情勢の特徴 - 2009年9月後半
●「オフィスビル空室率が過去最悪だった2003年の水準に近付いている。景気低迷で企業がオフィスの賃貸料負担の圧縮を進めているためだ。一方のオーナーはテナント確保のため賃料引き下げに動いている。オフィス需要は企業の業績が回復した後に盛り上がる傾向が強い。景気の本格回復への道筋は見えておらず、需要低迷は長期化しそうだ。」(『日本経済新聞』2009.09.16)
●「昨年秋以降の景気悪化を受け、地価の低迷傾向が鮮明になってきた。国土交通省がまとめた2009年の都道府県地価調査(基準地価、7月1日現在)によると、全国平均で商業地が前年比5.9%、住宅地は4.0%それぞれ下がった。下落幅はともに拡大。三大都市圏も4年ぶりに下落に転じた。地方圏もほぼ下落一色となった。・・・東京圏の商業地は8.9%下がり、昨年の4.0%上昇から下落に転じた。東京圏の住宅地は6.5%下落。昨年の1.6%の上昇から一転してマイナスになり、ほぼ全地点で下落。・・・大阪圏の住宅地は4.5%下がった。4年ぶりのマイナスとなり、全ての調査地点で下落した。大阪圏の商業地も7.1%の下落で、4年ぶりのマイナス。・・・名古屋圏の住宅地は4.2%のマイナスと3年ぶりに下落に転じた。商業地は7.3%のマイナスと4年ぶりに下落した。・・・福岡圏は商業地が7.4%と大幅に下落した。住宅地も福岡市で3年ぶりにマイナスに転じ、県全体では3.3%下落。・・・人口減少が続く地方圏では下落傾向が続く。住宅地で3.4%、商業地4.9%いずれも下がった。下落幅は住宅地で1.3ポイント、商業地で2.4ポイント拡大した。不動産ファンドの投資が減ったことなどが響き、札幌市や仙台市などの地方の中心都市が下落に転じた。」(『日本経済新聞』2009.09.18)
●「イラクの復興に向けた日本の支援が進展している。対イラク支援の円借款事業では、12案件(総額24.3億ドル)について交換公文(E/N)が署名済みとなり、現地でプロジェクトが本格的に動きだす段階に入った。政府は最大35億ドルの円借款による支援を表明しており、残りの案件形成作業も今後進んでいくとみられる。イラクでは依然、治安面の懸念があるものの、日本の企業連合が油田開発権益を獲得する見込みになるなどビジネスチャンスへの関心は高い。治安維持がイラク当局に移譲され、自国民による国づくりが本格化する今年から来年にかけてが、復興支援の正念場になるとみる向きもある。日本政府は、03年にマドリードで開かれたイラク復興国際会議で当面の支援を表明。無償資金協力と有償資金協力(円借款)を合わせて約50億ドルの資金供与を行うとした。うち無償資金協力は全案件が決定済みとなっている。」(『建設工業新聞』2009.09.28)
●「国土交通省と地方整備局などが2008年度(4〜12月)に締結した契約(約5000件、約599億円)で、一般競争入札にもかかわらず1社しか応札しない、いわゆる『1社応札』が5割を超えることが18日、会計検査院の調べで分かった。全国100の独立行政法人が結んだ契約でも1社応札が4割で、『競争性を確保しにくい状況』(検査院)が続いている。・・・検査院によると、同省、地方整備局、北海道開発局などの契約で08年度(4〜12月)の一般競争入札の割合は47.4%と前年度比6.4ポイント上昇。しかし1社しか応札しなかった割合も同2.2ポイント高い50.9%に増えた。独立行政法人が08年度に締結した契約(約6万9000件、約8188億円)についても、一般競争入札で37.6%と前年同期比17.5ポイント上昇したものの、1社応札が48.1%と前年同期の44.6%から上昇。契約先が公益法人だと、競争入札での1社応札は69.4%。企画力を競う随意契約『企画随契』でも55.7%と全体の28.2%を大きく上回る。独立行政法人から随意契約先に『天下り』した人数は08年4月時点の773人から09年4月時点では644人と減少した。しかし再就職者が在籍する場合、1法人当たりの随意契約の支払金額は7億9000万円と在籍していない法人に比べ28倍。07年度の25倍より『優遇ぶり』が顕著になっている。」(『日本経済新聞』2009.09.19)
●「全国の自治体のうち、北海道由仁町、大阪府泉佐野市など21市町村が、財政破綻の懸念から歳出削減などの計画を求められる『早期健全化団体』になることが、日本経済新聞の調べで明らかになった。破綻で国の管理下に入る『財政再生団体』は夕張市のみ。半世紀ぶりに全面改定した地方財政の再建制度に基づくもので、今回が第1号となる。・・・財政悪化の背景には、人口減による税収の減少や過去の大型事業による過大な負債がある。由仁町は文化ホールなどの、泉佐野市は宅地造成などの負担が大きい。長野県王滝村は旧村営スキー場関連の債務が重いうえ、人口もピークの5分の1以下の1000人を切るまでに減った。」(『日本経済新聞』2009.09.21)
●「政府が地方に置いている出先機関の改革が、鳩山新政権の試金石に浮上してきた。原口一博総務相は地方整備局や地方農政局などの出先機関を原則廃止すると明言した。自民党政権は地方分権を『最重要課題』としながら先送りを繰り返してきたが、地方主権を掲げる新政権の誕生で分権が進む可能性も出てきた。ただ実現に向けたハードルは引き続き高い。原口総務相は18日に記者団に対し、総務省内に『地域主権室』を設置し、出先機関改革に取りかかると述べた。・・・今まで出先機関の見直しは政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)が進めてきた・・・民主党はマニフェストで出先機関の廃止を掲げた。・・・分権委が見直しの対象とした主な出先機関の予算規模は10兆円に迫る。分権委の勧告通り人員を減らせば、2万3000人の職員が自治体に移る。財源はどう確保するのかなど課題は多い。・・・今後は新設する地方主権室などを舞台に、どこまで政治主導で分権を進めることができるかどうかに焦点が移る。」(『日本経済新聞』2009.09.22)
●いま過疎地で公共交通の崩壊が深刻ななか、木曽町は、運行総距離延べ543キロ、停留所250ヵ所という全国に例のない公共交通システムをつくった。料金は一律、片道200円。最長路線を35キロ乗っても同額で、町民のかかせない足となっている。同システムは、高齢者の通院や高校生の通学などの交通手段の確保、バス料金の地域格差をなくす目的で検討されたものだ。・・・07年4月から正式運行を開始。年間延べ21万人以上が利用している。木曽病院をターミナルとし、開田、日義、三岳の3支所を結ぶ「幹線バス」、幹線バスと接続しそれぞれの支所の周辺集落を結ぶ「巡回バス」、そして電話予約で自宅とバス停を結ぶ「乗り合いタクシー」の3種類で構成されている。それぞれを組み合わせても、トータルの料金は200円だ。・・・今後の課題は財政問題。運行収支の赤字分のうち約2900万円が町の負担である。(『しんぶん赤旗』2009.09.24より抜粋。)
●「鳩山新政権による公共事業見直しの動きが本格的に始まった。前原誠司国土交通相は23日、民主党がマニフェストで打ち出した八ツ場ダム(群馬県)の予定地を視察し、事業中止の方針をあらためて表明。川端達夫文部科学相も『国営マンガ喫茶』と批判を浴びていた『国立メディア芸術総合センター』(アニメの殿堂)の新設見送りを決めた。赤松広隆農林水産相は24日、東京都が進める築地(中央区)の中央卸売市場の移転問題で、土壌汚染問題を抱える豊洲地区(江東区)の移転予定地を視察し、早期に移転の可否を判断する意向を示した。岡田克也外相は米軍施設の再編計画の見直しを提起している。既に動きだしている事業の見直しは、結論によっては影響も広範囲に及ぶだけに、関係者は難しい対応を迫られる。」(『建設工業新聞』2009.09.25)
●「東京都が過度な低価格入札への対応として導入する特別重点調査の概要が分かった。積算内訳書の一般管理費等が入札価格の5%を下回る場合は落札者としない原則を設け、履行能力の調査項目には計24項目を設定した。内容は、品質確保や安全衛生管理の調査に重点を置き、一次下請予定業者やリース元の一覧、代表取締役の誓約書を提出させるなど、徹底調査の姿勢を示している。都は、10月初旬に開札する12月議会付議の一般競争入札に参加希望した企業に対し、同調査を導入することを通知した。・・・また、一次下請予定業者の一覧表の提出では、下請予定業者の見積書に係る各経費の内訳ごとの金額が、過去1年以内に施工した同様の工事における金額以上であることを確認する。入札価格の内訳書も、交通誘導員への給与手当が最低賃金法に定める最低金額以上であることなどを求めている。下請予定業者などへのしわ寄せ、手抜き工事を起こさないよう、代表取締役が誓約した書面も提出させるほか、積算が施工に必要な費用を下回る場合、その額を自社で負担するための財源確保方法を確認できる資料を提出させる。こうした調査を経て、落札者としない基準と照らし合わせ、判断する。」(『建設通信新聞』2009.09.25)
●「八ツ場ダムに続き、前原誠司国交相は26日、熊本県の川辺川ダム(相良村)予定地を訪れ、建設中止の意向を表明した。今後、全国143ダム事業の計画について、次々とメスを入れる構えだ。建設続行か中止か。鍵を握るのが地元の意向だ。・・・もう1つの基準は前原国交相が明言した『ダム本体工事に着手しているかどうか』だ。・・・ただ判断の最も重要な基準はダムの費用対効果だ。新政権は公共事業の投資額に対する便益を厳しく見積もる方針を示している。計画を見直すには、143ダムそれぞれの費用対効果の数値を示し、地元はじめ国民全体に丁寧に鋭明する責任を求められそうだ。・・・新政権は政権公約に掲げた公共事業の1.3兆円の削減に向け、第1弾として、ダム中止を打ち出したが、ダム以外には何に、どこまで切り込むのか、具体的な事業は明確にしていない。新幹線などでは、民主の支持者にも推進派が多く、メスを入れるのは難しいとの見方もある。」(『日本経済新聞』2009.09.27)
●「前原誠司国交相は29日、高速自動車国道整備の基本計画や整備計画について審議する国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)を廃止する考えを明確にした。今後、同会議に代わる仕組みを検討する。4月の国幹会議で整備計画を決定した東京外かく環状道路については、『過去の会議で決めたもので、わが党(民主党)も入った中で決めたこと。責任を共有している』と既決の整備計画を踏襲する考えを示唆し、新政権が負う責任は『補正予算以降だ』とした。前原国交相は、28日に東国原英夫宮崎県知事が来庁した際に、東九州自動車について『九州の東側の高速道路が途切れてしまっていて良くない。必要だと認識している』との考えを示したことについて、『つながっていない道路が全国にかなりある。こういうところは当然ながら事業継続することになると思う』との考えを示した。ただ、『時間軸については申し上げていない』と弁解した。まず『国全体としての予算の仕組みを見直さなければならない。B/C(費用便益比)を含めた費用対効果、地元自治体からの要望もある』とし、厳格な基準のもとで見直しを進めることを明らかにした。」(『建設通信新聞』2009.09.30)
●「鳩山政権が公共事業の見直しを加速させている。前原誠司国土交通相は29日の閣議後会見で、10年度予算の概算要求を『相当の抑制型予算』とし、建設中止を明言している八ツ場ダムの本体工事費も盛り込まない方針を表明した。航空機燃料税や航空会社が支払う空港使用料などを財源に空港整備などを行っている社会資本整備事業特別会計空港整備勘定(空港特会)についても『抜本的に見直す』と述べ、同日の閣議で決まった各省の新たな概算要求の再提出日(10月15日)までに結論を出す考えを示した。」(『建設工業新聞』2009.09.30)
●日本の労働者の貧困は、先進国のなかでも深刻な水準にある―経済協力開発機構(OECD)は2009年の雇用見通しのなかで、日本の労働者の貧しさを警告した。それによると、日本では現在の景気低迷以前から、ワーキングプア(働く貧困層)が、貧困層の80%以上を占めていたと指摘。これは、OECD加盟諸国平均の63%を大きく上回っている。また、日本は職に就いている人が最低1人以上いる家計に属する人の11%が貧困だと指摘。OECD加盟国のなかでトルコ、メキシコ、ポーランド、米国に次いで5番目の高さだ。そして、日本の税と所得再分配制度は、「労働者の貧困緩和にはほとんど効果をあげていない」と述べている。日本で労働者の貧困が顕著になっている理由について、「非正規労働者の割合が比較的高いこと」をあげている。(『しんぶん赤旗』2009.09.19より抜粋。)
●「派遣労働者や契約社員、パートなど『非正規雇用者』の約4割が正社員並みの仕事をしていることが30日、厚生労働省が初めて実施した実態調査で分かった。一方、非正規雇用者の8割は『年収300万円以下』と回答。企業が非正規雇用者を正社員の代替として低賃金で活用している現状が浮かび上がった。」(『日本経済新聞』2009.09.30)
●「積水化学工業は17日、タイで住宅事業を開始すると発表した。住宅事業の海外進出は同社にとって初めて。タイの大手複合企業のサイアム・セメント・グループ(SCG)傘下で住宅建材の製造などを手掛けるエスシージー・ビルディング・マテリアルズ(SCGM)と共同で、ユニット住宅の生産と販売の合弁会社をそれぞれ設立。バンコク首都圏の富裕層を中心に販売を展開する。タイでの実績を勘案した上で、周辺の東南アジア諸国への進出も検討する。」(『建設工業新聞』2009.09.18)
●「日本建設業団体連合会(日建連)の野村哲也会長と建築業協会(BCS)の山内隆司会長は、18日の理事会後に記者会見し、先週発足した鳩山内閣への期待などを語った。野村会長は『今まで漠然としていた公共事業の無駄について、徹底的に議論してほしい。不安は結果論であり、(新政権には)100%期待している』と、新政権の今後に期待感を表明した。山内会長も『成田空港など今まで見過ごされてきた問題を大局的な見地から見直す良い機会だ』と述べ、社会資本整備の方向性を考える上で、大きな転換期になるとの見方を示した。」(『建設工業新聞』2009.09.24)
●「住友林業はオーストラリアの住宅大手ヘンリー・プロパティーズ・グループ(メルボルン市)を買収、同国で住宅事業を本格展開する。ヘンリーグループを保有する資産会社から持ち分の50%を取得した。国内市場が縮小するなか、人口増で成長が見込まれる海外市場を開拓する。食品などに続き、内需型産業がM&A(合併・買収)で成長を目指す動きが広がってきた。・・・豪州ではツーバイフォー工法の木造住宅を施工・販売する。部資材は豪州などにある住友林業の建材子会社から供給する。工期短縮や環境配慮型住宅のノウハウなどを活用し、現地仕様の新工法開発にも取り組む。」(『日本経済新聞』2009.09.28)
●「鳩山由紀夫首相は22日、ニューヨーク市内で開いた国連気候変動首脳会合(気候変動サミット)に出席し、日本の温暖化ガスの中期目標について『2020年までに1990年比で言えば25%削減を目指す』と表明した。途上国や新興国の温暖化対策を後押しするため、日本の省エネ技術や資金を提供する『鳩山イニシアチブ』構想も提唱した。積極的な削減目標と支援策を掲げ、今後の国際交捗で主導権を握りたい考えだ。」(『日本経済新聞』2009.09.23)
●「政府の地震調査研究推進本部が7月末に公表した09年版『全国地震動予測地図』のデータを検索したところ、市区町村役場のある全国的3700カ所(旧役場を含む)のうち、『今後30年以内に震度6弱以上』の揺れに見舞われる確率が50%を超す所が約500カ所に上ることが分かった。静岡と愛知の同県内には90%超、山梨、神奈川、三重、和歌山の各県内には80%超の所があり、東京都内にも約68%という高い確率で強震に見舞われる所があると予測されている。震度6弱の地震が発生した場合、現行の建築基準法に沿って建てられた建築物でも倒壊・損壊の可能性があり、抜本的な対策の推進が急がれる。」(『建設工業新聞』2009.09.28)