情勢の特徴 - 2009年7月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省がまとめた09年5月の新設住宅着工戸数は6万2805戸(前年同月比30.8%減)で、6カ月連続のマイナスとなった。持ち家、貸家、分譲住宅ともに減少。マンションの着工戸数は31道県でゼロとなったほか、首都、中部、近畿の3大都市圏のすべてで大きく落ち込んでおり、65年の集計開始以来、5月としては過去最低値を記録した。着工床面積は548万平方メートル(28.1%減)で、7ヵ月連続の減少だった。着工戸数の内訳は、持ち家2万3139戸(14.9%減)貸家2万5167戸(33.3%減)、分譲住宅1万3066戸(48.1%減)。分譲のうちマンションは6130戸(60.3%減)、一戸建ては6888戸(27.9%減)だった。…事務所や店舗、工事、倉庫などの民間非居住用建築物の着工床面積が248万平方メートル(49.7%減)と、単月分としては86年以降で最低を記録した。民間居住用建築物は572万平方メートル(28.9%減)で、所得減少と資金調達環境の悪化、在庫調整などが減少理由に挙がっている。」(『建設工業新聞』2009.07.01)
●厚生労働省が30日公表した2009年版労働経済白書は、日本の大企業(資本金10億円以上)は内部留保や株式配当を増やしたが、賃金は増やさなかったと分析した。同白書が内部留保に言及してこうした指摘を行うのは異例。白書は、昨年秋からの景気後退が深刻化した理由について、外需主導の成長が所得向上につながらないままだったことに加え、アメリカの金融不安で大きな経済収縮が引き起こされたと指摘。今後の展望として、経済収縮のもとでも雇用の安定棚を確保する「長期雇用システム」が基本だとの認識を示した。…賃金低下傾向の原因として、小規模事業所(5人〜29人)で05年から連続で賃金が低下するとともに、低賃金の非正規労働者が増加していると分析。国内需要を回復させるために、所得増加と格差縮小などが必要だとしている。(『しんぶん赤旗』2009.07.01より抜粋。)
●「10年度予算の概算要求基準(シーリング)が1日に閣議了解され、公共事業関係費は従来通り3%削減されることになった。一般歳出の規模は国全体で約52.7兆円と過去最大となったものの、景気浮揚効果に期待がかかる公共事業については当初予算の削減基調が継続されることになる。「経済危機対応等特別措置」として3500億円の特別枠が設けられるため、今後の焦点は、この予算がどれだけ公共事業関係費に振り分けられるかに移る。…シーリングによる公共事業関係費の削減分は2100億円となる。」(『建設工業新聞』2009.07.02)
●「東京都内の2009年分の路線価(1月1日時点)は住宅、商業、工業地を含む標準宅地平均(1平方メートル当たり)で62万4000円と前年比で7.4%下落した。下落は04年以来5年ぶり。再開発が進む足立区の西新井駅西口が横ばいとなる以外は昨年の急上昇の反動で総じて下落した。ただ、商業施設の集積など地域事情に応じて下落率にはばらつきがみられる。昨年に2ケタの上昇率だった多摩地区も下落に転じた。」(『日本経済新聞』2009.07.02)
●日銀が発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、業況判断指数(DI)は大企業製造業がマイナス48、中小企業製造業がマイナス57となった。前回の短観(3月)と比較して、大企業製造業のDIは10ポイント上昇したが、中小企業製造業DIは横ばい。中小企業非製造業のDIはマイナス44と9期連続で悪化した。…資金繰り判断DI(「楽である」と「苦しい」との差)は大企業は前回のマイナス4からプラス1に。中小企業も3ポイント上昇したが、水準はマイナス20と、なお「苦しい」が大幅に上回っている。(『しんぶん赤旗』2009.07.02より抜粋。)
●「建設業の景況感先行き見通しについては、大企業、中堅企業が9月段階でそれぞれわずかながらも回復、中小企業だけはさらに6月実績値より悪化するとした。国土交通省の5月受注動態調査、5月建築着工統計でいずれも減少が続いていることが先行き不安要因になっている。一方、雇用の過不足感を示す雇用人員判断(過剰から不足を引いた指数)は、大企業が3月のマイナス3から6月にはプラス11と過剰に転じた。すでに過剰感があった中堅企業はプラス5、中小企業もプラス8と3月時点から過剰指数が高まった。企業規模を問わず建設業でも雇用の過剰感が高まりつつある形だ。ただ資金繰り判断(楽から苦しいを引いた指数)は、大企業が3月のマイナス15からプラス3に、中堅企業も同マイナス14からマイナス4、中小企業もマイナス32からマイナス29と、それぞれ資金繰りは緩和した。」(『建設通信新聞』2009.07.03)
●「建設関連資材を生産する鉄鋼(電炉)、合板メーカーなどが相次いで減産を強化・継続する。7月以降も電炉は前年比2〜5割、合板は4〜5割の大幅減産を続ける。景気の底入れ観測が広がり、自動車や電機は減産緩和の動きが出ているが、住宅着工や設備投資といった内需は低迷。建材や建設関連素材は厳しい状況が続いている。…第一生命経済研究所の永浜利広・主席エコノミストは『鉄鋼など建設資材の生産は内需の弱さが響いて低水準。企業が設備投資を積極化するにはまだ時間が必要』と分析している。」(『日本経済新聞』2009.07.04)
●「大手製造業で1〜3月期に比べ4〜6月期の赤字が縮小する企業が相次いでいる。東芝の営業赤字が740億円から500億円弱に縮小したとみられるなど電機大手の損益が改善。自動車も大手3社の合計で1兆2000億円に達していた営業赤字が数千億円規模で縮小した可能性が高い。大幅減産で在庫調整が進展し、コスト削減効果も出た。新興国での販売も一部で回復している。ただ、世界景気の動向はなお不安定で、企業は先行きへの慎重な見方を崩していない。」(『日本経済新聞』2009.07.11)
●「不動産経済研究所が14日発表したマンション市場動向によると、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の1〜6月の新規販売戸数は1万5898戸と前年同期を26%下回った。1〜6月期が前年同期を下回ったのは5年連続で、バブル崩壊後の1992年以来の低水準だった。年間でも前年比9千戸減の3万5000戸弱の見通しで、本格回復には時間がかかりそうだ。…新規発売が減少している理由の一つは膨らんだ在庫消化を優先しているためだ。…中堅デベロッパーの経営破綻も響いた。…一方で、大手が中心の都区部の新規販売戸数は前年同期比4.5%減にとどまった。三井不動産レジデンシャルの松本光弘社長は『住宅ローン減税拡充などの恩恵もあり、モデルルームの来場者は着実に増えている』とし今期の供給量を前期から200戸程度増やし5400個にする予定。野村不動産の山本成幸開発部長は『総戸数の半分以上を初回に売り出して即時完売できる状況が戻ってきた』という。」(『日本経済新聞』2009.07.15)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、5月21日から6月11日に開いた『2009年度上半期監理課長会議』の結果をまとめた。都道府県で前倒し発注の目標を設定しているのは78.7%に当たる37自治体だった。ダンピング(過度な安値受注)対策の実施も要請しており、今後、各地方自治体の実施状況を継続的にフォローアップし、機会があるごとに周知徹底する。前倒し発注の目標設定を検討しているのは3団体で、目標を設定していない都道府県も7自治体あった。目標を設定している都道府県のうち、国と同程度以上の目標を設定しているのは33自治体で、上期で9割の発注を目標にしている自治体もあったという。」(『建設通信新聞』2009.07.02)
●「今年4月10日に低入札価格調査の調査基準価格などに関する中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)モデルが改正されたことを受け、都道府県でも見直しの取り組みが加速している。石川県は6月29日、熊本県と愛知県は7月1日にそれぞれ、調査基準価格と最低制限価格を同モデルに準拠して引き上げた。徳島県も、1日から調査基準価格をモデルに準拠させた。加えて、これらの価格をさらに高い水準に設定する動きも拡大。6月には、栃木県と沖縄県が調査基準価格と最低制限価格をモデルより高い水準に引き上げた。このほかにも同様の措置を検討している団体があり、今後も取り組みが進みそうだ。」(『建設工業新聞』2009.07.03)
●「国土交通省は、09、10年度分として実施した建設工事の競争参加資格審査で、技術評価点の算定式を変更したことによる点数分布への影響を簡易に分析した結果をまとめた。施工した工事の規模の大小より成績の良否がより評価点に反映するよう算定式を見直した結果、A、Bランクでは各業者の評価点が適度に分散したのに対し、C、Dランク業者では評価点が低い部分に多くの業者が集中。分散化には必ずしも寄与していない可能性があることがわかった。国交省は、審査結果をさらに分析し、次回(11、12年度分)の競争参加資格審査で必要となる対応を検討する。C、Dランク業者の分布の適正化などが課題になりそうだ。」(『建設工業新聞』2009.07.15)

労働・福祉

●「勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業(建退共)本部(徳山直本部長)は6月30日、東京都内で運営委員会と評議員会を開き、08年度の決算と業務実績報告を原案通り了承した。決算では、株式市場の低迷などにより退職金給付業務で290億円近くの運用損失を計上。中小企業を扱う経理給付、大手企業を扱う特別給付経理の両方で運用利回りがマイナスとなった、多額の運用損失が発生した結果、08年度は経理給付が約355億円、特別給付経理が約18億円の最終赤字となった、最終赤字は2年連続。…08年度末時点の共済契約者数は前年度比1.5%減の18万7756件。新規加入は6269件(同77.1%増)だった。脱退件数が大幅に増えた理由は、共済手帳の更新が滞っている契約者に意向確認など行い、更新の意志がない契約者を脱退扱いにしたため。建設市場の縮小に伴う倒産や廃業の増加も脱退件数の増加につながっている。掛金収納額は約475億円。退職金は8万4582人に対し、合計約789億円支払った。平均支払額は約93万円。共済証紙の適正な張り付けでは、08年度末時点で共済証紙の販売額が張り付け確認額を1234億円上回っている。」(『建設工業新聞』2009.07.01)

建設産業・経営

●「国土交通省は1日、下請建設会社や資材会社を対象とした、新たな資金繰り支援事業をスタートさせる。下請・資材会社が下請工事代金や資材代金の債権(手形を含む)をファクタリング(売掛債権買い取り)会社に譲渡し、早期に現金化できるようにする環境を整える。国費を投入し、下請・資材会社が支払う金利(買い取り料率)の半分を助成するほか、元請会社の倒産などでファクタリング会社の債権回収が不能となった場合に、大半を損失補償する仕組みを導入。リスクを軽減することでファクタリング会社が債権を買い取りやすくする。」(『建設工業新聞』2009.07.01)
●「福岡県建設業協同組合(佐久間源一郎理事長)は、宮下地区建設業協同組合が県宮下土木事務所管内の除雪を始め維持管理業務を共同受託したことから、これをモデルに、同様の取り組みの意向を示している石川、南会津、田村など各支部に広めようとしている。組合にとっては、『年間契約などで機材、配車を計画的に調達でき、地域に密着した住宅サービスができる』(佐久間理事長)とし、県だけでなく町村にも働きかけ『点から面へ、そして工事にも』と意欲をにじませる。…宮下地区は会津に隣接した只見川沿いの三島町、柳津町、金山町、昭和村の3町1村。県会津若松建設事務所が公募型プロポーザルで委託したのは、宮下土木事務所管内の道路除草、道路植栽、路面清掃、落石防護柵の設置、撤去、河川除草・伐木、スノーポール設置・撤去、防雪柵設置・撤去、道路維持補修、舗装維持修繕、河川管理、一般除雪、春先除雪と広範囲な業務となっている。これを業務内容ごとに総価契約と複数単価契約とに分けて契約した。複数単価もあり、一概に金額換算できないが、5億円規模を見込み、これに現在働きかけている町村でも実現すれば7億円程度になりそうだという。…この事業協同組合の一括受託は道路管理者にとっても好都合だ。効率の悪い除雪は入札不調が続出し、地域の実情をよく知っているオペレーターでないと、作業にムラが出て、苦情続出となるからだ。…宮下地区建設業協同組合では、この受託事業に対処するため、組合自体が土木、舗装、とび・土木の知事許可を取得すると同時に会員の門戸を開放し、地区の建設業が一体になって取り組むようなシフトにした。」(『建設通信新聞』2009.07.03)
●「東京商工リサーチがまとめた2009年4月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比1.8%減の322件で、最近1年間では最少となり、2カ月連続して前年同月を下回った。ここにきて政府の「緊急保証制度」の効果が出てきたことがうかがえる。負債総額は20.0%増の716億9200万円となったものの、2カ月連続して1000億円を下回っている。負債額10億円以上の倒産は8件と前年同月を2件下回ったが、平均負債額が21.9%増の2億2200万円となった。改正建築基準法関連の倒産は4件発生し、累計では192件となった。」(『建設通信新聞』2009.07.06)
●「国土交通省が08年度分からスタートさせた『建築物リフォーム・リニューアル調査』の初めての結果となる08年度上半期(08年4〜9月)受注分が6日、発表された。調査対象は建設業許可業者5000社で、調査結果から推計した08年度上半期の全国のリフォーム・リニューアル(増・改築、改装など)工事は213万3063件、受注総額は4兆6384億円となった。…リフォームに関する調査は88年度から「増改築・改装等実態調査」として行ってはきたが、調査項目などが現状に合わなくなっており、新たな調査ではこれらを改めた。…工事内容で最も多かったのは、劣化や壊れた部位の更新・修繕(95万577件)で、高齢者・身体障害者対応(10万6763件)、省エネルギー対策(8万1904件)、防災・防犯・安全性向上(7万5061件)が続いた。 工事部位別では、内装45万2946件、外壁26万6613件、建具24万8101件、給水・給湯・排水・衛生機器設備39万714件、電気設備14万9248件、空調換気設備6万6523件など。」(『建設工業新聞』2009.07.07)
●「日本建設業団体連合会(野村哲也会長)は7日、優秀な建設技能者の標準目標年収600万円以上などを掲げた『建設技能者の人材確保・育成に関する提言』の公表後初めて、建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)との協議会を開き、ともに提言内容の実現を目指していくことを確認した。協議会は年3、4回のペースで開き、賃金、建設業退職金共済制度、重層化、労働時間などといった課題に対する提言を今後2年間で具体化し、可能なものは今後1年間で実現化していく。」(『建設通信新聞』2009.07.08)
●「東京商工リサーチが8日発表した09年上半期(1〜6月)の建設業の倒産(負債1000万円以上)は2100件(前年同期比0.9%減)となり、上半期として4年ぶりに前年を下回った。負債総額は5631億1300万円(24.6%増)で、上半期としては5年ぶりの5000億円超え。負債が100億円を超える大型倒産が前年同期の1件から8件に増え、負債総額を押し上げた。上半期の倒産件数は3〜5月には前年を下回ったが、6月には今年最多の389件を記録しており、同社は、民需の回復ペースが遅い中で『今後の倒産動向が注目される』としている。」(『建設工業新聞』2009.07.09)

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