情勢の特徴 - 2009年7月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国内の不動産取引に持ち直しの兆しが出てきた。上場企業や不動産投資信託(REIT)などによる売買を民間調査会社が集計したところ、2009年4〜6月の取引額は約4400億円と同1〜3月から7%増えた。過度の金融不安が後退し、大手不動産会社は公募増資や社債発行による資金調達に動いている。ただ銀行などは不動産への融資に依然として慎重で、買い手のすそ野が広がるにはまだ時間が必要だ。」(『日本経済新聞』2009.07.22)
●「財務省が23日発表した6月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月比35.7%減の4兆6000億円となった。9カ月連続で減少したものの、減少率が5月の40.9%より縮小した。季節調整済みの前月比では1.1%増えた。中国などの景気対策に支えられ、日本の輸出に下げ止まりの兆しが出てきた格好だ。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5080億円の黒字となり、黒字額が前年同月比で1年8カ月ぶりに増加した。」(『日本経済新聞』2009.07.23)

行政・公共事業・民営化

●「埼玉県新座市は、市発注工事における労務費の抽出調査を実施した。08年度に発注し、完成した設計金額2000万円以上の建築工事で調査したもので元請企業に協力を求めて行った。県内市町村で、発注工事現場の労務費調査に自ら踏み切ったのは初めてで、全国的にも珍しい。同市では、市発注公共工事の『順守事項』に『2省協定労務単価に基づく埼玉県単価表等により積算していることから、この点に十分留意し、労働者の適切な賃金の支払いについて配慮するよう努める』ことを求める旨の項目を盛り込んでおり、現場での順守状況を調べる目的もあった。発注者が直接、現場の賃金調査に乗り出したことの意義は大きく、今後の影響が注目される。…調査の詳細な結果は、未公表だが3件の工事のうち1件の工事では2省協定労務単価を下回り、残る2件はほぼ同じかやや上回った。ただし、元請企業から一次下請業者への発注段階の労務費のため、現場で直接支払われた賃金は、それより低いことも考えられる。」(『建設工業新聞』2009.07.22)
●「国土交通省は、同省直轄事業の本年度上半期の契約見通しをまとめた。各地方整備局で発注を予定しているのは計1万452件で、うち上半期に8603件が契約に至る見込みとなっており、件数ベースの上半期発注率は82.3%となる。補正予算の効果などで発注予定件数は前年度比約1割増となっているものの、件数ベースの発注率は前年度の上半期を大幅に上回る見通し。上半期の発注件数は、前年度の約1.5倍に増えることになる。…政府は、今年4月にまとめた経済危機対策(追加経済対策)に事業の大幅前倒し執行を盛り込み、09年度当初予算分の公共事業については、上半期の契約率の目標を、過去最高水準となる8割と設定していた。こうした政府の方針を踏まえ、国交省は早期発注のための対策を実施。実績重視型総合評価方式の導入による入札手続き期間の短縮をはじめ、詳細設計付き工事発注や概算数量発注といった取り組みにより、上半期の契約件数の大幅増につながった。…都道府県など地方自治体でも、政府の動きを踏まえて早期発注へ向けた取り組みが進んでいる。」(『建設工業新聞』2009.07.22)
●「長崎県は、総合評価落札方式に設計労務単価の引き上げを目的にした新たな評価項目の設定を検討している。現在の労務単価以上の賃金支払いを誓約した応札者を加点し、労務単価の底上げを狙う。全国的に例のない取り組みで、総合評価の新たな活用策として注目を集めそうだ。…予定価格が1億円以上3億円以内で採用している特別簡易型で活用する。加算点10点満点のうち、0.5点を配分する。2009年度は試行となり、各出先機関の土木部発注工事で1件程度の活用となる。…県が独自に総合評価を活用し、労務単価の底上げに取り組むことは異例で、労務単価が低い他地域にも影響を与えそうだ。」(『建設通信新聞』2009.07.23)
●「全国の自治体病院で初めてPFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式を導入した『高知医療センター』(高知市)がPFI契約を終了する見通しとなった。全国自治体から注目を集めた公立病院改革だった。運営コストが当初予想を上回り、スタートからわずか5年で行き詰った。…センターは高知県と高知市の自治体病院を統合して2005年に開業した。オリックスなどが出資するSPCは30年契約で病院本館の建設のほか医療関連サービス、施設管理など幅広いサービスを受託。従来の直営方式に比べ事業費を30年で207億円削減できるとの触れ込みだった。センターの建設コストは抑えられたものの当初計画では材料費は医業収入の23.4%に抑えられるはずだったが、実際は30%前後に膨らんだ。…例えば07年度の材料費は27億円を目指したが実際は38億円かかった。公営でも38億円かかる計算で、PFIによる経営効率化の成果が出せなかったことになる。センターの08年度決算は純損益が21億1200万円の赤字、累積赤字は79億2200万円。…計画が未達の場合の罰則や、インセンティブ規定をきちんと詰めなかった自治体の責任は重い。…契約解除でマネジメント料などSPCへの委託費年4億8000万円の負担はなくなる。…高知県の尾崎正直知事は『PFI終了による4億8000万円の削減だけでは黒字化は困難』と認める。人件費などのさらなる経費削減と増収策をどう打ち出すか。赤字の公立病院の再生は振り出しに戻る。」(『日本経済新聞』2009.07.23)
●「『費用に見合った効果が見込めない』として3月末から建設を凍結していた直轄国道18路線について、国土交通省は28日、17路線の工事再開を最終決定した。地元や自民、民主両党の一部議員の働きかけを受けたものだ…再開の動きが出たのは6月ごろ。それぞれの整備計画で国交省は4車線を2車線にするなどして、コストを圧縮した。各地の地方整備局の第三者委員会がこうした対策を踏まえて各計画の『費用対効果』を改めて分析した結果、17路線の工事再開を認めることにした。…7路線は『効果』が『費用』を下回ったままで再開が決まった。…もっとも今回、再開を決めるに当たり、大幅に事業費を減らした路線もある。…18路線の事業費抑制額は計500億円近くになった。交通量が減る地方では、地域の実情にあわせて道路の規格を柔軟に見直すなどの工夫が求められる。」(『日本経済新聞』2009.07.29)

労働・福祉

●「日本建設業団体連合会(日建連、野村哲也会長)など3団体が先に発刊した『建設業ハンドブック』の09年版によると、08年の建設業就業者数は537万人、全産業に占める割合は8.4%となり、ピークだった97年からの11年間で150万人近くも減少した。…この間の減少率は21.6%にも達する。…職種別内訳を97年と08年で比較すると、97年に464万人だった技能工や現場作業員は08年には365万人と約100万人が減少。…技能工や現場作業員を中心にして大幅に就業者が減った様子がうかがえる。…就業者数そのものが減少し、若年層の建設離れで年齢構成をいびつになっている中で、人数の多い団塊世代の技術者、熟練技能者のリタイアも本格化しつつある。雇用の安定に寄与してきた建設業の就業者が減り続ける状況にどう対処するのか。建設業界だけにとどまらない問題として捉えていく必要もありそうだ。」(『建設工業新聞』2009.07.24)
●「建設経済研究所が23日まとめた建設投資見通し(09年7月)によると、経済対策による政府建設投資の下げ止まり効果は、一時的に過ぎないことが分かった。09年度の政府建設投資は前年度比11.3%増になるものの、10年度当初予算で公共事業費の3%減が継続された影響で、経済危機対応等特別措置の3500億円の一定額を公共事業に確保したとしても、10年度の政府建設投資は13.6%減まで落ち込むとしている。民間建設投資の低迷も続くことから、補正予算が編成されなければ、10年度の建設投資は78年度水準の45兆円を下回る見通しだ。…建設経済が景気に与える影響は小さくないだけに、経済対策の効果を一時的なものに終わらせないためにも、10年度の建設投資を息切れさせない具体的措置が必要になりそうだ。」(『建設工業新聞』2009.07.24)
●「首都圏の建設職人や発注機関関係の労働者等が参加している建設関係労働組合首都圏共闘会議は7月20日、15周年を迎えた記念行事として、韓国から建設産業研究院の沈揆範(シム・キュボム)氏を招き芝浦工業大学名誉教授の藤澤好一氏との対談を開催した。…法改正のねらいは、公共工事において熟練工である施工参加者を廃止することで、非正規雇用労働者の重層下請構造を是正すること。施工参加者は日本で言えば一人親方であるが、その「労働者性」を認めるとともに、雇用保険の充実を図った。また、雇用状況を記録するICカードも発行、日本の建退協よりも進んだ制度を確立している。今後は、適正賃金をいかに確保するかが課題、とした。」(『日本住宅新聞』2009.07.25)

建設産業・経営

●「東京商工リサーチがまとめた2008年度の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年度比11.0%増の4540件となり、03年度の4764件以来、5年ぶりに4500件を上回った。また、負債総額は66.9%増の1兆3983億5700万円にのぼり、03年度(1兆5087億円)以来、5年ぶりに1兆円を上回っている。これは負債額100億円以上の倒産が17件も発生したことが要因。平均負債額は50.9%増の3億800万円となった。また、改正建築基準法関連倒産は08年度末時点の累計で188件にのぼった。上場企業の倒産は8件発生した。」(『建設通信新聞』2009.07.16)
●「住宅最大手の積水ハウスはオーストラリアで不動産の大規模開発事業に乗り出す。2019年までの10年間に約2000億円を投じ、シドニー近郊などで分譲マンションや戸建て住宅の建設、宅地開発などを手掛ける。総戸数約6600戸のプロジェクトで、現地に資材工場も建設する。海外での本格的な不動産投資は初めて。国内の住宅市場が縮小するなか、代表的な内需産業である住宅業界でも海外展開が加速してきた。」(『日本経済新聞』2009.07.17)
●「日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)の森林再生事業化研究会(主査・米田雅子慶大教授)は、林業と建設業とが協力して森林整備に取り組む『林建協働』の推進へ向け、地域の関係者の連携を求める提言をまとめた。国土交通省による『建設業と地域の元気回復事業』や、林野庁の『森林整備加速化・林業再生事業』など林建協働を後押しする施策が講じられていることから、これらを活用して林内の基幹的な作業道の整備を進めることが必要だと指摘。『林業機械の通る道を整備して、近代化した林業に変えていくべきだ』 (米田教授)としている。」(『建設工業新聞』2009.07.17)
●「国土交通省は、業績が堅調に推移している代表的な地域の建設会社と民事再生などにより倒産した地域の建設会社について、業績堅調な理由や倒産した原因などを調査した結果をまとめた。…堅調な企業 調査対象は、2007年度下半期から08年度上半期に、倒産した代表的な建設会社6社と、それと同等規模程度の業績堅調(直近1年間で売上高、利益額が増加など)の建設会社5社の計11社。…自己資本比率の00年以降の推移(平均)を見ると、堅調な企業がおおむね30−40%を維持していた一方で、倒産した企業は10%台で推移していた。有利子負債構成比率も同様に、堅調企業は30−40%台を維持し、倒産企業は10%以下で、明確に差が表れた。堅調な企業は、経営姿勢として、売上高が減少しても無理な安値受注をしないと回答し、利益の出る工事に注力していた。また、免震工法や病院、建築、発電所など、得意技術を保有したり、地元に注力した営業を展開していた。 財務的には、毎年黒字決算を継続し、内部留保を確保していた。バブル期なども堅調な経営方針で不良資産なども保有していなかった。一方、倒産した企業は、売上げ確保の抜本対策を打ち出せなかったことや、無理な事業拡大がたたった。コンプライアンス(法令順守)違反や粉飾決算、ずさんな経営管理も大きな影響を与えたと分析している。不動産ディベロッパーなど大口取引先の倒産で金融機関が支援を断念したり、業績悪化や金融機関との信頼関係欠如によって支援を撤退したりしたことが直接的な倒産の引き金となった。」(『建設通信新聞』2009.07.21)

まちづくり・住宅・不動産・環境

その他