情勢の特徴 - 2009年12月前半
●「セメント需要が大幅に減少している。公共投資が低迷する中、民間設備投資が引き締まったことで、4〜9月のセメント国内需要(内需)は前年同期比14.0%減の2101万トンとなった。減少率が2けたを超えたのは第1次オイルショックの影響を受けた75年以来で、14.0%という数値は74年10〜75年3月の13.1%減を上回る過去最悪の落ち幅となった。減少は10月以降も続いており、09年度の内需はセメント協会の当初予想4800万トンを下回る公算が大きく、業界関係者の多くは4000万トン台前半と予想、一部には4000万トン割れを懸念する声もある。」(『建設工業新聞』2009.12.01)
●「国土交通省が30日発表した10月の新設住宅着工戸数は、前年同月比27.1%減の6万7120戸だった。前年割れは11カ月連続。2009年1〜10月の累計は65万914戸で、通年では1967年の99万1158戸以来、42年ぶりの100万戸割れとなるのが確実な情勢だ。国交省は『雇用・所得環境が改善しておらず、当面厳しい状況が続く』とみている。」(『日本経済新聞』2009.12.01)
●「Jリート(不動産投資信託)の物件取得に持ち直しの動きが出てきた。Jリートを運営する41投資法人の物件取得は昨秋のリーマンショック以降激減し、今年8〜10月は3カ月連続でゼロだったが、11月には計16件約296億円分を取得。12月以降にも約20件1300億円以上の取得が予定されている。一時は難しかった公募増資による資金調達がここに来て可能になってきたことに加え、不動産価格の下落が背景にある。」(『建設工業新聞』2009.12.07)
●「8日決定した追加経済対策7.2兆円(国費ベース)のうち、国土交通省関連分は災害復旧費を含め5805億円となった。▽住宅関連▽エコカー補助の延長▽観光立国の実現に向けた施策の推進▽物流・交通の低炭素化▽下請建設企業への金融支援−の5木柱で構成。建設関連では下請業者への金融支援に47億円が盛り込まれたほか、建設会社の成長分野展開も支援する。」(『建設工業新聞』2009.12.09)
●「国土交通省は、政府が8日決定した追加経済対策に、住宅・建築分野の振興策を盛り込んだ。断熱住宅の建設・改修などを行う人に対して、商品などと交換可能なポイントを付与する『エコ住宅二ポイント』の推進に1000億円を計上する。断熱対策などに加えてバリアフリー対策を実施した場合に、ポイントを上乗せする措置も検討する。」(『建設工業新聞』2009.12.09)
●「建設資材価格、関連サービスの料金が軒並み下落している。鉄骨に使うH形鋼は5年8カ月ぶりの安値に落ち込み、鉄筋の値下がりも止まらない。サービス料金の下落も目立ち、鉄筋加工単価は前年比2〜3割安く、ほぼ40年前の水準に戻った。設備投資やマンションなど民需の冷え込みに公共工事削減が重なり、建設会社からの値下げ要求も強まっている。今夏に下げ止まり感が見えた建設関連市況は再び弱基調が鮮明になってきた。」(『日本経済新聞』2009.12.11)
●「日本銀行は14日、全国企業短期経済観測調査(短観)を公表した。景況感(業況判断、良いから悪いを引いた%)は、前回調査(9月)と比較し、大企業は製造業が9ポイント、非製造業も2ポイントそれぞれ改善したものの水準自体は低水準が続いている。また建設業の受注動向に影響を与える、設備投資額は大企業の製造業・非製造業ともに3.4ポイント悪化、建設投資の7割を占める民間工事市場の先行き不透明感は強まっている。 建設業の景況感も、民間工事の顧客である製造業・非製造業の景況感低水準や、急激な円高やデフレの先行きの不透明感を反映し、先行きについては大企業が8ポイント悪化しマイナス32、中堅企業も17ポイント悪化しマイナス43、中小企業は7ポイント悪化のマイナス49と、企業規模を問わず先行き悪化見通しが拡大している。」(『建設通信新聞』2009.12.15)
●「国土交通省は3日『直轄事業における公共事業の品質確保の促進に関する懇談会』の生産性向上検討部会(部会長・福田昌史高知工科大客員教授)の初会合を開き、『総価契約単価合意方式』などについて議論した。同方式は、受・発注者が事前に単価合意しておくことで設計変更を円滑化するのが目的で、国交省は原則、すべての直轄土木工事に導入する方針を示した。…国交省によると、同方式の導入により、発注者側の積算に基づく単価から受・発注者間で合意した単価に変わることで双務性が確保され、設計変更が円滑化。受注者にとっても適正な利益やキャッシュフローを確保できる効果が期待できるという。 …単価合意は、契約数量を示す『積算大系のレベル4(細別)』を想定。」(『建設工業新聞』2009.12.04)
●「国土交通省は10日、整備新幹線のまだ着工していない区間について、高速道路が無料になっても確実に投資効果が見込める路線に限って認可・着工する方針を固めた。新幹線の開通後に地元自治体などが引き継ぐ並行在来線は、1Rに資金援助などの支援を求める考え。1Rが並行在来線の運行に積極的に協力する区間を対象に、優先的に新幹線を認可することも検討する。現在、計画が申請されている未着工区間は、北海道(新函館−札幌)、北陸(白山総合車両基地−敦賀)、九州(諌早−長崎)の3区間。前原誠司国交相は既に2010年度予算案では事業認可・新規着工を見送る考えを表明。国交相は年内に新方針を示したうえで、関係自治体や1Rとの協議に入る。11年度予算案に向けて新幹線が本当に必要かどうかを需要や採算の面から厳しく見直す。」(『日本経済新聞』2009.12.11)
●「関西圏の空港戦略の見直し論議が本格化してきた。国土交通省の成長戦略会議は14日、大阪府の橋下徹知事らを招き、地元の意見を聞いた。橋下知事は大阪国際(伊丹)空港を廃止するとともに、大阪中心部と関西国際空港をリニアモーターカーで結ぶ構想を掲げた。兵庫県は神戸空港を含む3空港の一元的な運営を主張しており、調整は難航しそうだ。…前原誠司国交相は13日、使用する航空機の小型化などを進めながら、伊丹を存続する方針を表明した。関空については貨物便の利用を増やし、格安航空会社(LCC)の拠点とする考えを示している。来年6月までに抜本的解決策の方向性を出すことを条件に、関空への補給金も続けるよう要請する。」(『日本経済新聞』2009.12.15)
●「国土交通省が関東など3地方整備局が発注した土木工事の代金支払い方式について実態調査を行ったところ、出来高部分払い方式の実施率が2.2%にとどまっていることが分かった。出来高部分払い方式や中間前金払い方式を支払い方法に選んでも、実際には通常の支払い方式を利用しているケースが多い。出来高部分払い方式は、手続きの煩雑さなどを理由に導入が進んでいないとの指摘があるが、国交省は、導入ニーズそのものについても精査が必要とみている。同省は本年度、10件程度のモデル案件で、出来高部分払い方式の課題を検証する。」(『建設工業新聞』2009.12.15)
●「公契約法」(公共事業における賃金等確保法)の制定を求める請願が4日、参院本会議で採択された。公契約は公的機関を相手に結ばれる契約で、公共工事や委託事業の下請け労働者などが受け取る「公契約賃金」の低賃金構造が問題になっている。採択された請願は、国や自治体が公共工事などを発注する際、関係労働者に、その地方の同一性質の労働に劣らない有利な賃金・労働時間、労働条件の確保を義務付ける「公契約法」の制定を求めたものだ。請願は、国土交通省全建設労働組合(全建労)が事務局を担当する生活関連公共事業推進連絡会議(生公達)などが提出していた。(『しんぶん赤旗』2009.12.05より抜粋。)
●「世界経済危機と建設・木材産業労働者への影響に関する国際会議『建設国際フォーラム』が7日、東京都墨田区の国際ファッションセンターで開かれ、世界各国の建設労働組合関係者が参加し、それぞれのテーマに沿って自国の状況を説明した。金融危機によって波及した世界同時不況による建設市場縮小など負の連鎖が建設労働者に深刻な影響を与えかねないことが浮き彫りになった。」(『建設通信新聞』2009.12.08)
●労働組合に入っている人は1007万8000人で、前年より1万3000人増えたことが、厚生労働省が10日発表した労働組合基礎調査でわかった。雇用労働者に占める割合(組織率)は18.5%で、1975年以来34年ぶりに前年を上回った。パート組合員が前年比8万4000人増の一方、雇用労働者総数が110万人も減ったことが要因。産業別では卸売 主要団体別では、連合は683万2000人(前年比7万人増)、全労連は88万3000人(同1万1000入滅)だった。全労連は、地域組織に加盟している組合員を加えると120万人になるとしている。(『しんぶん赤旗』2009.12.11より抜粋。)
●「日本建設業団体連合会(日建連、野村哲也会長)がまとめた会員企業49社の10月の受注総額は前年同月比37.0%減6050億円と、12カ月連続で2けた減を記録。10月の受注額としては1977年以来の低水準となった。…日本建設業団体連合会(日建連、野村哲也会長)が会員企業を対象に実施した09年度の受注見通し調査によると、回答した47社中30社が、国内受注額が前年度実績を割り込むとの見通しを示した。30社中8社は『前年度比で20%以上減少する』と厳しい見方を示している。」(『建設工業新聞』2009.12.01)
●「戸建て分譲事業を手掛ける飯田産業は3日、2009年5〜10月期の連結純利益が前年同期比26倍の26億円になったと発表した。戸一建て住宅の販売が好調で、従来予想を10億円弱上回った。建設コストなど経費削減が想定以上に進んだことも寄与した。売上高は6%増の527億円と従来予想を20億円上回った。戸建ての販売戸数は1554戸と8%増加。1戸あたりの平均単価は約3000万円と直近ピークから400万円近く引き下げ、値ごろ感から販売増につながった。販売価格を引き下げたが、用地取得費や工事コストなど原価低減をそれ以上に推進。粗利益率は約17%と前年同期から5ポイント改善した。」(『日本経済新聞』2009.12.04)
●「積水ハウスが3日発表した2009年2〜10月期の連結最終損益は106億円の赤字(前年同期は145億円の黒字)になった。戸建て住宅やマンションの売れ行きが不振だったことに加え、都市再開発案件が端境期であることも響いた。滋賀工場の閉鎖に伴う費用も重荷になった。10年1月期通期の純利益は60億円と前期比48%減る見通しだ。」(『日本経済新聞』2009.12.04)
●「景気の二番底への懸念が強まる中、建設市場の縮小が雇用確保に及ぼす悪影響を指摘する声が業界で高まっている。日本土木工業協会(土工協、中村滞義会長)は、建設投資の減少が続いた場合、09〜10年の2年間で『建設就業者数が50万人程度減少する懸念がある』との見通しをまとめた。全国建設業協会(全建)の浅沼健一会長も『年末、年度末に向けて自殺、失業、倒産が増加するのではないか』との懸念を協会の会合などで表明している。市場の急激な縮小で建設業の雇用吸収力が失われつつある形で、政府には雇用確保に向けた早期の対応が求められそうだ。」(『建設工業新聞』2009.12.04)
●「東京商工リサーチがまとめた2009年9月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比19.2%減の324件となった。地区別件数では、全国9地区のうち近畿を除く8地区で前年同月比を下回った。倒産件数は、ことし3月以降、6月を除き前年同月を下回って推移し、『緊急保証制度』や公共工事の前倒し発注などの効果がうかがわれる。負債総額は39.5%減の564億3100万円だった。この減少幅は、負債10億円以上の大型倒産が前年同月には16件発生していたが、31.2%減の11件にとどまったことが要因にあげられる。平均負債総額は同25.0%減の1億7400万円となっている。」(『建設通信新聞』2009.12.07)
●「道路各社が民間需要の掘り起こしを急いでいる。『コンクリートから人へ』を掲げる民主党政権の誕生で、公共工事減少に対する危機感が強いからだ。駐車場や町工場の舗装など、今まで力を入れていなかった民間工事部門は開拓余地が大きい。しかし価格競争は激しく、今後は事業規模による明暗も出てきそうだ。」(『日本経済新聞』2009.12.10)
●「ゼネコン(総合建設会社)大手の財務悪化に警戒感が出ている。工事費の立て替え度合いを示す『工事資金収支』は9月末、清水建設を除く3社で1年前に比べ悪化した。民間工事を積極的に獲得してきたのに加え、足元ではドバイ首長国など一部の海外大型工事の難航も重荷だ。設計変更などで膨らんだ費用の立て替えを迫られる例もあり、有利子負債の増加につながる恐れもある。」(『日本経済新聞』2009.12.10)
●「国際労働機関(ILO)は7日発表した2009年版世界労働報告で、世界の主要国が景気刺激策を早期に打ち切ると、長期失業者が対策を続行した場合に比べ12年にかけて4300万人増えるとの予測を明らかにした。低技能労働者や季節労働者、高齢者が解雇される一方、若者は就職が困難になるためだ。その結果、『個人消費や設備投資に悪影響が及んで、景気回復自体を脅かす』と警告した。」(『日本経済新聞』2009.12.08)
●「ベトナム政府が東南アジア最大規模の交通インフラ整備事業『南北高速鉄道』に日本の新幹線方式の採用を決めたことが11日明らかになった。11月の日越首脳会談でグエン・タン・ズン首相が鳩山由紀夫首相に表明した。海外での同方式採用は台湾に次ぎ2番目。日本政府は近く、計画の推進を目指した次官級協議を提案する予定。総事業費560億ドル(約5兆円)の大規模事業が具体化に向けて動き出す。」(『日本経済新聞』2009.12.11)