情勢の特徴 - 2009年11月前半
●「主要な建設用資材である鋼材の流通取引価格が再び下落してきた。H形鋼と棒鋼は10月から5〜7%下がり、5年半ぶりの安値となった。設備投資やマンションなど民需が冷え込んだところに公共事業の減退懸念が強まり、9月の鋼材国内出荷量は前年同月比25%減った。建設用鋼材価格は減産と輸出増で今夏にいったん底入れしたが、深刻な内需不振で『二番底』の様相を呈しできた。」(『日本経済新聞』2009.11.13)
●「国土交通省は、2010年度の税制改正要望として海外建設プロジェクト促進税制の創設を盛り込んだ。建設企業の海外市場開拓を促すための優遇税制となる。馬淵澄夫副大臣は中小建設会社の海外進出を促す目的とし、公共事業の減少が確実な中で、中小建設業への配慮を強調した。減税による中小建設業の海外展開促進効果の度合いがどれほどか、今後、測られることになりそうだ。海外建設プロジェクト促進税制のうち、建設市場開拓型は、アジアなどでのインフラ整備需要が見込まれているにもかかわらず、08年度の海外受注実績が前年度比で4割減少したことを踏まえ、海外市場の開拓意欲をかき立てることを目的としている。対象となる『建設市場として発展途上にある外国』に当たる国は、今後、決定する。」(『建設通信新聞』2009.11.04)
●「鳩山由紀夫首相は6日、地方分権改革を推進するため、首相直属の新組織『地域主権戦略会議』を設置する方針を固めた。月内にも閣議決定する。政治主導で国と地方の関係を巡る新たな基本指針を策定し、民主党が衆院選マニフェスト(政権公約)で掲げた補助金の一括交付金化などの実現に取り組む。同会議は首相が議長を務め、原口一博総務相(地域主権推進担当)ら関係閣僚、有識者、地方自治体の首長が参加する。」(『日本経済新聞』2009.11.07)
●「政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は9日地方税財政に関する第4次勧告をまとめ、鳩山由紀夫首相に提出した。・・・政府は4次勧告のうち、法定率の引き上げなど一部について検討課題として、年末にまとめる地方分権改革推進計画に反映する考え。・・・勧告は分権型社会の実現には国税から地方税への税源移譲などが必要だと指摘。『当面の課題』として交付税が法定率分(国税5税の30%程度)だけで賄えず、自治体が発行する赤字地方債などに頼る現状から脱却するよう、法定率の引き上げを求めた。分権委は自民党政権下に発足した経緯を意識。『発足間もない新政権の政策選択の余地を狭める勧告は自粛すべきだ』として、民主党が公約に掲げた政策の実現を前提とした提言が目立った。国の直轄事業負担金制度の廃止に向け、速やかな工程表づくりを要請。地方全体で約8100億円の減収となる暫定税率の廃止に関しては、地方の税源確保に十分考慮する必要があると指摘した。」(『日本経済新聞』2009.11.10)
●「前原誠司国土交通相は10日の閣議後会見で、国の直轄公共事業費の一部を地方自治体が負担する『直轄事業負担金』制度の廃止問題で国交、総務、財務、農林水産の4省の政務官で構成するワーキングチーム(WT)を設置し、検討作業に入る方針を明らかにした。・・・直轄事業負担金については、前原国交相が既に10年度予算から維持管理費分を廃止する方針を打ち出し、既定路線化しつつある。」(『建設工業新聞』2009.11.11)
●「主要国の中で日本の賃金下落が際立っている。厚生労働省が2日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、従業員1人あたりの現金給与総額は9月まで16カ月連続で減少した。これに対し、米国や英国、ドイツでは賃金の上昇傾向が続く。日本企業は人員の削減を抑える代わりに、給与や賞与の削減で景気悪化に対応してきた。賃下げよりも人員整理に動きやすい米欧企業との違いが鮮明になっている。・・・背景にあるのは、雇用慣行の違いだ。日本の労使は今回の金融危機を受け、賃金よりも雇用の維持を優先させる方針で一致。雇用調整助成金制度の拡充もあり、企業は給与や賞与を大幅に削減する一方で、大胆な人員調整を極力避ける姿勢を示してきた。これに対し『米国には雇用調整に踏み切りやすい法制度があり、賃下げよりも人員削減で景気悪化に対応するケースが多い。程度の差はあるが、欧州も同じような傾向がある』(リクルートワークス研究所の大久保幸夫所長)という。こうした動きが賃金統計に反映されているようだ。」(『日本経済新聞』2009.11.03)
●「日本建設業団体連合会(野村哲也会長)は、『建設技能者の人材確保・育成に関する提言』に掲げた教育支援の一環として『建設スキルアップサポート制度』を創設した。工業高校などの在学中に技能・技術資格を取得し、ことし4月以降に建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)の会員企業に入職した人を対象に資格取得費用の半額を助成する仕組みで、11月から募集を開始した。助成対象となる資格は、鉄筋施工技能士、土木施工管理技術、ガス溶接、玉掛けなど42種で、工業高校などの在学中に取得できる資格を網羅した。助成の範囲は、資格取得に要した受験料、受講料、テキスト代。・・・日建連では『学生時代に技能資格に関心を持ってもらうことは、建設技能者としてのものづくりの面白さを喚起するとともに、将来、建設技能者の道に進む人材の広がりをもたらす面で有効』(建設技能者の人材確保・育成に関する提言)との考えの下、同制度を立ち上げた。」(『建設通信新聞』2009.11.09)
●「景気低迷を背景に新築オフィスビルの賃貸料(募集ベース)が大幅に下落している。日本経済新聞社のオフィスビル賃貸料調査(下期、10月中旬実施)によると、新築ビルの賃料は東京で2年連続で下落した。大阪は3年連続で下がり、1988年8月以来21年ぶりの低水準となった。賃料負担の軽減を図る企業が急増。オーナーはテナント確保のため賃料の引き下げに動いた。」(『日本経済新聞』2009.11.04)
●「東京商工リサーチがまとめた2009年8月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比17.1%減の334件となった。8月としては5年ぶりに前年比でマイナスとなった。地区別件数では、全国9地区のうち近畿を除く8地区で前年同月を下回った。倒産件数はことし3月以降、6月を除いて前年同月を下回って推移し、『緊急保証制度』や公共工事の前倒し発注などの効果がうかがわれる。負債総額は74.0%減で、ことし最少の477億7700万円だった。この大幅減は、負債10億円以上の大型倒産が前年同月には18件発生していたが55.5%減の8件にとどまったことが要因。」(『建設通信新聞』2009.11.06)
●「日本土木工業協会(土工協)の中村満義会長は5日の定例記者会見で、建設産業の雇用環境について『大いに不安を持っている。協力会社から仕事がないという声を聞く。このまま受注減が続けば、良い方向には進まない』と述べ、先行きに厳しい見方を示した。鳩山新政権が公共事業費を大幅に削減する方針を揚げて予算編成などを進めていることについては、『(政権交代を機に)削ってしかるべきものは削ったほうかいいと思っている』とする一方、意思決定の納得性や透明性を高める上ために、判断基準の明確化が重要だとの考えを強調した。」(『建設工業新聞』2009.11.06)
●「国土交通省が発注した羽田空港新滑走路の埋め立て工事を巡り、大手ゼネコン鹿島が2008年、別の工事現場で出た砂利を埋め立て用の資材として不正に転用していたことが7日、国交省への取材で分かった。同省は正規の資材費や運搬費をだまし取られたとして、近く警視庁に被害届を出す方針を固めた。同省などによると、鹿島は静岡県西伊豆町で採取した『岩ずり』と呼ばれる砕石を埋め立て資材として申請。だが同社と下請け会社は08年10月、横浜市中区の再開発事業の工事で出た砂利の一部約1000立方メートルを新滑走路の外周部分の海底に投入したという。同省は今年2月に転用を把握し、6月に鹿島と下請け会社に厳重注意。鹿島は8月に問題の砂利を撤去し、埋め立て工事をやり直した。同省は正規の資材費や運搬費を計400万〜500万円と算出。警視庁は砂利を転用することで工事費用を抑え、差益を得ていたとみて、詐欺容疑での立件も視野に工事関係者らから事情を聴くなどして調べている。」(『日本経済新聞』2009.11.08)
●「前原誠司国土交通相は、建設専門紙のインタビューに応じ、公共事業が減少する中で建設業者数が実質20万社体制でも過剰との認識を示すとともに、今後、建設業として生き残るか転業するかの選択が必要との考えを明らかにした。『建設業者の転業、転職は、政府として支援していく』姿勢を示した。また、『国際展開は、大手ゼネコンの使命』とし、国も積極的に支援する一方で、大手各社の自助努力による海外事業の拡大を求めた。公共工事の品質確保とダンピング(過度な安値受注)防止策として、総合評価方式や経営事項審査を抜本的に見直す考えも明らかにした。」(『建設通信新聞』2009.11.09)
●「建設業から介護や農業、環境、森林・林業再生、ソーシャル・ビジネス(社会的企業)などへ雇用を転換する政府の取り組みが本格的に始まった−−。政府の緊急雇用対策本部(本部長・鳩山由紀夫首相)のもとに設ける2チームのうち、『緊急雇用創造チーム』(チームリーダー・細川律夫厚生労働副大臣)が6日に発足、初会合を開き、『介護』『農林』 『地域社会』の3つのサブチームを設置することを決めた。建設業からの雇用転換は農林サブチームが中心となって、緊急雇用対策で打ち出したグリーン雇用プログラムなどの具体化を検討し、順次施策を展開していく。」(『建設通信新聞』2009.11.10)
●「セメント4社の第2四半期決算が出そろった。国内需要の極端な落ち込みを背景に、全社減収減益となった。販売価格のアップは一定程度達成したものの、想定以上の数量減少が足を引っ張っている。特に、経済対策としての公共事業に期待が高まったが、セメント需要に反映されなかったことが、大きな痛手となった。通期も大幅に回復する要素が少なく、引き続き厳しい環境となりそうだ。」(『建設通信新聞』2009.11.11)
●「ゼネコンの受注低迷に底打ちが見えない。12日までに発表された大手・準大手クラスの第2四半期(4−9月の上期)決算によると、対象22社中19社が前年同期の受注実績を下回った。官公庁工事は11社が上回ったものの、民間工事は全社が下回り、景気悪化の影響が各社を苦しめる。5月に掲げた期初予想からの達成率は平均36%にとどまり、5割を超えたのはフジタだけ。上期受注の伸び悩みを踏まえ、大手4社を含む13社が年間受注目標を下方修正する状況となった。」(『建設通信新聞』2009.11.13)