情勢の特徴 - 2010年1月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「東京23区内のオフィス空室率の上昇が止まらない。オフィス仲介の三鬼商事が8日に発表した昨年12月末の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は、5年10カ月ぶりに8%を超えた。23区内では今年、豊洲や大崎など都心部と比べオフィス需要が少ないとみられるエリアでオフィスの新規供給が集中することから、23区全体でも8%を超えるとの見方が出てきた。8%という数字は、90年代にバブル崩壊で空室率が急上昇した時に迫る水準。オフィスビルの新規開発は、最悪期に比べると勢いを取り戻しつつあるが、この動きに水を差しかねない。」(『建設工業新聞』2010.01.13)
●「経済活動の低迷で人口の都市部への流入が停滞する傾向が目立ってきた。総務省の住民基本台帳に基づく人口移動報告によると、2009年1〜11月までの3大都市圏(東京・大阪・名古屋)への転入超過数は10万7000人と、前年同期に比べて31%減った。2000年代は景気拡大に伴い都市圏に多くの人口が集まっていたが、ブレーキがかかった格好だ。地方の人口減少が緩和される半面、日本経済全体の生産性に影を落とすとの懸念も出ている。」(『日本経済新聞』2010.01.15)

行政・公共事業・民営化

●「前原誠司国土交通相は、日刊建設工業新聞など建設専門紙各社の新年インタビューに応じ、今年の国土交通施策の重点方針について語った。この中で前原国交相は『有限実行をテーマに、就任後から打ち出した各種施策を実行に移す』と述べ、国際競争力の強化と内需主導による経済回復の視点から施策を積極的に展開する考えを表明。施策の柱には、▽観光振興策の推進▽空港・港湾整備への重点投資▽ゼネコンの海外進出▽PPP(官民共同)手法を活用した住宅・不動産市場の活性化―の4点を挙げ、『国交省が打ち出すこれらの施策が日本経済をけん引する形にしたい』と意気込みを示した。・・・公共投資の先行きについて前原国交相は、『ばく大な財政赤字、人口減少、少子高齢化の状況下では、国内の公共投資は減少する。高度経済成長時代につくった公共インフラの維持管理にこれから資金が必要なことを考えれば、新規事業は抑制せざるを得ない』と述べ、国内公共投資市場は先細りが不可避との見方をあらためて明言。その上で『日本のゼネコンの保有するノウハウや技術、人を生かすためには無限の市場がある海外に進出するしかない』と持論を展開した。ゼネコンの海外進出に向けては、『国もしっかりと支援を行いたい。ODA(政府開発援助)と結びつけてどのように海外市場をつくるのかを検討したい。政府主導で新幹線や高速道路の技術、下水道整備の仕組み、効率的な都市環境づくりなどをアピールする』と国として後押ししていくことを約束した。」(『建設工業新聞』2010.01.04)
●鳩山政権が編成した2010年度予算案では、学校耐震化の予算が大幅に縮減された。市町村が来年度に予定していた耐震化計画の半分以下しか実施できない見通しで、影響は重大だ。文部科学省の10年度予算案に盛り込まれた学校耐震化予算は1032億円(沖縄分は除く)、約2200棟分。09年度当初予算と比べて19億円の減額。市町村からはすでに10年度実施分として、5000棟の耐震化計画が同省に上がっていたが、うち2800棟は先送りを余儀なくされる。08年6月に、日本共産党も法案提案者に加わった学校耐震化促進法が国会で成立し、10年度までの3年間、震度6強以上の地震で倒壊する危険性が高いとされる構造耐震指数(IS値)0.3未満の施設の耐震補強工事への国庫補助率を、2分の1から3分の2へ引き上げるなどの措置がとられた。10年度に工事が実施できずに先送りされると、この補助率かさ上げの特例措置が切れてしまう。(『しんぶん赤旗』2010.01.11より抜粋。)
●「『コンクリートから人へ』の流れで、地方自治体の公共事業も減少―。総務省がまとめた来年度の地方財政計画で、投資的経費の単独分は、前年度比15.0%減の約6.9兆円となり、10年前と比べて4割弱の規模にまで縮小した。地方単独事業の急激な減少を避けるため、別枠で新たな特例債が設けられるが、雇用対策などにも充てられるため、どの程度が公共事業に回るかは不透明な情勢。国庫補助事業も目減りするとみられ、地方自治体発注の公共事業は、さらなる縮小を余儀なくされる方向だ。経営の厳しさが増す地域の建設業への影響も必至とみられる。」(『建設工業新聞』2010.01.12)
●「国土交通省は、国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)を廃止した後の新たな枠組みについて、概要をまとめた。高速自動車国道の予定路線の決定や路線の指定、整備計画の策定を、社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)に必ず付議し、第三者の有識者によるチェックを行う。その後、事業評価結果を開示した上で、国会の予算審議の中で検討し、最終決定する流れに改める。」(『建設工業新聞』2010.01.13)
●「政府は、18日に開会する通常国会の国土交通省関係の法案として国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)の廃止法案など8法案を提出する。・・・国幹会議を廃止する法案『高速自動車国道法の一部を改正する等の法律案(仮称)』は、従来、高速自動車国道だけは、整備計画の了承に当たって、国幹会議の審議を経る必要があったものを、国幹会議を廃止し、社会資本整備審議会に予定路線の決定や路線の指定、整備計画策定を付議し、妥当性を審議するようにするというもの。・・・提出法案のうち、『国の直轄事業に係る都道府県等の維持管理負担金廃止等のための関係法律の整備に関する法律案(仮称)』では、国の直轄事業の維持管理に必要な費用の一部を地方自治体が負担していた制度を廃止する。・・・このほか、賃貸住宅の賃借人居住安定確保のための、家賃債務保証業や弁済情報提供事業者の登録制度創設に必要な法案も提出する。一方で、現政権発足時に前原誠司国交相などが明言していた手続き負担緩和のための建築基準法改正は、省令・告示の見直しで対応することとして提出を見送る。集約型都市構造を構築するため、前政権下で見直し作業が進んでいた都市計画法改正案も提出を見送る。ただし、現政権も集約型のコンパクトシティーを目指す考えを示しており、当面は国交省成長戦略会議の住宅・都市分野の分科会で検討が進む見通し。」(『建設通信新聞』2010.01.13)
●「国土交通省は10年度、3階建て以上の大規模木造建築物の普及に向けた取り組みに乗りだす。政府が推進する地球温暖化対策の一環で、先導的な設計・施工技術を導入する建築物について、事業者を公募で選定し、建設費の一部を助成する優遇制度を創設。その普及を後押しする。来年度予算案に関連経費として50億円を計上している。・・・国交省は大規模木造建物に加え、中小住宅メーカーによる地域産木材を使った長期優良住宅の整備も促進するため、建設費の一部を助成する優遇制度も創設する考えだ。」(『建設工業新聞』2010.01.15)
●「関東地方整備局は2009年度上期(09年4−6月)における工事の契約行為1366件(港湾空港関係を除く)の状況をまとめた。平均落札率は90%で前年度通年と同水準を保ったが、低入札価格調査の発生率は8%で3ポイント増となった。一方、入札不調・不落札の発生率は全体の18%で9ポイント減となった。総合評価方式で価格1位以外が落札した割合は全体の26%で前年度通年と同水準だった。(『建設通信新聞』2010.01.15)

労働・福祉

●「日本建設業団体連合会(日建連、野村哲也会長)は、建設工事の作業所の土日閉所と快適職場認定の取得に一層の配慮を求める通知をまとめ、12日付で会員各社に送付した。昨春にまとめた『建設技能者の人材確保・育成に関する提言』で示した目標を実現する取り組みの一環。作業所の閉所や認定取得の実態を把握するため、日建連は4月にアンケートを実施。その結果を踏まえ、『作業所の日曜全閉所、土曜日の50%閉所』と『快適職場認定100%取得』を実現するためのロードマップを策定する考えだ。」(『建設工業新聞』2010.01.13)

建設産業・経営

●「マンションの大規模修繕を対象に、欠陥工事の被害を補償する新たな保険商品が今月中にも登場する。欠陥工事で雨漏りなどの補修を迫られた場合、最大5億円の保険金を支払う。老朽化したマンションの大規模な修繕が増えているためで、国土交通省が認可した。住宅関連の補償を専門とする東京電力系のハウスプラス住宅保証(東京・港)が認可を取得した。新保険に加入できるのはマンションの修繕業者。工事から5年以内(屋根は10年以内)に欠陥が見つかったときには、補修費用の8割を保険金として修繕業者に支払う。修繕業者が倒産していれば、マンションの管理組合が補修費用の全額を受け取れる。 マンションの構造部、屋根、給排水設備、電気設備、手すりなどの欠陥が補償対象になる。保険金額は5千万〜5億円で、マンションの延べ床面積によって異なる。」(『日本経済新聞』2010.01.03)
●「国土交通省は、09年度の下請取引等実態調査の結果をまとめた。元請から下請へのしわ寄せについて、『受けたことがある・知っている』との回答割合を示す『しわ寄せ率』は10.7%だった。発注者から元請へのしわ寄せ率は7.2%だった。下請に発注したことがある回答者のうち、建設業法を完全に順守できていた企業は288者で、全体の2.7%にとどまった。不当なしわ寄せを行ったとされる建設業者に対しては、立ち入り検査などにより指導する。建設業法を順守していない回答企業に対しては、6日付で指導票を送付し、改善を求める。未回答企業への行政指導も行う。」(『建設工業新聞』2010.01.06)
●「国土交通省は、韓国と中国が実施している自国建設業に対する国際展開支援策を調査する。両国の建設業界はここ数年、政府の後押しを受けて国外で受注を順調に伸ばしている。同省は両国の国際展開支援策の内容を調査・分析し、これを基に現在は低調な日本のゼネコンの海外受注の促進策を検討する。税制による支援措置や、海外進出を後押しする新法の制定なども視野に入れている。本年度末までに調査を終え、11年度予算の概算要求をまとめる8月末までに結論を出す。」(『建設工業新聞』2010.01.08)
●「プラント建設各社が鉄道のエンジニアリング事業に相次ぎ参入する。日揮はベトナムの都市交通プロジェクトに応札する。東洋エンジニアリングも鉄道計画のコンサルティング業務受注に成功、別の建設案件にも応札していく。大型エネルギープラントの建設で蓄積した資材調達や工事管理などのノウハウを活用。世界で広がる鉄道インフラの敷設プロジェクトに参画し、新たな収益源に育てる。」(『日本経済新聞』2010.01.13)
●「東京商工リサーチがまとめた2009年10月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比14.9%減の342件となった。10月としては3年ぶりに350件を下回った。倒産件数はことし3月以降、6月を除き前年同月を下回って推移し、『緊急保証制度』や公共工事の前倒し発注などの効果がうかがわれるものの、前月比では3カ月ぶりに増加に転じ、今後の動向が注目される。負債総額は、62.1%減の609億2100万円となった。負債10億円以上の大型倒産は47.6%減の11件で、平均負債額が55.5%減の1億7800万円にとどまった。」(『建設通信新聞』2010.01.13)
●「国土交通省は、建設業の国際展開に向けた事業を2010年度から加速させる。建設企業の国際競争力・成長力強化の為の対象国や技術など、具体的な戦略を探る。国内の建設企業が海外プロジェクトを受注後に発生した問題を解決するための支援策を検討するほか、地方・中小建設企業を対象とした海外展開支援アドバイザー制度を創設する。国際建設プロジェクトリーダーを養成するプログラムも構築し、人材育成支援に取り組む。政府の成長戦略にも位置付けられた建設業の国際展開の実現を目指す。」(『建設通信新聞』2010.01.14)
●「東京商工リサーチが13日発表した09年(1〜12月)の企業倒産(負債1000万円以上)集計によると、建設業の倒産は4087件(前年比8.5%減)と4年ぶりに前年を下回った。負債総額は9135億円(28.4%減)と3年ぶりのマイナス。景気対策として過去最高水準となる公共工事の前倒し発注が行われたことや、緊急保証制度などの政策効果で3月以降、月次ベースで前年同月を下回って推移した。ただ、民需を中心とした企業業績の向上は伴っていないことから、景気対策効果が切れれば倒産が再び増勢に転じる可能性もあり、同社は『先行きは決して楽観できない』としている。」(『建設工業新聞』2010.01.14)
●「大手・準大手ゼネコンがリニューアル市場の開拓に本腰を入れ始めた。政府が打ち出した二酸化炭素(CO2)排出量の25%削減目標を契機に、既存建築物の省エネ対策が動くと判断、公共インフラの維持更新需要にも大きな期待があり、ゼネコンのリニューアルシフト″が鮮明になってきた。伸び悩む新規需要をカバーする手段として、ストック対応に活路を見いだすが、重点ターゲットは集中し、受注競争は一気に激しさを増す気配だ。・・・省エネ改修の対応強化に向け、すでに水面下で営業活動を本格化させているのが都内で豊富な施工実績をもつ大手クラス。・・・日刊建設通信新聞社の調べによると、ゼネコンのリニューアル受注は、建築工事に占める割合が20%を超える企業も大手の一部にあるが大半が10%台で推移。土木は10%以下がほとんどだ。特に建築リニューアルは、元施工案件を中心に顧客対応の一環として取り組んでいるのが実態で、これまでに戦略的にリニューアル領域を開拓する動きはなかった。ゼネコンにとっては『今後、ストック市場が主戦場になる』(準大手トップ)との見方が多く、新築重視で進めてきた営業体制を転換する動きが一気に加速しそうだ。新築に比べ工事規模が小さいため、一定程度の売り上げを確保するには従来より現場数を増やす対応が必要で、結果として技術者が不足する懸念から、施工体制の確保も課題になる。一方、ストック領域で新築の落ちをどこまでカバーできるかは『限定的』との指摘もある。」(『建設通信新聞』2010.01.14)
●「昨年12月に日刊建設工業新聞社が行った人材採用アンケートによると、ここ数年、増員傾向が続いていた新卒・中途採用を抑える社が目立ち、組織改革と合わせて縮小する建設市場への対応を急いでいる。・・・アンケート結果(回答32社、09年12月1日時点)によると、今期に中途採用を行った社は3分の2にとどまり、今春入社の新卒者総数は前期実績(2719人)を16.3%下回った。新年のスタートに当たり、自社の重点施策に『組織のスリム化』や『筋肉質な組織づくり』を揚げるトップも目立った。受注高の減少傾向が当分続くことを踏まえて採用者数を抑制し、人員規模の適正化、生産性の向上に努める社が多くなりそうだ。各社とも採用を絞り込む一方で、人材育成にはこれまで以上に注力する方針だ。厳しい環境下で会社も現場もさらに余裕が無くなる申、限られた予算と人員を有効活用し、より効率的な人材育成システムを構築する動きを強めている。」(『建設工業新聞』2010.01.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●耐震性がある病院の割合は56.2%にとどまることが5日、厚生労働省の調査で分かった。強い地震で倒壊の恐れがある施設が164カ所あった。同省によると、全国の病院8611カ所のうち、すべての建物に耐震性があるのは4837カ所(56.2%)。一部建物で強度不足2595カ所(30.1%)、すべての建物で強度不足98カ所(1.1%)だった。強度不足が見つかった病院のうち、164カ所は震度6強程度の揺れで倒壊する危険性があるという。(『しんぶん赤旗』2010.01.04より抜粋。)
●「赤松広隆農林水産相は5日の閣議後会見で、公共建築物に国産木材の使用を義務付ける新法として『公共建築物木材利用促進法案』を18日召集の通常国会に提出すると表明した。現在、国土交通省と林野庁が法案策定に向けて調整を進めている。国産木材の使用促進によって全国の山林にある古木の間伐を促し、二酸化炭素(CO2)吸収源としての森林機能を更新する考えだ。・・・新法案では、3階建て以下の各省庁の庁舎や宿舎、地方の小中学校、病院、福祉施設、公民館の建て替え時に、一定量の国産材の使用を義務付ける。木材使用率を学校などの施設用途ごとに設定するのではなく、高さや面積に応じて設定する方向だ。今後、4階建て以上の建物にも国産材の使用を促す法案整備も検討する予定。高層建物に木材を使う場合、建築基準法の見直しも必要になる。」(『建設工業新聞』2010.01.06)
●「国土交通省は、建築基準法を改正せずに、省令・告示ベースで建築確認制度を見直す方針を固めた。建築審査などの手続きに関する規制緩和と、違反した際の厳罰化などを主眼とするため、法律を改正しなくても改善できると判断した。このため、18日から開会する今通常国会には、同法改正案は提出しない考えだ。・・・建築確認制度の見直しは、▽建築確認審査の迅速化▽申請図書の簡素化▽厳罰化―が柱となる。(『建設通信新聞』2010.01.12)
●「政府は14日、環境に配慮した住宅の改修や新築にポイントを与える『住宅版エコポイント』の詳細を固めた。・・・住宅版エコポイントは省エネ家電のエコポイント制度を参考に、2009年度第2次補正予算案に1000億円が盛り込まれた。改修や新築で、断熱効果の高い窓や壁などを採用したり、バリアフリーの設備を取り付けたりした場合に、商品券などと交換できるポイントを発行する。・・・新築は昨年12月8日以降、改修は今月1日以降に着工した物件が対象。着工の締め切りは今年12月末で、09年度第2次補正予算の成立日以降に工事が完了して引き渡されることが条件となる。国土交通省などは、リフォームは家の中の1カ所だけでなく、複数の場所をまとめて手掛けるケースが多いことに着目。断熱窓などの工事で獲得したポイントを、環境保護とは直接関係ない改修の費用にも使えるようにする。利用者は断熱窓などの工事を始める際に、工事終了後に受け取るポイントを、前もって台所や浴室の改修費用に充てることができる。」(『日本経済新聞』2010.01.15)

その他