情勢の特徴 - 2009年10月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は30日、中小・零細企業や個人が抱える借入金の返済を猶予しやすくする『中小企業金融円滑化法案』を閣議決定し、国会に提出した。金融機関に対して貸し付け条件の変更に応じる努力義務を課すもので、政府は公的保証制度の拡充や不良債権の基準緩和などとあわせて、中小企業や個人の資金繰りを総合的に支援する。・・・同法案は2011年3月までの時限措置とする。貸し手の対象となる銀行や借用金庫などの預金取扱金融機関には、借り手から要請があれば、できるだけ条件変更に応じる努力義務を課す。返済猶予にとどまらず金利の減免や返済期限延長、債権放棄など幅広い条件変更を促す。金融機関には、条件変更に応じた金額や件数を定期的に開示させる。虚偽の報告には1年以下の懲役か300万円以下の罰金を科す。・・・借り手の対象となるのは中小・零細企業や住宅ローンを抱える個人など。」(『日本経済新聞』2009.10.31)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省が先週末に再提出した10年度予算の概算要求は、公共事業費に大なたが振るわれ、建設業界にとっては極めて厳しい内容となった。公共事業関係費は4兆9167億円と、09年度当初予算と比べ見かけの削減幅は14%減だが、この金額には自治体への請求を廃止する直轄事業負担金の維持管理費分1683億円が含まれており、維持管理費分を差し引いた実質的削減率は17%にも及ぶ。公共事業はこれまでも当初予算ベースでは8年連続で削減されてきたが、17%ものマイナスになれば、民間設備投資も低迷を続ける中で国内建設市場は一挙に収縮する可能性が高く、建設会社の倒産増など深刻な影響が危ぐされる。」(『建設工業新聞』2009.10.19)
●「国土交通省の道路整備・道路環境整備では、完成時期が近いものと事業年数が短いものを優先し、原則として新規事業は実施しない方針だ。事業個所数は『全体をみて、2割減を目標として見直した』(馬淵澄夫副大臣)。要求額は、前年度比12%減の1兆736億円となっているが、直轄負担金の廃止に伴う維持管理費の増加を考慮すると、実質的には21%のマイナスとなる。・・・治山治水分野では、全体では前年度並みとなる8031億円(前年度比1%減)の要求額となった。・・・国交省は、港湾や空港、鉄道などには4252億円(前年度比10%減)を計上した。スーパー中枢港湾プロジェクトや羽田空港の再拡張などを重点的に実施する一方で、重点化する分野以外では削減を図り、全体では予算規模を縮小する。・・・国交省は建設業の振興策として、海外展開支援や地域建設業の他産業進出支援などを盛り込んだ。海外展開支援については、大手ゼネコンが高度な技術力を生かして事業展開を行うための人材育成支援などを、重点的に実施する。・・・地域建設業に対しては、観光や福祉、農林業などの他産業に進出する取り組みや、民需の開拓などを重点的に支援する。」(『建設工業新聞』2009.10.19)
●「国土交通省の長安豊政務官は22日に記者会見し、スーパー中枢港湾と、鉄鉱石や穀物などのバルク(バラ積み)貨物に対応した産業港湾の整備を選択と集中で進め、効率的な海上輸送の実現を目指す方針を表明した。現在3カ所あるスーパー中枢港湾のうち1、2カ所を選択して重点投資を行い、さらに高い機能を備えた『ハイパー中枢港湾』として整備。バルク産業港湾については、鉄鉱石や穀物といった品目ごとに必要港湾を判断して集約する考え。集中投資を行う港湾を透明なプロセスを経て絞り込む作業を進め、10年度には結論を出す方針だ。」(『建設工業新聞』2009.10.23)
●「建設経済研究所は22日、鳩山新政権による09年度補正予算見直しや10年度予算の概算要求での公共事業費削減を反映させた10年度の建設投資見通しを発表した。それによると、10年度の名目建設投資は41兆600億円(前年度比4.9%減)で、名目ベースでは1970年代後半の水準にまで落ち込む結果となった。内訳は、政府建設投資が15兆5000億円(16.5%減)、住宅投資が14兆8200億円(7.6%増)、民間非住宅建設投資が10兆7400億円(1.0%減)。不況の影響で民間建設投資が低迷する中、政府建設投資も大きく減少するため、建設投資全体では、ピークだった92年度(83兆9708億円)の半分以下に落ち込む見通しだ。」(『建設工業新聞』2009.10.23)
●「東京都が公共調達のあり方を見直すために設置した入札契約制度改革研究会(会長・郷原信郎名城大教授)は、国土交通省や業界団体から強く要望がある予定価格の事後公表について、現状の事前公表を継続するとの結論を出した。事後公表の議論よりも、優先して解決すべき課題があると説明している。47都道府県の半数程度が、予定価格の公表を事前から事後に移行している中、都の対応は事前公表を維持する他自治体の後ろ盾となりそうだ。・・・都が優先して取り組むべきことは、不良不適格企業の排除とダンピング問題への対処という課題であって、さらに根本的には上限拘束性の見直しなど公共調達における予定価格の位置付けそのものを見直すことであるとの考えを示した。」(『建設通信新聞』2009.10.26)

労働・福祉

●「政府は23日、求職中の貧困・困窮者の支援などを骨子とした緊急的支援と雇用創造を2本柱にした『緊急雇用対策』をまとめた。雇用情勢が悪化が鮮明な建設業については、介護や農業、環境、森林・林業再生など成長分野への移行を視野に『建設企業の成長分野展開支援』を関連施策の項目に盛り込んだ。新たな予算措置を行わず、基金を使って複数年度にわたる従来事業の前倒しで手当する。今回対策による雇用下支えと雇用創出効果を10万人と見込んでいる。雇用創造では、未来の成長分野として『介護』と『農林』分野を掲げ、新たな就業や雇用情勢が悪化した他の産業分野からの転職・転業支援のための職業訓練や、今回対策で新たな施策である『働きながら新たな資格取得費用を助成する』政策導入が大きな特徴。・・・建設業界は、鳩山政権発足によって、今年度下期と来年度公共事業予算の大幅減少と民間需要激減が続くなかで、潜在的な失業予備軍を抱え雇用情勢が悪化している。そのため今回の緊急雇用対策で盛り込まれた、『成長分野展開を図ろうとする建設企業の取り組み支援や相談体制整備や情報の周知・共有化』のほかに、雇用調整助成金の要件緩和と拡大検討の行方や、農業分野への人材移転や年内に策定する森林・林業再生プランにもとづく施策にも注目する必要がありそうだ。」(『建設通信新聞』2009.10.26)
●「建設投資額の急激な縮小がもたらす最大の問題は、建設投資規模と密接な関係にある雇用情勢を加速度的に悪化させることだ。当然、建設投資額の激減が現実的になれば、政府が10万人程度の雇用下支え・創出を期待する緊急雇用対策の今後の大きな影響を与えることは確実となる。・・・具体的には、直近の08年度名目建設投資額47兆2300億円に対し、同年8月時点の就業者数は536万人、雇用者数は同440万人。就業者一人当たりの建設投資額が881万円、雇用者一人当たりは1073万円だった。08年度の数値を今回、建設経済研究所が公表した09年度見通し額に当てはめると、就業者数は490万人、雇用者数も402万人とことし8月の総務省調査人数から就業者数は36万人、雇用者数も27万人それぞれ減少する形だ。10年度予測に08年度の同様数値を当てはめると、就業者数はことし8月調査の526万人から60万人減少し466万人に、雇用者数も同429万人から47万人減少し382万人となる。結果的に建設投資額と就業者数・雇用者数との関係を踏まえた試算にもとづけば今年度、次年度の2年間で毎年20万人から30万人近く、2年間で60万人が今後建設業界から他産業への移転を余儀なくされる。・・・鳩山政権の経済政策は現時点で、個別給付によって家計を直接刺激し、消費動向を向上させることで経済成長を目指す路線を選択しており、建設産業と、農業・林業などが主要な産業である地域にとっては、受け皿が足りない問題が発生する可能性もある。いずれにしても、鳩山政権の政策は今後の景気動向に同影響を与えるか、民間工事市場回復に期待を寄せる建設業界にとって当面の関心事となっている。」(『建設通信新聞』2009.10.30)
●総務省が30日発表した労働力調査によると、9月の失業者数は実数で、前月から2万人増加し、363万人となった。前年同月比では92万人増加した。11カ月連続の増加。一方、同月の完全失業率(季節調整値)は、5.3%と前月に比べ0.2ポイント低下した。これは、季節調整を行った結果生じたもの。通年、9月は失業者の増加傾向が強くでる。この季節的な変動を取り除くための統計的な処理を行うため、失業者数は増えても、失業率は前月より減少する結果が生じた。(『しんぶん赤旗』2009.10.31より抜粋。)

建設産業・経営

●「大手・準大手・中堅企業が応札可能な、公共土木市場が激減している。2009年度上期(4−9月)の一般土木工事で予定価格7億円以上の国土交通省など国の機関の入札案件は前年同期比81.4%減の5件と激減。同じ比較で上期の受注総額は91%減と1割以下にまで落ち込んだ。受注・売上高の一方の柱である民間受注も、日本建設業団体連合会加盟企業の8月累計(4−8月)で前年同期比42.4%減と急激な落ち込みが続いている。景気の2番底懸念が指摘される中、鳩山政権の『コンクリート(公共事業)から人へ』方針と民需回復の兆しが見えないことで、全国ゼネコンはかつて経験したことのない厳しい局面に立たされている。」(『建設通信新聞』2009.10.20)
●「ゼネコン各社が危機的な受注環境に直面している。日本建設業団体連合会(日建連、野村哲也会長)が28日発表した会員企業49社の09年度上半期(4〜9月)の受注総額は前年同期比28.0%減の4兆3269億円と、1975年度の調査開始以来、上半期としては最大の減少幅を記録した。日建連会員企業の受注は70%程度を民間工事が占めている。昨秋以降の景気後退によって、民間企業の設備投資が急速に冷え込み、マンションなどの不動産開発も低迷が続いていることが受注不振の背景。事態が好転する材料は当面見当たらず、年間受注額が約30年ぶりに10兆円を割り込む恐れも出ている。」(『建設工業新聞』2009.10.29)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「民主党のマニフェストに掲げられていた『建築基準法の抜本的見直し』が動き始めた。改正建築基準法の施行以来、建築確認行政にも未だにしこりが残っていることに対し円滑化を図ることをはじめ、資格の見直し等にも着手する。・・・建築基準法見直しの第一弾は、建築確認審査の厳格化を緩和させること。前原国土交通大臣は@建築確認のための審査期間を短縮A設計図書等の提出書類の簡素化B違反した場合の厳罰化について指示を出すとともに、次期通常国会に改正案を提出する方針を決めた。」(『日本住宅新聞』2009.10.15)
●沖縄市の泡瀬干潟を埋め立て開発する事業をめぐり、沖縄市民ら516人が知事と沖縄市長に対し事業への公金支出差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が15日、福岡高裁那覇支部(河邉義典裁判長)で言い渡された。河邉裁判長は一審判決を支持し、公金支出は違法と判断、調査費や人件費を除く一切の支出を差し止めた。前原誠司沖縄担当相はこれまでに、「控訴審判決を見ながら判断する」としており今後対応が求められる。(『しんぶん赤旗』2009.10.16より抜粋。)
●「10月1日にスタートした住宅瑕疵(かし)担保履行法で、瑕疵保証責任を履行するための資力確保(保険加入または保証金の供託)義務が生じる建設会社のうち、20社に1社程度の割合で必要な手続きを取っていない会社があることが、月刊建設工業新聞社が行った同法の認知度調査で分かった。分譲住宅以外に賃貸住宅や社宅なども同法の対象となることを知らない会社がまだ2割程度あることも分かった。今後、同法に基づく保険制度の適用範囲がマンションの修繕工事など新築住宅以外にも拡大すると見込まれており、消費者保護の観点からも制度の一層の周知徹底が求められそうだ。」(『建設工業新聞』2009.10.29)

その他