情勢の特徴 - 2010年7月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス1と、3月の前回調査(マイナス14)から15ポイント改善した。5期連続の改善で、リーマン・ショック前の2008年6月以来、2年ぶりにプラスになった。10年度の大企業の設備投資計画は製造業、非製造業ともに3年ぶりのプラスに転じた。ただ3カ月先の景況感の見通しは改善幅が今回の回復局面で最も小さく、先行きに不透明感も残っている。」(『日本経済新聞』2010.07.01)
●「国土交通省が30日発表した5月の新設住宅着工戸数は前年同月比4.6%減の5万9911戸となった。分譲マンションが大幅に減ったことが背景だが、持ち家は増加基調を保っており、専門家の間では持ち直しの動きが続いているとの見方がなお多い。5月の住宅着工は、17カ月ぶりに増加した4月から再び減少に転じた。分譲マンションが4202戸と前年同月比31.5%減。首都圏をはじめ全国的に大規模物件の着工が大きく減った。季節調整済み着工戸数(年率換算)は73万7000戸と2カ月連続で減少。国交省は足元の動向について前月の『一進一退』から『弱含み』に判断を下方修正した。ただ5月の持ち家の着工戸数は前年同月比4.8%増の2万4243戸と7カ月連続で増加。分譲住宅の中でも戸建ては30.0%増の8953戸と5カ月連続で増えた。住宅ローン『フラット35』の金利優遇策や、景気の回復基調が住宅着工を下支えしている。分譲マンションについても『大型物件の増減で戸数の変動が大きい。実際の販売は好調で、着工戸数の増加傾向は変わらない』(みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリスト)との見方が多い。」(『日本経済新聞』2010.07.01)
●「日本貿易保険(NEXI)は1日、日系企業のインフラ輸出の強化に向けて新たな支援に乗りだした。支援策は、▽海外投資保険での政策変更リスクの引き受け相談▽海外の販売拠点を通じた取引に伴うリスクへのてん補▽輸出保証保険のてん補範囲の拡大−などが柱。資源・エネルギーやインフラ(原子力・鉄道など)、環境(新エネルギー・CDMなど)といった分野を対象に事業リスクの軽減を図り、日系企業の海外展開を後押しする。政府の新成長戦略では、パッケージ型インフラの海外展開を実現するため、適切なファイナンス機能の確保や事業展開の基盤整備支援を含めた関係機関の取り組み強化の必要性が強調されている。NEXIは、投資先の政府による一般的かつ合法的な政策変更により、日系企業が投資した地元企業が破たんするリスクに対する引き受け相談を開始した。従来は海外投資保険のてん補対象を、戦争や自然災害、投資先政府による事業の収用などとしていたが、政策変更リスクを追加することで投資リスクを抑え、日系企業の海外展開を促す。政策変更の具体例には、税制の変更や公定ロイヤルティー料率の引き上げ、土地収用制度・運用の変更、事業に必要なインフラ(水・電気など)供給価格の値上げなどを挙げている。」(『建設工業新聞』2010.07.02)
●「日本銀行は2日、『6月の全国企業短期経済観測調査(短観)業種別計数』を公表した。建設市場に影響がある企業の2010年度設備投資計画(ソフトウエア投資は除く)は、全産業で前回調査(3月)と比較して2ポイント改善した。特に、民間工事受注の3分の1近くを占める不動産の今年度設備投資計画は3月調査のマイナス21.1%から今回調査で11.1%と32.2ポイントの大幅改善となった。民間工事市場の先行指標にも若干明るさが出てきた格好。ただ建設業の今年度売上高経常利益率は3月調査から下落しており、足下の経営環境は厳しさが増している。10年度の設備投資計画は、全産業で3月調査の0.5%から今回調査で2.5%と2ポイント改善した。製造業は前回調査と同じ2.8%だったが、非製造業がマイナス0.4%から2.3%と2.7ポイント改善したことが寄与した。このうち、建設業の民間工事受注の割合が最大の不動産は、前回調査のマイナス21.1%から11.1%と大幅な改善となった。また、金融機関の貸出態度(『緩い』から『厳しい』を引いた値)も、建設業は全規模で3月調査のマイナス11からマイナス9と改善。このうち大企業は3月調査のマイナス8からプラス3となった。中小企業は3月調査のマイナス14から今回調査でマイナス13と小幅な改善にとどまった。」(『建設通信新聞』2010.07.05)
●「海外の水ビジネス市場への日本企業の参入を目指し、国土交通、厚生労働、経済産業など関係6省庁は6日、関係18団体と9自治体、さらに民間企業137社の参加を得て、『海外水インフラPPP協議会』の初会合を東京都内で開いた。…初会合には前原誠司国交相も出席してあいさつ。世界の水インフラ市場が2025年には約80兆円規模に成長するとの見通しを示した上で、国内の自治体や企業の運営ノウハウを海外展開することで、相手国も環境やコストの面で恩恵を享受し、ウイン・ウインの関係を構築したいとの考えを表明した。協議会の座長には、児島順彦三菱商事会長。児島氏は『日本の各社の技術やノウハウで案件の受注に努めていく』と述べ、既に欧州を中心に市場に対応できている企業もあり、新興国も積極的な取り組みを開始する中、国内の民間企業がさまざまな立場で情報交換を行い、日本企業が世界の水インフラ市場で活躍できるよう期待を込めた。」(『建設工業新聞』2010.07.07)
●「林業の再生・復活、そして地域の活性化に向けた取り組みが活発化している。活用されていない豊富な国内の森林資源をあらゆる産業を巻き込んで経済的価値を高め、地域の雇用創出、地域経済の活性化につなげようとする活動だ。7月6日、日本プロジェクト産業協議会(JAPIC、三村明夫会長)と九州経済連合会(松尾新吾会長)、大分県の主催、林野庁、九州経済産業局、九州地方整備局の後援で、『次世代林業九州サミット会議』が大分県日田市の日田市民文化会館『パトリア日田』で開かれた。会議には九州地区の地方自治体や地元企業、大手企業などから300人強が参加、関心の高さをうかがわせた。官民、そして供給側から需要側までが一堂に会し、林業の復活を考える会議となった。」(『建設通信新聞』2010.07.12)
●静岡県労働研究所、静岡県評、静岡自治労連が、県内の最低生計費試算調査結果(中間報告)をまとめた。それによると、25歳の男性労働者の最低生計費は月額23万5757円、時給換算で1356円。…静岡県の最低賃金は現在、時給713円。今回の結果は、4716人から得た回答のうち20代単身世帯201ケースを集計したもの。東北地方(北上市、23万1421円)、首都圏(さいたま市、23万3801円)の最低生計費と大きな差がないことが明らかになった。最低賃金引き上げによる経済波及効果では、時給1356円に引き上げた場合の試算として、生産誘発額は5725億円、雇用誘発人数は3万5767人になる。全労連は、時給1000円・全国一律の最低賃金制度を要求しているが、その場合の試算では、生産誘発額は1056億円、雇用誘発人数は6601人になる。静岡県内の失業者数は、1〜3月期で8万6000人。(『しんぶん赤旗』2010.07.13より抜粋。)
●「日本の鉄道車両メーカーが海外の都市鉄道インフラ受注に向け、海外企業と相次ぎ提携する。IHIが韓国ゼネコン大手や中国最大級の車両メーカーと提携するほか、川崎重工業は仏アルストムと組み、台湾の都市交通案件に共同で応札する。鉄道は二酸化炭素(CO2)排出が比較的少ない環境型の大量輸送手段として、欧米、新興国ともに建設計画が増えている。発注側は運行システム全体の提案力を重視する傾向が強く、日本のメーカーは海外勢との連携で受注体制を強化する。」(『日本経済新聞』2010.07.14)
●「国際通貨基金(IMF)は14日、日本の経済・財政状況に対する年次審査報告を公表した。先進国で最悪の財政状況を踏まえ、2011年度からの段階的な消費税率引き上げなどの具体策を提言。消費税率が『15%になれば国内総生産(GDP)比で4〜5%の歳入増になる』と例示した。参院選の民主党敗北で国内では消費税論議が後退しているが、海外では増税を軸とする財政再建の圧力は衰えていないことを表している。」(『日本経済新聞』2010.07.15)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は6月30日、元請けが倒産しても下請けに代金が支払われる仕組みを実務的に検討する『新たな下請代金債権保全策検討委員会』(大森文彦東洋大法学部教授・弁護士)の初会合を開いた。信託方式を同省直轄工事で試行する方向で検討を開始。支払ボンドも、直轄工事での段階的な導入に向け、次回会合から具体的な検討を進める。…諸外国の事例を参考に各種方策を比較した結果、直轄工事での信託方式の試行を目標に検討し、支払ボンドも直轄工事で段階的に導入する方向でモデル工事を想定して具体的検討を進めることにした。…信託方式は、元請けが発注者から支払われる請負代金のうち、下請けに支払う資金をあらかじめ分離し、保全する仕組み。分離・保全する方法としては、信託銀行で信託する方法(信託銀行活用型)と元請けが下請けに支払う資金を分別管理する方法(自己信託活用型)の2種類が存在する。国交省が提示した制度設計案によると、信託する対象は、元請けの請負代金額から前払金相当額(請負代金の4割)を除いた額とし、下請けへの外注比率を参考に、残る6割の半分が下請けに支払われるべき額とした。例えば、請負代金が10億円の場合、3億円分の受益権(元請けが倒産した際に下請けに支払われる額)として設定する。分別管理の方法は、確実に保全するため、銀行の別口口座での管理が必要とした。さらに分別管理を確実に実行するため、元請けが下請けに分別管理することを事前に説明するよう受発注者間の請負契約で義務付けることも検討する。受益権は、工事の出来高に相当する額となる。通常は、『月次』で元請けが出来高を確定する。現金で月次払いする場合、支払われた部分が受益権からはずれる。決済前の手形や完成払いなどの場合は、元請けが確定した出来高分が受益権として保全され、元請けが倒産した際の支払いが確保される。…出来高査定の専門機関の創設を提案した。重層構造の建設業界の中で、何次の下請けまでを資金の保全対象とするかという課題については、当面は『1次下請けまで』と提案した。最終的には2次下請け以下も対象にするのが望ましいとした。」(『建設通信新聞』2010.07.01)
●「全国知事会は8日、『道州制特別委員会』(委員長・石井正弘岡山県知事)を開き、これまでの検討状況を整理した上で、国や経済界の動向を踏まえた2010年度の取り組み方針を決めた。政府が閣議決定した地域主権戦略大綱にもとづき道州制が検討される際には、必要な検討や意見をまとめ、国と地方の協議の場を通じて地方意見を反映させる。総務省と経団連による道州制タスクフォースの動向などもにらみながら『道州制に関する基本的考え方』や09年度までの検討結果をベースに『打ち返し』や『申し入れ』を行い、意見を主張していく考えだ。同日の委員会では、▽住民自治のあり方▽道州の組織・機構のあり方▽税財政制度−−についての検討状況を整理した。道州制下では、基礎白治体が中心になることで政策形成過程で住民参加が促進されるとし、道州と基礎自治体の協議・調整システムとして『道州内協議会』(仮称)の設置などを明示している。道州には議会を置き、長と議員は公選する。道州の組織・機構の編成は道州の自主組織権を尊重し、専門性と総合性が発揮でき効率的なものになるよう配慮する。長の組織、議会の組織などは、道州条例に委ねるとしている。組織・機能面では、国の人材移管の検討を明示している。人口・面積の拡大に伴い、現在、国が担う政策などの企画・立案を含む権限を道州や基礎自治体に移譲し、都道府県の権限を基礎自治体に移譲することが必要としている。道州の役割に応じて区域内に一定の出先機関を設置する。」(『建設通信新聞』2010.07.09)
●「2011年度予算概算要求の策定に向けた検討が各省で本格化する。政府の中期財政フレームで一般会計の歳出を10年度予算と同額にする方針を示している中で、成長戦略などによる新たな財政出動要因の財源をいかに生み出すか、という問題がある。国土交通省の公共事業については、修繕(特定事業)分の直轄事業負担金廃止という決定事項によって新規の公共事業がさらに減少する可能性も出てくる。…国交省の公共事業費については、前原誠司国交相が10年度と同水準の確保をすでに言明している。一方、11年度予算では、直轄事業の地方負担金のうち修繕(特定事業)分を廃止することも決まっている。これが新設の公共事業費に大きな影響を与える可能性がある。10年度予算の直轄工事国費(事務費を除く)は1兆6895億円で、これに対する地方の直轄工事負担金は5580億円だ。これを足した2兆2475億円が実際の発注額に近い工事関係の事業費というわけだ。…地方の直轄工事負担金5580億円のうち、11年度に廃止する特定事業の維持管理分負担金は、約579億円だ。維持管理事業の場合、負担金を廃止しても維持管理のための総額を減らすことは困難だ。その分を新設工事の国費1兆4167億円から穴埋めするというのが、自然な流れ。新設工事の国費が579億円分減れば、それに見合う新設分の地方負担金がおおむね195億円減る。公共事業の国費総額を減らさなくても、決定事項を当てはめて単純計算すれば、国費579億円と地方負担金195億円を足した774億円分の新設直轄工事が減ることになる。」(『建設通信新聞』2010.07.12)
●「国土交通省の『今後の治水対策のあり方に関する有識者会議』(座長・中川博次京大名誉教授)は第10回会合で中間とりまとめ(案)を策定した。同案のパブリックコメントを経て、8月下旬に有識者会議で最終的な検証手順を固める。今秋には具体的な検証方法を示した実施要領細目をまとめ、都道府県や地方整備局に各事業の検証を始めるよう要請・指示する。…10年末までに検証が完了して国交相が対応方針を固めた事業については11年度予算案に反映する可能性がある。都道府県が実施して国が補助する補助ダムや国の直轄ダム事業など全136事業145施設のうち、本体工事の契約を締結していない84事業85施設のダム事業は、現在、事業を用地買収、生活再建工事、転流工工事、本体工事の4段階に分け、次の段階に進まないよう要請・指示している。中間とりまとめ案では、これら84事業を再検証する手順や考え方を示している。地方整備局や水資源機構、都道府県に対し、国交相が検証を要請・支持する。検証主体は、対象のダム事業を点検した上で、ダム案とダム以外による治水対策案を2−5案作成して、安全度やコストなど8項目の評価軸で総合評価する。安全度は、河川整備計画の目標と同程度を確保し、河川整備計画が存在しない場合は、検証主体が安全度を定める。安全度を確保した上で、『コスト』を最重視して評価する。検証の際には、関係自治体による検討の場を設置し、学識経験者や関係住民らからも意見を聴く。総合評価で対応方針案を検証主体が決定し、国交省に報告。報告内容について有識者会議の意見を求め、国交相が検討して概算要求時期までに対応方針を決定する。不十分などと判断すれば、検証主体に再度、検討するよう指示・要請する。ダム事業の中止との判断が下れば、河川整備計画の変更手続きに入る。検証は、84事業それぞれで実施し、検証の終了期限は設けない。」(『建設通信新聞』2010.07.15)

労働・福祉

●最低賃金を引き上げることは、日本経済を成長させるうえで重要とする意見が相次いでいる。…三井住友系の日本総研は今年5月、政府の新成長戦略発表に先立ち、実効性ある成長戦略に必要な目標設定や政策(「輸出牽引型内需拡大に向けた新しい成長戦略」)を提示した。このなかで、政府が掲げる「名目成長率3%実現」の条件の一つに、「家計所得底上げ」を強調。2000年代半ばから08年の世界経済危機発生まで、「労働生産性に比べ賃金が十分支払われなかった」として、「企業収益の増加が家計所得の増加へとつながるには、労働生産性の上昇に見合って貸金が順調に増えていくことが必要。それは企業の持続的成長にとっても重要」と主張している。…富士通総研は昨年12月、「最低賃金引上げは最大の成長戦略だ」(根津利三郎取締役)と題する見解を発表した。このなかで企業の内部留保は増えたが、「賃金の長期下落は需要の減少を通じてデフレを引き起こすことになった」と指摘。貸金を強制的に上げればアジア諸国に工場移転され雇用は失われる″との主張をあげ、雇用の「8割を占める第3次産業の場合、サービスや流通業など消費者に直結する産業が大半だから、海外への移転はありえない」と脱明している。2割を占める製造業の一部については、「わが国製造業は本当に中国と低賃金で勝負しているのか」と問題提起。「そのような製造業はとっくに海外に移転してしまったのではないか。スキルも経験もなく単に低賃金だけに頼って競争しているような企業が日本にそれほど多くあるとは考えられない」とのべている。また、低賃金で働く労働者のうち、実は平均所得以上の家庭の主婦や学生が半分″との主張については、「デフレスパイラルを断ち切ることが目的であるから、このような生活に困っていない人たちの賃金が多少上がったからといって何も悪いことはない」と断じている。…公益法人・東京財団は今年3月、「新時代の日本的雇用政策」と題した政策提言をまとめた。提言は、「経済的な効率性と労働者の保護や分配が対立的に語られる」ことが多いが、「最低賃金の引き上げを実施することで貧困対策と生産性向上を同時に実現できる」可能性に言及している。最低賃金の上昇は低賃金労働者の失業をもたらす≠ニいう見解について、労働経済学の最近の研究をあげて、「消滅した雇用は新たに創出された雇用と相殺され、トータルでは全体にほとんど影響を及ぼさない」と強調。中期的な最賃引き上げの日程を事前に公表することで、企業は生産性向上の検討を促されるとのべている。さらに、日本の最賃が先進国で最も低い水準にあることに、「わが国は低賃金労働に依存する経済から転換し、生産性をより高めていくべきである。雇用の『質』において世界一を目指すことが今後の日本の国家目標の一つとして考えるべきではないか」と結んでいる。…全労連と協力・共同関係にある労働総研は昨年11月、「最賃アップが日本経済の健全な発展をもたらす」として、最低賃金を時間給1000円に引き上げることを提唱している(「経済危機打開のための緊急提言」)。試算によると、その必要資金は5.9兆円で、10年間に増えた企業の内部留保(218.7兆円)の2.7%にすぎないと指摘。経済効果は国内需要が5.8兆円拡大し、国内生産が13.4兆円、付加価値が7.3兆円誘発され、それに伴い、国税および地方税が計1.3兆円の増収となることを明らかにした。(『しんぶん赤旗』2010.07.15より抜粋。)
●東京商工リサーチの調べによると、2010年上半期(1月〜6月)における上場企業の「希望・早期退職者」の募集人数は1万人を超え、実施を公表した上場企業は、66社に達していた。…募集人員が最も多かったのは、プロミスで900人。そのほか、ヤマハ発動機800人、近鉄百貨店700人、西松建設600人など。業種別では、小売業で11社、機械10社、建設7社、電気機器6社。(『しんぶん赤旗』2010.07.15より抜粋。)

建設産業・経営

●「新日本製鉄は、薄板軽量形鋼造事業、いわゆるスチールハウス事業を強化する。1日、メトーカケフ(岐阜県可児市)、日鉄商事、大日本印刷、興伸製作所(群馬県藤岡市)、スーパーフレーム北海道(北海道江別市)、環境サポート(山形市)、阿比野建設(兵庫県姫路市)とともに新会社NSハイパーツを設立。…新会社は3年目で約26億円、5年目で約50億円の売上高を目指す。…部材や金物の生産、設計、需要開拓などを手がけてきた会社で、それぞれが営業拠点となるほか、大日本印刷が参画することで内装を中心とした意匠性やデザイン性を高めた商品も開発する。『新日鉄が開発した薄板軽量形鋼造技術を使って、住宅用途向け薄板軽量形鋼・金物などの開発・販売、技術を使った建築物の構造設計・作図請負、老人施設、社宅、寮、店舗といった商品開発などを住宅メーカーを始め、全国の建設事業者、設計事業者に対して各地のパートナーとともに提供していく』(中川智章新日鉄薄板営業部長)。…『構造設計を請け負うことができるほか、標準仕様をもとに地場ゼネコンとタイアップして提案していく。また、大規模な施設園芸ハウスや太陽光発電などの大規模架台など非建築市場にも提案していく』(橋本社長)。また、『中国や台湾を中心に海外の建築市場も視野に入れており、国々に合った建築物の試作設計や設備の輸出、技術者の派遣、金物のOEM(相手先ブランド供給)も検討する』(同)。これまで同様、鋼材の開発や個々の販売は新日鉄が担い現在約1万ドルの部材売り上げを3年の間に約1万5000トンまで増やす。」(『建設通信新聞』2010.07.02)
●「2009年中に決算期を迎えた中小企業の財務状況を調査・集計した『TKC経営指標』(2010年版)の中で建設業の09年の財政状態は、前年と比べて悪化している状況が浮き彫りになった。経営安全率(損益分岐点売上高と実績売上高との差異が、実績売上高に占める割合)が前年に比べて2.6ポイント低下し、マイナス0.4%になるとともに、債務償還年数(有利子負債を最大支払可能額で返済する場合の年数)が前年の12.2年から23年へと大幅に長期化しており厳しい経営実態も浮かび上がらせた。…経営指標は、TKC全国会に加盟する会計事務所が関与している企業で建設業は4万1440社が収録されている。…09年の建設業の財政状態(1企業当たりの平均額・数値)は、総資産が前年比3.2%減の1億2229万8000円。流動資産のうち売上債権が11.7%減の2251万2000円と、特に減少が目立っている。買入債務も12.8%減の1606万7000円となっており、取引量の縮小がうかがえる。また、長期借入金が9.5%増の3268万5000円となった結果、純資産は6.7%減の3369万2000円となり、自己資本率は1.1ポイント減の27.5%に低下している。収益面では、売上高が6.7%減の1億6903万2000円になる一方、変動費が7.3%減となり、売上高を上回る減少となった。このため、限界利益率は0.4ポイント上昇し37.8%となったが、売上高の減少をカバーできず、限界利益は5.8%減の6381万1000円となった。固定費は3.3%減の640万4000円となっている。人件費、製造固定費、販売管理費などを中心に固定費を抑制したが、限界利益の減少をカバーできず、その結果、経常利益率は0.9ポイント低下し、0.1%となった。経常利益は171万5000円減少し、22万8000円の赤字となった。」(『建設通信新聞』2010.07.02)
●「住宅着工が80万戸を割った21年度は、住宅各社の決算、大手ハウスメーカー8社は全社減収という結果になったが、市場全体の落ち込みからすれば市場は底打ち感も見られており、前期下期からは、大手メーカーは全体的に受注が回復してきている。また利益では明暗が分かれた部分もあり、積水ハウスは棚卸資産の評価損もあって、赤字に転落してはいるが、増益組は全社ニ桁増益である。旭化成ホームズも大幅増益を達成し、営業利益ベースで6.5%と大手の中で最も高い収益率となった。つまり大手8社は、減収増益決算というところが多かった。注目点は、減収の決算の中で、増益につなげたということである。つまりコスト削減効果で利益を残したということだ。人件費、広告宣伝費といった販管費は各社とも削減努力をしている。…大手ハウスメーカー以上に、収益力を急回復させたのが、分譲系パワービルダーである。不動産を扱うところは、地価の上下で大きく利益率が左右されるものであるが、一年前の決算では、在庫処分のための大量の損切り販売による粗利率の急低下で、大幅な赤字決算に陥ったところも出た。…工務店は、少数精鋭で堅実な経営を行うところもあれば、財務体質が脆弱で、利益もほとんど出ていないところと、経営体質は様々である。今後、住宅市場が迎えるターニングポイントは、消費税が10%にアップした場合の駆け込み需要の反動の落ち込みである。」(『日本住宅新聞』2010.07.05)
●「企業会計基準委員会は6日、不動産開発型の特別目的会社(SPC)を原則連結させる方向で議論を進めることを決めた。年内にも最終決定し、2012年4月から適用する見通しだ。開発型SPCは、不動産会社などの間で資産・負債を膨らませずに大型ビルやマンションを開発する手法として使われている。…現在、不動産の証券化を促す資産流動化法に沿って設立したSPCは、連結対象外となっている。不動産会社などはこのルールを使い、自らの土地をSPCに譲渡し開発するだけでなく最初からSPCを使って外部の土地を取得・開発する、いわゆる開発型SPCの利用を拡大。大手不動産4社の連結外SPCの資産規模は、10年3月期で合計約2兆7300億円に達している。開発型SPCの増加に伴い、投資家などの間から、財務諸表が企業の経営実態を適切に表していないのではないかとの声が出ていた。会計基準委では今回、企業の資産圧縮を促す資産流動化法の趣旨に基づき、自らの資産をSPCに譲渡した案件のみ従来通り連結対象外とし、それ以外は連結することで議論を進める方針だ。」(『日本経済新聞』2010.07.07)
●「家庭で使う電力を安定的に自給自足できる住宅が2011年以降、実用化される。パナソニックは太陽光発電などでつくった電力をためておく大容量の蓄電システムを投入。大和ハウス工業、シャープなどが出資するエリーパワー(東京・品川)は蓄電池の新工場を建設する。日本企業が得意とする蓄電池技術を活用する形で、家庭の二酸化炭素(CO2)排出削減が進みそうだ。」(『日本経済新聞』2010.07.08)
●「東京商工リサーチが8日発表した10年上半期(1〜6月)の建設業の倒産(負債1000万円以上)は1748件(前年同期比16.7%減)で、上半期としては94年以来の低水準となった。負債総額も2788億25百万円(50.5%減)と半減し、上半期としては91年以来、19年ぶりに3000億円を下回った。上半期の倒産件数の減少は2年連続。負債が10億円を超える大型倒産は前年同期比54.7%減の33件にとどまり、負債総額も押し下げた。同社は、倒産件数と負債総額が大幅に減少したことについて、中小企業向けの金融支援策である『景気対応緊急保証制度』や、金融機関に借入金の返済猶予を促す中小企業金融円滑化法の施行が倒産を抑制していると指摘する一方、こうした倒産の減少は景気の自律的回復に伴うものではないため、『決して楽観できる状況にない』と分析。『本年度の公共事業関係予算が前年度比18.3%減の大幅減となる中で、その影響がいつごろ表れるのか。先行きの不透明感は増している』と懸念を示している。」(『建設工業新聞』2010.07.09)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東京都は高齢者向けの賃貸住宅について、国が定める基準よりも狭い部屋でも認める制度を導入する。東京は家賃が高いことを考慮し、高齢者が借りやすい住宅の普及を促す。…国土交通省は4月に自治体が自主的に安全などの基準を設ければ、高齢者向け賃貸住宅の面積の下限を独自に設定できるようにした。東京都はその最初の事例となる。今回は改修に限って基準を緩和する。…面積の下限を引き下げるのは高齢者向け賃貸住宅の中でも手すりや段差を解消した床を整備し、緊急事態に電話連絡できるしくみを持つ物件(高齢者向け優良賃貸住宅)が対象。現在、東京都の高齢者向け優良賃貸住宅のうち、25平方メートル程度の広さの部屋の家賃は7万〜9万円程度が一般的だ。今回の緩和で、面積は狭くなるものの、2割程度家賃が安くなると見込まれている。」(『日本経済新聞』2010.07.06)
●「国土交通省は、策定から5年目を迎える『住生活基本計画』(10カ年)の見直し作業に着手した。人口や社会・経済構造の変化といった直近の動向と、将来観測を踏まえて個別施策の内容、目標などを再検討する。自治体との意見交換やパブリック・コメントなどを行いながら見直し案をまとめ、本年度末の閣議決定を目指す。見直案は、社会資本整備審議会(社政審、国交相の諮問機関)の住宅宅地分科会を中心に検討を進める。5日に初会合を開き、議論をスタートさせた。06年9月に閣議決定された住生活基本計画(全国計画)では、▽良質な住宅ストックの形成と将来世代への承継▽良好な居住環境の形成▽多様な居住二−ズを適切に実現する市場環境の整備▽居住安定化の確保−の主要テーマに基づき、各政策を盛り込んでいる。今回の見直しでは、策定時と異なる環境変化・ニーズヘの対応が求められる。…見直しではこのほか、高齢者の保有資産の有効活用のほか、環境負荷低減など質の高い住宅ニーズ(省エネ、耐震、バリアフリーなど)への対応強化なども議論していく方針だ。」(『建設工業新聞』2010.07.06)
●「地球環境問題に対する関心の高まり、システム導入を後押しする補助制度の充実などにより、市場規模が急拡大している太陽光発電システム。09年度に約2900億円だった市場規模は、右肩上がりでの成長が見込まれ、15年度には1兆円を超えるとの予測もある。システムを供給する企業の取り組みに加え、販売面でも新規参入が相次ぐなど、新たなビジネスチャンスを模索する動きは活発化。その一方で、設置をめぐるトラブルも急増している。太陽光発電システム市場は、住宅向けがけん引する形で、規模が急拡大している。民間調査会社、矢野経済研究所が昨年11月に発表した調査結果によると、同システムの国内市場規模は09年度に2829億円。政府が導入補助金支給制度を再開し、余剰電力買い取り制度での買い取り価格を2倍に引き上げたことなどを受け、15年度までの予測で市場規模は、09年度に比べて3倍程度大きくなるとみている。…設置工事でトラブル、施工品質確保が課題―『市場規模の拡大に施工技術が追い付いていないのではないか』。国土交通省住宅局の住本靖住宅瑕疵担保対策室長は、太陽光発電システムの普及に伴う問題点をこう指摘し、施工不良によるトラブルの増加を危慎(きぐ)する。システムの製造者と販売者、そして施工者が分離している現状を踏まえ、住本室長は『製品と屋根構造、両方の知識と技術が設置工事には必要だ』と強調。システム設置は本来、屋根工事の専門家が担うべき分野であり『専門工事業にとって大きなチャンスであるはずだ』とし、業界各社の動きを注視している。国交省は、システム設置よる雨もりなどのトラブル発生に対処するため、リフォーム瑕疵保険の設計・施工基準に『太陽光発電パネル』を新設。」(『建設工業新聞』2010.07.12)
●「文部科学省は、『学校施設の非構造部材の耐震点検等に関する委託事業』を実施する事業者の公募を始めた。学校施設の設置者である自治体や国立大学法人、学校法人が事業実施主体の中心となるものの、これらの学校設置者と連携することを条件に民間企業やNPO(非営利組織)法人も応募することができる。」(『建設通信新聞』2010.07.13)

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