情勢の特徴 - 2009年11月後半
●「住宅や公共工事に使う建設用合板の問屋卸値が再び下落に転じた。住宅の壁や床材に使う国産針葉樹合板は東京地区で前週末比3〜4%、コンクリート型枠などに使う輸入合板は1〜2%下落した。住宅需要低迷が長引き、主要素材である合板の余剰感が強まっている。需要回復の兆しはないため、減産や輸入削減で供給が絞り込まれても、先安を見込む声が多い。」(『日本経済新聞』2009.11.17)
●「六大銀行グループの2009年9月中間決算が18日出そろい、合計の連結純利益は前年同期比19%増の4762億円となった。前3月期は世界的な金融危機を受け、4グループが大幅赤字になったが、不良債権の処理や保有株式の値下がりによる損失が減った。…大手銀の業績が回復した主因は不良債権の処理に伴う損失の減少だ。今中間期は倒産が前年同期比で減少。経営再建中の日本航空については、各行とも前倒しで貸倒引当金を積み増しており、追加の損失額は限定的だった。この結果、6行合計の不良債権処理損失は前年同期比20%減の5690億円となった。保有株の減損処理額も前年同期に比べて3分の1以下の912億円にとどまった。」(『日本経済新聞』2009.11.19)
●「国土交通省は19日、菅直人副総理・国家戦略相が導入を表明した『住宅版エコポイント制度』の概要を固めた。住宅の新築や改修に際し、断熱効果の高い窓や壁などを取り入れた場合には、様々な商品やサービスと交換できるポイントを与える。2009年度第2次補正予算案に1000億円規模の支出を盛り込み、追加経済対策の柱にしたい考えだ。」(『日本経済新聞』2009.11.20)
●「家計収入の減少が一段と目立つようになってきた。総務筈が27日発表した10月の家計調査によると、2人以上の勤労者世帯の実収入は前年同月比で4.6%減り、5カ月連続でマイナスとなった。10月の失業率は3カ月連続で改善したものの、企業の賃金抑制は全般に加速しているもようだ。可処分所得も4.7%少なくなり、消費低迷を通じたデフレ圧力がさらに強まりそうだ。」(『日本経済新聞』2009.11.28)
●「日本経済新聞社がまとめた2009年度の設備投資動向調査(修正計画、1598杜)で、全産業の設備投資額が08年度実績から17.6%の減少となった。年度当初の計画からも2.7%の減額で、前年度比は1973年度の調査開始以来、当初比でも比較できる90年度以降で最大の落ち込み。業績予想の上方修正が相次ぐなど経営環境は改善してきたが、円高もあり景気の先行きは不透明。自動車、電機など大手製造業を中心に投資に慎重な姿勢が広がっている。」(『日本経済新聞』2009.11.29)
●「主要ゼネコン各社の09年4〜9日期連結決算が13日、出そろった。民間工事、官公庁工事とも低調に推移し、集計した30杜のうち25社は単体の受注高が前年同期を下回った。減少幅は6〜52%で、25社の9割以上は減少幅が2けたになった。一方、損益は、各社が景気後退による収益の悪化を見込み、コスト削減や生産の効率化を進めたのに加え、資材価格が安値安定で推移したこともあって改善傾向にあり、完成工事総利益率(連結ベース)が悪化したのは9社にとどまった。通期の業績は、景気の先行きが不安定な中、新政権の方針で政府建設投資の削減が確実となったことで、厳しい予想が目立っている。」(『建設工業新聞』2009.11.16)
●「前原誠司国土交通相は17日、閣議後の会見で、公共事業の急激な削減と業態変化の速度の違いについて言及し、建設業界や地域の経済に配慮した公共事業費の削減幅が必要との見解を示した。公共事業費の漸減と、PFIの有効活用による新規のインフラ整備を進めるべきとした。2010年度の公共事業費が、政府の行政刷新会議の事業仕分けによって14%減よりもさらに減ることに難色を示した格好だ。」(『建設通信新聞』2009.11.18)
●「10年度予算要求の無駄を洗い出すため政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)が行う『事業仕分け』の前半作業が17日で終了した。5日間の作業で廃止や予算計上見送りとされた事業の総額は1600億円で、うち国交省所管事業は廃止360億円、予算計上見送り115億円。予算の縮減率が明確に打ち出された事業もあり、その縮減額は総額で最大918億円に上る。これらに事業の地方移管分を合わせると、総額8000億円超の予算縮減が打ち出されたことになる。」(『建設工業新聞』2009.11.19)
●「横浜市まちづくり調整局は、2009年度から『優良専門業者表彰』を受賞した下請けを活用した元請けに対する工事成績評定加点措置を始める。優れた施工技術を持った下請けの積極的な活用を促すことで、工事品質の一層の向上を図る。評定への加点は下請け表彰後1年間、同局発注工事で表彰者を活用した工事などに適用する。09年度の表彰対象は17社ある。」(『建設通信新聞』2009.11.26)
●「政府は2010年度末までに国家公務員の人数を05年度末比で約1万9000人純減するとした現行計画を見直す方針を固めた。国が手がける国有林野事業と気象研究所をそれぞれ独立行政法人化して実現する予定だったが、鳩山政権は独法の新設は基本的に見送る方向。この2事業に携わる国家公務員2100人程度を削減対象から除いた修正計画を年内にも閣議決定する方針だ。」(『日本経済新聞』2009.11.28)
●「行政刷新会議ワーキンググループ(WG)の事業仕分け第1弾の最終日となった17日、作業部会は厚生労働省が2010年度概算要求に盛り込んだ、独立行政法人の勤労者退職金共済機構運営費交付金25億円余について、『廃止』の評決を行った。事業運営は自らが行う共済事業ですべて賄うべきとの主張が理由。また勤退共本部ビルの売却を含めた資産有効活用の議論を前倒しして決めることも求めた。運営費交付金は、国が行う勤退共事業運営の支援金で、この中には建設業退職金共済事業分3億5000万円余も含まれている。建退共事業の場合、全国各地で行われている事業活動は、都道府県建設業協会が事業を受託して実際の業務を行っており、事業仕分けの対象となった勤退共運営費交付金の行方に地方建設業界も関心を寄せていた。」(『建設通信新聞』2009.11.18)
●「雇用保険の失業手当が増え続けている。2009年4〜9月の失業手当の給付件数は133万7690件となり、前年同期に比べ29.5%増えた。雇用環境の悪化が理由で、10月以降も前年実績を上回る公算が大きい。09年度適期では08年度の220万件を超えるのはほぼ確実な情勢だ。…給付件数はリーマン・ショックが起きた昨年9月以降、13カ月連続で前年同月実績を上回って推移。今年4〜9月の給付件数をみると、前年実績と比べた増加率が最も大きいのは4月の43.1%。非正規社員らの雇用契約の更新が集中する年度末に契約を更新できず、職を失った人が急増したことが背景にある。…給付件数が増えると雇用保険収支か悪化する。09年度の雇用保険の収支不足は7952億円に上る見通し。積立金残高は4兆円台と余裕があるものの、給付が増え続ければ積立金を取り崩して対応せざるを得ないのが現状だ。」(『日本経済新聞』2009.11.24)
●総務省が27日発表した労働力調査(速報)によると10月の完全失業者数は、344万人で前年の同じ月と比べて89万人増加した。完全失業者数の前年同月比の増加は12カ月連続。就業者数は前年同月比117万人減少した。とくに製造業では88万人減少し、減少幅は前月よりも拡大している。(『しんぶん赤旗』2009.11.28より抜粋。)
●「道路舗装大手8社の09年4〜9月期決算が13日、出そろった。公共事業の減少や民間設備投資の抑制傾向など、厳しい業界環境の中、全社の営業損益が前年同期の赤字から一転、営業黒字を達成した。年度当初に舗装原材料のアスファルト価格が大幅に下がったものの、各社が製造販売する合材価格の維持に努めたことなどが、増益に寄与した。ただ、10月のアスファルト価格の再値上げに加え、政権交代に伴う補正予算の減額などで各社の収益環境が一段と厳しさを増すことは避けられそうにない。」(『建設工業新聞』2009.06.18)
●「ゼネコンの工事採算が回復している。13日までに出そろった大手・準大手24社の第2四半期決算で、完成工事総利益(工事粗利)率は前年同期比1.5ポイント増の5.8%となり、2010年3月の通期は前期実績比1.0ポイント増の6.l%に改善する見通し。資材高が弱まり、工事原価の低減効果が強まったほか、選別受注の効果も徐々に表れてきた。6%台に回復すれば3年ぶり。ただ、大幅な受注減で競争はさらに厳しさを増すのは必至で、来期以降には下振れする懸念もある。」(『建設通信新聞』2009.11.16)
●「空調大手7社の09年4〜9日期決算が12日出そろった。昨秋のリーマンショック以降、民間設備投資が急減。特に自動車や半導体、液晶ディスプレーなどの産業向け空調の不振が響き、6社が2けたの減収となった。改正省エネ法や東京都の環境確保条例などを追い風としたリニューアル需要の増加を期待する声は大きいものの、設備投資抑制の基調は変わっていない。ただ産業用空調などは4〜6月が落ち込みの底だったとの見方も多く、回復の兆しもわずかながら見え始めている。」(『建設工業新聞』2009.11.16)
●「準大手・中堅ゼネコン(総合建設会社)13社の2010年3月期の連結業績は、9社が前期比で減収となる見通しだ。景気低迷で民間建築を中心に受注が減り、8社が期初に掲げた売上高の予想値を引き下げた。新興不動産向け損失の一巡や工事採算改善などで、最終損益は多くの社が改善を計画。ただ下期から公共事業削減の影響が広がるとみられ、需要先細りへの警戒感は強い。」(『日本経済新聞』2009.11.18)
●昨年来の深刻な不況にもかかわらず、企業がため込み利益である「内部留保」を依然として増加させていることが、労働運動総合研究所の調査で分かった。…内部留保は、剰余金や積立金などの名目でため込まれている利益だ。企業の売上高は2008年10〜12月期が11.6%減、経常利益も同64.1%減など3期連続で激減する一方で、内部留保は1.7%増、0.6%減、1.4%増と増加傾向が続いている。内部留保が急増したのは派遣労働が原則自由化された1999年以降で、209.9兆円から218.7兆円も増加(グラフ)。このうち69.3%は資本金1億円以上の企業がため込んだものだ。(『しんぶん赤旗』2009.11.19より抜粋。)
●「建設株が下落基調を強めている。19日の東京株式市場でゼネコン(総合建設会社)大手4社の株価が前日比1〜3%下げ、そろって年初来安値を更新した。鹿島は約41年ぶりの安値水準を付けた。4社台わせた『手持ち工事月数』はバブル崩壊後の最低を記録。公共事業削減の波も迫り、収益先細りが警戒されている。…下げ足を速めたのは4〜9月期決算を発表した12日以降。大成建を除く3社が通期の営業利益予想を引き下げ、収益環境の厳しさが改めて意識されたという。」(『日本経済新聞』2009.11.20)
●「日本ダム協会の葉山莞児会長は、前原誠司国土交通相が建設業者数に過剰感を示したことに対して『多すぎるのであれば、どのように整理するのか。それを何も言われていないが、これからは建設業に対して延命的な政策はとってほしくない』と注文を付け、建設業者の再編・淘汰(とうた)を容認する姿勢を示した。その上で『延命的な政策は、建設産業の健全な発展、あるいは活性化を図る上で決してプラスにならない』と主張した。…『機械化や合理化を進め、発注方式等々も積極的に変えていくべきであり、それによって余った人材は他産業で抱えてもらい、産業全体が衰退しないようにしてもらいたい』と述べた。建設業の再編・淘汰は、葉山会長がかねてから抱いていた持論であり、日本土木工業協会の会長当時も『業者数を減らさなければ健全な競争環境をつくるのは難しい』とし、『単純に業者数を減らすのではなく、同じグループで競争する業者数を減らすべき』との見解を示していた。ただ、『そこに至るまでのプロセスが描けない』とも述べ、『そういった議論を業界と発注者がどう話していくかが課題』と指摘していた。」(『建設通信新聞』2009.11.25)
●「マンション分譲大手の穴吹工務店(高松市)は24日、東京地裁に会社更生法の適用を申請し、受理されたと発表した。負債総額は1403億円で、グループ2社を合わせると1509億円。東京商工リサーチによると負債総額は今年5番目の規模で、不動産業界では日本綜台地所、ジョイン卜・コーポレーションに次ぐ大型倒産となった。マンション市場が縮小するなかで、経営再建を巡る社内の対立も起き、資金繰りに行き詰まった。」(『日本経済新聞』2009.11.25)
●「全国建設業協会(浅沼健一会長)は27日、会員企業の倒産状況結果を発表した。2009年7−9月期の倒産発生件数は前年同期比64.6%減の70件で、09年1−9月累計の倒産件数は過去最悪を記録した前年同期を大きく下回る46.8%減の252件となった。前政権による大幅な前倒し発注の効果が表れたが、依然として景気回復のめどが立たず、加えて新政権による09年度補正予算の一部執行停止の影響で、年明けから年度末にかけて倒産が急増するのではないかという危機感が広がっている。」(『建設通信新聞』2009.11.27)
●「国土交通省は、低炭素社会の構築に向けたコンパクトなまちづくりを加速させる。人口減少、少子・高齢化、財政制約に伴う都市経営コストの効率化、環境問題などに対応するため、集約型都市構造を持つ『エコ・コンパクトシティ』整備を目指す。保育所などの社会施設や病院、図書館などの公益施設の整備・集約に比重を置いているのが特徴だ。2010年度税制改正要望でもエコ・コンパクトシティ形成促進税制の創設を掲げており、税制面からも推進のアクセルを踏む。」(『建設通信新聞』2009.11.16)
●「国土交通省は2010年度から、賃貸住宅の入居者をトラブルから守るための対策を拡充する。家賃の支払いが滞ったとき、家賃の保証会社に強引に退去させられることを防ぐため、保証会社に許可制を導入することなどを検討する。持ち家の促進を優先してきた自民党政権の住宅政策からの転換を民主党政権は掲げており、国交省は賃貸住宅の利用を後押しする。」(『日本経済新聞』2009.11.23)