情勢の特徴 - 2010年4月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●日本経団連(御手洗冨士夫会長)は13日、「成長戦略2010」を発表し、消費税率の段階的引き上げと法人実効税率の引き下げなどを求めた。経団連は、今回の提言を政府が6月に策定する「新成長戦略」や「中期財政フレーム」に反映させることを求めている。…消費税率については、「2011年度から速やかかつ段階的に、消費税率を少なくとも10%まで引き上げていくべきである」とした。上げ幅としては「毎年2%ずつ」を例示している。さらに、20年代半ばまでに「10%台後半ないしはそれ以上へ引き上げ」を求めている。提言は、消費税の引き上げによって「消費の前倒し効果が見込める」とも述べ、国民に負担増を強いる立場を合理化している。…一方、法人実効税率の引き下げは「成長戦略の必須の柱」と位置付けている。現行約40%の税率を30パーセント程度に「早期に引き下げるべきである」としている。(『しんぶん赤旗』2010.04.14より抜粋。)

行政・公共事業・民営化

●「全国知事会の『地方の社会資本整備プロジェクトチーム(PT)』(座長・広瀬勝貞大分県知事)は6日、社会資本整備の推進に向けた提言案をまとめた。提言案では、必要な社会資本整備を着実に進めるために、国の直轄事業については、費用便益比に偏重した全国一律の視点や基準による評価だけでなく、地方の実情に即した評価が必要だと指摘。予防保全型管理の導入による維持更新事業の低コスト化や、PFIなどの活用に向けた制度研究を国として推進することなどを訴えた。近く前原誠司国土交通相に提言を提出し、政府が6月にまとめる『新成長戦略』に盛り込むよう求める。」(『建設工業新聞』2010.04.07)
●「長妻昭厚生労働相が6日、同省と独立行政法人が行う物品調達や工事発注などの公共調達について、価格だけを基準にした一般競争入札を原則とするよう求める通知を出したことが波紋を広げている。公共工事の入札契約については、05年4月に施行された公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に基づき、価格と技術的要素などを加味した総合評価が原則とされ、公共発注機関では価格競争から総合評価方式への移行が進行中。厚労省は、工事の発注案件は少ないため建設業界への影響は小さいとしているが、政府や地方自治体も含めて取り組んできた総合評価方式の普及拡大の流れに逆行しかねないだけに、今後、議論を呼びそうだ。」(『建設工業新聞』2010.04.08)
●「地域主権改革」一括法案など3法案の国会審議が7日始まり、参院本会議で趣旨説明と質疑が行われた。3法案では、すべての国民にナショナルミニマム(最低生活基準)を保障するための「義務付け・枠付け」を見直すとして41の関係法を一括して改定。「改革」案を検討する地域主権戦略会議や、国と地方の協議の場を法律で位置づけるほか、地方自治法を改定し、地方議員定数の上限撤廃も行なう。原口一博総務相は質疑の中で、地域主権改革について「国と地方の責任の体系の変革でもある。住民の判断と責任で取り組んでもらう」とのべ、国の責任に背を向ける姿勢を示した。「義務付け、枠付け」の見直しは、鳩山内閣が昨年12月、自公政権時代の地方分権改革推進委員会の勧告をそのまま盛り込んで閣議決定した「地方分権改革推進計画」を具体化するものである。(『しんぶん赤旗』2010.04.08より抜粋。)
●「前原誠司国土交通相は9日、高速道路の新しい料金制度を発表した。車種別に一定距離を超えると料金が上がらない上限料金制を導入するのが柱。上限料金は曜日や時間帯に関係なく普通車が2000円、軽自動車が1000円などとなる。『休日上限1000円』をはじめとした現行割引制度は一部を除いて原則廃止となるため、休日利用を中心に実質的には値上げとなる利用者が多いとみられる。」(『日本経済新聞』2010.04.09)
●「国土交通省は、これまで高速道路料金の割引などに使っていた3兆円の財源のうち、1兆4000億円を高速道路整備に充てることを決めた。東京外かく環状道路(外環)関越〜東名と名古屋環状2号線名古屋西〜飛島の2路線、関越自動車道上越線信濃町〜上越ジャンクション(JCT)など4車線化事業4区間の整備費にあてる。東関東道水戸線潮来〜鉾田は、国交省が直轄事業として整備する。国交省は、『高速道路利便増進事業』として休日1000円などこれまでの高速道路料金の割引などのために3兆円を確保していた。今回、従来の割引を終了して6月から新しい料金体系に変更し、利便増進事業の対象事業を拡大することで、3兆円の一部を高速道路整備に充当できるようになる。3兆円のうちの5000億円はすでに使ったため、2兆5000億円が新料金体系と高速道路整備の財源で、このうち1兆4000億円を高速道路整備に充てる。」(『建設通信新聞』2010.04.12)
●「国土交通省の成長戦略会議(座長・長谷川閑史武田薬品工業社長)は13日開いた会合で、海洋、観光、航空、国際展開・官民連携、住宅都市の5つの分科会で検討中の重点項目を公表した。海外の鉄道プロジェクトなどの受注促進に向けた政府による金融支援強化、インフラ整備や維持管理への民間資金の積極的活用などを挙げた。…公表した重点項目では、『縮小する限られたパイの分配に依存する従来系のメカニズムで国交分野の成長を描くことは困難』と指摘。今後は経済活動のグローバル化・国際展開に対応した政策推進、民間の知恵と資金を最大限に活用して生産性を高め、パイを拡大する必要性があるとして、これらの観点から各項目を設定した。」(『建設工業新聞』2010.04.14)

労働・福祉

●「厚生労働省は5日、建設業での足場からの墜落災害防止措置実施状況の調査結果をまとめた。労働基準局安全衛生部長名で通知したより安全性を確保するための措置のうち、手すり先行工法の採用は、同工法が主に適用される枠組足場が設置されていた3289現場の40.6%が採用していた。発注者別では民間が20.3%、国が85.5%だった。2009年6月施行の改正労働安全衛生規則(安衛則)にもとづく墜落防止措置は、調査した現場の91.7%が実施していた。また、事業主であって労働者でない一人親方の足場からの墜落・転落災害は、4人を把握した。…調査現場での休業4日以上の墜落・転落災害発生は69人で、うち3人が死亡者だった。現場で調べることしか把握する方法がない一人親方の災害の確認は今回が初めて。」(『建設通信新聞』2010.04.06)

建設産業・経営

●「大手・準大手ゼネコン(総合建設会社)で、従業員1人当たり受注高の減少が続いている。経費を賄い採算を確保する目安として、会社や株式投資家が意識する『1人当たり年間1億円』を割り込むところも出てきた。各社で人員削減など事業規模の縮小が相次ぐ背景になっている。2009年3月期の連結売上高が2000億円以上の上場ゼネコン17社を対象に、年間の建設受注高を期末の従業員数(単独ベース)で割って調べた。1人当たり受注高は07年3月期の1億3300万円をピークに減少が続き、09年3月期は1億1800万円。10年3月期は受注実績の公表前だが、09年3月期末の従業員数と各社の受注計画を基に試算すると1億900万円で、実際はさらに落ち込む公算が大きい。…1人当たり1億円の受注高が意識されるのは、粗利益率10%を前提に全体的な経費を賄える水準とされるため。景気低迷や公共事業削減で受注減少が続けば、コスト圧縮の動きがさらに広がりそうだ。」(『日本経済新聞』2010.04.09)
●「東京商工リサーチは8日、2009年度建設業倒産件数をまとめた。前年度比14.1%減の3898件で、3年ぶりに4000件を下回った。中小企業向け金融支援や公共工事の前倒し発注などの政策効果と見られる。ただ業種別ではゼネコンが分類される総合工事業が大幅に減少した半面、専門工事業は増加しており、倒産件数も業種別で明暗が分かれた格好となった。…今後の動向について、東京商工リサーチは『公共工事削減に加えて、資源高による建設用鋼材の値上げで建築需要回復の遅れが懸念される中、いつまで政策効果が持続できるか注視する必要がある』と分析している」(『建設通信新聞』2010.04.09)
●「住宅市場で『パワービルダー』と呼ばれる低価格分譲戸建て住宅の建売業者が成長している。代表格の飯田産業は、2010年4月期の連続純利益予想が前期比6.8倍の54億円。04年4月期の過去最高益(57億円)に迫る勢いだ。デフレに対応した割安な住宅の需要拡大が増益の理由だが、この急回復の裏にはリーマン・ショック後の業績悪化時に取り組んだ『体質改善策』がある。…同社のような業態では、いかに安く土地を仕入れて、『値ごろ感』のある価格を打ち出せるかが勝負の分かれ目。…業績悪化を機に、同社は2つの施策を打ち出す。『建築費用の従来比20%削減』、さらに『在庫消化速度のアップ』だ。建物費用を安くしたうえで割高な土地の在庫を早期に消化。土地購入資金を確保し、再び下げ始めていた土地を仕込んで販売につなげれば好循環に乗れる、と判断した。…競合する注文住宅会社は価格設定が高く、マンション分譲会社は在庫の回転が長期化しがち。こうした身軽な経営での業績改善が評価され、同社の株価は昨年3月末から1年間で4.9倍と大幅上昇した。…他の住宅事業者も業績悪化が一巡し、安くなった土地の仕入れを再開。用地取得競争が起きつつある。…住宅市場の変化に即応し用地取得を続けられるか。株価は5日の株式分割発表後に急騰したが、その後は反落し上値を抜けていない。市場も成長力の持続性を見極めているかのようだ。」(『日本経済新聞』2010.04.10)
●「東京商工リサーチがまとめた2010年2月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比22.2%減の273件となり、2月としては3年ぶりに300件を下回り、8カ月連続して前年同月を下回った。依然として『景気対応緊急保証制度』(従来の緊急保証制度の内容を拡充し、2月15日から名称変更)などの政策による資金繰り下支えの効果が続いている。負債総額は64.8%減の441億3200万円となり、8カ月連続して前年同月を下回った。平均負債額も55.0%減の1億6100万円に低下した。」(『建設通信新聞』2010.04.12)
●「大手ゼネコン(総合建設会社)が相次ぎ新興国での工事の損失処理に追われている。鹿島は13日、2010年3月期の連結営業損益が90億円の赤字に転落するとの業績予想を発表した。営業赤字は1961年の上場来初。アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ首長国での土木工事などで300億円を超える損失が発生。大林組も同じ工事の損失処理などで最終赤字になる見通しだ。国内受注高の低迷で各社は海外市場の開拓が不可欠で、新興国リスクをいかに回避するかが最重要の経営課題になってきた。…大手ゼネコン(総合建設会社)が新興国で工事採算の悪化に直面する背景には、国内建設市場の成熟化とリスク管理の甘さがある。建設経済研究所によると、2010年度の建設投資は37兆6900億円にとどまる見通しで、建設市場の規模は1990年代前半と比べて半減する。各社が新興国市場抜きに成長を実現できないのは明らかで、各社はリスク管理の専門家など人材の採用・育成を急いでいる。…業界団体の海外建設協会は国土交通省と連携して10年度中に『海外建設人材情報データベース』(仮称)を構築。日本の工事現場で研修を受けた経験がある外国人留学生や技能実習生、海外工事の経験が豊富な建設会社OB等の人材情報を登録し、日本のゼネコンが受注した工事現場に配置する計画だ。」(『日本経済新聞』2010.04.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「政府の中央防災会議『大規模水害対策に関する専門調査会』は2日、首都圏の大規模水害対策に関する報告書をまとめた。大型台風の襲来などによって利根川右岸の堤防が決壊すると、浸水区域が東京都葛飾区や足立区などの住宅街を含む約530平方キロメートルに広がり、約230万人に被害が及ぶと予想。利根川はんらんによる死者数は、浸水深が5メートル以上で避難をしなかった場合、最大約6300人に上るとしている。大規模水害に関する報告書は今回が初めて。これを受け、政府は本年度中に大規模水害対策に関する大綱を策定する方針だ。」(『建設工業新聞』2010.04.05)
●「中国の不動産市場に多額の資金が流れ込んでいる構図が鮮明になってきた。地方政府が2009年、不動産業者に土地使用権を売却して得た収入は前年比4割増の1兆4239億元(約19兆4600億円)にのぼり、高騰を続ける不動産価格は3月、主要70都市で現行の調査形式導入以来最大の伸び率を記録。行き過ぎた投機への懸念も広がっており、中国政府は不動産市場の過熱を抑える方向で動き始めた。」(『日本経済新聞』2010.04.15)

その他