情勢の特徴 - 2010年9月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●総務省は2011年度予算の概算要求で地方交付税として16兆8605億円(10年度比0.2%減)を要求した。…政府の財政運営戦略と中期財政フレームは、11年度から3年間、一般歳出と地方交付税合わせて71兆円以下に抑える大枠を打ち出した。「財政健全化については国および地方公共団体が相協力しつつ行う」として、財政健全化目標に地方財政を組み入れている。…これに関して、麻生渡全国知事会会長(福岡県知事)は、地方の社会保障関係費が11年度には7000億円増となり、「一般財源を本年度並みにされれば実質的には大幅な削減になる」として、国の責任で自然増分を確保するよう求めている。さらに、総務省は地方財政の課題に、地方財政健全化法を踏まえた「地方行革」をいっそう進めることを位置づけている。「地域主権改革」の目玉として進めようとする地方補助金の一括交付金化や出先機関改革(原則廃止)について、「ムダづかい根絶・総予算の組み替え」に位置付けて推進しようとしていることも重大だ。(『しんぶん赤旗』2010.09.18より抜粋。)
●日本貿易振興機構(ジェトロ)が17日に発表した円高影響調査によると、円高によって「取引先からの価格引き下げ圧力が強まった」と回答した中小企業が63%に達した。親企業が下請けに犠牲を強いている実態を示している。このところの急激な円高で自社製品への「需要」が減ったとする企業は中小企業で60.6%に達した。コスト上昇を通じて海外部門の業績に悪影響を及ぼすとの回答も多く見られた。円高への対応策を企業規模別にみると、大企業は、「海外の稼働率を引き上げる」(31.3%)、「海外事業の規模を拡大する」(23.2%)、「為替予約枠もしくは期間を拡大する」(18.2%)などの対応策をとっている。大企業の回答率は、中小企業を大きく上回る結果となっている。また、国内事業の規模を縮小するとの回答は大企業で15.2%、中小企業で14.9%だった。円高の影響が特にないとする企業のもっとも多い理由は、「海外へ生産機能等をシフトしているため」(34%)だった。円高をきっかけにした企業の海外進出が国内産業の空洞化を招いていることがうかがえる。(『しんぶん赤旗』2010.09.21より抜粋。)
●「国土交通省が21日発表した10年7月1日時点の都道府県地価(基準地価)は、2年連続で全都道府県で下落する結果となった。大都市圏で下落率がマイナス3.2%(前年はマイナス6.1%)となり、下げ止まりの兆しが出ているのに対し、地方圏はマイナス3.9%(同マイナス3.8%)と前年並みの下落率を記録。景気低迷を受けた不動産市況の停滞は続いており、全国的に見れば地価の回復は先が見えない状況だ。l年前に比べた地価変動率は全国平均で住宅地がマイナス3.4%(同マイナス4.0%)、商業地がマイナス4.6%(同マイナス5.9%)となった。3大都市圏は下落率が前年の半分に縮小し、住宅地がマイナス2.9%(同マイナス5.6%)、商業地がマイナス4.2%(同マイナス8.2%)と持ち直した。下落率が大幅に縮小した理由に国交省は、住宅地では都市部の人気が高い地域でマンションや一戸建住宅の値ごろ感が高まり、住宅ローン減税や住宅版エコポイント制度といった関連施策の効果もあって需要が回復したこと、商業地では、金融環境の改善などを背景に大都市の一部地域で収益用不動産の取得の動きが見られたことを挙げている。首都圏を中心に住宅の新規着工や商業地の再開発などで持ち直しの動きが顕在化。…一方、地方圏は住宅地がマイナス3.6%(同マイナス3.4%)、商業地はマイナス4.8%(同マイナス4.9%)と)1年前と変わらず、回復の兆しが見えない状況だ。」(『建設工業新聞』2010.09.22)
●「大畠章宏経済産業相は18日の就任会見で補正予算を含めた経済対策について触れ、即効性のある内需拡大策として公共事業が必要との考えを明らかにした。具体的には、『住宅の耐震診断とその耐震性を増すための改造工事を政府主導で推進したらどうか。また、学校の体育館や市町村の役場など大変大事な部分で耐震補強工事を進める』と述べた。また、経済産業省の所管ではないと断った上で、『県道や市町村道の橋梁については耐震補強工事が未着手なところがあると聞いている。国土交通省と連携をとって耐震性のチェックと補強工事を主導したい』とした。大畠経産相は、経済対策は待ったなしであり、中小企業と雇用対策、国内投資促進などが対策の柱とし、『日本国内の内需拡大を図っていかなければならない』と語り、中小企業政策を所管する立場から、公共事業となる公共施設や道路橋梁の耐震化工事の必要性を強調した。…『東アジア共同体構想の中では、EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)が非常に大事な考え方になる。国内の農業政策に配慮しながら前に進めるようにしたい』とし、国内経済の市場だけでは日本が将来生きていけないとして、経済、貿易、投資の自由化が不可欠との認識を示した。…大畠経産相は『政府として参加するため、20日の勉強会で意思を統一した。条件を整理して参加するよう体制を整える』とし、日本企業が海外展開しやすい環境を整備する考えを強調した。また、鹿野道彦農相も勉強会の中で『守りから攻撃型の農業に転換したい』との表明があったという。」(『建設通信新聞』2010.09.22)
●経済産業省が22日発表した4〜6月期の海外現地法人四半期調査によると、海外現地法人の設備投資額は前年同期比で8.2%増えた。1年半ぶりにプラスに転じ、47億526万ドルとなった。世界経済の先導役を果たしているアジア地域では前年同期比29.9%増と6期ぶりのプラスだった。電気機械、化学、輸送機械がけん引した。振るわない国内での設備投資動向とは対象的だ。一方、北米では同19.4%マイナス。8期連続で減少した。欧州でも同4.8%マイナス。7期連続減だった。欧米諸国での景気低迷を反映している。海外現地法人の従業員数は352万人に達している。前年同期比で8.1%増えた。2期連続のプラス。厳しい雇用情勢が続いている国内との違いが際立っている。アジア地域の従業員数は同10.1%増だった。インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシアの4カ国をまとめた「東南アジア諸国連合(ASEAN)4」が同11.4%増加。中国も同8.3%増加した。シンガポール、台湾、韓国の「新興工業国・地域(NIEs)3」は同2.5%増だった。業種別では、輸送機械が同14.1%増、電気機械が同10.8%増、はん用等機械が同10.2%増、化学が同2.7%増となっている。(『しんぶん赤旗』2010.09.24より抜粋。)
●「2009年4月から続く景気回復の勢いが鈍ってきた。世界経済の減速と国内の政策効果の息切れが重なり、輸出や生産の拡大にブレーキがかかる。円高・株安が企業や家計の心理を冷やし、設備投資と個人消費を下押しする恐れも出てきた。7〜9月期の日本経済は猛暑やエコカーなどの特需で高めの成長率を維持するが、年末にかけて足踏みの状態に陥る公算が大きい。」(『日本経済新聞』2010.09.27)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、官民連携による日本企業の海外プロジェクトを推進する一環として、11年度にインフラファンドに関する調査に着手する方針だ。有識者へのヒアリングや海外調査を行って、海外のインフラファンドの事例や国内のPPP・PFI事業での資金調達の事例などを把握。併せてリスク管理の状況なども調査し、アジア地域の旺盛なインフラ需要を獲得するため、海外プロジェクトへの民間の資金・ノウハウの活用を後押しする。11年度予算の概算要求に調査費用を計上しており、11年度末には成果をまとめる考えだ。」(『建設工業新聞』2010.09.16)
●「国土交通省は、今後増大が見込まれる社会資本の更新コストを抑えるため、道蹄やダムなど各施設の横断的な長寿化指針を策定する方針を決めた。早ければ2012年度から国や自治体が管理する社会資本に新指針を適用する考えだ。…国交省は、橋や下水道、港湾など各施設横断で耐久年数を試算。社会資本金体の更新費用を各年度に分散させる指針を策定する。従来は老朽化施設の更新といった『事後保全』を重視していたが、点検・修繕の頻度を上げて更新までの期間を長期化する『予防保全』に力点を移す。国交省は、60年度までの50年間で更新費が190兆円に達すると試算。」(『日本経済新聞』2010.09.17)
●「馬淵澄夫国土交通相は21日、就任に当たって日刊建設通信新聞社などと会見し、公共事業や建築基本法などについて考え方を語った。公共事業については、真に必要な社会資本整備、経済対策としての効果、地方への再配分という3つの観点から社会資本整備重点計画をまとめる考えを示した。建築基準法については『改正をしっかり進める』とした上で、『建築のあり方そのものの議論が必要』として建築基本法制定に向けたロードマップ策定の検討を始める考えを示した。…重点計画策定に当たって、『従来の公共事業は経済対策であり、地方への再配分という機能を果たし、すべてが必要という時代があった。しかし今は、真に必要な公共事業は絞られる』との認識を示した上で、『1点目は真に必要な社会資本はどういうものか。2点目として経済対策としての公共事業もまったく否定するものではない。3点目が地方への再配分だ』と検討の観点を3点挙げた。特に地方への再配分については『いくら地方に発注しても、地方の建設業者に十分まわらなければ再配分機能を果たさない。その機能が必要かどうかも含めて公共事業のあり方を整理する』とした。地方への再配分方法の一つとして考えられ、11年度に創設することが決まっている『一括交付金』については、『先駆けの制度として国交省が社会資本整備総合交付金をつくったものの、地方自治体が補助金といういままでの発想を転換できなかった部分がある』と課題を挙げた。…入札契約制度改革については『総合評価落札方式など、自民党政権下で一定程度の改革が進んだと言われてきたが、まだまだ足りない』との認識を示し、『これまで積み上げてきたものを全部ひっくり返すという意味ではなく、前向きな取り組みとして不断の改革が必要だ。取り組みを一層強化したい』とした。建築基準法の見直しに関する検討会で議論が進んでいる建築基準法については『迅速化や簡素化はある程度、(議論の)整理がついてきた。ようやく改正の骨子を提示できるようになっており、改正はしっかりとしたい』と改めて改正の意志を示した。さらに、建築基本法について『大変、大きな課題だ。都市計画もかかわってくる。まず、建築基本法制定に向けたロードマップの策定に向けた議論をスタートしたい』とし、副大臣、政務官を合わせた政務三役の議題に挙げる考えだ。東京外かく環状道路(関越〜東名)などの整備と関係している高速道路料金の見直しについては『(前大臣は)法案の国会での審議を待つという姿勢だったが、ねじれ国会で簡単に法案審議が進まない』という状況から、『国会、党の政策調査会、行政の3つの機関で解決する協議を進める』という方針に転換する考えを示した。」(『建設通信新聞』2010.09.22)
●「国土交通省は、更新期を迎えつつある公営住宅を対象にした環境配慮型改修モデルの検討に乗りだす。省エネルギー性能をより効果的に発揮できる省エネ改修工事のメニューや、ライフサイクルコスト(LCC)の縮減効果が高い長寿命化改修手法を確立。併せて、省エネ・長寿命化改修の効果を多角的に評価・分析できるシミュレーション手法も検討する。公営住宅の改修事業の費用対効果を明確化し、財政難で予算の制約が厳しい自治体のストック改修ニーズの顕在化を図る狙いだ。…公営住宅ストックを、地域性、建設年代、構造形式などを勘案した上で類型化し、モデル住宅を複数選定して最適な省エネ・長寿命化改修手法を検討する。」(『建設工業新聞』2010.09.24)
●「国土交通省は27日、大都市圏戦略を検討する国土審議会政策部会国土政策検討委員会大都市圏戦略検討グループ(グループ長・浅見泰司東大空間情報科学研究センター長)の初会合を開いた。戦略立案に当たって、機能集積や、域内拠点の連携、ストック更新などをテーマに検討する。11月に検討結果を国土政策検討委員会に報告し、12月に同委員会で最終報告案を審議、2011年1月には同委員会が最終報告をまとめる。検討グループの初会合で国交省は、大都市圏の国際競争力強化に向け、着目すべき機能として、都市機能・経済活動などの集積や人的交流、人材の集積と交流による創造活動の創出を挙げた。その上で、大都市圏戦略を策定するに当たって、業務機能や生活機能などの集積で市街地が行政区域を越えて広域に連携し、一体的な大圏域を形成している現状をテーマの一つとして提示した。また、大都市圏の域内に複数の拠点が存在し、これらが連携した多極型の構造も課題となる。人口、産業などの集積を背景にインフラストックが蓄積し、今、ストックの更新期を迎えていることも検討テーマとして提示した。」(『建設通信新聞』2010.09.28)
●「公有財産の有効活用方策として、定期借地権(定借)に対する注目度が高まっている。財務省は新成長戦略の中で、従来の売却優先方針を見直して定借を活用する方針を示し、8月27日には全国の地方公共団体に対して社会福祉施設の整備を目的とした定借の設定について通知した。さらに、都市農地活用支援センターと定期借地権推進協議会が開いた定借に関する講演会には、全国から多くの自治体担当者が参加するなど、定借を使った公有地活用に積極的に乗り出そうとする地方の姿勢が鮮明に表れた。」(『建設通信新聞』2010.09.28)
●「国土交通省は、2010年度版の直轄工事等契約関係資料(09年度実績)をまとめた。全契約件数は前年度比1%増だった一方で、当初契約金額は8%減の1兆9985億2331万円となるなど、1件当たりの工事金額が低下している。特に、地方整備局(港湾空港関係除く)での政府調達協定対象工事の件数が4割減、金額が5割減と、大規模工事の減少傾向が顕著に表れた。地方整備局、官房官庁営繕部、港湾空港関係など全工事の競争入札による契約のうち、総合評価落札方式を採用したのは1万3533件の1兆9423億0614万円で、件数ベースの全体に占める割合は92.9%、金額ベースでは98.9%でともに前年度とほぼ同程度となった。低入札価格調査対象件数は、競争入札件数の3.6%に当たる518件で、前年度から1.1ポイント減った。」(『建設通信新聞』2010.09.30)
●「国土交通省は30日、『建設業と地域の元気回復助成事業』で林建共働に取り組む事業者を集め、『林建共働促進会議』を東京都内で開く。各事業者の意識啓発を図りながら横の連携を強化し、事業効果を高めるのが目的。昨年度はブロックごとに事業者を集め、中間報告会を開いたが、本年度はテーマごとに促進会議を開催する予定で、林建共働促進会議はその第一弾となる。」(『建設工業新聞』2010.09.30)

労働・福祉

●今年6月に生活保護を受けた人が、前月比1万8822人増の190万7176人となったことが23日までに厚生労働省のまとめで分かった。受給者が190万人を超えたのは1955年以来。前年同月比では約20万8000人の大幅増加となっている。生活保護の受給者が急増したのは2008年12月から。リーマン・ショック後の金融危機と大企業による非正規労働者の切り捨てが横行するなか、受給者がほぼ毎月1万〜2万人の高水準で増える傾向が続いている。09年7月には170万人を超え、同年12月には180万人を突破し、それから半年の10年6月で190万人を超えた。(『しんぶん赤旗』2010.09.24より抜粋。)
●「日本建設業団体連合会(野村哲也会長)は22日、全会員企業に対し人材確保・育成へ向けた要請を行うことを決めた。要請は、優良技能者制度へ向けた『職長認定制度の導入』や重層下請構造改善を柱とする。賃金や建設業退職金共済(建退共)制度、重層下請構造をキーワードに8月下旬までに実施した会員企業向け調査結果を基に、要請項目を決めた。調査では重層橋造解消へ向けて取り組んでいる下請けへの優先発注を社内ルール化している企業が3割あることも浮き彫りになった。」(『建設通信新聞』2010.09.24)
●「東京電業協会(東電協、馬田榮会長)が行った調査で、『電気工事基幹技能者』の賃金が一般の電工よりも高く評価されていることが分かった。東電協では毎年、『電工および現場代理人の労務費実態調査』を実施しており、今回の調査(09年暦年調査)で初めて基幹技能者の有資格者データを抜粋した。それによると、基幹技能者の平均年齢は50歳で、賞与を含む単純平均の賃金日額が2万6867円。同年齢の一般電工の2万3250円と比べ約16%、額にして3617円高いことが判明した。実態調査は、09年1月1日から同12月31日までの1年間に協会会員会社に勤務した電工と現場代理人を対象に実施した。」(『建設工業新聞』2010.09.29)

建設産業・経営

●「建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)は14日、重層下請構造の簡素化等委員会(委員長・古阪秀三京大准教授)の初会合を開き、2次、3次下請けも含めた実態調査をすることを決めた。調査方法や調査対象について意見交換した。調査は、重層構造下の中での『実質的関与』の実態把握が主眼。建設業法違反である一括下請負(丸投げ)禁止の例外規定である『実質的関与』の実態はこれまでグレーンゾーンだった。仮に実態が浮き彫りになれば、既存の重層構造自体が、技術者配置を含め建設業法上問題となる可能性もありそうだ。」(『建設通信新聞』2010.09.16)
●「清水建設はオフィスビルなどの不動産開発投資を再開する。リーマン・ショック後の不動産不況に伴い、新規開発は事実上の凍結状態だったが、市況の底入れが近いと判断。130億円を投じ、JR新橋駅(東京・港)前に賃貸オフィスビルを建設する。大手ゼネコン(総合建設会社)の開発が動き出すことで、都心部の不動産市況活性化にもつながりそうだ。…これまで開発事業は売却先が確保できている案件に絞り込むなど慎重姿勢だった。今回は新築ビルが安定的な収益源になると判断し、当面は自社で保有する方針だ。」(『日本経済新聞』2010.09.17)
●「日本の政府開発援助(ODA)によりべトナム社会主義共和国に初の都市鉄道を整備する『ホーチミン市都市鉄道整備事業』で、同市が地下区間と高架区間の2工区とE&M(車両・電気設備)の3つに分けて実施する建設工事の資格審査に通過したグループが分かった。地下区間は4グループが通過し、鹿島、大林組、西松建設、東急建設・伊藤忠商事JVが代表企業で参加している模様だ。高架区間は東急建設・伊藤忠商事JV、住友商事と地元企業の2グループJVが参加しているものとみられる。また、E&Mでは4グループが通過している。現時点では11月から順次入札を実施する予定。その後、建設工事に着手する。総事業費は数千億円規模になる見通し。工事発注では日本企業が代表企業として入札に参加することなどを条件とするSTEP(本邦技術活用条件)を採用している。」(『建設通信新聞』2010.09.28)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「総務省消防庁は、学校や公民館、地方自治体庁舎など、災害時の防災拠点となる全国の公共施設の耐震化状況をまとめた。2009年度末時点で耐震化されている施設は全体の70.9%で、前年度と比べ5.1ポイント増えたものの、防災拠点であるにもかかわらず、3割程度の公共施設の耐震性能が不十分であることが分かった。都道府県や市町村が防災拠点に指定している公共施設は、全国で19万1074棟。このうち、耐震化が確保されている施設は13万5420棟だった。耐震診断を実施し、耐震化の必要性が認められながら未改修の施設が16.6%に当たる3万1702棟あるほか、耐震診断すら行われていない施設が12.5%の2万3952棟に上っている。…耐震化率が80%台は1都6県、70%台が1府8県、60%台が1道1府25県となっている。施設別で耐震化率が高いのは、消防本部・消防署所(75.1%)、診療施設(74.5%)、校舎や体育館の文教施設(72.7%)、警察本部・警察署など(71.5%)。その一方で庁舎は62.4%と、9種類ある施設の中で最も耐震化率が低かった。」(『建設通信新聞』2010.09.22)
●「公共施設などの木造化を積極的に推進する『公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律』が10月1日に施行される。同法は、これまで非木造化″が進められてきた公共建築物に対する考え方を抜本的に見直し、可能な限り木造化″内装の木質化″を図るとしており、木造建築を得意とする地域工務店の活躍の場が広がるといえるだろう。住宅だけでなく、地域の工務店が建てる地域の施設を、地域住民が用するという流れにつながることが期待される。同法に関する基本方針では、対象となる公共建築物として、国・地方自治体が整備する、学校、福祉施設(老人ホーム、保育所等)、病院・診療所、運動施設、社会教育施設(図書館、公民館等)、公営住宅、庁舎、公務員宿舎等を挙げた。さらに、民間で整備する公共性が高い″と認められる同様の施設も(公共交通機関の旅客施設や高速道路の休憩所なども)含まれるとした。…具体的な施策展開としては、建築基準法などで耐火建築物とすることや主要構造物を耐火構造にすることが求められていない低層の公共建築物のうち、対象として挙げたものを原則木造化すると規定した。…基本方針では、6月18日に閣議決定された『規制・制度改革に係る対処方針』で、3階建木造の学校や延べ面積3000uを超える建築物に関する建築基準法の規制について、『木材の耐火性等に関する研究の成果等を踏まえて、必要な見直しを行う』としたことについても言及。この閣議決定を踏まえ、同基本方針でも『当該規制に係る公共建築物についても、積極的に木造化を促進する』としている。…そのほか、高層・低層に関わらず内装等の木質化も促進。エントランスホール、情報公開や広報・消費者対応の窓口、記者会見場、大臣等の執務室といった、国民の目に直接・間接的に触れることが多い場所の、内装等の木質化を積極的に図るとした。同法を受けて、国土交通省では現在、官庁営繕基準に関する木造建築物の技術基準を検討中。来年2月を目途に基準を整備し、地方自治体等に積極的に周知する予定だ。」(『日本住宅新聞』2010.09.25)

その他

●「アジア開発銀行(ADB)は28日、アジア大洋州地域(日本など域内先進国を除く)45カ国・地域の2010年の実質国内総生産(GDP)が8.2%成長するとの見通しを発表した。インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)の輸出や内需が堅調で、7月時点の前回見通しを0.3ポイント上方修正した。」(『日本経済新聞』2010.09.28)