情勢の特徴 - 2009年12月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「内閣府は15日、日本経済全体の需要と供給の差を示す『需給ギャップ』の最新の試算を発表した。2009年7〜9月期は需要が供給を下回る状態にあり、経済の実力に相当する潜在的な国内総生産(GDP)の7.0%に達する需要不足に陥った。金額に換算すると35兆円規模の需要不足となる。」(『日本経済新聞』2009.12.16)
●「アジア向けを中心に輸出が持ち直してきた。財務省が21日発表した貿易統計速報(通関ベース)によれば、11月の輸出額は前年同月比6.2%減の4兆9917億円と14カ月連続で減少したものの、下落率は前の月(23.2%減)に比べ大幅に縮小した。アジア向け輸出は中国を中心に拡大し、昨年9月以来14カ月ぶりに増加に転じ、リーマン・ショック以前の水準を回復した。ただ、国内設備投資への波及は限定的で、景気の下振れ懸念は消えていない。」(『日本経済新聞』2009.12.21)
●「建設資材の需要に底入れの兆しがみえない。セメントや棒鋼の2009年度の内需はバブル期の半分程度に縮むのが確実となった。07年度の改正建築基準法の施行、08年度のリーマン・ショックに続き、公共工事の削減という逆風に見舞われた建材市場。3年連続の市場収縮で、政策への不満は募るばかりだ。」(『日本経済新聞』2009.12.22)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、直轄事業の調査・設計業務の低価格入札防止対策案をまとめ、15日開いた『調査・設計等分野における品質確保に関する懇談会』(座長・小澤一雅東大大学院教授)に提示した。低入札価格調査の基準価格を下回った応札者への審査を厳格化する内容で、積算内訳書などの提出を求めて経費や技術者への報酬などが適切かどうかをチェック。これらを技術評価点に反映させることを想定している。併せて、調査基準価格の見直しも検討する。国交省は、本年度中に懇談会をもう一度開き、有識者から意見を聞いた上で対応方針を決める。」(『建設工業新聞』2009.12.16)
●「全国143カ所のダム事業の見直し問題で、前原誠司国土交通相は15日、地方自治体が事業主体となる補助ダムについて、当面、事業化の実施を先延ばしにするよう関係自治体に要請した。ダム事業の見直し議論は現在、今月3日に設置された有識者会議で始まったばかりで、同会議が来年夏に中間とりまとめとして示す新たな整備基準に沿って、自治体も補助ダム事業を再検証するよう求めている。」(『建設工業新聞』2009.12.16)
●「政府の2009年度第2次補正予算で、地方自治体がインフラ整備をするために盛り込まれた『地域活性化・きめ細かな臨時交付金』5000億円の使途が、都道府県・市町村の中でも小規模な工事に限定されそうだ。内閣府が公表した交付要件で、国庫補助事業のうち法律で国の補助率や負担率が決められていないものに使い道が限られていることが理由。『地域活性化・きめ細かな臨時交付金』は、緊急経済対策の中で危険な橋梁の補修や景観保全の必要性の高い地域における電線の地中化、都市部の緑化、森林の路網整備などのインフラを整備する地方自治体に配分する。地方自治体が地方単独事業の経費や国庫補助事業の地方負担分の合計額についての実施計画を策定し、認定されれば交付金が交付される。」(『建設通信新聞』2009.12.21)
●「成田国際空港会社は25日、2014年度にも成田空港の年間発着枠を現行の1.5倍の年30万回に引き上げることを決め、具体的な施設整備の計画を発表した。駐機場や誘導路の増設、離着陸方式の改善などが柱で、格安運賃の航空会社(ローコストキャリア)が利用できるターミナルの新設も検討する。前原誠司国土交通相が『羽田を国際ハブ(拠点)に』と発言したことを受け、地位低下に歯止めをかけるため容量拡大を急ぐ。」(『日本経済新聞』2009.12.26)
●林野庁は28日、国の建築物への国産木材使用を関係省庁などに義務付ける新法を制定する方針を固めた。庁舎など約2万施設を対象に、建て替えなどの際、建築材や内装材に一定量の国産材使用を求める。林業振興とともに、木材利用の拡大により間伐を促進し、二酸化炭素(CO2)吸収源となる森林の整備を図る。自治体にも地域産木材の利用を増やすよう努力義務を課す方向で検討している。新法は来年の通常国会に提出する予定。(『しんぶん赤旗』2009.12.29より抜粋。)

労働・福祉

●「厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会は18日、雇用保険法改正案に関する報告書をまとめた。保険の加入要件である雇用見込み期間は『6カ月以上』から『31日以上』に短くする。一方で失業給付の雇用保険料率は賃金の0.8%(労使折半)から1.2%に引き上げる。厚労省は報告書をもとに同法の改正案を作り、年明けの通常国会への提出を目指す。加入要件の緩和により、パートなど約255万人を新たに適用範囲に加える。」(『日本経済新聞』2009.12.18)
●「2010年春の労使交渉で、主要労組が賃金改善を要求しない流れが強まってきた。電機や鉄鋼大手に続き、三菱重工業、IHIなど大手重工7社も賃金改善要求を見送る見通しとなった。自動車各社の労組でつくる自動車総連は18日、統一要求を見送る執行部案をまとめた。労組側は定期昇給に相当する賃金カープ維持や雇用確保に要求を絞り込む。しかし経営側は厳しい経済環境のなかで、定昇にも慎重な姿勢。厳しい交渉になる可能性がある。」(『日本経済新聞』2009.12.19)
●「厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会は18日、労働者派遣法改正案の原案を提示した。民主党がマニフェスト(政権公約)で掲げた『製造業派遣の原則禁止』を明記。規制対象は40万人超となる見通しだ。派遣先が違法行為をした際に派遣社員を直接雇用することを義精付ける『直接雇用みなし制度』も創設する。製造業派遣の原則禁止は3年間の移行期間を設けるが、企業にとってコスト増につながりかねないため、反発も予想される。」(『日本経済新聞』2009.12.19)
●総務省が25日発表した11月の完全失業率(季節調整値)は5.2%に悪化した。男性の完全失業率が5.4%で前月から0.1ポイント悪化、女性が4.9%で0.1ポイントの悪化だった。…倒産・解雇の増加で、就業者数は大幅な減少を続けています。就業者数は前年同月比131万人減の6260万人で、22カ月連続の減少。就業者の減少は、製造業で前年同月比74万人減少と依然として大きいことに加え、卸売・小売業で45万人減と、雇用悪化による売り上げ不振の影響が目立つ。(『しんぶん赤旗』2009.12.26より抜粋。)
●鳩山政権が25日に決定した2010年度政府予算案は、国民が置かれている暮らしと営業、雇用の危機を打開するものになっているのでしょうか。主な項目の特徴を見てみた。…公共事業関係予算は5兆7731億円と、前年度比で18.3%減となった。無駄が多いと指摘される大型事業のうち、大企業向けは温存された。「国際競争力の強化」の名のもと、自民党政権時代から推進されてきた「スーパー中枢港湾」整備や三大都市圏環状道路建設は、「さらに重点化を図る」(国土交通省)方向。これらの事業は物流大企業などの強い要望に沿って、東京、大阪、名古屋など拠点港湾施設の機能強化や幹線道路の整備を行うもの。ダム事業については見直しが進んだ。注目された八ツ場(やんば)ダム(群馬県)、川辺川ダム(熊本県)の本体工事は中止される。ただ、周辺道路など関連事業は継続されることになっている。生活関連では、地方バス路線維持のため国が補助する事業の縮小など、自治体・住民の願いに反する施策も盛り込まれている。(『しんぶん赤旗』2009.12.26より抜粋。)
●「政府は25日、10年度予算案を閣議決定した。政府全体の公共事業関係費は前年度比18%減の5兆7731億円で、過去最大の削減幅となった。09年度の補正予算分を含めた公共事業費(9.4兆円)と比べると38%減の大幅マイナスで、『コンクリートから人へ』を政策理念に掲げる鳩山政権の方針が色濃く反映された予算案となった。国土交通省所管分の予算案は総額5兆5846億円(前年度比12%減)で、このうち公共事業関係費は4兆8585億円(15%減)となった。全国で89のダム事業の再検証や道路事業の縮減などにより、公共事業の抑制を図る方針が徹底された。一方で、既存の補助金を統合した2.2兆円規模の社会資本整備総合交付金(仮称)の創設が盛り込まれた。」(『建設工業新聞』2009.12.28)

建設産業・経営

●「東京商工リサーチがまとめた2009年年度上期(4−9月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同期比11.6%減の2079件で、年度の上期としては4年ぶりに前年を下回った。月次推移では、『緊急保証制度』や公共工事の前倒し発注により、前年同月比を下回る減少傾向が続いている。負債総額は、41.3%減の4197億0600万円となり、3年ぶりに前年同期を下回った。負債100億円以上の大型倒産は、50.0%減の4件と前年同期から半減した。これに伴い平均負債額も33.8%減の2億0100万円となり、上期としては最近10年間で2番目に少ない金額にとどまった。」(『建設通信新聞』2009.12.17)
●「日本建設業団体連合会(日建連、野村哲也会長)は24日、11月の会員企業49社の受注実績調査結果を発表した。受注総額は前年同月比20.2%減の5950億円で、1975年の調査開始以来、11月としては初めて6000億円を割り込んだ。国内受注は5580億円(前年同月比23.0%減)にとどまり、うち民間工事が4000億円(31.8%減)、官公庁工事が1410億円(3.4%増)と特に民間工事の落ち込みが目立った。海外受注は360億円(79.1%増)だった。4〜11月の累計受注額は5兆5270億円となり、前年同期比28.4%減と大幅マイナス。12月以降、年度末まで受注額が仮に前年と同水準で推移すれば、09年度の年間受注総額は9兆2000億円程度になるが、これまでのところ、各月の受注額は前年同月を30%程度下回る水準で低迷しており、1978年度以来31年ぶりに年間受注総額が9兆円を下回る可能性が高まっている。」(『建設工業新聞』2009.12.25)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「政府はこのほど、緊急経済対策の2次補正予算として、7.2兆円規模を投入することを決めた。このうち住宅関係では初めて、『住宅版エコポイント』制度が創設されることになり、工務店業界にも関心が高まっている。家電のエコポイント制度とは異なり、規模も金額も大き<なることが予想され、省エネ化工事に対するポイントをどうつけるか、エコ住宅を評価するしくみをどうするか等について、国土交通省では検討を急いでいる。…当面、同事業は経済産業省、国土交通省、環境省が合同で取り組むことになっており、概要が次のように決まっている。まず、エコポイントを発行する対象となるのは住宅の新築とリフォームで、補正予算が成立した日以降に原則として工事が完了し、引き渡されることが条件。ただし、平成22年1月1日以降に工事に着手したものに限るとしており、年内に着工した場合には対象にならないことになる。リフォームでエコポイントの対象となる『エコリフォーム』は、@窓の内側に内窓を設置して二重サッシ化したり、ガラスを交換して複層ガラスにするなど、開口部の省エネ改修を行った場合A外壁や天井、床に断熱材を施工する工事を行った場合、などがあげられており、これと併行してバリアフリーリフォームを行った場合はポイントを加算することになっている。新築で対象になる『エコ住宅』は、今年4月から施行されている改正省エネ法で定められたトップランナー基準(省エネ基準に加えて高効率給湯器や太陽光発電等の設備を設置するもの)を満たしているか、同等の性能が認められたものA省エネ基準を満たしている木造住宅、があげられている。」(『日本住宅新聞』2009.12.15・25)
●「住宅リフォーム市場の拡大へ向け、国土交通省や住宅瑕疵(かし)担保保険法人などによる取り組みが加速している。マンションの大規模修繕や、リフォームを行った物件の再販売などに対応した任意の住宅瑕疵担保責任保険が本年度内をめどに出そろう。保険制度の活用に当たってはリフォーム事業者の登録制度も設け、欠陥工事などの悪質なケースについて事例の公表や事業者登録の取り消しといった措置を講じる方向だ。国交省は、瑕疵担保保険の活用と住宅履歴情報の蓄積などに対する支援措置も検討。新築着工が伸び悩む中、リフォーム市場の拡大を経済の活性化につなげる方針だ。」(『建設工業新聞』2009.12.17)
●「東京都新宿区の住宅跡地に建設中のマンションを巡り、『安全基準を満たしていない』として周辺住民が区に建築確認の取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は17日、『違法な建築物』として建築確認を取り消した二審・東京高裁判決を支持、同区の上告を棄却した。住民側勝訴が確定した。・・・建築確認の取り消しを求める訴訟で最高裁が判断を示したのは初めて。・・・争われたのは、新宿区の地上3階地下1階のマンション(30戸)。周囲はがけや隣家の壁に囲まれ、建物北西側に接している最小幅約4メートル、長さ約34メートルの通路が外の道路に通じる設計となっている。都条例によると、このマンションの場合、8メートル以上の通路幅が必要となるが、同区は条例の例外規定を用い『安全上の支障はない』と認定し、建築確認を出していた。東京高裁は『区の判断に合理的な根拠はなく、裁量権を乱用した』と判断。同小法廷も判決理由で『高裁の判断は是認できる』と述べた。判決などによると、建設地一帯はタヌキなどが生息する『たぬきの森』と呼ばれ、周辺住民らがマンションの建設に反対。区に公園として買い上げるよう求めていたが、区は2006年に建築確認を出し、工事が始まった。マンションは今年寄に完成予定だったが、今年1月の高裁判決後、工事は止まっている。」(『日本経済新聞』2009.12.18)

その他