減となり、21カ月連続で前年実績を割り込んだ。売れ行きを示す契約客は前月比6.0ポイント改善し70.7%で、2カ月ぶりに好不調の目安となる70%を超えたが、在庫水準は依然低い。…1〜5月の実績は前年同期比で26.7%の減少となり、年間の販売戸数に関しても1月時点の予想である前年比7.5%増の4万7000戸から『4万戸台が確保できればいいのでは』との見方を示した。近畿圏(大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県)の5月のマンション市場動向は契約率が64.5%と前月比で13.2ポイント、前年同月比でも8.2ポイントの改善となった。販売在庫は5889戸で前月から281戸減った。新規販売戸数は1411戸と前年同月比で21.2%の減少だった。」(『日本経済新聞』2009.6.17)
●「政府は23日の臨時閣議で、『骨太方針2009』を決めた。財政再建目標は先送りし、社会保障費の歳出抑制方針を撤回するなど後退した。」(『日本経済新聞』2009.06.24)
●麻生自民・公明内閣が23日の閣議で決めた「骨太の方針2009」は「『骨太の方針2006』等を踏まえ、歳出改革を継続」するとの文言が盛り込まれたままだ。「社会保障費抑制路線」を11年度予算案まで継続することを宣言したのが「骨太の方針2006」だ。これを「踏まえ」という表現に、「抑制路線」にあくまでしがみつく姿勢が表れている。政府の税財政の「中期プログラム」と「09年度税制改正法」付則にのっとって「社会保障の機能強化と安定財源確保を着実に具体化する」−。「骨太の方針2009」はこう明記した。「中期プログラム」と「税制改正」法付則は、消費税を増税するための法案を11年度までに成立させることを盛り込んでいる。「骨太方針」はこれに沿って、消費税増税を「着実に具体化する」ことを盛り込んだ。同方針を取りまとめた経済財政諮問会議(議長・麻生首相)では、政府の財政「健全化」目標を達成させるために、消費税を段階的に12%まで増税する試算(9日)が示された。(『しんぶん赤旗』2009.06.24より抜粋。)
●「国土交通省が24日に公表した2009年度の建設投資見通しによると、総額(名目ベース)は前年度並みの47兆2200億円となり、3年連続で50兆円を割り、1978年以来の低水準となる見通しだ。このうち、政府建設投資は09年度補正予算が5月に成立したことから前年度比14.1%増の19兆8400億円となった。一方、企業の設備投資や雇用情勢・所得環境で厳しい状況が続くと予想されることから、民間投資は8.2%減の27兆3800億円で3年連続のマイナスとなる見通しだ。」(『建設通信新聞』2009.06.25)

行政・公共事業・民営化

●「着工が決まった東京外郭環状道路(外環道)の未着工区間(練馬−世田谷間)の国との共同事業主体に首都高速道路会社が名乗りを上げた。1兆円を上回る一大プロジェクトで、首都高は「事業拡大の好機」とにらむ。これで東日本及び中日本も含めた3つの高速道路会社が参画を表明。旧日本道路公団などの民営化に伴って誕生した道路会社3社が始めて大舞台で競い合う。…首都高速道路会社は今回、事業主体に意欲を示した理由として技術的な挑戦をあげる。建設は地下40メートル超を掘るトンネル方式。「他社よりもトンネル工事や管理で実績があり、密集地での用地買収もノウハウがある」(同社幹部)という。総額で1兆2820億円にのぼる未着工区間の事業費の工面では、国と高速道路会社が事業主体となり、税金と料金収入を充てる「合併施行方式」を採用する。総額のおよそ1〜3割を料金収入で賄う見通し。高速道路会社の請負金額は管理費や建設期間などによって変わるが、実入りとなる料金収入に見合った範囲に収まるものと見られる。国交省は3社に対するヒアリングを実施し、建設や管理体制などを評価した上で、早期に事業者を決定するもようだ。」(『日本経済新聞』2009.06.18)
●「国土交通省は、08年度の同省直轄工事の契約実績(速報値)をまとめた。08年度の契約額は約1.7兆円で、前年度実績と比べ約12%、約1840億円の増加となった。08年度第4四半期(09年1〜3月)の増加率が約15%と高くなっており、特に中小建設業者向けのC・Dランク工事が約2割増となっている。08年度第1次・第2次補正予算で追加された工事が、08年度内に多く発注されたことで全体が底上げされたとみられる。建設業の工事受注では、景気後退で民間工事の発注が低迷しているため、公共工事が底支えする状況が顕在化しており、09年度補正予算で措置された工事が順調に発注されていくと、今後もこうした傾向が続きそうだ。」(『建設工業新聞』2009.06.18)
●「国土交通省は、同省直轄の建設コンサルタント業務などの平均落札率(速報値)をまとめた。08年度の実績を見ると、土木コンサルタントと地質調査で平均落札率が下落する傾向が続いており、前年度よりも5%強の落ち込みとなった。測量は若干持ち直したものの、大幅な改善には至っていない。国交省は、調査・設計業務で、依然として低価格入札が多発している状況を踏まえ、追加対策を講じていく方針。管理技術者の手持ち業務量に関する制限を強化する方向で検討を進めており、調整が済み次第、通達を出して実行に移す。このほかにも効果的な対策の実施が可能かどうか探っていく。」(『建設工業新聞』2009.06.24)
●「不動産開発プロジェクトの延期や頓挫が全国で相次いでいる。…開発資金の出し手を失い、危機に陥った開発プロジェクトを救う緊急対策として、先月末に成立した09年度補正予算には、民間都市開発推進機構(民都機構)による大型支援が盛り込まれた。民都機構が自己調達する資金を合わせると総額4000億円が開発プロジェクトに供給される仕組みだ。…伴襄理事長に今後の取組などを聞いた。…『長期的な資金の融通は、そもそも公的金融機関の役割だった、これまでは日本政策投資銀行がその役割を担ってきたが、完全民営化で従来のようにはいかなくなった。そこで公的機関である民都機構に出番が回ってきた。…今回の09年度補正予算で2000億円(同額の民間資金を充てるので支援規模としては4000億円)という予算が時限的、緊急的、例外的に計上された。』…『資金繰りが悪化した開発プロジェクトに公的な資金を供給するのが狙いだ。主なメニューは、民都機構が工事費などの一部負担する共同事業者として事業に参加し、事業者に長期・低利の貸付を行う<参加業務>と、この参加業務の支援時期を土地取得段階まで早めた<参加業務の拡充型>(期間は11年度末までの3ヵ年限定)、と都市再生緊急整備地域内で都市開発事業者に金融支援を行う<都市再生支援業務>の3業務で、これらに予算を投資する』…『支援総額の4000億円のうち、初年度で2000億円程度を実行するつもりだ。』」(『建設工業新聞』2009.06.24)
●「高速道路会社5社の2008年度発注工事の不調・不成立の発生件数が、前年度に比べ減少傾向にあることが明らかになった。発注件数に対する発生率も、5社とも減少に転じている。07年度には前年度比で約8割の大幅増となっていたが、各社が打ち出した不調・不成立対策が奏功してきたという見方もある。一方、依然として、小規模で施工個所が点在していたり、制約条件があるなどから、補修・維持修繕系の工事での発生割合が大きい。制度面の改善とともに、入札公告や入札方式の周知徹底など、参加者確保のためのさらなる取り組みが必要との意見もある。…今後の課題には、『入札公告や入札方式の業界への周知』(中日本高速)、『材料費や施工条件の変動リスクに対する発注者としての対応(設計変更など)の明確化』(阪神高速)などが挙がっている。」(『建設通信新聞』2009.06.26)

労働・福祉

●「国土交通省は、民間建築物のアスベスト(石綿)対策の拡充に向けた検討に入る。アスベストが使われている可能性がある民間建築物が全国で約280万棟あると推計、一方で調査や除去の費用などに国の補助制度を活用した制度を設けている自治体が全体の1割にとどまっていることが、国交省の調査で判明。対象建築物の解体は2028年前後にピークを迎え、解体棟数は現在の約2倍になる模様だ。こうした実情やトレモナイト問題など新たな課題を踏まえ、アスベスト対策を改めて検討する。特に『建築物調査者』と『アスベスト台帳』整備の検討を先行して進めるほか、対策費や不動産評価への影響、調査の優先順位や方法なども検討していく。」(『建設通信新聞』2009.06.24)

建設産業・経営

●「ゼネコン各社の研究開発費が減少傾向にあることが分かった。09年3月期の決算短信で研究開発費(連結ベース)を開示したゼネコンを中心に日刊建設工業新聞社が調査したところ、研究開発費が前期に比べ増加したのは23社中10社と半数に届かず、研究開発費の総額も前期比0.6%減の525億7900万円にとどまった。全体的な減少傾向の中で、技術研究所の拡充に動く大手を中心に研究開発投資に積極的な企業と、厳しい経営環境を反映して研究開発投資を減らす企業とで、二極化が進む傾向もみられる。受注競争が激しさを増す申、工事を持続的に獲得していくためには研究開発が不可欠。研究開発投資の多寡が今後、各社の業績を左右する大きな要素になる可能性もある。」(『建設工業新聞』2009.06.17)
●「日本建設業団体連合会(日建連、野村哲也会長)は、4月に公表した『建設技能者の人材確保・育成に関する提言』について、実現に向けた取り組みを始動させた。対応策を検討・具体化するため、労働・生産システム委員会の人材確保・育成専門部会(部会長・山下雅己戸田建設常務執行役員)が18日、本年度の初会合を開催。提言に盛り込んだ課題ごとにワーキンググループ(WG)を設置し、問題点の洗い出しや実施方策を検討などを行う方針を確認した。」(『建設工業新聞』2009.06.19)
●「東京商工リサーチがまとめた2009年3月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比1.3%減の357件となり、4カ月ぶりに前年同月を下回った。政府の「緊急保証制度」の効果も多少うかがえる結果となった。負債総額は、16.7%増の703億3000万円にのぼった。また、負債が10億円以上の倒産が14件発生した。平均負債額は1億9700万円。改正建築基準法関連倒産は6件発生し、累計では188件となった。」(『建設通信新聞』2009.06.22)
●「建設経済研究所は23日、08年度の『主要建設会社決算分析』を発表した。対象は大手から中堅までの40社。単体受注高の総額は前年度比12.1%減の11兆3386億4800万円と2年連続で減少。経常利益の総額も1.2%減の1858億4800万円にとどまった。不動産不況による建築事業の落ち込みが響いた。資金繰りに苦しむ企業も多く、運転資金の調達で有利子負債の総額は07年度より4000億円近く増えている。」(『建設工業新聞』2009.06.24)
●「大手住宅メーカーが自社で建築・販売した住宅を買い取り、リフォームしたうえで第三者に再販売する事業を拡大する。積水ハウスは2010年1月期の販売数をこれまでの累計の2倍にあたる約100棟に増やし、ミサワホームは新規参入した。今月から始まった長期優良住宅制度で行政も良質住宅のストックづくりを後押ししている。各社とも今後、中古住宅市場が拡大すると判断。物件の魅力を高めた上で流通を活性化し、新たな需要創出を狙う。…日本では高度成長期に大量供給された住宅が多いほか、湿度が高く住宅が傷みやすいことなどから住宅の資産価値の目減りが早く、20年もするとほとんど価値がなくなる場合が多い。このため中古住宅の販売棟数は年間約15万〜20万と欧米に比べて極端に少ない。住宅ローン減税などの優遇措置が受けられる長期優良住宅制度は新築物件が対象だが、『住宅の価値を高めることで中古市場を育成する』(国土交通省)狙いがある。…住宅大手9社は08年に『優良ストック住宅推進協議会』を設立。耐震などの一定の性能を持ち、点検・修理を適切に受けた長期居住可能な住宅を『スムストック』とし、こうした住宅の価値を査定する人材の育成も進めている。」(『日本経済新聞』2009.06.27)

まちづくり・住宅・不動産・環境

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