情勢の特徴 - 2010年2月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「オフィスビル空室率の上昇が止まらない。借り手企業の経費削減の徹底で需要縮小が続いており、東京都心は過去最高水準が目前だ。地方都市も2ケタ台と需給緩和が進む。賃貸料の下落傾向も強い。割安感の強まった都心の一部ビルには引き合いも出始めたが、オフィス需給全般が引き締まるには長い時間がかかりそうだ。…東京都心は『景気の二番底がなければ近く空室増に歯止めがかかる』(みずほ証券の石沢卓志・チーフ不動産アナリスト)との見方もあるが東京周辺部や地方のオフィス不況は長期化しそうだ。」(『日本経済新聞』2010.02.16)
●「政府の2010年度予算案の一般会計のうち、建築分野の公共事業費である『その他施設費』は、前年度比9.4%減の5885億円、特定財源分も含めると8.8%減の6060億円であることが分かった。土木分野の『公共事業関係費』の18.3%減に比べ削減割合は少なかった。公立小中学校の耐震化予算が中心となる『公立文教施設整備費』は、1.8%減の微減で、ほかの施設費に比べ削減率は低い。ただ施設費は、09年度第1次補正予算で2兆8996億円を計上、その後の一部執行停止・返納分を除いても、09年度の実質的な公共建築投資からは、大幅な削減になったといえる。」(『建設通信新聞』2010.02.17)
●総務省が16日公表した家計調査報告によると、2009年平均の勤労者世帯の実収入は、前年から名目で4.6%減、物価の影響を除いた実質で3.1%の減少と大幅に下落した。このうち、世帯主の収入が実質で3.6%の低下と影響が大きくなっている。また、勤労者のうち単身世帯の収入は実質で8.5%の減少となっており、若い世代での収入低下も深刻だ。こうした収入低下によって、消費支出も前年に比べ名目で2.9%、実質で1.4%の減少となった。消費支出のなかで実質減少幅が大きいのは、外食の6.6%減、被服・履物の4.5%減、交通費の6.8%減、こづかいの8.5%減、仕送り金の8.4%減となっており、節約が衣食にも大きく及んでいることを示している。(『しんぶん赤旗』2010.02.18より抜粋。)
●「国内外の不動産ファンドが2006年から08年にかけて投資した大型物件の処理が滞っている。ファンド各社は購入資金の大半を外部借り入れで調達したが、市況悪化で融資の返済期日を迎えても物件売却やローンの借り換えにめどが立っていない。銀行側がやむを得ずローンを延長して問題を『先送り』する事例も目立つ。これが日本の不動産市況の回復を遅らせているとの指摘も多い。…都市未来総合研究所によると、日本の09年度の不動産取引金額(1月末まで)は1兆910億円とピーク時の07年度の5分の1程度。『銀行が損失の表面化を避けるため物件を出し渋り、取引が閑散で適正価格が見つからない』(米不動産ファンド)との指摘も多い。」(『日本経済新聞』2010.02.23)

行政・公共事業・民営化

●「高度経済成長期に建設され、更新時期を迎えている道路橋梁を効率的に改修していく作業が各地で遅れている。…全国の道路にある橋梁(高速道路会社分も含む)は08年4月時点で67万8460橋で、うち地方自治体が管理する橋梁が65万1320橋を占める。特に更新を優先させるべき橋長15メートル以上の橋梁は全国で15万3529橋に上るという。…国土交通省は03年から、直轄道路について損傷・劣化状況を把握した上で、補修などの最適な時期・方法を判定し、最も効率的な更新を推進するための『長寿命化修繕計画』を全国の地方整備局で策定。更新コストの最小化と維持管理費の平準化を図っている。これを受け、自治体の中にも同様の維持管理手法に取り組むところが出てきたが、総務省の調査では、長寿命化修繕計画を策定済みの自治体(08年12月時点)は1829自治体のうち、わずか32団体(19都道府県、7政令市、6市町村)。…自治体で取り組みが遅れている理由については、▽予算措置が困難▽人員や技術の不足▽点検による道路橋の現状を把握していない▽道路橋の履歴などを示す台帳が整備されていない−などの課題が挙がった。…長寿命化計画を策定済みの32自冶体のうち、24団体が記載したライフサイクルコストの縮減額は合わせて20〜100年間で約1兆1375億円。国直轄の道路橋(1万5880橋)の更新コストの縮減総額も、事後対応型管理に比べると60年間で3兆1000億円に上るという。」(『建設工業新聞』2010.02.16)
●「前原誠司国土交通相が建設中止を表明している八ツ場ダム(群馬県長野原町)を巡り、流域など1都5県は17日までに2010年度予算案に合計で約211億円に上る関連費用を計上した。群馬県や埼玉県などが、国が10年度の予算化を見送った本体工事費を盛り込むなど、国と地方の『ねじれ』も鮮明になった。自治体側は財政難のなか予算を盛ることで建設推進の立場を改めて強調したい考えだが、国への対抗手段も限られてきた。」(『日本経済新聞』2010.02.18)
●「国土交通省と財務省、総務省は17日、2009年度の入札契約適正化法にもとづく実施状況調査(09年9月1日時点)の結果を公表した。入契法の調査では、市区町村における一般競争入札の導入率が前年度の60.6%から65.0%に増加、総合評価方式の導入率も前年度の42.4%から57.5%となった。一般競争入札を導入している市区町村で総合評価方式を導入する割合が高まっているとみられる。また、14道県2政令市が、最低制限価格や低入札価格調査基準価格を09年4月の中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)のモデル(平均85%程度)より高い水準に設定している。」(『建設通信新聞』2010.02.18)
●「47都道府県と政令市の2010年度予算案がほぼ出そろい、地方自治体が単独事業への投資を強めている状況が鮮明になった。国の公共事業費削減の影響を受けて補助事業費は軒並み減少した一方、単独事業費はインフラや生活基盤施設といった整備の必要から、増加あるいは前年度とほぼ同額の自治体がほとんどとなった。財源には、国の10年度予算案に新設される社会資本整備総合交付金(仮称)の活用を見込んだ自治体もある。地域経済の活性化と社会基盤整備を自治体が重要視した結果といえそうだ。」(『建設通信新聞』2010.02.24)
●「政府は27日、民間資金を活用した社会資本整備(PFI)交通インフラに広げる方針を固めた。これまでは国の庁舎や病院など『ハコモノ』中心だったが、今後は東京外郭環状道路など高速道路や整備新幹線、港湾などに重点を置く。PFI推進に向けた数値目標や法改正も検討する。公共事業費を削るなかで、民間の資金と知恵を頼りにインフラを整える。…具体的には東京外環道や淀川左岸線(大阪府)など大都市の交通量が見込める路線でPFIを検討する。東京外環道(練馬−世田谷)では約1兆2000億円ほどの事業費を民間流のコスト削減で1兆円程度に圧縮。このうち約3000億円を民間資金でまかなえないか検討する。」(『日本経済新聞』2010.02.28)

労働・福祉

●「厚生労働省が24日発表した2009年の賃金構造基本統計調査によると、35〜39歳の正社員の平均賃金は前年比3.4%減の31万600円となり、年齢階級別で最も減少幅が大きいことが分かった。次いで減少幅が大きいのは40〜44歳(35万3100円)で3.1%減。産業界で人件費を抑制する動きが強まり特に働き盛りの世代の給料にしわ寄せが及んでいる。全正社員の平均賃金は31万400円と前年比1.9%減少。3年連続のマイナスで、水準は調査を始めた05年以降で最も低い。目立つのが男性正社員の賃金の減り方で、平均賃金は33万7400円と2.3%減った。」(『日本経済新聞』2010.02.25)
●内閣府が15日発表した2009年10〜12月期の国内総生産(GDP)は、実質、名目ともにプラス成長となったが、09年を適して見ると名目、実質ともに過去最大の下げ幅となった。…09年の雇用者報酬は前年より約10兆6320億円のマイナスの253兆3300億円に落ち込んだ。雇用者報酬が最も高かった1997年と比べると、約26兆円も落ち込んでいる。家計収入の落ち込みを背景に、個人消費の低迷が続いている。09年の個人消費(名目民間最終消費支出)は約283兆円と前年を約9兆円も下回った。…09年10〜12月期の個人消費は実質では0.7%増だった。ただこの間、個人消費を下支えしてきたのは、「政府の経済対策の効果」(内閣府)。自動車や電機など一部大企業のもうけにつながっているものの、経済対策は時限措置にすぎない。…09年10〜12月期の企業の設備投資は、アジア地域を中心とした輸出の増加を背景に、7四半期ぶりにプラスに転じた。結局、09年10〜12月期のGDPから見えるのは、政府による一時の「経済対策」と外需だのみの「景気回復」にほかならない。(『しんぶん赤旗』2010.02.16より抜粋。)

建設産業・経営

●「国土交通省は15日、開設から半年が経過した『建設業取引適正化センター』の相談受付状況をまとめた。…建設業取引適正化センターは、建設工事の請負契約をめぐるトラブルの相談窓口となる機関。…09年度補正予算で創設した事業で、東京と大阪に窓口を設けている。09年7月29日の設置から半年で、東京のセンターへの相談は271件、大阪のセンターへは151件が寄せられた。相談内容(全422件、重複あり)は、元下など業者間の代金の争いが312件と最も多く、全体の72.2%を占めた。工事瑕疵(かし)と受発注者間の代金の争いが、それぞれ全体の4.6%に当たる20件ずつだった。契約解除は2.3%の10件、工事遅延が0.5%の2件、法令解釈の相談などといったそのほかが15.7%の68件だった。」(『建設通信新聞』2010.02.16)
●「東京商工リサーチがまとめた2009年12月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比18.1%減の307件となり、6カ月連続して前年同月を下回った。都道府県別では、25都道県が前年同月比で減少、地区別では9地区のうち中部と近畿の2地区を除く7地区で前年同月を下回るなど、依然として『緊急保証制度』や公共工事の前倒し発注などの効果が続いているとみられる。負債総額は、29.4%減の544億8200万円となり、6カ月連続して前年同月を下回った。負債額が10億円以上の倒産は33.3%減の8件となり、平均負債額も13.6%減の1億7700万円に低下した。」(『建設通信新聞』2010.02.17)
●「東京商工リサーチがまとめた2009年(1−12月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年比8.5%減の4087件となり、4年ぶりに前年を下回った。月別では特に11月が290件と07年9月の284件以来、2年2カ月ぶりに300件を下回るなど倒産の減少が目立った。負債総額は28.4%減の9135億3900万円となった。3年ぶりに前年を下回り、平均負債額も21.7%減の2億2300万円だった。負債が100億円以上の大型倒産は、前年の14件から42.8%減の8件にとどまった。上場企業の倒産は1件だけだった。」(『建設通信新聞』2010.02.26)
●「登録基幹技能者に対して日額2000円を『上乗せしても良い』――。建設産業専門団体連合会が『生産性向上及び基幹技能者の活用・評価委員会』での議論のために実施した『登録基幹技能者の有効性・実効性に関するアンケート調査(2次調査)』の速報版で明らかになった。…調査は、工事現場の元請けの現場代理人や工事主任、発注機関の発注関連部局を対象に1月に実施した。元請け60人、発注者26者(公共18、民間8)から回答があった。元請けへの調査では、登録基幹技能者を活用する際の意向として『明確な方針・意向はない』が最も多く38.3%に当たる23人だった。登録基幹技能者制度への元請けからの要望としては、『職長との能力・技量の違いを明確にしてほしい』が41.7%の25人で、『数を増やしてほしい』も31.7%に当たる19人いた。配置されている登録基幹技能者への期待と評価を5段階で示す調査では、登録基幹技能者に対して『現場の状況に応じた元請けとの施工方法の調整』が最も高く平均4.23で、実際の仕事への評価も平均4.14で最も高く、期待と評価の差が小さかった。…元請けへの金銭的評価では、登録基幹技能者に追加で上乗せしても良い手当ての額を質問しており、日額2000円との回答が37.0%で最も多かった。次いで32.9%が日額1000円と答えた。発注者への調査では、登録基幹技能者制度を『知らない』と答えた基幹が全体の84.6%を占める22機関に上り、発注者の認知度の低さを表した。民間、公共ともに『知っている』との回答は、それぞれ2人にとどまった。」(『建設通信新聞』2010.02.25)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「老朽化した小橋梁の対応に、地方自治体が苦慮している。…長さ15メートル以下の小橋染については十分な体制が確立できない状態にある。そんな中で路線バスを活用した定期監視システムの研究が注目されている。…研究は、構造計画研究所と山口大学が共同プロジェクトとして2006年にスタートさせた。同社は『小橋梁は対象数が多く、架け替えの優先順位をつけるには事前の定期点検が欠かせないが、これまで効率的な手だてがなかった。総重量10トンの路線バスであれば走行時に橋を振動させることができ、そのデータをうまく解析することで劣化度合いの把握ができる』と着目した。…小橋梁は短期間で工事が完了する点で、補強でなく、架け替えによる対応を掲げる自治体が多い。全国68万ヵ所に達する橋梁の7割が完成後30年以上を経過し、そのうち小橋染が半数以上を占めるとみられる。…定期監視の手段として路線バスを選択した背景には、あらかじめセンサーを設置しておくだけで定期的に実測データを入手できるメリットがある。寿命が来るまで橋を使い続けることも可能になり、架け替えの優先順位をつける判断指標にもなる。…共同研究は最終段階を迎え、10年中に実用化システムとして確立する予定で11年にはバス事業者と連携した仮運用を実現したいとしている。」(『建設通信新聞』2010.02.17)

その他

●「先進国で雇用情勢の悪化が進んでいる。経済協力開発機構(OECD)が加盟30カ国を対象にまとめた2009年の平均失業率は1988年の統計公表開始以来、過去最悪の8.3%に達した。前年に比べると2.2ポイント上昇。スペインなど欧州諸国の悪化が深刻で、4カ国で10%を超えた。米国は3.5ポイント高い9.3%に急上昇。欧米を中心に上昇傾向は昨年後半から今年にかけて続き、各国が力を入れる雇用対策の効果が問われる。」(『日本経済新聞』2010.02.16)