情勢の特徴 - 2011年12月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「東日本大震災で一時冷え込んだ首都圏のマンション販売で、復調ぶりが顕著になってきた。不動産経済研究所(東京・新宿)が15日発表した11月の首都圏の発売戸数は前年同月比31.0%増の4820戸で、2カ月ぶりのプラスだった。12月も回復基調が続いているが、株安や欧州債務危機などに伴う消費者心理の冷え込みを警戒する声もあり、先行きは不透明だ。」(『日本経済新聞』2011.12.16)
●民間シンクタンクのニッセイ基礎研究所は15日、野田佳彦内閣が2012年、13年に予定する制度「改正」によって「勤労者の可処分所得が大幅に減少する」というリポートを発表した。同リポートによれば、単身世帯は、厚生年金保険料率や健康保険料率の引き上げなどの影響をうけ、11年と比べ12年は、年収400万円の世帯で1万5000円減となるなど、全収入階層で可処分所得が前年比で減少。…12年から13年にかけては、復興増税による所得税・住民税増税や、給与所得控除の上限設定などの影響をうけ、いずれのケースでも、全年収階層で可処分所得が減少する。リポートは、「勤労世帯の負担の増加が続くことは、経済活力の低下を招き、経済全体の低迷にもつながりかねない」と指摘した。(『しんぶん赤旗』2011.12.17より抜粋。)
●消費税は「現状でも小零細企業の6割は転嫁できていない」「滞納・納税は2割に及ぶ」。中小零細企業にとって、消費税が厳しい税であることが中小企業諸団体の調査で明らかになっている。日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会の4団体が今年8、9月に共同で実施した「中小企業における消費税の転嫁に係る実態調査」(回答9388事業者)によると、消費税を販売価格に転嫁できない事業者は、売上高1000万〜1500万円で64%、2000万〜3000万円でも58%と6割近くにのぼった。転嫁できない事業者は利益を削って消費税を納税するしかない。払い切れない事業者が滞納に至っている。小零細事業者の自主的組織、全国商工団体連合会(全商連)の会員調査によると、消費税の「納付が困難」と答えた事業者は2割にのぼった。同連合会が8月から9月にかけて行った「2011年下期営業動向調査」では、課税業者で納税状況を回答した476業者のうち、「(消費税を)一括で払えず分納している」事業者が17.2%、「分納もできず、滞納している」は3.3%と、合わせて20.5%だった。(『しんぶん赤旗』2011.12.20より抜粋。)
●「国土交通省は21日、6月に公表した2011年度建設投資見通しを、11年度第3次補正予算までの投資額推計値に改定した。総額(名目値)は6月から3兆円超増加し、前年度比13%増の46兆4700億円。このうち東日本大震災からの復旧・復興にかかる政府建設投資総額は1割以上を占めている。一方、建設投資見通しには含まないものの、除染作業等にかかる費用の総額を約9500億円と推計した。」(『建設通信新聞』2011.12.22)
●「政府は24日に閣議決定した2012年度予算案で、東日本大震災復興特別会計(仮称)の創設を正式に決めた。震災復興や防災事業を管理する同特別会計の予算総額は、4000億円の予備費を含めて3兆7754億円。12年度は災害廃棄物の処理や原子力発電所事故の被災地の除染などに3兆2500億円を投じる。来年2月に司令塔として『復興庁』を発足させ、震災復興を加速させる構えだ。」(『日本経済新聞』2011.12.24)
●「内閣官房は22日、総合特別区域の第1次指定対象地域を決めた。国際戦略総合特区には東京を始め、北海道や京都府など7地域、地域活性化総合特区には26地域をそれぞれ指定した。…7件の内訳は、環境・エネルギーや健康をテーマにした『グリーンアジア国際戦略総合特区(福岡県など)』『関西イノベーション国際戦略総合特区(京都府・大阪府など)』『京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区(神奈川県など)』の3件、科学技術、情報通信戦略の『つくば国際戦略総合特区(茨城県など)』『アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成総合特区(愛知県など)』の2件、観光や金融戦略などの『北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区(北海道など)』『アジアヘッドクォーター特区(東京都)』の2件となる。地域活性化総合特区はヒアリング対象34件の中から選ばれた。」(『建設通信新聞』2011.12.26)
●「政府が24日閣議決定した12年度予算案のうち、国土交通省分は前年度比4.3%減の総額4兆7857億円(国費ベース)となった。うち公共事業関係費は2.7%減の4兆1639億円。自治体が一定の範囲で自由に使える内閣府の一括交付金(地域自主戦略交付金)に移した分を加えた総額は前年度とほぼ同規模の5兆0039億円となった。予算額は、通常分4兆1651億円に加え、成長分野などに重点配分する特別枠『日本再生重点化措置』分3825億円、全国防災関係費2381億円で構成。うち東日本大震災の復旧・復興対策経費は6543億円。公共事業関係費の事業分や別内訳は、治山治水6288億円(前年度比6.4%増)、道路整備1兆0539億円(6.9%増)、港湾空港鉄道等3522億円(4.4%増)、住宅都市環境整備が4232億円(11.3%減)、公園水道廃棄物処理等363億円(l8・3%減)などとなっている。大型プロジェクトでは、建設事業の再開が決まった八ツ場ダムの関連経費として、ダム本体の着工に向けた準備工事の費用などとして56億円が計上された。このほか、整備新幹線の未着工3区間や東京外かく環状道路都内区間の整備、スーパー堤防の整備などにも予算を配分する。スーパー堤防については、これまで整備予定としていた首都圏や近畿圏での計画区間延長873キロを見直し、120キロに縮小して整備を進める。」(『建設工業新聞』2011.12.27)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は19日、東日本大震災の被災地域で発注されているがれき処理業務について、建設工事と認められる部分を経営事項審査の完成工事高に算入できるとの考え方をまとめ、各地方整備局・都道府県に送付した。がれき処理業務は、処理施設の建設が含まれていても、『業務』として発注されるため、経審の完成工事高に含まれないとの懸念が一部で出ていた。国交省の通知では、被災地での災害廃物処理業務について、特例的に工事部分を切り分けて完工高に算入できるとの考え方を示した。」(『建設通信新聞』2011.12.20)
●「国出先機関の事務・権限移譲へ向けた具体的議論を行う政府の『アクション・プラン推進委員会』(委員長・川端達夫地域主権推進担当相)は19日に開いた会合で、事務局の内閣府が提示した広域的実施体制枠組みの方向性案を議論した。…広域的実施体制実現へ向け挙がっていた14課題の今後の方向性が提示された。ただ、執行機関のあり方など5課題については、A案、B案の2案を両論併記の形で示した。具体的議論では、地域主権改革を進めることには異論がないことを前提にしながら、出先機関を廃止し広域的ブロック体制に移行する場合により慎重な議論と検討の必要性を訴える国土交通省、環境省、農林水産省の副大臣・政務官と、副大臣・政務官発言に異論を唱え早期の出先機関廃止と事務・権限移譲を求める関西広域連合、九州地方知事会の知事らが両論併記となった5課題で意見が対立した。A案は隣接県などで利害関係が対立するケースも想定して広域的実施組織の長を構成団体知事が兼任せず独立して選任する独任制や、関連する事務・権限を構成団体からも持ち寄って一体的に広域行政を行うことが特徴。大規模災害時には所管大臣が指揮・監督できることも明記した。A案は、構成団体だけでは中立的・客観的立場での利害関係の調整が難しいのではとの省庁からの指摘を受けて提示された。一方、B案は早期移譲を求める知事らの主張に基づいて提起された。」(『建設通信新聞』2011.12.21)
●「東日本大震災で被災した仙台空港を、民間の力で活性化させようという動きが表面化してきた。宮城県は、改正PFI法に盛り込まれたコンセッション(公共施設等運営権)を導入し、民間ノウハウで戦略的な空港経営を実現したい考えだ。空港周辺の地域開発も進め、国内外からの集客や雇用創出、地域活性化と本格復興を目指す。コンセッションは当初、関西国際空港と大阪空港の経営統合に導入されると目されていたが、仙台空港の方が先に動き出しそうだ。」(『建設通信新聞』2011.12.21)
●「東京都多摩市の公契約条例が21日の市議会本会議で可決された。都内の自治体で公契約条例が制定されたのは初めて。対象は予定価格5000万円以上の工事などで、条例に違反した受注者には、契約を解除するなどの罰則が設けられている。12年4月1日から施行される。」(『建設工業新聞』2011.12.22)
●「国土交通省が創設した地域維持型契約方式に対する自治体の関心が高まっている。13日までに国交省が調査したところ、47都道府県のうち1道1都2府34県が地域維持型契約の導入に前向きな姿勢を示した。導入する自治体は、地域維持型JV(地域JV)の運用基準を定め、JVの登録を開始することになる。国交省の調査によると、社会資本の維持管理のために必要な工事のうち、災害対応、除雪、修繕、パトロールなど地域事情に精通した建設会社が地域で持続的に実施する必要がある地域維持事業の発注において、『地域維持型契約方式』の導入を検討すると回答したのは、l都2府24県だった。また、1道10県は、事業協同組合への発注など『地域維持型契約方式』に先行的に取り組んでいたり、今後試行する予定、と回答した。」(『建設通信新聞』2011.12.26)
●「内閣府は、改正PFI法に伴う基本方針の見直し状況を、民主党が21日に開いた成長戦略・経済対策PT官民連携(PFI/PPP)小委員会に報告した。民間事業者からの提案制度については、PFI事業の技術提案者に対する提案内容の改善機会の付与や、より優れた提案を採用するために予定価格の設定に努めることを明記する方針。公共施設の運営権関係では、実施方針への運営権の存続期間の規定方法のほか、法に基づく損失の補償方法を事前に実施契約に規定すること、運営権の移転許可・取り消し判断に関する留意事項などを盛り込む。」(『建設工業新聞』2011.12.26)
●「国土交通省は、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県が発注する復旧・復興工事で入札不調が増えているため、自治体や建設業界団体と対応策を協議する『復旧・復興事業の施行確保に関する連絡協議会』を立ち上げ、27日に仙台市の東北地方整備局で初会合を開く。入札不調や技術者・技能者の不足、労務単価の上昇などの実態を把握するのが狙い。自治体からは技術者の専任配置要件の緩和や労務単価の引き上げなどが要望される見通しで、年明けにも対策を打ち出す考えだ。国交省によると、被災自治体が発注する工事で、入札不調となって施工者を決められない工事が9月以降急増している。」(『建設工業新聞』2011.12.27)

労働・福祉

●「国土交通省は、従業員を社会保険に加入させないことで経費を削減している『保険未加入企業』の排除に向けた工程表をまとめた。12〜16年度の5ヵ年を3段階に分け、行政と元請・下請企業が一体となって公共工事や大規模な民間工事などを対象に保険加入の指導・徹底を進めていく。最終的には企業単位で許可業者の加入率100%、労働者単位で製造業並みの加入率達成を目指す。取り組みを徹底するため、全国の地方ブロックごとに協議会も設置する。…各主体に求められる役割として、行政は建設業許可・更新時や経営事項審査(経審)時にすべての事業者に保険加入の指導を徹底する。関係業界団体は、定期的な加入実態の把握や計画的な加入促進策を進めるために『保険加入計画(仮称)』の策定を検討。元請・下請企業は保険加入計画や行政による重点実施の方策も踏まえて保険加入を推進し、自らの工事現場で下請の保険加入を徹底するとしている。3段階のうち第1段階の12〜13年度に指導対象とする事業所や工事規模の考え方も明示。重点的に取り組む対象事業所や工事規模(重点的指導対象プロジェクト)を国と都道府県が決定するとした。事業所については、一定数以上の使用人や完成工事高を有する企業、経審の受審企業などの観点から決定。工事現場については、大規模工事(請負金額)や公共工事などから定めるとした。例として、事業所では使用人数がおおむね30人以上の事業所などを挙げ、工事現場では大臣許可業者が手掛ける公共工事や20億円以上の民間工事などを挙げた。」(『建設工業新聞』2011.12.16)
●民主党はl6日、「社会保障と税の一体改革」調査会と税制調査会の合同総会を国会内で開き、政府・民主党が年内策定をめざす「一体改革大綱素案」に盛り込む社会保障部分の最終案を了承した。年金額の大幅削減や介護保険の利用者負担増など社会保障のあらゆる分野を段階的・連続的に改悪する計画となっている。年金では「特例水準の解消」を口実に支給額を3年で2.5%引き下げる法案を来年の通常国会に提出すると決定。その実施状況を踏まえ、マクロ経済スライドを発動して毎年約0.9%ずつ連続的に引き下げていくことを検討する。中長期的課題として支給開始年齢のさらなる引き上げも検討すると明記した。介護では、一定の所得がある人の利用料引き上げなど「給付の重点化」の法案を来年の通常国会に提出する方向で検討。来年法案化しない事項も2015年度実施を念頭に検討するとしている。厚労省は、「給付の重点化」の中身として、要支援者の利用料倍増を含む利用者負担増を6項目示している。医療では、70〜74歳の患者負担倍増を来年度は見送るものの、13年度以降の取り扱いは再度検討するとした。(『しんぶん赤旗』2011.12.17より抜粋。)
●宮城県が発注していた仮設住宅の寒さ対策工事で、3次下請けの英(はなぶさ)土建(長野県上田市)に対する不払いが起きていた問題で、元請けの大和ハウスが未払金約512万円を支払うことで合意した。すでに支払われていた約340万円を含めて、請求していた約852万円全額が支払われた。(『しんぶん赤旗』2011.12.23より抜粋。)
●「東日本大震災の被災地で建設業の人手不足が深刻になっている。国の2011年度第3次補正予算の成立を受けて復興事業が本格的に動き出したが、建設各社は必要な人材を確保できないでいる。『人手不足』を理由に公共工事の入札に参加しない建設会社も多い。宮城県が最近、入札を実施した工事の2割が応札企業が現れずに宙に浮いており、復興の妨げとなる恐れがある。」(『日本経済新聞』2011.12.24)

建設産業・経営

●「放射性物質を含んだ汚染廃棄物の処理に悩む地方自治体に対し、除染技術を提供する目的で設立した『除染・廃棄物技術協議会』(事務局・三菱総合研究所)の参加企業は、16日の初回会合時点で60社に達することが分かった。幹事会社の大成建設、鹿島を含め建設会社の参加は10社を超える見通し。今後も入会を認めることから、協議会への参加企業はさらに拡大しそうだ。」(『建設通信新聞』2011.12.16)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「住宅の省エネ化と住宅市場の活性化、さらには東日本大震災の被災地支援を図る目的で、『復興支援・住宅エコポイント』がスタートした。今年7月にいったん終了した住宅エコポイント制度を変更・拡充したもので、エコ住宅の新築については、被災地を対象に取得ポイントの上乗せを実施。エコリフォームについては、省エネ・バリアフリーに加え、耐震改修工事を対象に追加した。取得ポイントは、半分以上を被災地の産品・製品との交換などに用いることを義務付けている。さまざまな場面で復興を後押ししたいという国民感情が高まっており、工事需要の創出にも一役買いそうだ。」(『建設工業新聞』2011.12.19)
●厚生労働省は、仮設住宅の孤独死対策として、各戸に緊急ブザーを設置する追加工事を認めると本紙の取材に回答した。設置にかかる費用は、災害救助法にもとづく国庫負担の対象となる。緊急ブザーは、屋内の呼び出しボタンを押すと、屋外の警報装置が光と音で周囲に異常を知らせる。高齢者の見守りに有効だとして仮設団地の自治会などから設置を求める声が高まっている。(『しんぶん赤旗』2011.12.24より抜粋。)

その他