情勢の特徴 - 2010年6月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●菅直人内閣は18日、中小企業を「社会の主役である」とする中小企業憲章を閣議決定した。憲章は前文で、「中小企業は、経済を牽引(けんいん)する力であり、社会の主役である」と明記。「政府が中核となり、国の総力を挙げて」中小企業の持つ個性や可能性を伸ばし、「困っている中小企業を支え」ることにより、「中小企業が光り輝き、安定的で活力ある経済と豊かな国民生活が実現される」よう中小企業憲章を定めるとした。憲章は前文と「基本理念」「基本原則」「行動指針」の3部で構成。「基本理念」では、中小企業は「地域社会と住民生活に貢献」していると指摘するとともに、多くは「資金や人材などに制約があるため、外からの変化に弱く、不公平な取引を強いられるなど数多くの困難に晒(さら)されてきた」としている。「基本原則」には、中小企業の経営資源の確保への支援や公正な市場環境の整備、セーフティーネットの整備による中小企業の安心の確保などをあげた。「行動指針」では技術開発や人材育成・確保の支援や起業・新事業展開をしやすい環境の整備などをあげた。(『しんぶん赤旗』2010.06.19より抜粋。)
●「政府は日本経済再生へ向け、2020年度までの行動計画『新成長戦略』を決定した。建設産業界にも関連する『環境』『アジア展開』『観光立国・地域活性化』など戦略7分野を提示。さらに約330項目の経済活性化策のうち21施策を国家戦略プロジェクトとして明記した。21施策には環境未来都市構想、総合特区創設、パッケージ型インフラ海外展開、公共施設の民間開放に伴うPFI事業規模倍増など、建設産業界に関連する項目も盛り込まれた。ただこうした施策には、役務受託、工事受注というこれまでの建設産業のビジネスモデルは通用せず、大手から中小まで企業規模を問わず新たな対応が求められるのは確実だ。」(『建設通信新聞』2010.06.21)
●「政府は22日の閣議で、中長期の財政健全化に向けた『財政運営戦略』を決定した。国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を2020年度までに黒字にする目標を掲げ、11年度から3年間は国債の元利払い費以外の歳出を横ばいで据え置く。内閣府の試算では、黒字化目標を増税で達成しようとすると消費税率で8〜9%引き上げる必要がある。膨らむ社会保障費の抑制も課題になりそうだ。」(『日本経済新聞』2010.06.22)
●「国土交通省は、遊休化・老朽化した不動産の耐震改修や環境配慮型建物への改修を促進するため、特別目的会社(SPC)による資金調達を可能にする新たな証券化手法を創設する。年金や生損保会社から改修、建て替えの資金を広く集められるよう、不動産会社が自ら取得・保有する物件で証券化事業を行う『不動産特定共同事業』を見直し、この対象をSPCが取得・保有する物件にまで広げる。関連する不動産特定共同事業法改正案を11年の通常国会に提出する。」(『建設工業新聞』2010.06.23)
●企業の内部留保の一部である利益剰余金の保有額上位20社(銀行を除く)の総計が2010年3月末時点で53兆7823億円に達し、09年3月末の52兆2527億円から1兆5296億円積み増していることが本紙の集計で分かった。…上位20社中、利益剰余金を増やした企業は16社だった。20社の積み増し額は年収500万円の労働者の賃金約30万人分にあたり、これを取り崩すだけで多くの雇用を生むことができる。(『しんぶん赤旗』2010.06.25より抜粋。)
●「発売とほぼ同時に買い手が付く新築マンションが増えている。不動産経済研究所(東京・新宿)によると、1〜5月の首都圏1都3県で申込期間中に売れた『即日完売』物件は74件2043戸となり、件数で前年同期比72%増、戸数は5.7倍に膨らんだ。景気が回復傾向に向かう一方、住宅購入を促す政策の後押し効果もある。しかし、立地条件が不利な物件は苦戦しており、二極化が鮮明になっている。」(『日本経済新聞』2010.06.25)
●「国内のメガバンク3行はアジアのインフラ整備に関連した融資の拡大を目指す。三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほコーポレート銀行が今年度検討しているのは、道路や電力関連など合計85案件で、件数は前年度実績の約1.7倍。融資獲得に向けて行員も相次ぎ増強している。成長力の高いアジアの需要を取り込む狙いだが、現地や欧州の金融機関との競争は激しい。収益にどの程度結びつけられるかも課題になりそうだ。」(『日本経済新聞』2010.06.25)
●「国土交通省は25日10年度の建設投資見通しを発表した。それによると、総投資額は前年度比3.5%減の40兆7000億円にとどまり、1977年度(38兆7986億円)以来の低水準に落ち込むと予想している。総投資額のうち、政府投資は国の大型直轄事業見直しなどの影響で18.6%減の13兆7600億円となり、60年の調査開始から最大の下げ幅を記録。一方、民間投資は景気低迷による投資環境の厳しさが和らぎ、6.6%増の26兆9400億円と増加に転じる見通しだ。」(『建設工業新聞』2010.06.28)
●「国土交通、農林水産、経済産業の3省と資材関係業界の団体で構成する『建設資材需要連絡会合同会議』は28日、東京都内で会合を開き、10年度の主要建設資材の需要予測をまとめた。それによると、公共事業費が大幅に削減された影響により、主要建設資材6品目のうち、木材を除く5品目の需要量が1985年度以降で最低となる見通しだ。中でもアスファルト合材の需要量は前年度比で20%以上の減少となる見込みだ。…アスファルト合材の大幅な需要減で、道路舗装会社の合材の製造・販売量も落ち込むと予想されるが、一方で合材の原料のストレートアスファルトを供給する石油元売りとディーラー各社は、ストアスの利幅が薄すぎるとして卸値の引き上げに動いている。このため道路舗装会社は、販売量の落ち込みに応じた固定費の削減と、さらにストアスの値上げ分の転嫁も迫られる厳しい状況となりそうだ。」(『建設工業新聞』2010.06.29)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は16日、09年度の国土交通白書案を同省政策会議分科会に報告した。厳しい財政状況の下、人口減少や少子高齢化の進展は国民生活に深刻な影響を与えると指摘。『財政に頼らない成長』を大原則に次の時代につながる持続可能な社会の構築に向けて、PPP(官民連携)を活用しながら都市機能を集約したまちづくりや、社会資本の戦略的な維持管理・更新などを推進。成長が期待できる海外や観光などの分野を伸ばすための施策も展開し、日本をけん引する国土交通行政へと大胆に転換するべきだと強調している。…白書案は、▽人口減少を踏まえた社会の再構築▽少子高齢化する社会への対応▽新たな価値の発見と魅力の創造―の三つの観点から施策を展開する必要があると指摘。具体策として、郊外に拡散してきたこれまでの都市づくりを転換して中心部に施設や都市機能を集める集約型都市づくりを推進し、財政コストを抑えながら高齢者も暮らしやすい街並みを整備するとした。さらに高度経済成長期に整備された社会資本が一斉に更新時期を迎える中、個別事後的に対応してきた従来の維持管理手法を予防保全型管理に転換し、コストを抑制することも必要だと強調している。限られた予算の集中的な投資や、積極的な規制緩和、民間の知恵と資金の導入などにも取り組み、国際展開・官民連携、観光、航空、住宅・都市の分野で大胆な政策提案を実施。特にグローバル化が進む世界で持続可能な成長を実現するために必要なインフラを整備・活用し、成長分野を伸ばす取り組みも重要になるとしている。」(『建設工業新聞』2010.06.17)
●「老朽化したインフラを更新するための費用が27年後に国、地方の投資可能総額を上回ることが国土交通省の実施した調査で明らかになった。調査結果によると、11年度からの50年間に必要な更新費は約190兆円と推計され、損傷が発生してから個別・事後的に対応する従来の更新手法で進めた場合、2037年度時点で更新費が国と地方の投資可能総額を上回り、更新できないストック量が約30兆円に達すると試算している。同省は、これらの推計結果を09年度国土交通白書案に掲載。早期改修によって更新費用を抑える予防保全型管理に早急に切り替える必要があると指摘している。」(『建設工業新聞』2010.06.17)
●「相模原市は、公契約条例制定に向けた具体的な検討に着手する。暮らしに密着した分野の行政課題に対応するため、15日に設置した『暮らし満足向上のための条約検討プロジェクトチーム(PT)』の中に、契約課を中心とした部会を設置し、6月中に初会合を開く。部会では、条例化の可能性や実現に向けた課題などについて検討を進め、2010年度内にPTに検討成果を報告する。現時点で具体的な条例案の議会提出時期は未定だが、加山俊夫市長は7日の市議会で、『公共事業の質の確保が期待できる』などと条例制定に前向きな姿勢を示している。…加山市長は7日の市議会で、『国の法整備の状況や先進市の動向を踏まえ、最低賃金法との関係、実行体制を担保するための個々の労働者の賃金をチェックする体制などの課題について幅広く検討していきたい』と答弁している。」(『建設通信新聞』2010.06.18)
●「政府は18日、『官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律』(官公需法)にもとづき、2010年度の『中小企業者に関する国等の契約の方針』を閣議決定した。中小企業向け契約目標率は、09度目標率を3.8ポイント上回る過去最高の56.2%となった。官公需総額は6兆8796億円のため、中小企業契約目標額は3兆8656億円となる。このうち、工事の総予算額は2兆5843億円で、中小の契約目標額が1兆4812億円、契約目標率は57.3%と全体の目標率を1.1ポイント上回っている。…国の工事は、予算総額が1兆7795億円で中小の契約目標額が1兆0860億円、契約目標率が61.0%となっている。測量や地質調査、建設コンサルタント、建築設計を含む役務の予算総額1兆3444億円に対して、中小の契約目標額は5533億円、契約目標率41.2%となる。独立行政法人などの工事は、予算総額8048億円に対し、中小の契約目標額が3952億円で契約目標率は49.1%。役務は9775億円が総予算額で、契約目標額が5756億円、58.9%の契約目標率となっている。」(『建設通信新聞』2010.06.21)
●「国土交通省は、地方建設業や中小建設業の育成に向けた取り組みを強化する。育成策の柱は、▽建設業の事業転換を促進する地方自治体への支援▽成長分野での事業立ち上げ支援▽共同事業による事業領域拡大に対する支援―の3点。異業種の企業と新分野進出を目指す建設会社とのマッチングを支援する事業の拡充や、建設業と宅建業によるリフォーム事業の協業化、自治体の公物管理の包括受注に対する支援策などを検討する。11年度予算の概算要求にも反映させる。」(『建設工業新聞』2010.06.23)
●菅内閣は22日、国と地方のあり方の抜本的見直しを盛り込んだ「地域主権戦略大綱」を閣議決定した。「義務付け・枠付けの見直し」の名で、国民生活を守るために定めた最低基準の緩和・撤廃を進めることを打ち出した。…地方への国の財源保障である補助負担金をなくし、使途を定めない「一括交付金」を2011年度から導入。社会保障や義務教育関係も一括交付金の対象とした上で、「全国画一的な保険・現金給付」などは対象外としている。…地方自治体は「自主的・総合的に行政を担う」とする一方、「道州制も射程に入れる」として、道州制の導入と市町村のいっそうの大合併・大再編をすすめていく方向だ。地方議会について「長と対立した場合の解決手段」が必要だとして、地方議会の形がい化をねらう「地方政府基本法」の制定を打ち出している。(『しんぶん赤旗』2010.06.23より抜粋。)
●「国土交通省は、インフラ整備の方向性や政策目標など示す『社会資本整備重点計画』を前倒しで見直す。現行計画は08年度に始まった5カ年の計画だが、昨年9月の政権交代によって、前の自公政権下での国土交通政策が大きく転換されたことから、現政権の方針を踏まえた形に計画を抜本的に見直すことを決めた。社会資本整備審議会(国交相の諮問機関)の計画部会で7月から具体的な見直し議論に入る。」(『建設工業新聞』2010.06.23)

労働・福祉

●「国土交通省は建設業技能者の確保・育成に向け、リフォームなど成長分野に対応できる人材育成のための教育訓練などを支援する考えだ。2011年度予算概算要求に盛り込むことを視野に入れている。若年層の人材確保・育成に向けても、基幹技能者に到達するまでキャリアパスを示す方策などを検討する。…リフォームや維持管理、環境・エネルギーなどのニーズが高まり、成長分野とされる中で働く技能者の技術を磨くための講習会開催やカリキュラムの作成、育成プログラムの作成などを推進する。…11年度以降については、若年層が将来を見通しやすくするため、基幹技能者に至るまでのキャリアパスを提示する取り組みを検討する。各段階に応じた人材の育成、資格・実績などが適正に評価される環境を検討したい考えだ。」(『建設通信新聞』2010.06.30)
●「建設業界の労働力市場に異変が起きている。建設業就業者数は5月まで3カ月連続で500万人台を割り込み、建設投資縮小傾向に連動する形で本格的な労働力減少が鮮明になった。ところが5月の建設業新規求人数(新規学卒者除く、パートタイム含む)は、2005年12月以来5年5カ月ぶりに前年同月比で増加に転じた。建設業と同様に労働力減少が続いている製造業は、ことし1月から新規求人数が増加に転じていた。目先の市場縮小に合わせるように労働力は減少しても、中長期的には少子化による全体就業者数の大幅減少に備える人材確保競争が産業間で始まったことを物語っている。」(『建設通信新聞』2010.06.30)

建設産業・経営

●「東京商工リサーチがまとめた2010年4月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比13.6%減の278件となり、10カ月連続して前年同月を下回った。3月は5カ月ぶりに340件を上回り、4月の動向が注目されたが、依然として『景気対応緊急保証制度』(従来の緊急保証制度の内容を拡充して名称変更)や『中小企業等金融円滑化法』などの政策効果が続いている。負債総額は43.7%減の403億4500万円、平均負債額も34.6%減の1億4500万円だった。都道府県別で28都道府県1地区別では9地区のうち6地区がそれぞれ前年同月を下回った。」(『建設通信新聞』2010.06.16)
●「ゼネコン(総合建設会社)大手4社の不動産開発事業の業績が底入れしたようだ。金融危機後の不動産市況悪化で縮小傾向だったが、同部門の粗利に当たる不動産開発事業等総利益は今期、4社合計で前期比71%増の715億円と増加に転じる見通し。ただ危機以前の20008年3月期と比べると42%の水準で、本格回復にはまだ時間がかかりそうだ。ゼネコンの開発事業は事業主として自ら土地を先行取得し、不動産会社に案件を持ち込んで建物の建設などを請け負う。公共事業削減などで本業の苦境が鮮明になってからは業績の下支え役として期待されている。」(『日本経済新聞』2010.06.16)
●「ゼネコン(総合建設会社)準大手・中堅12社の有利子負債が低水準を保っている。2011年3月期末の残高は前期末比3%減の7060億円となり、12社で継続比較が可能な04年3月期末からほぼ半減。一方、大手4社は前期末で減少に転じたが、今期末も04年3月期末比2%減と高止まりし、削減のペースの違いが際立っている。公共工事削減で国内市場が縮小し、大手は海外進出を加速。運転資金負担で負債が増えた。半面、規模が小さくリスクを取れる範囲も限られる準大手・中堅は、減収に備えて比較的早い時期から財務リストラに着手。戦略の違いが有利子負債の推移に現れたようだ。」(『日本経済新聞』2010.06.25)

その他

●「中国の建設会社が海外事業の受注規模を急伸させていることが建設経済研究所の調査で明らかになった。中国は00年から国策として国内企業の海外進出を支援。各企業は建築・土木分野以外にエネルギーやプラント設備の分野でも受注を伸ばし、08年度には海外受注高が1000億ドルを超えた。政府の金融、制度両面の支援があり、国際競争で優位に立つ形になっている。中国では国内建設市場も急拡大しているが、制度面の整備が遅れている面もあり、28日には日本の建設業の取り組みを参考にしようと日中建設専門家会合も行われた。」(『建設工業新聞』2010.06.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境