情勢の特徴 - 2010年5月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「経済産業省が検討している日本の産業競争力を高める『産業構造ビジョン』案の全容がわかった。インフラ輸出や環境・エネルギー産業など日本が今後集中して取り組む5分野を選定。2020年までに149兆円の市場、258万人の雇用を創出する目標を掲げた。法人税改革や産業再編、アジアヘの積極進出などを通じ達成を目指す。…5分野は@原発や水道、鉄道などインフラの海外輸出Aエコカーなど環境・エネルギー産業Bファッションやコンテンツなど文化産業C医療・介護・健康・子育てサービスDロボットや宇宙、航空機などの先端分野。ビジョン案によると、日本の生産額は07年までの7年間で48兆円増え、その約4割を自動車産業が占めた。今後は自動車依存から脱却し、149兆円を5分野で稼ぐ目標を明示。これによって約258万人の雇用を確保する計画を示した。」(『日本経済新聞』2010.05.31)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省の所管分野の成長戦略の最終報告がまとまり、『国際展開・官民連携』の分野で、『コンセッション(事業権付与)方式によるPPP(公民連携)/PFIの実行』が優先事項の一つに位置付けられた。同方式の導入に当たっては、既に完成して運営実績のある施設であれば、民間の管理運営による利益が計算できるため、投資家もリスクを抑えられる。このため既に運営段階に入っている同省直轄駐車場や伊丹・関西国際両空港への導入が想定されているが、成長戦略を展開するに当たって同省は、建設を伴うプロジェクトも対象とする方針だ。成長戦略では整備新幹線や都市鉄道、LRT(次世代型路面電車)なども同方式の対象事業に挙がっている。」(『建設工業新聞』2010.05.19)
●「国土交通省は19日、『海外道路PPP協議会』の初会合を開き、海外の道路整備を対象とした具体的な官民協働型インフラ整備プロジェクトの検討に着手した。座長には、住友商事会長の岡素之氏が就任した。協議会の下にアジアを中心とした国別のワーキンググループ(WG)を設置し、具体的なPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)案件を形成する。事業の上流から下流までを『ジャパンパッケージ』として、官民連携による海外展開を目指す。」(『建設通信新聞』2010.05.20)
●「内閣府のPFI推進委員会は18日、PFI制度の見直しに向けた中間取りまとめを行った。20年までの11年間で、従来の2倍に当たる9.4兆円以上にPFI事業の規模を拡大することを目指すほか、土木インフラを中心にした3件のモデルプロジェクトを実施するなどの内容。PFI法などを改正して『コンセッション(事業権付与)方式』も導入。併せて、民間事業者によるSPC(特別目的会社)株式や契約上の地位の譲渡が弾力的に行えるようにするなど、民間資金をより積極的に活用できる環境の整備も求めている。」(『建設工業新聞』2010.05.20)
●「全国知事会の『国の出先機関原則廃止プロジェクトチーム』(PT、座長・上田清司埼玉県知事)は20日、最終報告(素案)をまとめた。政府に対して早期移管を求める『重点分野』として、国土交通省の地方整備局や北海道開発局などの出先機関の事務を始め、直轄国道、直轄河川など4分野を選定した。このうち3分野が国交省関係となった。…重点分野は、二重行政の解消や、地域二−ズの実現で高い効果が期待できるものを基準に選定。大半の事務移管が可能で出先機関の廃止につながることなどをポイントとした。…事務の移管方法は、重点分野については『地域主権推進大綱』(2012年)を待たずに分野を決め、早期移管を求める。広域連携による受け入れが必要なものは、段階的な移管も検討する。全国一律の移管が難しいものは特定地域で実験的に進める考えだ。…改革後に国に残る事務の執行組織については、極めて簡素な組織とし、地域との連携やガバナンス確保の仕組みの導入が必要としている。」(『建設通信新聞』2010.05.21)

労働・福祉

●「建設工事現場に従事する『登録基幹技能者』を、ゼネコンが評価する動きが出てきた。戸田建設は、同社の現場で働く登録基幹技能者に1日500円を年間の就労日数に応じて支払う『優良技能者手当』を創設し、本年度から実施する。現場の上級職長として、生産性向上への貢献が期待される登録基幹技能者を公共工事の入札時に評価する発注者も出始める中、協力会社が保有する登録基幹技能者をいかに活用するかは、ゼネコンにとっては『今後の受注戦略を左右する可能性もある』(戸田建設東京支店)との見方も出ている。今後、他のゼネコンにも同様の取り組みが広がるか注目される。」(『建設工業新聞』2010.05.25)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(福島玲司議長)が加盟組合員の25%に当たる約9000人を対象に実施した2009年の時短アンケートによると、日建協全体の1カ月の平均所定外労働時間は62.7時間と05年以降60時間を超えて高止まりし、改善の兆しが見えないことが分かった。同調査は1972年開始以降、毎年11月に実施している。特に作業所で働いている外勤技術者は、平均所定外労働時間が建築83.8時間、土木85.4時間とともに80時間を超えており、2人に1人が80時間以上、3人に1人が100時間以上の所定外労働を余儀なくされている状態にある。その理由として、書類作成や仕事量の多さをあげる組合員が多かった。休日出勤に限れば、受注競争の激化を背景とした厳しい契約工期などで作業所を閉所できず、それが所定外労働時間の高止まりに大きく影響。…このような長時間労働により、組合員の約6割が健康に不安を感じていることから、日建協は、建設産業のワーク・ライフ・バランスの実現を目指し、統一土曜閉所運動や作業所異動時休暇に引き続き力を入れていく。」(『建設通信新聞』2010.05.27)
●「政府は企業が従業員に支払う義務を負う最低賃金について、景気状況に配慮しつつ2020年までに全国平均で時給1000円を目指すとの目標を策定し、実現時期を大幅に先送りする方針を固めた。都道府県ごとに異なる最低賃金の下限を早期に800円に引き上げることも明記する。民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で全国平均で1000円を目指すとの目標を打ち出していたが、企業収益への影響などに配慮して現実路線に転換する。」(『日本経済新聞』2010.05.28)
●総務省が28日発表した労働力調査によると、4月の完全失業率(季節調整値)は5.1%と前月比0.1ポイント上昇し、2カ月連続で悪化した。完全失業者数は、前年の同じ月に比べ10万人増加の356万人。前年同月比で18カ月連続して増加した。就業者数は、前年同月比53万人減の6269万人だった。…完全失業者を求職理由別で見ると、解雇などの「非自発的失業」によるものが前年同月比で3万人減少したものの、なお151万人と高止まりを続けている。一方、「新たに収入が必要になった」人が48万人で、前年同月比7万人増と目立って増えている。また、完全失業者を世帯主との続き柄で見ると、「世帯主」が前年同月で同数の87万人と、依然深刻な状況にあることに加え、「世帯主の配偶者」が前年同月比12万人増の58万人と、大幅に増加している。賃金が低下するもとで、家計を支えようと求職活動を始めた女性が就職することができずに「失業者」となり、失業率を押し上げている実態が浮かび上がっている。(『しんぶん赤旗』2010.05.29より抜粋。)

建設産業・経営

●「主要ゼネコン各社の10年3月期の連結決算が17日、出そろった。月刊建設工業新聞社が連結売上高1000億円以上の26社を対象に集計したところ、24社が減収となり、本業のもうけを示す営業損益も3社が赤字、10社が減益となるなど、厳しい市場環境を反映した決算となった。今期は国の公共事業費が大幅に削減され、さらなる市場縮小が不可避。前期の受注不振で期初の手持ち工事(繰越高)が軒並み減少となる苦しいスタートとなっており、採算を重視しながらいかに受注を積み重ねていけるかが大きなテーマとなりそうだ。」(『建設工業新聞』2010.05.18)
●「海外建設協会が21日発表した主要ゼネコン(総合建設会社)43社の2009年度の海外建設受注実績は6969億円と、前の年度に比べて32.7%減少した。ドバイ・ショックの影響で中東地域での受注額が96.4%減となったほか、北米や欧州でも振るわなかった。受注額が7000億円を割り込んだのは1980年度以来29だ年ぶり。…大林組などのゼネコン大手は中東地域で請け負った大型工事で損失が発生しており、10年度も受注高が回復する兆しはない。」(『日本経済新聞』2010.05.22)
●「主要ゼネコン各社の工事採算が改善している。日刊建設工業新聞社が10年3月期の連結売上高1000億円以上の26社を対象に、各社が売り上げ計上した工事の採算を示す単体の完成工事総利益(粗利益)率を調べたところ、平均値は6.4%で前期の6.1%から0.3ポイント改善した。採算重視の選別受注や原価低減の取り組みなどを推し進めたことに加え、鋼材など資材価格の低下も採算改善に寄与したようだ。今期は上昇傾向にある資材価格の動向などが懸念材料となるが、各社の見込みでは、粗利益率の平均値は6.7%とさらに0.3ポイント上昇する。」(『建設工業新聞』2010.05.25)
●「東京商工リサーチがまとめた2009年度(09年4月−10年3月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年度比14.1%減の3898件となり、06年度の3875件以来、3年ぶりに4000件を下回った。地区別では、9地区のうち8地区で前年度を下回り全国的に倒産が減少した。これは『景気対応緊急保証制度』などの金融支援や、公共工事の前倒し発注などの景気対策が効果を発揮したことによる。また、負債総額は48.2%減の7235億8200万円となった。これは負債100億円以上の倒産が前年度の17件から76.4%減の4件にとどまったため。平均負債額は39.9%減の1億8500万円だった。前年度に8件あった上場企業の倒産は発生しなかった。」(『建設通信新聞』2010.05.25)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国や地方自治体などの公共建築物への国産木材の利用促進を目指した『地球温暖化の防止等に貢献する木材利用の推進に関する法律(木材利用促進法)』が19日、参議院本会議で可決、成立した。当初は公共の建築物のみを対象としていたが、衆議院で与野党が修正協議し、木材利用促進の対象を民間住宅にまで広げた。…国や地方自治体に木材利用を推進する施策の実施を求め、公共建築物の建材や内装材に国産木材を利用することなどを盛り込んだ。さらに木造住宅に関しては、助成や税制優遇、金融支援、需要開拓のための支援策を講じることを求めている。」(『日本住宅新聞』2010.05.25)
●「耐震偽装問題の再発防止策として厳格化された建築確認手続きの運用改善が6月1日から施行される。長期化していた確認審査期間の大幅短縮や、申請図書の簡素化などが柱。手続きの厳格化は、建築確認の現場に大きな混乱を招き、住宅着工が落ち込む一因にもなったとも指摘されてきただけに、今回の運用改善が建築確認手続きの円滑化にどこまで効果をもたらすか注目されそうだ。」(『建設工業新聞』2010.05.31)

その他