情勢の特徴 - 2010年2月前半
●「国土交通省は2日、成長戦略会議(座長・長谷川閑史武田薬品工業社長)を開き、『住宅・都市』と『国際展開』両分野の論点を整理した。住宅・都市はポテンシャルの高い都市の国際競争力強化と地域の強みを生かした戦略的な都市開発など4点を明示し、官民連携のモデルプロジェクトなどを起爆剤に内需主導の経済成長につなげる。ゼネコンなどの海外展開は、インフラ整備を基本に、国内のPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)、PFI活用による成功事例をもとに官民連携で海外に展開させる。グローバルスタンダードを視野に入れた国内の制度整備もあげている。会議後に会見した長谷川座長は、『最終報告は実現可能なものとし優先順位を付ける。目玉をつくり、成功体験をつくる必要がある』との考えを示した。」(『建設通信新聞』2010.02.04)
●「2009年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)の速報値は前期比年率で4.6%増えた。内需と外需がいずれも伸び、景気の『二番底』懸念は和らいだとの見方が大勢だ。ただ雇用・所得環境は厳しいままで、民間需要を柱とする自律的な景気回復にはなお遠い。今年前半に成長率が純化し、『踊り場』を迎える懸念は残る。」(『日本経済新聞』2010.02.15)
●「内閣府が2009年度第1次補正予算で創設した『地域活性化・きめ細かな臨時交付金』の制度要綱と、各地方自治体への配分限度額(第1次)が分かった。総額5000億円のうち、4500億円を第1次として配分する。都道府県で最も配分額が多いのは北海道で、78億2649万8000円となった。各自治体は、橋梁の補修などの地方単独事業や、法定の補助率や負担率がない国庫補助事業に交付金を充てる。・・・配分額がそのまま発注額になるわけではないものの、ほぼすべては工事の発注につながり、地域の建設業には一定の経済的効果があるとみられる。」(『建設通信新聞』2010.02.03)
●「前原誠司国土交通相は4日、東京都内で開かれた日本プロジェクト産業協議会(JAPIC、三村昭夫会長)の日本創生委員会(寺島実郎委員長)にゲストスピーカーとして出席し、11年度に建築基準法を改正する考えを表明した。1月末に公表した建築確認手続きの運用改善策に実効性を持たせるのが狙い。内需喚起のため、建築確認手続きの簡素化など建築分野の規制を緩和する一方、民間資金を活用した都市開発事業や公営住宅の建て替え事業の促進に向けて、法改正などを柱にした検討を進めることも明らかにした。」(『建設工業新聞』2010.02.05)
●「厚生労働省が2日発表した毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、2009年の労働者1人当たりの月間現金給与総額は31万5164円と前年から3.9%減り、前年と比較できる1991年以来最大の減少率となった。残業を含めた年間実労働時間も前年比2.9%減の1733時間と減少率は過去最大。08年秋以降の世界的な景気悪化の影響などを受けた雇用、所得情勢の厳しさを改めて浮き彫りにしている。」(『日本経済新聞』2010.02.02)
●「建設業の就業者数減少幅が2009年の年間平均で過去最大となったことが、総務省の査で分かった。・・・総務省が1月末に公表した、09年(年間平均)の建設業就業者数は、前年比20万人減の517万人にとどまった。・・・建設業就業者数は07年(年間平均)が552万人で、わずか2年で35万人の就業者数が減少したことになる。・・・年間平均で15万人減少した09年建設業雇用のうち規模別で最大の減少となったのは、『雇用者1−29人』と『同30−500人』で、それぞれ6万人減少した。・・・『雇用者1−29人』の07年平均は294万人で2年間で17万人減少していることも考えれば、建設業からの労働力移動は、元請け、下請け問わず中小・零細企業を中心に減少している形。」(『建設通信新聞』2010.02.02)
●「先進国で若年層の失業が一段と深刻になってきた。国際労働機関(IL0)の調査では、2009年の若年層(25歳未満)の失業率は前年に比べて4.6ポイント上昇の17・7%となり、全世代平均の8.4%を大幅に上回った。世界的に景気は回復基調にあるが、雇用改善は進んでおらず、とくに若年層に雇用悪化のしわ寄せが及んでいる。」(『日本経済新聞』2010.02.04)
●「厚生労働省は4日、2009年度第2次補正予算で創設した中小建設企業向けの『建設業新分野教育訓練助成金』と、建設業離職者を雇用した企業を対象とした『建設業離職者雇用開発助成金』の2つの肋成金制度について、8日から制度の運用を始めることを明らかにした。また、新分野教育訓棟では訓練時間が1日当たり3時間を超えること、離職者雇用開発では採用する建設業離職者が採用日前の1年間のうち6カ月以上建設業に従事していたなど、企業が助成金を受けるための具体的要件も分かった。」(『建設通信新聞』2010.02.05)
●「建設技能労働者のキャリアパス形成などを支援する取り組みが本格化してきた。ゼネコンや現場ごとに管理するのではなく、建設業界として作業員の就労履歴を一元的に管理する『建設共通パスシステム』を構築し、将来的な建設技能者を確保するとともに建設作業員のための社会基盤を整える。国も支援事業に採択し、バックアップする。『基本的にはオープンシステムとして、広くいろいろな人に使ってもらう』(野城智也東大生産技術研究所教授)システムとして、2012年の稼動を目指す。・・・研究を進めているのは、竹中工務店を幹事企業に、大林組、鹿島、清水建設、三井住友建設などで構成する『就労履歴管理制度研究会』だ。・・・建設共通パスシステムは、建設作業員の氏名や生年月日、雇用先などの基本情報や、保有資格などを、事前に情報センターのデータベース(DB)に登録する。同時にICカードを一人1枚発行し、現場に設けた端末にカードを触れることで、入退場記録を自動でDBに蓄積する。・・・研究会は、09−11年をシステムの試行期間と位置付け、より規模の大きい現場などに適用し、システムの精度を高める。合わせて、広く広報することで、賛同者を募り、建設業界全体を巻き込んだ取り組みに高めていきたい考えだ。」(『建設通信新聞』2010.02.08)
●「長時間労働に悩む建設現場の時短推進に向けた日本建設産業職員労働組合協議会の『統一土曜閉所運動』が拡大している。大手・準大手ゼネコンを中心に加盟組合企業34社が参加した2009年11月の閉所率は59.0%で、開始以来初めて5割を超えた前年実績をさらに上回った。土曜閉所を経営方針に掲げ、通達を出すなど『会社側が協力的になっている』ことが背景にある。ただ、閉所率が8割近くに達する企業がある一方で、2割を切る企業もあり、格差が生じている。・・・日建協は例年、加盟組合企業や国交省などに訪問し、周知を呼びかけているが、今回初めて全国の労働局にポスターを配布するなどのPR活動も展開した。また、09年10月には、建設連合や道路建設産業労働組合協議会など建設産業労働組合懇話会(建設産労懇)の加盟組織と運動の共同展開に向けた合意も締結し、各分野を巻き込んだ幅広い活動に発展している。」(『建設通信新聞』2010.02.15)
●「日本建設業団体連合会(日建連、野村哲也会長)が、工業高校に講師を派遣して建設産業の役割などを紹介する『出前講座』を試験的に始めた。産業の将来を担う若手の確保が目的で・・・今後、標準的なカリキュラムを準備するとともに、会員企業や建設業振興基金、日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、福島玲司議長)などの協力を得て、来年度からの本格実施を目指す。工業高校への講師派遣は、日建連が昨春まとめた建設技能者の人材確保・育成に関する提言に、インターシップ制度への支援とともに盛り込まれた。・・・ 若年層を対象とした人材の確保・育成策では、国土交通省などの行政機関や業界団体などで構成する『建設産業人材確保・育成推進協議会』(事務局・建設業振興基金)が93年の設立後、インターシップへの支援などを行っている。日建連は今後、同協議会や関係団体と連携し、工業高校への講師派遣やインターシップ制度への支援などを積極展開。草生や生徒が建設業に興味を持つきっかけをつくっていく考えだ。」(『建設工業新聞』2010.02.04)
●「みずほコーポレート銀行は、建設業界の10年度動向として『本格的な回復には至らない中で、スーパー(大手)ゼネコンの優位性は一層拡大する』との分析結果を明らかにした。分析結果は、同行がまとめたリポート『2010年度の日本産業動向』で示した。受注環境については、建設投資額の3分の2を占める民間工事市場が『10年度後半にかけてようやく底打ち・反転が期待できる』としたものの、『元の水準(リーマン・ショック以前)に戻るまでは相当長期を要する可能性が高い』と厳しい見方をしていることも特徴。また公共事業削減影響については、建設就業者の失業と地域経済全体への深刻な影響という形で表れる可能性に言及している。」(『建設通信新聞』2010.02.04)
●「国土交通省は、会社計算規則などの改正に伴って4月から株式会社計算書類(貸借対照表、損益計算書など)作成方法が変更になるのに合わせ、建設業法施行規則の一部を改正する。建設業法上、提出が義務付けられている財務諸表を、原則、工事進行基準によるものとする。・・・4月1日から施行する。」(『建設通信新聞』2010.02.04)
●「大手不動産5社の2009年4〜12月期の連結決算が4日、出そろった。不動産市況の悪化に歯止めがかかったことを背景に、住友不動産など3社の純利益が増加した。もっともオフィス空室率の上昇など市況が改善に転じるかどうかはなお不透明で、全社が2010年3月期の通期業績予想を据え置いた。」(『日本経済新聞』2010.02.05)
●「国土交通省が9日発表した建設工事受注動態統計によると、09年(1〜12月)の建設業者の総受注高は前年比17.4%減の41兆7027億円と、01年の調査開始から最も低い水準となった。うち元請受注高は29兆4820億円(前年比15.8%減)、下請受注高は12兆2207億円(21.2%減)で、いずれも調査開始以来の最低。元請受注高のうち民間発注分も19兆1400億円(23.0%減)と最低を記録し、公共発注分も4番目に低い10兆3420億円(1.8%増)にとどまった。」(『建設工業新聞』2010.02.10)
●「ゼネコン(総合建設会社)大手4社が10日、2009年4〜12月期の連結決算を発表した。前年同期に足かせだった不採算工事の計上や取引先破綻による貸倒損失などが縮小。資材安で採算も改善し、最終損益は大林組を除く3社で黒字転換または増益を確保した。ただ、企業の投資抑制のあおりで受注高は3〜4割減っており、来期業績に影響しそうだ。」(『日本経済新聞』2010.02.11)
●「大手・準大手ゼネコンの第3四半期決算が、12日までに出そろった。単体受注高で前年同期実績を上回ったのは24社中、4社にとどまった。官公庁工事は12社が受注増としたものの、長引く民間設備投資の低迷で民間工事は全社が受注減となった。今第3四半期に大手2社、準大手6社が年間受注目標を下方修正した。24社の平均達成率は57%にとどまった。新規案件の減少に加え、採算重視の選別受注を徹底する企業も多く、受注量の確保がより難しくなっている。」(『建設通信新聞』2010.02.15)
●「日本銀行が12日公表した、2009年12月末の『貸出先別貸出金(業種別、設備資金新規貸出)』で、建設業向け貸出残高が前年同期比9.9%減と大きく減少していることが分かった。5年前の水準と比較すると、中堅企業向けの貸出残高は約半分程度に減少している一方、大企業向けはほぼ同水準を維持するなど、企業規模別の資金調達状況が大きく分かれているのが特徴だ。・・・建設業向け融資は、建設市場の減少傾向に加え、民間工事激減の引き金となったリーマン・ショックを契機に、資金調達問題が浮上、政府も中小企業の資金繰り支援として信用保証協会が100%債務保証する緊急保証制度やセーフティーネット貸付をスタートさせていた。ただ、『構造不況業種と言われるゼネコンに対する与信管理を強化したことで準大手以下の資金調達環境は厳しくなっている』(業界関係者)と、建設業に対する金融機関の融資姿勢厳格化を指摘する声は根強くあった。」(『建設通信新聞』2010.02.15)
●「国土交通省が1月29日に発表した09年(1〜12月)の新設住宅着工戸数は前年比27.9%減の78万8410戸と記録的な落ち込みになり、1964年以来の低水準にとどまった。分譲マンションは約7.7万戸と10万戸を大きく割り込み、マンションの集計を始めた85年以降では最低に沈んだ。新設住宅着工の100万戸割れは67年以来、80万戸割れは64年以来。」(『建設工業新聞』2010.02.01)