情勢の特徴 - 2010年10月前半
●「政府・民主党が今国会に提出する2010年度補正予算案の骨格が5日、固まった。外国為替資金特別会計(外為特会)から、海外の資源開発などに拠出する。民主党は数兆円規模を求めている。住宅エコポイントの対象を太陽光システムなど住宅設備に拡充。レアアース(希土類)の中国への輸入依存度を低下させる対策として、約1000億円を計上する方向だ。」(『日本経済新聞』2010.10.06)
●「日銀が5日に打ち出した5兆円規模の資産買い取り、4年3カ月ぶりのゼロ金利政策など追加金融緩和策を企業経営者は歓迎している。円高やデフレの進行に歯止めがかかることへの期待が大きい。ただ、『今回の対策だけですぐに効果を上げるのは難しい』(JFEホールディングスの馬田一社長)との見方も多く、政府にも『新成長戦略』の早期実施など対策を求める声が高まっている。」(『日本経済新聞』2010.10.06)
●「東京商工会議所が5日まとめた景況感に関する緊急調査によると、東京都内の中小企業のうち7〜9月の売り上げが4〜6月と比べて減少していると回答した企業が42%に上った。円高やエコカー補助金など政策効果の一巡を受け、中小企業の間では景気の減速が鮮明になっている。規模の小さな企業ほど落ち込みが激しい結果となった。従業員301人以上の企業では売り上げが『減少』したと回答した割合が19%だったのに対し、5人以下の小規模企業では49%に達した。」(『日本経済新聞』2010.10.06)
●「馬淵澄夫国土交通相は5日、政府の2010年度補正予算に、住宅建築物の耐震化や官民連携の海外プロジェクトの推進、国土ミッシングリンクの解消、建設業支援などを盛り込む考えを示した。11年度当初予算に盛り込まれる予定だった施策の前倒し≠ノも言及しており、11年度予算概算要求の公共事業費が削減されるという懸念が現実味を帯びそうだ。政府は、早ければ週内にも第2弾の『経済対策』を閣議決定し、今月下旬から来月初めにも10年度補正予算案を国会に提出する見通し。」(『建設通信新聞』2010.10.06)
●「民主党の『成長戦略・経済対策プロジェクトチーム』(直嶋正行座長)は6日、円高・デフレ対応緊急経済対策案をまとめ、政府に提言した。一連の施策を補正予算案に盛り込むよう求めており、予算規模は4兆8000億円以上となる。このうち地域活性化・社会資本整備・中小企業対策といった地域・雇用直結型の分野に約3兆円を計上し、羽田空静の整備や高速道路の未整備区間(ミッシングリンク)の解消など、戦略的な社会資本整備への投資規模を『5000億円以上』(直嶋座長)と見込んでいる。」(『建設工業新聞』2010.10.07)
●「政府は8日の閣議で、2010年度補正予算案に盛り込む『円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策』を決定した。対策は5兆500億円規模。地方の公共事業財源などに使える約3500億円の『地域活性化交付金』の創設や、レアアース(希土類)の安定確保策などを盛り込んだ。新卒者就職支援策や中小企業の資金繰り対策などで雇用や景気の下支えも狙う。中小企業向け融資が焦げ付いた場合の保証枠なども合算した対策の『事業規模』は21.1兆円程度。政府は経済対策を盛り込んだ今年度補正予算案を今月末にも開会中の臨時国会に提出し、会期中の成立を目指す。」(『日本経済新聞』2010.010.08)
●「国土交通省は、8日に閣議決定した経済対策第2弾に、▽下請債権保全支援事業の拡充・延長▽地域建設業経営強化融資制度の拡充・延長▽地域の建設会社の連携強化と技能者雇用によるエコ・耐震などの分野への事業展開支援――の3点を盛り込んだ。今月下旬にも臨時国会に提出する2010年度補正予算案に必要経費を計上する見通し。下請債権支援事業は、元請けに対して下請けや資材業者が持っている請負工事・資材代金の売掛債権(手形を含む)の支払いをファクタリング会社が保証しやすくする制度で、11年3月末までの期限を11年度末まで延長する。債権の債務者や手形の発行者である元請けの要件が『過去2年間における公共工事の受注実績』となっていたものを『経営事項審査を受けている企業』に大幅緩和する。対象企業数は、現行の要件の2倍程度に増える。さらに、これまで保全される債権額の確定方法は、下請けが元請けに出す請求書に記入された金額が債権として扱われていたが、下請けと元請けが交わす契約書に記載された金額を『債権』として認める。」(『建設通信新聞』2010.10.12)
●「国土交通省は、2011・12年度の競争参加資格審査で使用する新しい技術評価点の算定方法人案)をまとめた。工事規模の評価の中で受注件数を重視する度合いを下げる。評価全体における総合評価落札方式への参加実績評価の重みは下げつつ、これまで評価していなかった簡易型総合評価落札方式への参加実績を評価に加える。地方公共団体工事の実績を評価する重みは高め、直轄工事の受注が少なくても都道府県での工事成績が高ければ、高い技術評価点を獲得できるようにする。」(『建設通信新聞』2010.10.01)
●「政府は、2010年度予算の『経済危機対応・地域活性化予備費』のうち、公立小中学校を中心とした学校施設の耐震化・老朽化対策の補助金として169億円を支出することを決めた。公立小中学校568棟分、幼稚園と特別支援学校11棟分の耐震化事業費を確保、各自治体は今後、設計、工事発注を進める。…今回の予備費は、文部科学省に160億円、内閣府に9億円それぞれ計上した。耐震化棟数の内訳は、文科省分が小中学校563棟、幼稚園・特支学校11棟、内閣府分(沖縄県分)が5棟となっている。」(『建設通信新聞』2010.10.05)
●「国土交通省は5日、『独立行政法人都市再生機構のあり方に関する検討会』(座長・森田朗東大教授)の報告書を公表した。報告書は組織の見直しについて、▽完全民営化(A案)▽政府全額出資の特殊会社化(B案)▽新しい公的法人(C案)―の3案を提示。A案が望ましいとしつつも、機構が持つ巨額の負債の返済や繰越欠損金の解消を一般会計で肩代わりすることを極力避けるためには、B、C案が現実的で実現可能性が高いとの意見が多かったとしている。どの案を採用するかは政治判断に委ねるとした上で、さらに課題を検討するために年度内をめどに機構の業務・組織改革の工程表を策定し、可能なものから早期に実施するべきだとの考えも示した。報告書は、機構の組織・事業の問題点として、▽多くの事業を抱え組織・業務が分かりにくい▽事業資金のほとんどを財政投融資の借入金に依存▽子会社・関連会社を設立し随意契約を結ぶなど業務運営が非効率▽ガバナンスが不十分―などを指摘。一方で、機構の事業を廃止すれば高齢者や低所得者の居住安定に支障を来たし、民間では行えない低採算の都市再生事業の代替手段も必要になるなどとして、事業・組織を即座に廃止することは困難だとした。このため、▽役割を終えた事業・組織や民間移管が適切な事業・組織は廃止・縮小をベースとして実現可能な姿を追求▽負債の返済や繰越欠損金の解消は経営努力で行うことを基本として一般会計による肩代わりは極力回避▽見通せる時間軸の範囲内で期限を明示して断行―の3点を前提に見直しを行うべきだとの認識を示した。業務・組織改革に当たって居住者の安定と雇用への配慮も必要だとしている。」(『建設工業新聞』2010.010.06)
●「国土交通省は、新たな治水対策のあり方を踏まえた河川整備の計画に関する検討に着手する。河川への流出を遅らせたり、河川が氾濫した場合に備えた対策など、流域における治水対策を、河川整備の計画に取り入れる。流域での治水対策の実例と課題の整理・検討、効果や影響を評価するための調査・研究事例の整理、実施上の課題の整理と評価手法を検討し、流域における治水対策を河川整備の計画に導入するため、考え方を整理する。2010年度末までにまとめる。…今後の治水対策は、流域全体で治水対策を分担し、河川への流出を極力遅らせることで洪水のピーク流量を減らし治水安全度を確保することなどに重点を置くことが考えられている。」(『建設通信新聞』2010.10.08)
●「政府の地域主権戦略会議(議長・菅直人首相)は7日に開いた会合で、2009年第2次補正予算で実施した『地域活性化・きめ細かな臨時交付金』を参考に一括交付金化を制度設計する方向性を示した。地方自治体への配分方法は、『客観的指標で配分するべき』とし、6月に閣議決定した『地域主権戦略大綱』の文言と異なる考え方を示した。制度設計に向け、関係府省による検討会議を設置し、12月に制度の詳細を決める。」(『建設通信新聞』2010.10.12)
●「国土交通省は、8日に閣議決定した政府の緊急総合経済対策を受け、厳しい環境下にある中小建設業の経営支援の取り組みを強化する。下請債権保全や元請の資金繰り支援を拡充するほか、地域の建設業者が建設関連分野で新市場を開拓する取り組みへの支援も強化する。緊急経済対策を盛り込んだ10年度補正予算案に関連費用を計上し、10年度中に実施に移す。経営支援強化策の柱は、▽下請債権保全支援事業の拡充・延長▽支払いボンドなど本格的な下請債権保全策の導入支援▽地域建設業経営強化融資制度の拡充・延長▽地域の建設業者の連携強化と技能者雇用によるエコ・耐震等の分野への事業展開支援―の4点。下請債権保全支援事業は、下請建設業者などが元請業者に対して持つ手形や売掛債権をファクタリング(売掛債権買い取り)会社が支払い保証する際に国が保証料を助成する仕組み。」(『建設工業新聞』2010.10.12)
●今年6月に実施された内閣府の「行政事業レビュー」(各府省版事業仕分け)で、下水道事業、浄化槽、農道・林道整備など生活密着の事業にかかわる「地域再生基盤強化交付金」が「廃止」と決定された。突然の交付金廃止に地方自治体の間から「来年度以降の予算が阻めない」と悲鳴が上がっている。同交付金は、2005年に施行された地域再生法に基づく「地域再生計画」に対して行われる国の財政支援策の一つだ。汚水処理施設の整備、広域農道や林道、市町村道の整備など、県・市町村が行う暮らしに直結した公共事業の補助財源として運用されており、10年度の予算総額は1034億円。(『しんぶん赤旗』2010.10.13より抜粋。)
●「公共建築物の木造化促進に向けて関係省庁が本格的に動き始めた。今月末には16省庁の連絡会議が発足し、各省庁が定める今後の整備目標や、事業評価の仕組みなどを協議する。林野庁は来月から都道府県などの自治体や建築業界の関係者を対象に木造化推進のための説明会を順次開く。国土交通省官庁営繕部は計画・設計段階の木造技術基準を来年2月に制定するとともに、本年度末に木造建築工事標準仕様書も改定する予定。来年度から国や地方の庁舎など公共建築物の木造化整備促進への準備が整う。」(『建設工業新聞』2010.10.14)
●2009年中に民間企業で働く労働者のうち、年収200万円以下のワーキングプア(働く貧困)層が1100万人に迫り、4人に1人となっていることが分かった。国税庁が9月28日に公表した「民間給与実態統計調査」で明らかになった。年収200万円以下の層は前年から32万4000人増加し、1099万人となった。民間企業の給与所得者の24・4%。1000万人を超えるのは4年連続。年収100万円以下の層は08年に前年比16万9000人、09年にも同15万8000人増え、399万人になった。99年から09年の給与所得者数の増減を年収階層別にみると、300万円以下の低所得者層が急増した。とくに、200万円以下層は296万人の増加。300万円超2000万円以下の層は激減。2000万円を超える富裕者層は増加した。多くの中間層が低所得者層に落ち込んだことがうかがえる。(『しんぶん赤旗』2010.10.03より抜粋。)
●「失業防止を目的にした『雇用調整助成金』の申請数が、前年同月比で2カ月連続2桁の減少を続けている。雇用環境の急激な悪化に連動する形で、雇用調整助成金を受け取るために必要な計画受理事業所数は2009年度累計で08年度比10倍増、単月比較ではリーマンショック時(08年9月)に100件程度が1年後の09年10月には8万0908件と800倍程度まで激増していた。激増した雇用調整助成金申請が一転して減少し始めたことについて、厚生労働省は『景気回復が理由』としているが、業界関係者は『一時しのぎの雇用を断念した企業が増大した建設大不況の兆候』とみている。雇用調整助成金は、景気変動や産業構造変化などによって、事業活動の縮小を余儀なくされた企業に対し、従業員の雇用維持を前提に、休業手当や教育訓棟、出向労働者の賃金を国が一部助成する制度。失業の予防が目的で、厚労省の雇用政策の大きな柱になっている。具体的には、売上高や生産量の減少などで一定の要件を満たした場合、休業や教育訓練、出向などに対し1日1人当たり最高7505円を限度に助成される。また、教育訓練の場合はさらに加算される仕組みで、支給は3年間で300日が限度。」(『建設通信新聞』2010.10.06)
●「前原誠司外相が国土交通相当時の2009年11月、経済雑誌のインタビュー記事で、公共事無が減少する中、『建設業音数が実質20万社体制でも過剰』との認識を示すとともに、『今後、建設業として生き残るか転業するかの選択が必要』と語ったことは、所管大臣だけに地方建設業界に大きなショックを与えた。建設企業の供給過剰問題については『数だけの論理には無理がある。防災など地域建設業としての役割があり、どうしても必要な企業がいる』(栃木、長野建協)、『災害時に主力となる土木主体の会社は足りないと見るべき』(青柳剛群馬建協会長)、『建設業から撤退できるだけの具体策が示されず、ただ(新分野に)行けと言われても』(複数の協会関係者)など、地方の実情から反発する見方が多かった。神奈川、埼玉建協の関係者は、現行の建設業許可制度を踏まえた議論が必要とも指摘する。」(『建設通信新聞』2010.10.01)
●「公共工事の発注量が減少し、建設業者の倒産が今後増加するとの懸念が地方の建設業界で強まっていることが、日刊建設工業新聞社が全国の都道府県建設業協会を対象に行ったアンケートで分かった。工事発注量は、国が減少一色となっているのに対し、地方自治体では同程度や増額との回答もあってまだら模様″だが、先行きに対しては不安が大部分を占めている。倒産・廃業や人材不足、保有重機の減少などを背景に、地元行政機関と結んでいる災害時の協定の実行を不安視する回答も多かった。建設業が地域で果たしている役割への理解を訴える意見と合わせ、『地方の建設業は今後、必要ないのか』『地域を支える気構えが薄れてきている』といった声も寄せられた。」(『建設工業新聞』2010.10.04)
●「東京商工リサーチがまとめた2010年7月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比26.4%減の287件となり、13カ月連続で前年同月を下回った。依然として『景気対応緊急保証制度』や『中小企業金融円滑化法』など政策効果のほか、2009年度補正予算の未契約繰越分の発注も下支えした。負債総額は、42.8%減の438億7700万円となった。この大幅減は、負債額が10億円以上の大型倒産が77.7%減の4件(前年同月は18件)にとどまったことによる。これに伴い平均負債額は22.4%減の1億5200万円となり、7月としては1994年の1億4200万円以来の低水準となった。」(『建設通信新聞』2010.10.05)
●「積水化学工業とNECは次世代型省エネ住宅『スマートハウス』分野で提携する。第1弾としてNECが一戸建て住宅の太陽光発電量とエネルギー消費量などの情報を収集、家庭の消費電力を最適化する装置を開発、来春に積水化学が発売する住宅に搭載する。積水化学は今後、太陽光発電住宅とセット販売する方針で、初年度約1万棟への搭載を目指す。NECはこのほどIT(情報技術)を活用し家庭の消費電力を最適化するスマートハウスの中核機器、『HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)』を開発した。HEMSは電力測定装置と情報収集装置で構成、パソコンにエネルギー消費量などをわかりやすく表示する。」(『日本経済新聞』2010.10.07)
●「国土交通省の建設工事受注動態統計調査報告(速報値)によると、8月単月の元請受注高合計は、前年同月比6%増の2兆3790億円と2カ月連続で上向いた。日本建設業団体連合会が会員企業48社を対象に調査した8月単月の受注実績結果も2.9%増の6425億円と3カ月ぶりに前年同月を上回った。国交省統計、日建連調査ともに民間受注が2カ月連続で増加しており、それが全体のプラスに貢献しているものの、水準自体は低く、官公庁受注は国交省統計、日建連調査ともに低迷が続いている。」(『建設通信新聞』2010.10.08)
●「積水ハウスは、米国の不動産開発会社であるミラー・アンド・スミス社と共同で、ワシントンD.C.近郊の大規模複合開発事業『ワン・ラウドウン(One Loudoun)」プロジェクトに参入する。オフィスやホテル、商業施設のほか、住戸数計1040戸の住宅を計画している。オフィスビルは、国際的な通商や国内投資の促進に向け『ワールド・トレード・センター・グレス国際空港』を建設する予定だ。建設地は、バージニア州ラウドウン郡アッシュバーンラッセル・ブランチ・パークウェイの敷地126ヘクタール。ワシントンD.C.の北西約40キロ、ダレス国際空港から4.8キロに位置する。積水ハウスは『日本で培ってきた環境配慮型のまちなみを形成し、環境配慮型複合都市開発の実現を目指す』方針だ。」(『建設通信新聞』2010.10.15)
●「アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ首長国の政府系不動産開発会社ナキールが、経済危機で中断してきた工事を一部再開した。総額100億ドル(約8200億円)超の債務を巡り債権銀行団や建設会社との再編交渉に決着のめどがついたためだ。ナキールによると住宅開発のアルフルジャンなど8プロジェクトの工事を10月中に再開。2プロジェクトはすでに着工したという。来年初めにはイブン・バトウ一タモールなど既存のショッピングセンター2カ所の拡張工事にも取りかかる。ドバイ政府系持ち株会社ドバイワールドの傘下にあり、ヤシの木の形をした人工島建設などを手掛けたナキールは、ドバイ開発のけん引役となってきた。しかし、世界金融危機にともなうドバイ経済の減速で資金繰りが悪化、ほぼ全ての工事がストップした。ナキールは今年に入り債務の4割を現金で返済し、6割は新たに発行する債券を割り当てる債務返済の枠組みを提案。9月末には債権者の85%から同意を得たと発表した。」(『日本経済新聞』2010.10.09)