情勢の特徴 - 2009年10月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「日米欧で厳しい雇用情勢が続いている。日本では8月の完全失業率が7カ月ぶりに低下したが、有効求人倍率は2カ月連続で過去最低を記録した。米欧の失業率は10%に迫っている。2008年秋からの金融危機が最悪期を抜け、企業の生産は改善しているものの、労働力の過剰感はまだ強い。失業率の高止まりは個人消費を下押しし、持ち直している世界経済の足を引っ張る恐れがある。」(『日本経済新聞』2009.10.03)
●「中小・零細企業の資金繰り環境の厳しさが続いている。政府の中小企業向けの緊急保証制度の承諾実績は9月末までの累計で14兆5000億円と、15兆円に迫り、政府が確保した保証枠30兆円のほぼ半分に達した。利用額は昨年末や年度末と比べ新規の申請は減っているが、足元でも月間7000億〜1兆円に上る。万一に備え、手元資金を積み上げる中小企業も増えている。」(『日本経済新聞』2009.10.07)
●「東京都内で計画されている大規模開発の件数が伸び悩んでいる。7〜9月の3カ月間にまとまった延べ床面積1万平方メートル以上の開発計画は22件と、4〜6月の23件からほぼ横ばいで推移。昨年の7〜9月(34件)に比べると大幅に減っている。不動産市場では、このところの不況に底打ち感が広がってきてはいるが、景気の先行きは依然として不透明であるため、開発用地を確保しながらも着工を手控えているケースが少なくない。ただ、新規の開発用地の取得は、地価の下落を受けて増加傾向に転じてきたもようだ。」(『建設工業新聞』2009.10.13)

行政・公共事業・民営化

●「鞆の浦の景観は国民の財産」―。1日、景観保護を理由に海面を埋め立て架橋にする広島県と福山市の事業中止を命じた広島地裁の画期的判決・・・瀬戸内海に面した鞆の浦は古来から“潮待ちの港”として栄え、万葉集に8首詠まれるなど歴史的文化遺産の宝庫。近世の港湾を特徴づける石造施設―@雁木(がんぎ、船着き場)A常夜燈B波止C焚場(たでば、船の修理場)D船番所―が五つそろって現存する日本で唯一の歴史的港湾といわれている。同地での埋め立て架橋計画は“交通渋滞の解消”などを理由に、港の西側を埋め立て、港中央部にコンクリート橋を通そうというもの。1983年に策定されたが、規範縮小したものの、住民合意を得られず長く凍結されていた。しかし、計画推進を揚げる羽田皓・現市長が04年に当選し、住民合意もないまま、埋め立て免許申請の姿勢を強めたため、住民ら163人が07年4月に提訴した。(『しんぶん赤旗』2009.10.02より抜粋。)
●「総務省は2日、今年4月に完全施行された地方財政健全化法に基づき、地方自治体の2008年度決算の健全度を示す指標(健全化判断比率、速報値)を公表した。財政が破綻状態にある『財政再生団体』に北海道夕張市、破綻の懸念がある『早期健全化団体』に21市町村を認定した。該当する自治体は外部監査を受け、増税や歳出の削減を柱とする財政再建の計画を09年度内に策定するよう義務づける。公共料金の値上げなど、住民のサービスにも影響を与えそうだ。」(『日本経済新聞』2009.10.03)
●「東京都の石原慎太郎知事が推進してきた2016年の五輪招致が失敗に終わり、都政の先行き不透明感が一段と高まってきた。・・・都は五輪開催を視野に、06年末に長期計画『10年後の東京』を作成。『東京外郭環状道路』の練馬−世田谷間(16キロ)、東京、神奈川、埼玉、茨城、千葉を広域に結ぶ環状道路『首都圏中央連絡自動車道』などを盛り込んだ。五輪計画でもこの長期計画をもとに、道路や鉄道など輸送インフラの整備費用に1兆2500億円を見積もっていた。都幹部は五輪を開催しなくても『「10年後の東京」に沿って事業を進める』と口をそろえる。ただ、見込み通りに進むとは限らない。要因の一つは、新政権の方針だ。もう一つが都財政の問題だ。」(『日本経済新聞』2009.10.06)
●「前原誠司国土交通相は6日、閣議後の会見で、▽観光分野の施策強化▽航空オープンスカイ構想▽港湾整備▽運輸、建設業の海外展開−−の4分野を成長分野として『所管産業の成長戦略会議を立ち上げる』との考えを示した。国交省の所管の中では、大手建設業による国際展開に成長の余地があるとの考え方を示し、公共事業の抑制の中で建設業を世界貢献へと導く構想を掲げ、その支援策について検討していく考えだ。」(『建設通信新聞』2009.10.07)
●「都道府県の公共事業費を市町村が一部負担する『市町村負担金』について、原則廃止など見直しの動きが相次いでいる。大阪、和歌山、新潟、岡山、福岡、熊本の6府県の知事は9月末までに負担金の廃止検討を表明。北海道など22道府県は、従来より詳しい負担金の明細を市町村に伝えるなど内容開示を強化した。民主党政権がマニフェスト(政権公約)で示した、国の直轄事業に対する都道府県などの負担金の廃止を促す狙いがある。」(『日本経済新聞』2009.10.08)
●「前原誠司国土交通相は8日、空港の整備などを手掛ける特別会計について、空港の運営や管理に役割を限定する方向で検討に入った。航空会社が支払う着陸料などが空港整備に回らない仕組みをつくる。他の特会の改革と併せて2011年度にも実現したい考え。10年度予算編成では特会の支出を圧縮し、着陸料の値下げを検討する。」(『日本経済新聞』2009.10.09)
●「前原誠司国土交通相は9日の閣議後の記者会見で、計画・着工中の全143ダムのうち国と水資源機構が建設を進める48ダムについて『今年度内に用地買収や本体工事などの新たな段階に入らない』と述べ、事実上凍結する方針を明らかにした。道府県が事業主体の87ダムに関しても、国の補助金を交付しない可能性に言及した。・・・ダム事業は@調査・地元説明A用地買収B(住民の移転地や代替道路など)生活再建工事C(せき止める川の流れを変える)転流工工事D本体工事――の5段階に分かれる。48ダムは年度内に新たな段階に進むことはできなくなる。・・・国交相は道府県が事業主体で国が補助金を交付する87ダムについては『基本的には知事の判断を尊重する』と表明した。ただ、同時に『補助金を出すか出さないかは知事と相談することもある』と述べ、事業の凍結を求めて補肋金交付を見送る可能性も示唆した。国交相は年末の政府予算案の提出までに、2010年度にダム事業をどう進めるかに関して基本方針をまとめる意向も明らかにした。」(『日本経済新聞』2009.10.09)
●「国土交通省が9日発表した2009年度補正予算の執行停止の概要で、東京外郭環状道路の練馬−世田谷間(16キロ)も事業着手は凍結となった。東京の渋滞緩和の切り札と期待される外環道だが年度内の着工は先送りとなった。一方、羽田空港の滑走路延伸の工事は、補正予算の執行停止対象から外れている。高速道路関連では、補正予算に10億円を計上していた首都圏中央連絡自動車道(圏央道)工事は、執行停止に含まれなかった。」(『日本経済新聞』2009.10.10)
●「前原誠司国土交通相は羽田空港の国際化を進め、航空網の拠点となる『ハブ空港』にする方針を表明した。実現すれば成田が国際線、羽田が国内線という原則を転換することになる。地元自治体などとの調整が焦点だ。国交相は12日、大阪府泉佐野市内で『来年10月に第4滑走路ができることを契機に(成田が国際線、羽田が国内線という)内際分離の原則を基本的に取っ払って、羽田の24時間国際空港化を徐々にめざす。日本にはないハブ空港をつくる』と述べた。・・・羽田空港の国際線は現在、アジアとのチャーター便に限られているが、新滑走路の供用開始後は昼間はアジア、深夜・早朝は欧米にそれぞれ定期便を飛ばす計画。」(『日本経済新聞』2009.10.13)
●「前原誠司国土交通相は、道路、河川、都市公園の各直轄事業を実施する際に、地方自治体に一定の費用負担を求める『直轄事業負担金』について、財務、総務の両省と負担金全廃に向けた制度設計の検討に入ることを明らかにした。15日に提出する2010年度予算概算要求では、維持管理費分の負担金を廃止することを想定して予算を計上する。前原国交相は、単純に国交省の事業費減とならない形での制度設計を求める考えだ。」(『建設通信新聞』2009.10.13)

労働・福祉

●厚生労働省が30日に発表した8月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、基本給と残業代、一時金を含めた現金給与総額は、前年同月比で3.1%減少の27万3360円となった。基本給が1.0%減、残業代など所定外給与が13.4%減。現金給与総額の減少は15カ月連続だ。・・・とくに、製造業では所定外給与が27.1%の減少、現金給与総額で5.0%の減少ともっとも落ち込みが激しくなっている。また、残業時間は15.2%減少の8.8時間。このうち、製造業は27.9%減の10.7時間で、最も減少幅の大きかった3月の48.9%減よりは減少幅が小さくなったものの、依然として大幅な残業時間縮小が続いており、現金給与総額の落ち込みにつながっている。(『しんぶん赤旗』2009.10.01より抜粋。)
●総務省が2日発表した労働力調査によると、8月の完全失業率(季節調整値)は5.5%と、前月に比べ0.2ポイント低下した。過去最悪の5.7%となった前月よりは低下したものの、2003年4月と並ぶ戦後2番目に高い完全失業率となっている。完全失業者数は前年同月比で89万人増え361万人となった。就業者数は前年同月比で19ヵ月連続減少している。また、ハローワークの求職者1人に何件の求人があるかを示す有効求人倍率(季節調整値)は、過去最低を記録した前月と変わらず、0.42倍だった。雇用の先行指標とされる新規求人数は、前年同月比24.2%の大幅減となっており、今後の悪化も予想される。(『しんぶん赤旗』2009.10.03より抜粋。)

建設産業・経営

●「大手ハウスメーカーの海外進出が相次いでいる。少子高齢化や景気低迷による国内市場の低迷が続く中、新たな市場を海外に求める動きだ。現地の富裕層をターゲットに、国内での豊富な実績に基づく高品質な住宅を売り込む。積水ハウスは豪州3地区で大規模な住宅事業に乗り出した。一部のプロジェクトで現地デベロッパーと手を組み、住宅地の開発・供給・販売を行う。・・・豪州では9月に住友林業も事業拡充方針を打ち出した。同国供給数4位の企業の株式の半数を取得し、豪州市場に本格的に参入した。・・・積水化学工業住宅カンパニーはタイに、地元企業と合弁会社を立ち上げると発表。・・・分譲マンションでの海外展開を図るハウスメーカーもある。大和ハウス工業は今夏から、中国国内で2件の巨大プロジェクトを進行中だ。・・・大手各社が海外進出をもくろむ背景には、国内市場の長期的な低迷がある。昨年秋のリーマンショック以降、過去最大規模の経済対策など政策の後押しがあっても本格的な市場回復にはほど遠いのが現実。今年の新設住宅着工戸数は、現在のペース(年率換算)で推移すると、67.6万戸台に落ち込むとみられている。国内の住宅市場は、長らく続いた年間の新設住宅着工戸数が100万戸以上というのが前提になっており、急激な着工減では工場など設備が過剰になる。少子高齢化の急速な進展で、国内市場は長期的に見ても厳しそうだ。」(『建設工業新聞』2009.10.09)
●「東京商工リサーチがまとめた09年度上半期(4〜9月)の建設業の倒産(負債1000万円以上)は、前年同期比11.6%減の2079件で、年度上半期としては4年ぶりに前年を下回った。負債総額も4197億0600万円(前年同期比41.3%減)と、年度上半期としては3年ぶりのマイナスになった。 同社は『緊急保証制度や公共工事の前倒し発注の効果』を倒産の減少理由に挙げつつ、先行きついては『マンション建設などの民需が依然低迷し、公共工事の前倒し発注の反動から年末から年明けにかけて息切れ懸念が高まる』と分析。官需頼みの状況下で新政権の公共工事の見直しが加わり、『決して楽観できる状態ではない』としている。」(『建設工業新聞』2009.10.09)
●「国土交通省が9月30日に発表した建設工事受注動態統計調査報告(速報)によると、8月の受注高は10ヵ月連続で前年同日を下回る23.9%減の3兆1310億円だった。依然として民間工事の激しい落ち込みは続いており、厳しい状況に大きな変化はなかったものの、新政権による2009年度補正予算の執行停止・見直しで、景気対策とともに受注の下支えが期待されていた公共工事の大幅な落ち込みが予想され、今後の受注環境はさらに厳しさを増しそうな気配だ。」(『建設通信新聞』2009.10.09)
●「東京商工リサーチがまとめた2009年7月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比8.2%減の390件となったものの、件数はことし最多となった。7月としても05年以降の最近5年間で2番目に多い件数だった。地区別件数では、全国9地区のうち関東と中部を除く7地区で前年同月比を下回ったが、『緊急保証制度』や公共工事の前倒し発注などの効果がうかがわれる一方で、件数は2カ月連続して400件に迫る水準で推移している。負債総額は59.4%減の767億6300万円。この大幅減は、前年同月に負債100億円以上の大型倒産が5件発生していたものがことし7月はなかったことによる。」(『建設通信新聞』2009.10.13)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国交省が9月末に公表した8月の新設住宅着工戸数は、前月まで6カ月続いた6万戸台を割り、5万749戸となった。9カ月連続の減少で前年同月比3.3%減。季節調整済み年率換算値も4カ月続いた70万戸台を割り67万6248戸だった。」(『日本住宅新聞』2009.10.05)
●「国土交通省が、建築基準法の見直しに向けた検討作業に着手した。スケジュールなどは明らかになっていないが、民主党は衆院選マニフェスト(政権公約)などで、建築基準法などの抜本見直しや、住宅建設に関係する資格・許認可の整理・簡素化を打ち出しており、こうした方向で検討が進むとみられる。建築物の単体規制のあり方に関する言及もあり、検討結果によっては都市計画法も含めた大改正につながる可能性も否定できない。・・・民主党の政策集『政策INDEX2009』では、建築基準法を単体規制に特化し、都市計画法をすべての地域を対象とする『まちづくり法』に再編することを打ち出している。」(『建設工業新聞』2009.10.08)

その他