情勢の特徴 - 2010年3月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●内部留保の一部である利益剰余金の保有額上位20社(銀行を除く)の総計が、2009年12月末時点で53兆4506億円に達し、同年3月末の52兆3029億円から1兆1477億円も積み増していることが本紙集計でわかった。…利益剰余金を大きく増やした企業は、増加額の大きい順に、NTTが2668億円増の5兆3335億円、KDDIが1592億円増の1兆5068億円です。いずれも通信会社。…自動車産業でも、ホンダが1527億円増の5兆2959億円、日産自動車が524億円増の2兆4681億円、デンソーが294億円増の1兆6039億円と内部留保を積み増す企業が増えている。(『しんぶん赤旗』2010.03.03より抜粋。)
●「2009年の住宅ローンの新規貸出額は前年比3%減の14兆4974億円と、8年ぶりの低水準にとどまった。個人所得が減少傾向にあることから住宅購入意欲が乏しいうえ、メーカー側が住宅の供給を絞っていることが響いている。ローンの返済が滞る事例も増えており、過熱していた金融機関の住宅ローン獲得競争は転機を迎えている。ローンや物件の供給が冷え込めば、住宅購入を通じた景気押し上げ効果は一段と細りかねない。」(『日本経済新聞』2010.03.04)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、設計業務などの低入札価格調査基準価格の算定式を改正する。2007年度に設計業務で調査基準価格制度を導入して以来、初めての改正となる。08年度の業務コスト調査の結果、間接経費の上昇がみられたことによる対応。土木関係の建設コンサルタントでは、調査対象の範囲が予定価格の平均的70%から平均的75%に拡大するとみられる。4月1日以降に入札公告し、予定価格1000万円を超える業務に適用する。」(『建設通信新聞』2010.03.04)
●「東京都内26市の10年度当初予算案が5日、出そろった。市長選があったために骨格予算となった町田、多摩、東久留米の3市を除く23市の一般会計総額は前年度比6.5%増の1兆1655億8700万円で、普通建設事業費は同4.1%増の1316億100万円。特別会計を合わせた総額は同3.3%増の2兆778億7800万円となった。歳入面では、不況による税収減を、基金の取り崩しや市債発行で補う状況が続いているが、学校の耐震補強工事の実施や公共施設の整備などの事業が多く盛り込まれ、普通建設事業費が減額となったのは8市にとどまった。」(『建設工業新聞』2010.03.08)
●「前原誠司国土交通相は5日、国交省直轄工事の総合評価落札方式について、10年度から改善策を講じると発表した。技術評価の透明性を向上させるため、技術提案の項目ごとの具体的な評価内容を、提案した各企業に通知する。標準型の総合評価方式で適用されるとみられる。各地方整備局には、評価内容に関する問い合わせ窓口も設置する。さらに、難易度の低い工事については、入札参加資格要件の施工実績から工事量についての記載を削除し、技術評価の際に施工能力の面からプラス評価する。一般土木工事のC、Dランク向け案件などが対象になるとみられ、施工実績が少ない企業にとっては、門戸が広がることになる。」(『建設工業新聞』2010.03.08)
●「埼玉県内40市のうち、合併・新市移行後に本予算案を策定する加須・久喜両市を除く38市の10年度当初予算案が出そろった。普通建設事業費(投資的経費)を見ると、前年度比で増加したのは9市、減少したのは29市と4分の3近い市が減少している。…国の施策への対応では、橋梁長寿命化修繕計画を新たに予算した市が目立つほか、火災事故を踏まえた高齢者施設へのスプリンクラー設置、学校のトイレ改善、市立保育園の施設整備補助、ハザードマップ策定、住宅用太陽光発電システム設置補助などを各市が新たに盛り込んでいる。」(『建設工業新聞』2010.03.09)
●「国土交通省は、直轄工事の総合評価落札方式の改善策をまとめた。…改善案は、前原誠司国交相が5日に発表した技術提案の評価結果の通知、問い合わせ窓口の設置、入札参加資格要件での実績要件の見直しの3項目に、▽技術評価点(加算点)の配点方針▽技術提案の評価方法(標準案)▽施工能力の評価方法(同)▽地域精通度、貢献度の評価方法(同)▽施行体制確認型総合評価落札方式の見直し−の5項目を追加。…技術評価の配点方針では、工事の内容による技術評価の余地、価格競争とのバランスを総合的に勘案して配点するとし、標準的な加算点(標準U型とT型)を50〜70点に設定した。…加算点の具体的な標準配点案では、技術評価の主要項目である技術提案、施工能力、地域精通度・貢献度の3項目を総合的に評価することを基本に、標準U型は50〜60点、標準T型は60〜70点、高度技術型は50点(施工体制確認型の場合は70点)、簡易型は30〜40点に設定した。」(『建設工業新聞』2010.03.09)
●「国土交通省は9日、河川や道路などの直轄工事を対象に10年度から全面導入する『総価契約単価合意方式』について、実施要領をまとめた。契約の総価の範囲内で単価などを個別に合意する『単価個別合意方式』を基本として実施。予定価格が3億円を超えない案件では、請負者の希望がある場合に予定価格に落札率を乗じた金額を包括的に合意する『単価包括合意方式』も認める。設計変更の際には、これらの合意単価を用いて変更金額を定める。新規工程については、官積算単価により積算する。国交省は月内に解説書類もまとめる予定だ。4月1日以降の入札公告案件から適用する。」(『建設工業新聞』2010.03.10)
●「国土交通省の8地方整備局が発注する建設コンサルタント(土木)、測量業務、地質調査業務で、低価格入札発生率が下がっている。2009年4月から12月までの3業種あわせた低入札発生率は21.9%で、前年度(通期)と比べ17.4ポイントの減となった。落札率は同月までで79.0%で前年度通期より3.4ポイント上昇している。…国交省では、建設コンサルタント業務での低入札対策として、予定管理技術者の手持ち業務量制限を09年10月から実施している。予定管理技術者の手持ち業務に、調査基準価格を下回る金額で落札した業務がある場合、手持ち業務の量を半数程度制限する施策。09年12月段階での低入札発生率が下がったのは、こうした対策の効果が表れた可能性もある。」(『建設通信新聞』2010.03.12)
●「川崎市は、公共事業の現場で働く労働者に対して賃金の最低基準額を担保する、公契約条例案を早ければ2010年9月議会に上程する方向で検討を進めている。現在、財政局契約課内に設置した作業チームが対象事業や賃金基準などの詳細を詰めている。市議会の議決後、2011年度から条例を施行する考えだ。…条例の施行に当たっては、一定の周知期間が必要なことから、市は早期の条例案上程を目指しているが、パブリックコメントなどの手続き期間を考慮すると、早くとも9月議会以降になる見通しだ。」(『建設通信新聞』2010.03.12)
●「政府は行政サービスの担い手を官民が入札で競う『市場化テスト』を加速させる。2011年度から道路やダム、河川の管理業務などに対象を拡大。事業費ベースで自民党政権時代に比べ約3倍の1000億円強にのぼる見込みで、数百億円規模の予算削減を目指す。…今回対象に加える道路、ダム、河川の管理は公益法人による受注が全体の7割を占め、民間の参入が進んでいない。政府は『公正な入札が実施されていない』と判断。事業規模が大きいだけに予算を減らす効果も数百億円単位で見込めるとみて、市場化テストの重点分野に位置付けた。具体的には国土交通省の発注する事業の見積もりや工事監督、巡回などを民間に開放する。これらの業務だけで事業費は合計約700億円(08年度実績分)に達する。政府はそのほか霞が関の施設管理、防衛装備品の補給など10分野の事業についても6月に閣議決定する『公共サービス改革基本方針』に対象事業を盛り込む。最終的に1000億円強の事業が官民競争入札にかけられる見込みだ。」(『日本経済新聞』2010.03.14)
●「2010年度から国土交通省が新設する社会資本整備総合交付金(仮称)の運用方法などが不明瞭だとして東京都を始め、都内の各自治体には混乱が広がっている。…東京都では、政府の10年度予算案の発表を受けて、区画整理や市街地再開発などを自ら施行している都内18の区市町に対して、予案実に対する受け止め方、国費が削減された場合の影響などについて、アンケートを実施した。その結果、すべての区市町が国の予算案に不安を感じているとともに、国費が削減された場合には事業期間の延長やそれに伴う事業収支の悪化のほか、事業規模を見直さざるを得ないという回答が寄せられたという。…国交省は制度要綱骨子の公表に向け、作業中で近く公表する見通し。全体予算が減っているため、自治体の要望額よりも少ない額が交付される可能性もあるが、自治体側にとっては計画に盛り込んだ必要額の交付を求め続ける必要がある。」(『建設通信新聞』2010.03.15)

労働・福祉

●「全国建設労働組合総連合(全建総連)の東京都連合会(渡邊守光執行委員長)は2月26日、建設労働者の標準賃金を1日2万6000円として関係各機関、大手ゼネコンに要望すると発表した。同日には、東京都と東京建設業協会に要望を提出した。全建総連都連ではリーマン・ショック以降、建設工事が激減、一人親方など建設労働者・職人などが加入している組合員から、『仕事が激減し1カ月10日程度しか仕事ができず、年間収入は子ども2人の標準世帯の生活保護支給額を下回っている』など厳しい現状を訴える声が相次いでいることから、賃金確保要望だけでなく、公共工事の前倒し発注や生活関連投資や住宅投資拡大を求めていくことにした。…さらに、建設労働者・職人も地元採用で賄う地元発注を要望していく。またこれまで全建総連が求めてきた、公共工事に携わる労働者の最低賃金を決める公契約法についても、条例の適用金額・範囲などについて注目していく方針。」(『建設通信新聞』2010.03.01)
●「ゼネコンなど加盟38労働組合で構成する日本建設産業職員労働組合協議会は、2010年賃金交渉の要求基準を固めた。今春闘の方針に月例賃金の定昇確保とともに計画的なべースアップを設定、一時金については生活給として納得を得られる水準への引き上げを掲げた。『現状維持でなく賃金水準の向上』の姿勢で挑む方針だ。加盟組合の6割は25日に統一要求する。1月末の要求素案段階でベア要求に踏み切るのは回答36組合中4組合で全体の1割にとどまり、定昇確保の組合は27組合で75%に達する状況。…景気低迷に伴うゼネコンの受注減が深刻化している中、日建協は厳しい現状を乗り切るためにも『的確な評価を得ることが労働意欲につながる』と主張、賃金水準の向上を方針に掲げた。月例賃金の要求基準は定昇確保を前提とし、ベア要求については全加盟組合を対象とせず、各組合が計画的に取り組む方針にとどめた。一時金は、日建協の前年実績(35歳で2.65カ月)が全産業実績(4.51カ月)と大きく乖(かい)離していることから、他産業と同等レベルへの引き上げを方針に設定した。」(『建設通信新聞』2010.03.02)
●「厚生労働省がまとめた2009年(1−12月)の労働災害発生状況(速報)によると、死亡災害と休業4日以上の死傷災害を合わせた全産業の死傷者数は8万2849人で、このうち20.4%を占める1万6917人が建設業となった。前年比13.1%減となり、人数では2541人減った。全産業に占める割合は、0.1ポイント減だった。建設業の死傷者数を業種別にみると、既設建築物設備工事業を除く『建築事業』が1万2475人と最も多い。…建築事業の死傷者数内訳は『木造など家屋』が5580人、『鉄骨造りなど家屋』が3511人、『その他』が1974人、『建築物設備』が1022人、『電気工事』が268人など。」(『建設通信新聞』2010.03.03)
●総務省が2日発表した労働力調査(速報)によると、1月の完全失業率(季節調整値)は4.9%と前月にくらベ0.3ポイント低下した。しかし、完全失業者数を実数で見ると、前年同月に比べ46万人増加の323万人で15カ月連続の増加。就業者数は、前年同月比79万人減の6213万人で、24カ月連続の減少となっている。とくに、就業者の減少のうち男性が62万人。製造業では75万人と依然として大部分を占めている。…厚生労働省は、雇用情勢の判断を「持ち直しの動きが見られるものの、依然として厳しい状況にある」とした。(『しんぶん赤旗』2010.03.03より抜粋。)
●「厚生労働省は、『一人親方』を含む個人請負型就業者の保護政策を強化する方針を固めた。求人情報の掲載基準を示すガイドラインの作成や、企業が一人親方などを活用する場合に守るべき事項、注意点を示したガイドラインの制定を打ち出した。また、トラブルが起きた際、雇用労働者と同じ労働法規で保護を受けられる『労働者性』の有無の判断に応じる相談窓口の情報発信充実などにも取り組む。個人請負型就業者の保護策は、4日に開いた『個人請負型就業者に関する研究会』に、これまでの議論を踏まえてまとめる報告書のたたき台として厚労省が提示した。研究会は今月末にも開催し、報告書を策定する。」(『建設通信新聞』2010.03.08)
●「建設コンサルタントなど建設関連業に将来は『ない』が3分の2、『ある』は3分の1−−。全国建設関連産業労働組合連合会が組合員を対象に調査した結果、公共事業の大幅な削減に先行き不安を抱いている姿が浮かび上がった。現状の大きな課題である低価格入札については、『最低制限価格を設けるべき』など発注者側に対応を求める意見が多かった。残業時間は3年連続で減少を示したが、男性が減少する一方、女性は増加傾向が続いている。」(『建設通信新聞』2010.03.12)

建設産業・経営

●「竹中工務店の2009年12期単体決算は、受注工事高が4期ぶりに1兆円台を割り込み、8839億円となった。前年比12.6%減の水準で、建設市場縮小の影響もあるが、選別受注を進めた結果でもある。次期は9.5%減の8000億円と、さらに厳しい予想を立てている。一方、完成工事総利益率は、過去最低だった前年実績から0.1ポイント下回る5.4%に悪化した。ただ、低採算案件が一巡する次期は5.9%に改善する見通しだ。」(『建設通信新聞』2010.03.01)
●「積水ハウスは1日、2011年1月期の連結最終損益が270億円の黒字(前期は292億円の赤字)になりそうだと発表した。売上高は前期比6%増の1兆4400億円となる見通し。贈与税の非課税僻拡大や住宅版エコポイントなどの政策効果が表れ、戸建て住宅の受注が回復傾向にあるという。今期から適用を始める工事進行基準の効果も寄与するとみられる。」(『日本経済新聞』2010.03.02)
●「大手ゼネコン(総合建設会社)で、本業である建設部門の利益が上向いている。2010年3月期の建設の連結総利益は大手4社合計で3700億円と、前期比14%増える見通しだ。資材安に加え、受注時の採算管理徹底の取り組みが工事量の落ち込みを補う。ただ、新興国景気がけん引する形で鋼材に値上げ圧力が出始めている。来期は改善ペースが鈍る公算が大きい。…4社は鹿島、清水建設、大林組、大成建設。民間建築を中心とする受注の冷え込みが響き、建設売上高は各社とも1割前後の減少を想定している。工事量の減少を補うのが採算改善だ。建設部門の今期の総利益率は、大成建の7.7%を筆頭に4社とも改善を見込む。」(『日本経済新聞』2010.03.05)
●「全国建設業協会(浅沼健一会長)がまとめた会員企業の倒産状況等調査結果によると、2009年(1−12月累計)の倒産発生件数は316件で、過去最悪を記録した前年に比べて45・5%減少した。国や地方自治体による大幅な前倒し発注など経済対策が功を奏し、ブロック別でも全地域が減少となった。しかし地方建設業者を取りまく環境は依然厳しく、国の10年度予算案による公共事業費18%減が今後どのような影響を及ぼすのか危慎(きぐ)される。」(『建設通信新聞』2010.03.12)

まちづくり・住宅・不動産・環境

その他