情勢の特徴 - 2010年5月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「2009年度の所得税収が27年ぶりの低水準になるのがほぼ確実となった。3月までの一般会計税収の累計で、所得税収は前年比13.4%減と大幅に落ち込んだ。・・・財務省が6日発表した3月の税収実績によると、09年度初めからの一般会計税収の累計は前年(3月時点の累計)に比べて17.2%減の28兆9681億円となった。このうち所得税収は10兆9910億円だった。3月に確定申告した分が4月に納税されるため、1兆円規模の追加が見込まれる。それでも、最終的な所得税収は1982年度(約12兆8000億円)以来、27年ぶりに13兆円を下回るのが確実な情勢。・・・一般会計税収が落ち込んだ背景には法人税収の大幅な減少もある。・・・一方、景気動向などに左右されにくいとされる消費税収は5%減の6兆9673億円だった。」(『日本経済新聞』2010.05.07)
●「国土交通省が2010年度予算から導入した地方向けの新型交付金2兆2000億円のうち、99%が継続事業に配分されたことが分かった。地方経済への影響を考慮した措置だが、予算配分の大胆な見直しや地方の使い勝手を高める効果は限定的になりそうだ。国交省は地方が整備計画を作れば予算の流用も可能になるとして、計画策定を促す方針だ。・・・政府は11年度から地方の使い道の自由度が増す一括交付金を導入する方針。社会資本整備総合交付金も対象に含む見通しだが、制度設計を急がないと、11年度も間に合わない可能性がある。」(『日本経済新聞』2010.05.08)
●「財務省は10日、2009年度末の国債や借入金などをあわせた『国の借金』総額が882兆9235億円に達したと発表した。08年度末に比べて36兆4265億円増え、過去最大を更新した。国債を長期保有する傾向が強い国内投資家の比率が高いことなどから、市場で国債が投げ売りされるような危機に陥る可能性は低いものの、財政再建を急ぐべきだとの指摘は年々高まっている。」(『日本経済新聞』2010.05.11)
●「財務省は、定期借地権を活用した未利用国有地の貸し付けなどにより、保育・介護施設の整備や、地域・都市再生の街づくりを積極的に支援する。新成長戦略の一環で、これまで売却処分を優先してきた未利用国有地の管理処分方針を見直し、新たな活用方法を検討する。有識者ヒアリングなどで社会のニーズに合った国有財産の活用策を具体化し、民間主導の経済成長を後押しする考えだ。・・・売却を優先してきた従来の未利用国有地の管理処分方針に対しては、▽ストックの減少▽フロー収入を生み出せない▽自治体などの要請に基づく受け身的運用―といった問題点が指摘されていることから、この方針を見直し、定期借地権を利用した貸し付けを含め多様な管理処分方式を積極的に活用していく方向だ。国有財産活用のアイデアとして、自治体や社会福祉法人による保育所、医療・介護施設の整備・運営事業では、直接的な貸し付けのほか、宿舎建て替え時にPFIを活用して関連施設を併設することなどを想定。街づくりと連携した土地活用による地域活性化支援も検討する。」(『建設工業新聞』2010.05.14)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省の所管分野の成長戦略案が4月末にまとまり、実効性の確保に向けた課題が浮き彫りになってきた。例えば、海外から企業や投資を呼び込む際、障壁になりかねない割高な国内法人税の問題や、戦略の実施主体である自治体や民間企業、住民を巻き込むコミュニケーション手段だ。・・・前原誠司国交相は、こうした意見に前向きに対処し、戦略の実効性を高める考えだ。28日の会合では『知恵を絞って良いもの(戦略)を作っても、実行には(地方の)現場への浸透が大事だ』と述べ、各地方整備局を含めオール国交省で取り組む決意を表明。法人税に関しても、『国交省の戦略を政府全体の新成長戦略に取り込む過程で、税制の抜本的見直しが必要』との認識を示した。国交省によると、省内の国際関連4組織の一元化など、可能な施策は既に取り組み始めている。11年度予算の概算要求や税制改正要望、法案提出についても、優先順位を付けた上で成長戦略をベースに進めていくという。」(『建設工業新聞』2010.05.06)
●「民主党で建設産業界に関係する議員連盟の発足が相次いでいる。3月末から4月末までのわずかlカ月間で6つの議連が発足した。・・・4月末までの1カ月で発足した議連のうち建設業界に関連するのは、▽美しいくにづくり議連▽建設業法等議連▽水政策推進議連▽総合交通体系実現・推進議連▽地方単独公共事業倍増計画推進議連▽首都圏直下型地震対策議連−−の6議連。そのほとんどは、政権交代以前にあった政策調査会の廃止に伴って、党内政策議論の場が減少したことを補うと同時に、議員立法もしくは政府提出法案提出の後押しが目的だ。しかし議連会合では、建設業界の民主党への理解促進を念頭に置く発言も目立ち始めた。ただこうした議連で地方建設業界に配慮した発言が増せば増すほど、全国的なゼネコン批判を招く結果にもなっている。一方、地方建設業界の一部は議連に対し『理屈より雇用(仕事)だ。本当に仕事が増えれば評価する』と冷ややかな見方も存在する。」(『建設通信新聞』2010.05.07)
●「内閣、国土交通、財務各府省は空港・鉄道など公共インフラの整備や運営に民間の資金やノウハウを生かすPFIを拡大する。公共施設を運営する新たな権利を事業者に売却する方式を導入し、大阪国際空港(伊丹空港)などでの活用を検討。PFI法改正など立法措置や固定資産税などの税制優遇も検討する。民間資金の導入で財政負担を軽減し、老朽インフラの改修など必要な公共投資に対応する。・・・PFIは設計から工事、運営、資金調達まで民間企業が手掛ける公共事業のやり方。ただ、大半は公務員宿舎、文化施設など小規模なハコモノ事業が多く、運営面などで民間の創意工夫を生かしにくかった。今後は道路、鉄道、港湾など大規模なインフラ事業にもPFIを広げるため、抜本的な制度改正に乗り出すことにした。具体的にはインフラを整備、管理、運営し、料金徴収できる『事業運営権』を新たに創設し、民間事業者に売却する新方式のPFIを導入する。政府は売却収入を得る一方、民間事業者は公共施設を所有しないため、固定資産税などがかからない。・・・PFIにからんだ税制優遇も検討する。内閣府と国交省は事業者が払う登録免許税、固定資産税、不動産取得税、都市計画税などの免除を来年度税制改正で要望する方向。事業運営権の減価償却を認め、法人税を圧縮できるようにすることも求める見通し。PFIのノウハウが乏しい自治体への支援体制も整備する。政府はこうした施策の具体化へ向け立法措置の検討に着手。内閣府が所管するPFI法などの関連法案を来年の通常国会をめどに大幅に改正する方向だ。ただ、政府内ではPFI法の手直しにとどまらず、民間委託などより幅広い官民連携を意味する官民パートナーシップ(PPP)も含めた包括的な立法措置を求める声も根強い。金融機関や経済界の要望も聞き入れながら、法律の枠組みを最終判断する。」(『日本経済新聞』2010.05.07)
●「全国の主要水道管のうち震度6強相当の揺れに耐えられる『耐震適合性』を持つのは、2008年度末時点で28.1%だったことが8日、厚生労働省の調査で分かった。・・・算出したのは水道管自体に加え周囲の地盤状況も勘案した耐震化率で、今回が初調査。それによると、全国の総延長約10万7000キロのうち、耐震適合性があるのは約3万キロにとどまっていた。・・・厚労省は、水道事業が目指す将来像をまとめた『水道ビジョン』で、全国の主要水道管すべてを13年度までに耐震化整備すると目標設定。08年度は07年度の14.6%に比ベ倍近くに改善されたが、整備事業を担う地方財政は困窮しており目標達成は『極めて厳しい』(厚労省水道課)状況だ。」(『日本経済新聞』2010.05.09)
●「2009年末に閣議決定した基本方針の具体的内容である新成長戦略は、日本経済低迷の原因の一つと指摘される09年度末で40兆円程度といわれたGDP(国内総生産)の需給ギャップ解消を含む新たな国づくり政策だ。・・・09年に閣議決定した成長戦略の基本方針では、重点分野として、@環境・エネルギーA健康BアジアC観光・地域活性化D科学・技術E雇用・人材−−の6分野を掲げた。このうち環境・エネルギーとアジア、観光・地域活性化の分野を中心に各府省庁の成長戦略で建設産業に関連する施策が示されている。基本方針では、過去の公共事業・財政頼みを『第一の道』、行き過ぎた市場原理主義を『第二の道』として、これらとは一線を画した新たな道である環境・健康・観光の3分野を中心にした『第三の道』による経済成長戦略を提示した。このため各府省庁の成長戦略には『公共事業』という言葉は見当たらず、インフラ整備や都市づくりといった言葉に置き換わっている。・・・いずれも低炭素都市・地域づくりを指しており、建設産業がかかわる環境・エネルギーと地域活性化分野の代表例といえる。・・・建設産業にとって新成長戦略でもうーつの柱は、インフラの輸出だ。このインフラ輸出に鳩山政権は官民一体で取り組む。施設の設計や建設だけでなく、運営や維持管理までのシステムとして受注の獲得を目指す。 建設産業にとってどれだけの実が得られるのか。激しい国際競争に打ち勝つ戦略と施策が重要になる。」(『建設通信新聞』2010.05.10)
●「国土交通省は、新しい大都市圏戦略の策定に向けた検討を始める。同省成長戦略会議住宅・都市分科会報告案に『大都市圏戦略基本法(仮称)』の制定と大都市圏戦略の策定が盛り込まれたためで、最終報告がまとまる6月以降に首都圏に呼び込むべき機能の設定などの検討を進める。報告案では、目標年次を2011年度としているため、戦略基本法を11年の通常国会に提出し、同年度内に戦略を策定する見通しだ。」(『建設通信新聞』2010.05.13)
●「経済産業省は、中小企業の振興策などを盛り込んだ『中小企業憲章』案をまとめた。従来の中小企業施策に比べ、起業を増やすことや海外展開支援の必要性を強調した内容になっている。憲章は国民が中小企業の重要性を認識し、政府を中心に国の総力をあげ一て中小企業を振興するとの理念を明記した。憲章案に対する一般意見を22日まで募る。意見や与党の意向を反映して6月中に憲章を閣議決定する予定だ。」(『建設通信新聞』2010.05.14)

労働・福祉

●総務省が30日発表した労働力調査によると、3月の完全失業率(季節調整値)は5.0%と前月に比べ0.1ポイント悪化した。完全失業者数は350万人と、前年の同じ月と比べて15万人増加した。前年同月比で17カ月連続の増加となった。失業の理由別では、解雇や雇い止めなどの「非自発的失業」の14万人増、「学卒未就職」の5万人増が目立っている。・・・減少幅が大きいのは、建設業の33万人、製造業の31万人です。建設業での雇用の悪化が、全体の失業率を引き上げている。(『しんぶん赤旗』2010.05.01より抜粋。)
●「10日の厚労省省内事業仕分けは、▽中央労働災害防止協会▽建災防▽勤退共−−の3法人が対象となった。3法人は、組織のスリム化や余剰資産などの売却、国からの財政支出削減などの改革案を提示したが、いずれも『改革案は不十分』との評価となった。・・・具体的には、▽建災防への財政支出(2010年度は7.3億円)を廃止し会費・自主事業で業界主導による存続▽中災防との統合▽建災防支部同士の統合・効率化−−が論点となった。・・・一方、勤退共については、仕分け人6人中5人が、機構としての存続を認めたものの、@中小企業退職金共済A建設業退職金共済B清酒製造業退職金共済C林業退職金共済−−の4事業の管理部門統合を求める声が大勢を占めた。・・・1998年4月に建退共が中退金と統合し勤退共として発足したときには、赤字だった中退金との統合に黒字運営の建退共が猛反発、数年の議論を経て、事業の区分経理を明確にし、資産流用を防止することで決着した経緯がある。」(『建設通信新聞』2010.05.12)
●「2010年3月の建設業就業者数が、前年同月比33万人減の489万人となったことが総務省の労働力調査で分かった。3月の建設就業者500万人割れは、1977年以来。04年3月の就業者は587万人。わずか6年で100万人の労働力が建設市場から去っていったことになる。企業に所属する雇用者数も6年で100万人減少しており、98年8月には就業者700万人まで増加した建設労働力市場は本格的な減少局面に入った。」(『建設通信新聞』2010.05.13)

建設産業・経営

●「大手ディベロッパーの海外事業展開が本格化の兆しをみせている。三井不動産グループが中国での開発事業に乗り出したことに加え、その他企業も海外展開に向けた動きが形になりつつある。地球環境問題が世界共通認識となる中、日本のディベロッパーには中国など東アジア地域の各国が低炭素型の都市開発を実践するためのノウハウを持つ強みもあり、今後個々の企業だけでなく不動産業界をあげた行動も活発化しそうだ。・・・依然として厳しい経済状況が続く国内に比べて、中国を始めとする東アジア地域は金融危機を乗り越え、需要を大きく回復した。協会としても10年度以降、住宅供給や都市開発を通じた内需拡大との両輪で、環境を軸とした成長戦略を具体化するため、関連業界や行政と連携して活動する方針だ。」(『建設通信新聞』2010.05.06)
●「建設産業専門団体連合会の才賀清二郎会長は10日、日本建設業団体連合会(野村哲也会長)との協議会後に会見し、2010年度の活動方針として@若年者等の人材確保A生産性向上B基幹技能者の地位向上C広報活動−−の4項目に取り組んでいく考えを明らかにした。これらを実現するため、6月からスタートする国土交通省各地方整備局との意見交換会では、登録基幹技能者の活用促進と適正評価、ダンピング(過度な安値受注)の防止、安全衛生経費の別枠計上などを訴えていく。」(『建設通信新聞』2010.05.11)
●「東京商工リサーチがまとめた2010年3月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比4.4%減の341件となり、9カ月連続して前年同月を下回った。依然として『景気対応緊急保証制度』や『中小企業等金融円滑化法』などの政策による資金繰り下支え効果が続いている。ただ、こうしたなかで5カ月ぶりに340件台に増加したことが目を引く。負債総額は27.3%減の510億6700万円、平均負債額が24.3%減の1億4900万円だった。都道府県別では26道府県で前年同月を下回り、地区別では9地区のうち4地区が前年同月を下回った。」(『建設通信新聞』2010.05.13)
●「鹿島、清水建設、大成建設、大林組の上場大手ゼネコン4社は13日、10年3月期連結決算を発表した。全社が2けたの減収となり、民間企業の設備投資低迷や公共事業の削減で受注も大幅に減少した。各社とも工事採算の改善に取り組んだものの、侮外工事の損失が大きく膨らんだ鹿島と大林は営業赤字に転落。清水は開発事業の悪化によって営業減益となった。大成建設は販管費の削減や子会社の増益により営業増益を達成した。今期は、受注については前期からの反動増を見込むものの、前期の受注減が響いて全社が減収を予想しており、損益の改善を最優先する。」(『建設工業新聞』2010.05.14)
●「国産杉の柱用製材品が値上がりしている。木材卸大手のナイスがまとめた横浜、相模原、小田原、多摩の4地区の4月下旬の卸価格は首都圏近県材の杉柱角(人工乾燥済み、3メートル×10.5センチ角)が1立方メートル当たり5万3000円と、前月に比べ千円上がった。木造住宅建設向けの引き合いが増えるなか、原料丸太の不足感が強まっているためだ。一方、需要は首都圏を中心に低価格の二戸建て分譲住宅の開発が増えていることから好調だ。住宅メーカーの間で国産材志向が強まっていることも需給の引き締まりに拍車を掛けた。」(『日本経済新聞』2010.05.15)
●「生コンクリートの2009年度全国出荷量が8603万立方メートルと39年ぶりに1億立方メートルの大台を割り込み、業界を揺さぶっている。生コンは地域ごとの協同組合による共同販売が一般的だが、需要減過の著しい地域では組合を離脱して個別に販売するメーカーが増えてきた。建設市場の不振を受け、生コンメーカーの共販体制がきしみ始めた。」(『日本経済新聞』2010.05.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省がまとめた2009年度の建築着工統計調査報告によると、新設住宅着工戸数は前年度比25.4%減の77万5277戸で、1964年度以来の低水準となった。建築基準法改正で落ち込んだ07年度から08年度に持ち直したものの、09年度で再び落ち込んだ。下げ幅は74年度のオイルショックによる落ち込み以来の大きな減少幅となった。」(『建設通信新聞』2010.05.06)

その他