情勢の特徴 - 2011年1月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「小売りやサービスなど非製造業の採算が改善してきた。2011年3月期の売上高営業利益率は6.4%と前期比0.7ポイント改善しそうだ。営業利益率の改善は7年ぶり。内需低迷の影響を受けるが、合理化で利益率を底上げする。海外需要の取り込みなど収益源の多様化も寄与しそうだ。」(『日本経済新聞』2011.01.09)
●「経済産業省は、1月下旬にに招集される予定の通常国会に、新成長戦略の実現に向け、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度構築のための法案や産業活力再生法一部改正法案、アジア拠点化推進法案など5つの法案の提出を予定している。特に再生可能エネルギー買い取り制度導入のための法案は、工場・事業所、学校など非住宅(事業用)における500キロワット未満の太陽光発電設備を、現行の『余剰電力買い取り』から『全量買い取り』に移行させるため、非住宅での導入促進につながり、建設産業のビジネス機会がより広がる可能性が高まるとみられる。産業再生法改正法案は、国際競争を勝ち抜くために、事業再編の促進を通じ『世界で戦える』企業を創出することが狙い。事業統合を迅速化するとともに、完全子会社化の手続きを簡素化する予定だ。また、地域経済・中小企業の活性化に役立つよう、地域の中小企業の事業引き継ぎを円滑化することを目的に、希望する企業同士を引き合わせていくことを支援する。」(『建設通信新聞』2011.01.11)
●厚生労働省がこのほどまとめた「中小企業における最低賃金の引き上げの円滑な実施のための調査」によると、回答のあった事業所の過半数に時給800円未満の労働者がおり、そのうち家計を支えている労働者は約2割を占めることがわかった。この調査は昨年6月に閣議決定された「新成長戦略」に最低賃金の引き上げが盛り込まれたことを受け、6月から10月にかけて実施された。最賃引き上げの影響が大きい地域や業種について実態を調べ、課題を検討することが目的。16道県、13業種を対象に約1万5000事業所からアンケートを回収し、89事業所から聞き取り調査した。この結果を受けて調査は、当面の中小企業支援策として、社会保険料負担の軽減のほか、最賃引き上げ分を中小企業が適正に下請け単価などに転嫁できるよう、公正な取引の監視強化や指導、下請代金支払遅延等防止法の徹底などが必要だと指摘している。(『しんぶん赤旗』2011.01.15より抜粋。)
●日本銀行が14日発表した「生活意識に関するアンケート調査」によると、景気の現在の水準について「悪い」「どちらかといえば、悪い」と感じている人が合わせて83.6%にのぼった。「悪い」は前回調査時(9月)から5.7ポイント増加。「良い」はゼロだった。1年前に比べた景況感も「悪くなった」が前回比で7.3ポイント増えて54.7%となった。多くの人が景気の悪化を実感している。「暮らし向き」についても「ゆとりがなくなってきた」が51.6%(前回比0.5ポイント増)と悪化した。収入の増減に関しても「減った」が52.3%で、1.7ポイント増加しました。雇用環境について、「1年後を見た勤め先での雇用・処遇についての不安」を「かなり感じる」との回答が41.7%にのぼっている。賃金の減少や失業率の高止まりなど、雇用と家計の状態悪化が反映した結果となっている。調査は満20歳以上の人4000人を対象に、2010年11月から12月にかけて実施。2345人から有効回答を得た。(『しんぶん赤旗』2011.01.15より抜粋。)
●「国土交通省が昨年12月27日に公表した昨年11月の新設住宅着工戸数は、7万2838戸(6カ月連続増加)で、4カ月連続での7万戸台となった。貸家は2万6703戸(前年同月比9.5%減)と2カ月連続での減少となったものの、持家および分譲住宅の増加傾向が続いたため、全体では増加となった。季節調整済み年率換算値は朗万7068戸で、4カ月連続での80万戸台となった。持家は2万7235戸で、前年同月比13カ月連続増加の7.1%増。民間資金によるものは4カ月ぶりの減少(2万2572戸)となったが、公的資金によるものが14カ月連続での増加(4463戸)となった。分譲住宅はマンションの増加傾向が目立ち、6カ月連続での増加となる8922戸。前年同月比は106.1%増と前月を上回る結果となった。一戸建も11カ月連続の9506戸(前年同月比14.2%増)。分譲住宅全体では9カ月連続での増加となっている。構造別・建て方別では、木造が前年同月比1.6%増の4万1454戸。工法別では、軸組木造が前年同月比3.1%増の3万0974戸。いずれも10カ月連続での増加となった。」(『日本住宅新聞』2011.01.15)

行政・公共事業・民営化

●「『安ければよい』という公共事業市場の誤った風潮を打破しよう―。会計法や地方自治法が定める予定価格の上限拘束性を見直し、公共調達を適正化する法案を議員立法で制定することを目的に、超党派の勉強会が動き出した。民主、自民、公明、みんなの各党の参院議員11人が『公共調達適正化研究会』を昨年末に旗揚げし、活動を開始した。入札時の積算価格にある程度の幅を持たせ、受・発注者の対話を経て契約を行うといった新たな調達手法を検討する方針で、今月末にも召集される通常国会に法案を提出することを目指している。」(『建設工業新聞』2011.01.05)
●「東京都内の複数の自治体で、庁舎の再整備に向けた動きが本格化してきた。首都圏では今後30年以内に70%の確率で直下型地震が発生するという予測もあり、災害時対応の本丸″となる庁舎施設の耐力確保は喫緊の課題となっている。また、最優先で取り組んできた学校施設の耐震化が一段落しつつあり、今後はそのほかの公共施設の補強にシフトしていくことになる。中でも庁舎は最重要拠点の一つと言え、優先度が高くなるのは明白だ。とはいえ、各自治体とも財政的な余裕は持ち合わせておらず、巨額投資が必要な建て替え以外の手法を選択するケースもある。都内の動向をまとめた。23区内では、リーマンショック以降の急激な景気悪化に伴う財政難で、庁舎商館改築事業を一時凍結していた板橋区が2010年12月に事業再開を決定した。この間には耐震改修による対処も検討してきたが、設備機器や構造躯体の老朽化を始め、狭あい化やバリアフリー化への抜本対応、長期的なコスト面などから改築が適当と判断した。11年度には中断していた基本設計を再開し実施設計に入るとともに、既存施設の解体工事にも着手する。12年度に本体着工し、14年度の完成を目指す。」(『建設通信新聞』2011.01.05)
●「開業から70年以上を経過した地域の鉄道事業者が増えている。現段階で58社に及んでおり、橋梁やトンネルなど施設の老朽化が懸念されている。国土交通省では、複数年かけて実施する改良・補修事業の事業費を補助する制度を設けているものの、これまでの利用社数は1社で、今後、鉄道事業者による大規模な改良・補修事業が増加する可能性がある。地域鉄道73社のうち、現段階で路線開業から70年を超える鉄道が58社に達している。橋梁やトンネルは、開業とともに使用を開始しているものも多く、開業後の経過年数に応じて橋梁やトンネルなどの老朽化も一定程度進んでいると見られる。」(『建設通信新聞』2011.01.07)
●「政府の11年度予算案が先月24日に閣議決定され、今月末にも召集される通常国会で審議が始まる。国土交通省の予算総額は、投資補助金の一括交付金化に伴う移行額を合わせて5兆3770億円。公共事業開係費には4兆6556億円が計上され、それぞれ前年度比で実質4%の減少となった。港湾や道路整備など成長戦略に寄与する事業への重点配分でめりはりを利かせたものの、馬淵澄夫国交相は『厳しい制約の中で頑張ったが、点数的には不十分』と不満を漏らす。公共事業費の削減を公約に掲げた民主党政権の下で、目標を前倒しで達成した努力をアピールして前年度並みの予算規模の確保を狙った同省にとっては、厳しい予算編成となった。09年秋の政権交代後、民主党政権が初めてゼロから取り組んだ11年度予算案の編成は、10年度予算の予備費の公共事業への活用や規制改革、10年度補正予算に続く政府の『経済対策第3弾』との位置付けで、予算配分は、経済成長と雇用確保を推進する新成長戦略の関連分野に重点が置かれた。一般会計の歳出総額は92兆4116億円となり、10年度当初予算を1124億円上回って過去最大規模。高齢化の進展などでの社会保障費が大きく膨らむ一方、公共事業関係費は4兆9743億円と13.8%の大幅減を強いられ、補助金の一括交付金への移行分を含めても5.1%減と減少傾向に歯止めが掛からなかった。」(『建設工業新聞』2011.01.11)
●「国土交通省は、中規模の地方都市を対象にした『次世代地域公共交通システム』の実用化に乗りだす。これまでの研究成果を踏まえ、11年度中に車両や運行システムの技術開発にめどを付け、併せて12年度以降の本格導入に向けて実証事業を行う予定。現行法では新交通システムは既存の一般道を通行できないことから、法制度の改正などについても検討を進める。既存の公共交通インフラに比べてコストが低く、導入が容易な同システムにより、地方の公共交通網の再構築を促し、地域経済やコミュニティーの活性化につなげたい考えだ。」(『建設工業新聞』2011.01.11)
●「国土交通省は、09年度発注の直轄工事(一般土木、アスファルト舗装、PC、鋼橋上部工)の入札に採用された総合評価方式の実施状況をまとめた。標準T型とU型の評価項目の中で、『技術提案』に次いで採用率が高かったのは『企業の施工能力』と『配置予定技術者の能力』。標準U型では『地域貢献の実績』と『地理的条件』の採用率も高く、工事の品質確保に加えて地域建設業への配慮を重視する傾向がみられた。落札者の得点率(各評価項目に対する得点の割合)の平均値をみても、『地理的条件』などの評価項目で落札者と非落札者の得点に差が出ていた。標準型の評価項目の採用状況をみると、T型、U型とも『技術提案』が100%で、次いで採用率が高かったのは『企業の施工能力』と『配置予定技術者の能力』の二つ。簡易型で採用率が高かったのは『企業の施工能力』と『配置予定技術者の能力』でほぼ100%。次いで『地域貢献の実績』も高かった。」(『建設工業新聞』2011.01.14)
●「馬淵澄夫国土交通相は12月17日の閣議後の記者会見で、『建築基本法』の制定に向けた検討を進める考えを明らかにした。今年度中にも有識者による検討をスタートする。基本法の制定に伴い、その下に位置付けられる建築関連法規を抜本的に見直す考え。賛否の両論併記となった建築基準法の改正問題についても、基本法制定を検討することで、前進させたいとしている。「建築基準法の見直しに関する検討会」が同日提出したとりまとめは、構造計算適合性判定制度等に関して、見直しを求める専門家サイドと、見直しに反対する消費者サイドとの両論併記の形となった。これを受け、馬淵大臣は『建築基準法、最低基準の見直しということで法改正をやっても十分ではない』と指摘。『持論の建築基本法の制定に踏み出すことで、方針を大きく前に進める』との考えを明らかにした。本年度内にも、基本法制定を前提にした検討会を設置し、法の制定と、それに伴う建築基準法や建築士法等、建築関連法規の抜本的見直しについて議論する。馬淵大臣は、基本法の制定を前提にした建築関連法規の抜本的な見直しを行うことで、『ある意味、(建築基準法の見直しも)私としては前進をさせていくという方向に踏み出したい』とした。」(『日本住宅新聞』2011.01.05)

労働・福祉

●「国土交通省は、2010年11月の建設労働需給調査をまとめた。主要6職種平均の過不足率が0.4%(プラス数値が大きいほど技能労働者が不足)で前月より0.1ポイント不足感が緩和した。ただ、鉄筋工(土木)が前月のマイナス0.2%から、0.5%と再び不足状態に転じるなど、鉄筋、型枠工(建築)で不足状態が続いている。鉄筋工(土木)は、2カ月ぶりのプラス数値となった。鉄筋工(建築)については、前月から0.8ポイント不足感が解消したものの、0.1%でいまだ弱い不足状態にある。型枠工(建築)も、前月より0.1ポイント不足状態が解消したものの、l.9%といまだ強い不足状態だ。左官も前月より0.5ポイント過剰感が解消してマイナス0.1%で、不足に向かいつつある。型枠工(土木)は前月より0.4ポイント過剰感が強まりマイナス0.5%、とび工は0.1ポイント過剰のマイナス0.5%だった。新規募集の過不足率では、型枠工(建築)が8.6%で前月より0.7ポイント過剰感が強まるなど、ほかの職種と比べ突出して新規の技能労働者確保が難しくなっている。」(『建設通信新聞』2011.01.07)
●「足場からの墜落事故防止を目指し、昨年8月から検討を続けてきた厚生労働省の『足場からの墜落防止措置の効果検証・評価委員会』(委員長=小林謙二・関東学院大学教授)は11日の会議で、労働安全衛生規則(安衛則)の徹底を図ることを柱とした報告書案を検討した。リスクアセスメントの観点を踏まえ、設計、計画段階からの本質的な安全対策の必要性も強調している。同委員会のこれまでの分析では、足場からの墜落事故404件のうち、約65%は『安衛則に基づく措置の徹底で防げる可能性が高』く、約5%は『作業手順や点検、教育の徹底など不安全行動等の防止″で防げる可能性が高い』とした。約29%が『安衛則に基づく措置の徹底や不安全行動等の防止″で防げる可能性が高』かったとしている。その上で、墜落事故防止にはまず『安衛則に基づく墜落防止措置の徹底を図るとともに、その労働災害防止効果について継続して検証を行うことが適当である』とした。一方で、安衛則に基づく墜落防止措置を実施していても、不安全行動等により被災している事案も見られることを指摘。」(『日本住宅新聞』2011.01.15)

建設産業・経営

●「国土交通省が10年度補正予算に費用を計上し、昨年末に企画競争で発注した建設産業の国際展開に向けた調査業務をゼネコン各社が相次ぎ受託している。同省の調査業務は通常、建設コンサルタントや協会・団体が受託することが多いが、今回は鹿島、ハザマ、佐藤工業がそれぞれ受託。いずれも案件形成のための調査で、調査段階から海外プロジェクトにかかわれる点にゼネコンとしてもメリットを見いだしているようだ。鹿島が受託したのは『東南アジア諸国における建設・不動産市場調査業務』。日本企業が進出していない東南アジアの2カ国程度を選定し、建設、不動産業に関する法規制や現地事情などを調査した上で、有望プロジェクトを探す。専門工事業や設計事務所など進出先のカウンターパートの存在や、資機材の調達事情なども調べ、市場開拓の可能性を明らかにする。ハザマは、『建設企業が有する環境技術を活用した海外プロジェクト形成調査業務』を受託した。日本の建設会社の優れた環境技術を生かせる国・地域、プロジェクトを選定し、案件形成に向けた情報収集と適用可能性の調査を行う。佐藤工業が受託したのは、『地方・中小建設企業の国際展開促進に向けた案件発掘調査業務』。地方・中小建設業が対象だが、案件発掘調査が自社の国際展開に向けた情報収集にも役立ちそうだ。既に『地方・中小建設業の海外進出支援業務』を国交省から受託し、社内シンクタンクの佐藤総合研究所を中心に業務を進めてきた背景もある。国交省によると、調査結果は報告書にまとめて公表するため、受託した建設会社がプロジェクトを受注できるとは限らず、関与したプロジェクトの獲得に乗りだしても問題はないという。」(『建設工業新聞』2011.01.06)
●「日本PFI・PPP協会(植田和男理事長)が昨年11月に立ち上げた指定管理者制度推進研究所が、民間54、行政37の合計91会員(4日現在)を集め、いよいよ活動を本格化させる。ゼネコンも多数参加しており、来月2日に1回目のセミナーを開き、『事業者選定プロセスの提言』に向けた検討などに着手する。指定管理者制度は今後、コンセッション方式導入による公物管理権の民間への部分開放などに伴い、活用が広がるとみられている。昨年末には総務省が適正な制度運用を求める通知を自治体に出すなどの動きもあり、建設業界の新たなビジネスチャンスとなる可能性も秘めている。」(『建設工業新聞』2011.01.07)
●新潟県糸魚川市が実施している「住まいる環境リフォーム補助金制度」、昨年10月4日にスタートし、10日余りで申請者が380人を超え、受付を終了した。市は急きょ、第2弾を実施。…米田徹市長は最初の受付が締め切られた後、第2弾の実施をいち早く決め、「12月議会に7000万円の補正予算を提案。工事完了時期は2011年5月末まで延長したい」と話した。(『全国商工新聞』2011.01.10より抜粋。)
●「日本建設業団体連合会の野村哲也会長、日本土木工業協会の中村満義会長、建築業協会の山内隆司会長は7日、国土交通省の建設産業戦略会議がまとめた『建設産業の再生と発展のための方策に関する当面の基本方針』に対する見解を連名で発表した。『建設産業が健全に発展するためには、技術と経営に優れた企業が伸びることのできる環境を形成していくことが重要であり、今回、こうした観点から種々の政策が提案されていることは意義あるものと考える』と一定程度評価する姿勢を示した。ただ、「地域建設業の再生に関しても、建設産業の健全な発展、さらには地域の活力の確保などの観点に配慮すると同時に、社会資本整備の的確・着実な実施という公共投資政策の本旨を踏まえた政策展開が望まれる」と注文を付けた。この指摘は、国民により品質の良いものを提供するという公共投資の趣旨を忘れず、企業規模で事業量を配分するような政策によって市場メカニズムを壊さないようけん制したものとみられる。その上で、『本来、産業政策に対し、広く国民から求められているのは、透明性を確保した仕組みを構築することである。また、建設産業を始めとする地域再生のためには、国内投資を促進する方策を併せて講ずるべきであり、今後、どのような具体的な方策が提案されるのかを注視していきたい』と動向を見守る考えを明らかにした。」(『建設通信新聞』2011.01.11)
●「国土交通省が7日に発表した『建設産業の再生と発展のための方策ほ関する当面の基本方針』は、建設業界や有識者などが参加してまとめた『建設産業政策2007』をベースとして、当面実施すべき施策の方向性を示すという位置付けだ。産業政策2007の策定後、実際にはどれだけの政策を実行してきたか、実施すべきことを放置していなかったか、これが馬淵澄夫国交相の言う『不作為の連鎖を断ち切る』という意味ととらえている。今回の会議のメンバーには各専門分野を土台に産業政策2007や建設産業界の現状など理解している有識者だけをそろえた。基本方針の核となるのは、▽透明性を確保した地域維持型の契約方式導入▽保険未加入企業の排除▽市場への参入要件――の3点に技術力を重視した契約方式の実施を加えた4点と言える。特に地域維持型契約方式は、大手と中小の発注比率の調整といった発想ではないことを馬淵国交相が強調した。これまで地域の建設企業が担ってきており、今後も担うべきである維持管理などの事業が増加することが明白な中で、地域の建設企業が参加する契約方式のあるべき姿を追究する考え方だ。『入札方式』とせずに『契約方式』としている点で、一般競争か指名競争か、といった入札方式の選択を念頭に置いているのではなく、『望ましい契約方法を検討する』という意思が表れている。保険未加入企業の排除については、少なくとも保険には加入しているという『まじめな』企業で競争ができるという競争環境の整備を眼目としており、不良不適格業者の排除にもつながる。また、重層下請構造の是正には、直接的・安定的に労働者を雇用する企業を重視するだけでなく、保険未加入企業を排除すれば一人親方の増加を助長する可能性があることに配慮しているという一面もある。市場への参入要件見直しは、今後の検討課題ではあるが、供給過剰構造の中での入り口規制を含めた要件強化という方向を見据えているとみられる。技術力重視の契約については、競争の参加者を一定段階で絞り込む多段階方式の契約を視野に入れており、競争激化の中での大手・中堅企業の負担軽減という意味合いがある。海外展開やCM(コンストラクション・マネジメント)の制度化は、大手・中堅に参入を強制するのではなく、市場縮小の中でどこかに市場の拡大部分が必要なことから、市場拡大の支障となっている部分を取り除き、参入を可能にして選択肢を増やすという意味で、盛り込んでいる。」(『建設通信新聞』2011.01.11)
●「中小・零細の建設業者が集まり、官公庁発注工事を共同で受注しようという新たな組織が東京・綾瀬に誕生した。全国の42杜を傘下に置く地域環境開発協同組合(東京都足立区、佐藤栄作理事長)は、特定建設業者として国土交通大臣の許可を取得したほか、昨年10月には官公需適格組合としても国に認められて、本格的な活動をスタートした。佐藤理事長は『組合員数を拡大しながら、初年度(11年10月期)に目標とする5億円の受注量を段階的に増やしていきたい』と語り、将来的に100杜を集めた組織へと成長させていく考えだ。」(『建設工業新聞』2011.01.14)
●「東京商工リサーチが13日発表した10年(1〜12月)の建設業倒産(負債1000万円以上)は3523件(前年比13.7%減)と、4年ぶりに4000件を下回った。大型倒産の減少で負債総額は5277億円(42.2%減)にとどまった。中小企業向けの金融円滑化法や緊急保証制度といった金融政策に支えられ、月別の倒産件数は12月まで18カ月連続で前年同月を下回って推移した。ただ、年後半にかけては減少率が1桁になるなど政策効果は薄らいできたとみている。業種別の倒産件数は、、総合工事業1755件(24.1%減)、職別工事業1152件(1.9%増)、設備工事業616件(4.0%減)。『受注(販売)不振』を原因とした倒産が全体の73%に当たる2583件(7.3%減)を占めたほか、『既往のしわ寄せ』による倒産が398件(24.0%減)、『運転資金の欠乏』による倒産が211件(33.8%減)、『他社倒産の余波』による倒産が140件(24.3%減)だった。」(『建設工業新聞』2011.01.14)
●「住友林業と東芝は、次世代の省エネルギー住宅『スマートハウス』に使う電力制御装置を共同開発する。太陽光発電システムや電気自動車(EV)の充電設備を組み合わせて、発電インフラの役割を担う次世代住宅の『頭脳』となる制御装置の開発で住宅と電機の大手が組む。住友林業は2011年中に東芝から調達する制御装置や蓄電池などを組み合わせ、スマートハウス販売事業に参入する。」(『日本経済新聞』2011.01.15)

その他

●米国では2008年9月のリーマン・ショック以後、フルタイム労働者が大幅に減る一方、パートタイム労働者が増え、現在では就業者全体の2割程度に達していることが分かった。内閣府が米労働省統計をもとにまとめた調査報告で明らかにされた。米国でパートは週当たり労働時間が35時間に満たない労働者のこと。「契約自由」の原則のもとで同一労働・同一賃金が原則となっていないため、パート労働者の時間当たり報酬(賃金と諸手当)はフルタイムの半分程度しかなく、パートの増加が貧困化をもたらす恐れがある。…パート労働者の報酬の伸びは09年後半以降鈍化し、同年10〜12月期には前年同期比でマイナスを記録した。パート労働に就いた理由としてそれ以外に職を見つけられなかったなど消極的理由を挙げたパート労働者もリーマン・ショック以降、急増し、毎月30〜35%に上る。(『しんぶん赤旗』2011.01.11より抜粋。)
●「世界銀行は12日、2010年の世界経済の実質成長率が3.9%となり、昨年6月に公表した予測(3.1〜3.3%)を上回ったとの見込みを公表した。先進国では景気回復がもたついたものの、新興国の高成長が続き全体をけん引した。ただ、11年は先進国だけでなく新興国も拡大ペースが減速し、世界全体の成長率は3.3%にとどまると見ている。」(『日本経済新聞』2011.01.013)

まちづくり・住宅・不動産・環境