情勢の特徴 - 2011年4月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「東日本大震災の影響を織り込んだ民間調査機関11社の予測が出そろった。震災前に前期比年率で2%弱とみられていた1〜3月期の実質成長率は、平均でマイナス0.6%に下方修正。さらに4〜6月期はマイナス幅が2.6%に広がる。自動車など生産の減少で輸出が落ち込むほか、消費マインドの悪化で個人消費も減少する方向だ。7〜9月期以降は復興需要が成長を下支えするものの、2011年度の実質成長率は0.4%にとどまる見通しになっている。」(『日本経済新聞』2011.04.05)
●「野村総合研究所は、東日本大震災の復興に向けた提言として、『東北地域・産業再生プラン策定の基本的方向』をまとめた。広域にわたる被災地域の復興に向け、『東北地域再生機構(仮称)』の創設を提案。被災地域の産業の再生・活性化にあたっては、『地域主権による地域づくり』『広域自治体連携』や『PPP』といった官民連携による社会資本整備など、新しい制度・枠組みを積極的に活用していくことが重要としている。」(『建設通信新聞』2011.04.06)
●「東日本大震災で被災した東北地方の復興と観光産業の創出を目指し、仙台空港周辺にカジノ施設を誘致する動きが今後、本格化しそうだ。7日に東京都内で開かれた日本PFI・PPP協会(植田和男理事長)のIR(カジノを含む統合型リゾート)発案部会では、カジノの専門家である木村慶一カジノ・オーストリア・インターナショナル日本代表が『復興型カジノ』を提案し、ゼネコンなど部会メンバーに対して積極的な参加を呼び掛けた。」(『建設通信新聞』2011.04.08)
●内閣府が8日発表した3月の景気ウォッチャー調査によると、3カ月前と比べた街角の景況感を示す現状判断DI(指数)は、東日本大震災の影響を受け、前月比20.7ポイント低下の27.7となった。落ち込み幅は、2000年1月の調査開始以来最大。これまで落ち込み幅が最大だったリーマン・ショック後の09年11月のマイナス7.0ポイントを大幅に上回った。(『しんぶん赤旗』2011.04.09より抜粋。)
●民間信用調査会社の東京商工リサーチが8日発表した2010年度の倒産(負債額1000万円以上、任意整理を含む)は、件数が1万3065件と前年度比11.3%減、負債総額は4兆7245億円で同33.7%の減少となった。3月の倒産は1183件(前年同月比9.9%減)、負債総額は2702億円(同13%減)だった。(『しんぶん赤旗』2011.04.09より抜粋。)
●「産業界で自然エネルギーを利用した発電システムの普及・拡大を目指す動きが広がっている。東京電力福島第1原子力発電所の事故で原発事業に逆風が吹くなか、三井造船やJFEエンジニアリングなど太陽熱発電プラント関連企業約l0社が連携、海外市場の開拓に乗り出す。丸紅は国内で小水力発電の能力を増強する。」(『日本経済新聞』2011.04.11)
●「仙台銀行が11日に金融機能強化法に基づく公的資金注入の申請検討を表明したことで、被災地の他の金融機関にも同様の動きが広がりそうだ。震災の被害が大きいうえ、地域経済の再建を急ぐために金融庁は強化法を改正して申請を促す。金融機関は5月中にも申請を判断するとみられる。仙台銀は今年10月にきらやか銀行(山形市)との経営統合に合わせ、公的資金の活用を検討していた。しかし震災への対応を優先して統合を2012年度中に延期する一方で、被災地の復旧・復興の資金需要に応えられるよう公的資金の申請を前倒しで表明した。東北6県と茨城県に本店のある金融機関は72。特に被害が大きい岩手、宮城、福島の3県には8地方銀行と19信用金庫、8信用組合がある。これら金融機関の自己資本比率はすべて国内基準の4%を上回っているが、融資先企業の業績悪化の影響は不透明なうえ、福島第1原子力発電所の事故に伴う風評被害が長引く懸念もある。公的資金の注入には、優先株を発行できるように株主総会で定款変更する手続きが必要。株主総会前の5月の銀行決算の発表前後に方針を固める公算が大きい。」(『日本経済新聞』2011.04.12)
●「東日本大震災の復旧対策を盛り込む総額4兆円の2011年度第1次補正予算案(一般会計・国費ベース)の全容が11日わかった。被災した中小企業の資金繰り対策に5000億円を投じるほか、深刻な打撃を受けた漁業の再生に2180億円を計上。第1次補正で被災者の雇用や仕事、地域経済再建につながる項目に厚めに予算を配分し、早期復興を後押しする。」(『日本経済新聞』2011.04.12)
●「政府は東日本大震災に対応した雇用対策で、解雇防止や失業保険などに1兆円を投じる検討に入った。休業手当を国が補助する雇用調整助成金を7000億円、雇用保険の失業給付を3000億円、今年度の第1次補正予算案に盛り込む。財源は労働保険特別会計の積立金を充てる。地震や津波、企業のサプライチェーンの混乱で雇用が悪化するなか、解雇を最小限に防ぎ、失職者の生活を支えることが急務だと判断した。」(『日本経済新聞』2011.04.12)
●「首都圏や近畿などの中小製造業が、東日本大震災で被災し、職場を失った製造業の従業員を雇用する取り組みを始めた。住居を提供する一方、板金や溶接といった技術を自社で生かしてもらう。大企業や自治体による被災者の雇用支援が始まっているが、ものづくりのすそ野を支える中小製造業同士でも被災者の生活再建を後押しする動き。引き受ける企業にとっては即戦力の人材が確保できる利点もある。」(『日本経済新聞』2011.04.13)
●「欧州連合(EU)のデフフト欧州委員(通商担当)は12日の欧州議会で、日本政府がEUとの経済連携協定(EPA)交渉開始で合意したいのであれば、基準・認証などの非関税障壁(NTB)の撤廃を加速すべきだとの見解を表明した。」(『日本経済新聞』2011.04.13)
●「日米両政府は13日、東日本大震災からの復興に向けた新たな協力体制について調整に入った。具体策として日米の企業が出資する『復興ファンド』の創設や、日米の官民が参加する復興合同会議設置などが浮上している。…米国側が4月上に提案し、日米が詰めの協議に入っている。復興ファンドは日米の企業が出資し、被災地の復興資金として活用する。合同会議は両国の企業経営者や政府関係者で構成し、復興事業に関する日米協力の在り方を協議する。米国ではシンクタンクの米戦略国際問題研究所(CSIS)がボーイングなど主要企業とつくる復興支援プロジェクトが20日に発足する予定。キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)がオブザーバー参加していることから日本政府と日本経団連が参加することも検討している。オバマ米大統領は3月17日の菅直人首相との電話協議で『中長期的な復興も含めてあらゆる支援を行う用意がある』と表明。日本発の経済危機に対する警戒感もあり、原発事故や復興支援を重要課題に掲げている。14、15両日にワシントンで開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも日本の震災復興が議題となる見通し。」(『日本経済新聞』2011.04.14)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は2011年度の土木工事積算基準の改正内容を固め、各地方整備局に通知した。不調・不落対策として10年度から実施している『日当たり作業量補正』について、対象地域を大都市地域以外にも拡大する。大都市地域での工事に限らず、維持・修繕工事の現場が小規模化して作業効率が落ちていることから、大都市以外の地域でも1日当たりの作業量を少なく積算し、通常の工事より積算価格が高くなるよう改正する。土木工事標準歩掛かりの改正は、機械土工(土砂)など10工種の見直しとなった。」(『建設通信新聞』2011.04.01)
●「民主党の国土交通部門会議は、東日本大震災の被災地の復旧・復興法整備に向けた報告案をまとめた。新たな制度として、総合的な市街地復興制度や、国が主体となった早期復興のための土地区画整理事業制度、インフラ再建へのPFI・PPPの活用策などを提案。被災失業者の公共事業への就労促進のための特別措置法や、被災した自治体が実施する復旧工事での財政負担軽減策なども盛り込んだ。1日に政務調査会の『東北関東大震災復旧・復興特別立法チーム』に提出する。」(『建設工業新聞』2011.04.01)
●「東日本大震災で被災したり、計画停電で事業が停滞する恐れがある企業に、福岡県や神戸市など他地域の自治体が空きオフィスや工場を貸し出す動きが相次いでいる。家賃を一定期間無料にするなど負担を減らしたうえで、現地での取引先開拓などにも応じる。経営余力に乏しい中小を主体に、企業に一時的な避難場所を提供、当面の間、事業継続を手助けする。福岡県は立地や住宅などの相談に1つの窓口で応じる専門チームを今月中旬までに設置。…関東では計画停電に悩む企業も多い。…県の半導体関連やバイオ関連の施設の賃貸にも応じる。神戸市は関連団体が貸しオフィス、研究室などとして管理するうち7つのビルの計25室を提供する。…愛知県と名古屋市は外資系企業の誘致団体『愛知・名古屋国際ビジネス・アクセス・センター』と共同の相談窓口を設けた。県内の工場用地を紹介するほか、名古屋市の関連団体が運営する3つのベンチャー育成施設への入居を支援。賃料を6カ月間無料にする。…大阪市の第三セクター、アジア太平洋トレードセンターは被災企業向けに1〜3カ月の短期滞在用オフィス空間を40区画、総面積約5600平方メートルを設定。」(『日本経済新聞』2011.04.05)
●「東日本大震災の被災地の復旧・復興財源を確保する一環で政府が打ち出した11年度公共事業異などの5%分の執行留保。公共事業予算の削減が続く中での執行留保が、被災地以外の地域のインフラ整備や建設業に大きな影響を与える懸念が出ている。執行留保した5%分が被災地に回された場合、被災地以外の地域は逆に5%分の事業費削減になるからだ。震災前に予定していた配分対象額は事業費ベース6兆8717億円で10年度比約11%減。ここに執行留保が加わると、被災地以外の地域は単純計算で約16%の削減になる。公共事業の大幅削減は各地に『災害対応空白地域』を生む背景にもなっており、補正予算による追加や、防災インフラへの重点配分が急務になりそうだ。」(『建設工業新聞』2011.04.05)
●政府は5日、国家公務員制度改革推進本部を国会内で開き、来年度から公務員の蟄働条件を労使交渉で決めることなど公務員制度改革の「全体像」を決定した。今国会に関連法案を提出する。全体像は、警察などを除く国家公務員に給与や勤務時間などの労働条件を交渉で決める協約締結権を付与。しかし、ILO(国際労働機関)から再三、勧告を受けていた争議権付与は見送った。一方で、現行の人事院は廃止し、労使交渉で使用者代表となる「公務員庁」を設置。これまで第三者機関が担ってきた権能の大半を政府が握る。交渉項目から「管理運営事項」を除くなど協約締結権を形骸化する危険性も抱えている。幹部職員についてはさらに内閣人事局が一元化し、時の政権党いいなりの公務員づくりを進める仕組みだ。(『しんぶん赤旗』2011.04.05より抜粋。)
●「東京都水道局は、公共工事の品質確保を目的に総合評価方式を大幅に拡大する方針だ。建築工事の予定価格4億円未満、土木工事3億2000万円未満、設備1億2000万円未満など、B・Cランクの中小規模工事案件に適用する施工能力審査型を中心に積極的に導入拡大を図る。同規模工事は、例年400件程度発注されているが適用率は1割台にとどまる。これを約半数の200件程度まで適用件数を引き上げたい考えだ。5月1日公表以降の案件から適用する。」(『建設通信新聞』2011.04.06)
●「政府・民主党は9日、東日本大震災の復旧対策を盛り込んだ2011年度第1次補正予算案の骨格を固めた。歳出項目は@仮設住宅7万戸の建設などに約5000億円A道路や港湾建設など公共事業に約1兆5000億円B民間金融機関の融資の保証限度額を引き上げる中小企業対策などに約1兆円――が柱。国費で総額4兆円規模に達する。」(『日本経済新聞』2011.04.09)
●「国土交通省は東日本大震災で津波被害を受けた被災地の山や傾斜地を削って整地し、災害時の避難拠点となる病院や公民館などの用地とする検討に入った。津波被害を受けにくい高台に防災拠点を重点整備し、ここを中心に災害に強い街づくりを進める。整地を通じ地盤が緩んだ傾斜地の土砂崩れを防ぐ狙いもある。…傾斜地の整地や土砂崩れ防止の工事費用の半分程度を地方自治体に補助する方向だ。病院や公民館など建物の整備費は主に自治体が負担する。政府は大震災の被災地で当面の生活の場を確保するため、仮設住宅を高台で重点的に整備している。新たに設置する避難拠点は将来を見据えた街づくりの中核との位置付けで、ここを中心に住宅などの整備計画を作る。」(『日本経済新聞』2011.04.11)
●「農林水産省は、岩手、宮城、福島の各県におけるがれき処理作業発注に当たって、地域精通度合いを考慮し、被災地や周辺地域の企業を優先して選定・契約する考えだ。津波被害で浸水した農地への対処法としては、土地改良法に除塩事業の特例を創設する。漁港・漁村・漁場の本格的な復興対策については、震災後3年から5年で実施する考え。」(『建設通信新聞』2011.04.11)
●「国土交通省は、被災地の復旧・復興に向け、具体策を検討すべき項目案をまとめた。安全で良好な市街地の整備に向け、『復興防災まちづくり方針(仮称)』を策定し、避難路・避難施設などの整備や宅地・公共施設の移転・かさ上げなどの具体策も検討する。都市・交通基盤施設の整備に当たっては、PPP・PFIの活用の検討も盛り込んだ。被災地の復旧・復興に向けた対応案では、公共土木施設などの災害復旧に向け、補助率の特例や国による権限代行などを検討する。安全で良好な市街地の整備に向け、『復興防災まちづくり方針(仮称)』を策定し、避難路・避難施設など整備するほか、各種市街地関連事業を実施する。防災のための集団移転や宅地・公共施設のかさ上げも検討する。」(『建設通信新聞』2011.04.11)
●「宮城県は、東日本大震災の復興計画の下地となる震災復興基本方針(素案)をまとめた。向こう10年間を復旧(3年)、再生(4年)、発展(3年)の3期に分け、単なる被災地の復旧でなく、県の将来像を見据え公共施設・防災施設や商工業のあり方を再構築するとの方針を明記。津波被害の大きい沿岸8市7町の原形復旧は不可能だとして、高台に住宅を整備するなど都市計画を抜本的に見直す必要性をうたった。特別立法・特区制度の柔軟な適用や、みやぎ発展税・環境税などの税収を復旧事業に振り向ける方針も示した。」(『建設工業新聞』2011.04.12)
●「戸田建設は、協力会社への工事発注について、下請次数を『原則3次以内』にとどめる方針を全社展開する。協力会社組織の利友会と合意し、4月1日の契約から運用を始めた。1次協力会社の見積書に2次と3次の会社名を確認するほか、下請次数の重層化が懸念される設備工事などでは分割発注の拡大を図る。日本建設業連合会が重層下請構造の改善を推進する中、建築と土木の全工事を対象に本格展開に踏み切る同社に注目が集まる。」(『建設通信新聞』2011.04.14)
●「政府は14日、東日本大震災の被災地復興に向けた指針をつくる復興構想会議(議長・五百旗頭真防衛大学校長)の初会合を首相官邸で開いた。五百旗頭議長は復興財源として公債発行や『震災復興税』の創設が不可欠などとした基本方針を提出。今後、この議長案をもとに5月中旬をめどに検討課題を整理し、6月末の第1次提言の取りまとめを目指す。」(『日本経済新聞』2011.04.15)
●「政府は14日、東日本大震災の復興ビジョンづくりなどを担う有識者による復興構想会議の初会合を開いた。メンバーは議長の五百旗頭真防衛大学校校長を含め15人で、建築家の安藤忠雄氏が議長代理に就いた。初会合では議長から構想策定に向けた基本方針が示され、高台に住宅・学校・病院などを整備し、港や漁業などの拠点は5階建て以上の強いビルを建設。さらに津波から避難できる丘の公園を被災地のがれきを活用してつくる『創造的復興』を検討すると表明した。5月中旬に検討課題を整理し、6月末までに第1次提言をまとめる。」(『建設工業新聞』2011.04.15)
●「東日本大震災の復旧・復興に向けて、政府が4月中の成立を目指す11年度第1次補正予算案の内容がほぼ固まった。財政支出は総額約4兆円で、その6割超がインフラの復旧関連。河川、道路、上下水道、廃棄物処理施設などの復旧を中心に1兆2900億円程度の公共事業関係費を計上するほか、被災地のがれき処理に3000億円台、応急仮設住宅の建設などに5000億円程度、学校などの施設復旧に4000億円程度を充てる。来週末までに与野党協議を終えて閣議決定し、国会に提出する。」(『建設工業新聞』2011.04.15)
●「国土交通省は、港湾施設の復旧・復興に向け、国や港湾・海岸管理者、地元市町村、港湾利用者などで構成する協議会を設置し、各港湾の『復旧・復興方針』を策定することを決めた。14日の交通政策審議会港湾分科会に提示した。…すべての施設を原形復旧するのではなく、被災地の輸送需要や都市・産業復興との関連を考慮した復旧順位・水準の決定も必要となる。このため、東北全体の物流体系などを考慮した『新たな港湾づくり』の観点から港湾計画を議論する。」(『建設通信新聞』2011.04.15)
●「東日本大震災で大津波による壊滅的被害を受けた東北地方の太平洋沿岸の農村・漁村の再建に向けた考え方が具体化してきた。農林水産省は、高台への集落移転や、沿岸部と平野部に位置する施設の高層化など津波に対する安全を確保しながら、施設の耐震化や衛生機能の高度化、再生エネルギーの導入といった最先端の産業基盤の構築に取り組む構想を描く。今後、特別立法も検討しながら被災地の経済・暮らしの再興を支援する。」(『建設工業新聞』2011.04.15)

労働・福祉

●「東日本大震災の影響で失業した被災者らの就労支援に向けた取り組みが本格的に動きだす。政府が府省横断組織として設置した『被災者等就労支援・雇用創出推進会議』(座長・小宮山洋子厚生労働副大臣)は3月31日に開いた会合で、基本的な対処方針や当面の緊急対策に関する骨子案をまとめた。被災地で本格化する復旧事業を中心に雇用創出を推進する考えで、雇用の受け皿として建設業界の積極的な対応に期待が集まっている。ただ復旧事業を担う施工者側の受け入れ体制や、重層下請といった構造的な課題などを指摘する声もあり、一産業の問題としてではなく、国全体として実効ある施策を打ち出すことが必要になりそうだ。」(『建設工業新聞』2011.04.01)
●「建設関連業で働く女性技術者の負担が大きくなっている。全国建設関連産業労働組合連合会の調査によると、残業時間は男性が4年連続減少に対し、女性は6年連続増加しているほか、年休取得率も男性は増加に転じたが、女性は減少が続いていることが分かった。建設関連労連は、技術者に占める女性の比率が高まり、『責任の大きい仕事を担う人が増えている』ことが要因と指摘している。」(『建設通信新聞』2011.04.12)
●新国立劇場で合唱団員の契約更新を拒否された日本音楽家ユニオンの八重樫節子さんが、団体交渉などを求めた訴訟と、INAXメンテナンスで働く全日本建設交運一般労組の組合員が会社側に団体交渉を求めた訴訟の上告審判決が12日、最高裁判所第3小法廷で出された。新国立劇場合唱団員訴訟で、那須弘平裁判長は、東京高裁判決を破棄し、八重樫さんを労働組合法上の「労働者」と認定した。そのうえで採用拒否、団体交渉拒否で議論が尽くされていないとして、東京高裁に差し戻すよう求めた。2009年3月に出された東京高裁判決は、中央労働委員会が出した新国立劇場に団体交渉の応諾を求める救済命令を取り消し、不利益取り扱いに関する救済申し立てを棄却していた。INAXメンテナンス訴訟で、那須弘平裁判長は、東京高裁判決を破棄し、控訴を棄却。東京地裁判決の結論が確定した。「カスタマーエンジニア」(CE)と呼ばれる委託契約の労働者を「労働者」と認定するとともに、団体交渉拒否は不当労働行為にあたるとした。判決では、労働者としての認定について、賃金が支払われているかどうかなど、就労実態から判断されるとした。(『しんぶん赤旗』2011.04.13より抜粋。)

建設産業・経営

●「日本建設業団体連合会、日本土木工業協会、建築業協会(BCS)の3団体合併後の新団体『日本建設業連合会』(新・日建連)が1日に発足する。…新・日建連は『会員の役に立つことはもちろん、広く産業界、そして国民各層からも、信頼と理解を得られる建設業の団体』(野村会長)を目指し、初年度の2011年度は、未曾有の被害をもたらした東日本大震災を踏まえ、被災地の支援活動とともに、復旧・復興の過程で生じる諸課題に積極的に対応していくほか、公共投資、社会資本整備の推進、対等な契約関係の確保、建設業の国際展開の推進など最重要課題に取り組んでいく。」(『建設通信新聞』2011.04.01)
●「注文住宅を手掛ける木下工務店(東京・新宿)はリフォーム事業に本格参入する。今後5年かけて1000人程度の新築の施工者をリフォーム事業に移し、同社の住宅を購入した顧客や提携している工務店の顧客のリフオーム需要を掘り起こす。新築着工戸数が伸び悩む中、修繕や建て替えの需要は底堅いと見ている。現状で年間30億円程度のリフォーム事業の売上高を200億円程度にまで引き上げる。」(『日本経済新聞』2011.04.04)
●「大林組と協力会社組織の林友会連合会は、『大林組認定基幹職長』(通称・スーパー職長)制度を2011年度から発足させた。優秀な職長を150人程度選び、大林組が同社現場で勤務した日数や熟練度によって日額3000円、または2000円を支給する。優良技能者の標準目標年収を600万円以上に設定し、達成可能な水準に底上げする。日本建設業団体連合会(現日本建設業連合会)が09年4月に公表した『建設技能者の人材確保・育成に関する提言』で提唱する優良技能者認定制度に対応する。同社と林友会連合会はワーキンググループを設け、10年6月から検討を重ねてきた。建設産業の魅力と若年建設技能者の入職・定着率を高めるため、既存制度の選定基準や支給額を見直し、新制度として導入した。」(『建設通信新聞』2011.04.06)
●「戸田建設は、1年前から導入している優良技能者への手当支給制度を推進するため、イントラネットに就労管理システム『T−PARTNER』を構築し、全作業所で運用を始めた。これまでは就労手帳をもとに支給額を手作業で集計してきたが、システム化によって3カ月単位で支給できるようになり、事務効率を大幅に向上できるとしている。」(『建設通信新聞』2011.04.08)
●「東京商工リサーチがまとめた建設業倒産統計(負債額1000万円以上)によると、10年度(10年4月〜11年3月)の建設業の倒産は3439件で、前年度比11.7%減となった。年間の倒産件数で3500件を下回ったのは94年度以来16年ぶり。地域別では37都府県で前年度を下回っており、政府が実施した『景気対応緊急保証制度』や『中小企業金融円滑化法』などの政策が奏功した格好だ。ただ、同社は、東日本大震災で建設資材が品薄になっており、業績不振の中小・零細企業を中心に事業継続が難しくなる企業も出てくるのではないかと分析している。」(『建設通信新聞』2011.04.11)
●「全国中小建築工事業団体連合会(全建連)の工務店サポートセンター、全国建設労働組合総連合(全建総連)、日本建築士会連合会(士会連合会)の3団体は共同で、『応急仮設木造住宅建設協議会』を設立した。東日本大震災の被災地である岩手、宮城、福島の3県で建設される仮設住宅に、地域工務店による地域材を活用した木造住宅を供給するのが目的。12日に東京都内で会見した同協議会の青木宏之会長(全建連会長・工務店サボートセンター理事長)は『地域の木材を使い、地域の工務店が仮設住宅を建設することで、雇用とお金が地域に回るようにしていきたい』と述べ、地産地消の仮設住宅建設を目指す考えを明らかにした」(『建設工業新聞』2011.04.13)
●「建設業を含む中小・零細事業者が加盟する全国商工団体連合会(全商連)は13日、菅直人首相、東京電力に対し東日本大震災からの復興・再生へ向けた緊急要請を行った。被災者支援とともに中小事業者に対する債務返済・猶予・免除のほか、原発事故による営業・風評被害などに対する損害賠償などが柱。被災した岩手、宮城、福島、茨城、千葉の各県から約40人が参加、中小建設業経営者からは、津波による流失重機への対応・支援について強い不安の声が出た。」(『建設通信新聞』2011.04.14)
●「東芝の佐々木則夫社長は14日、日本経済新聞などのインタビューに応じ『2015年度に原子力事業の売上高を1兆円にする目標が遅れる可能性がある』と述べ、原発事業の中期計画見直しを示唆した。福島第1原子力発電所の事故で世界的に原発計画の見直しが進む可能性がある。しかし、エネルギー消費が膨らむ新興国の導入機運は根強い。『長期的には原発の必要性は変わらない』として経営の柱とする戦略は変えない考えを示した。」(『日本経済新聞』2011.04.15)
●「鹿島、大成建設など主要ゼネコン4社がアルジェリアの高速道路建設工事で、2011年3月期に合計で最大800億円強の損失処理をする見通しとなったことが14日、分かった。工事が大幅に遅れ、発注した同国政府が代金の支払いを一部拒否、回収のめどが立っていないため。」(『建設通信新聞』2011.04.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●ドイツで地球温暖化対策の一つとして注目されている再生可能エネルギーによる発電量が昨年、総発電量の16.8%に達し、熱なども含めたエネルギー供給量では、前年に比べ9.2%増加したことが明らかになった。ドイツ環境省が3月16日に発表したところによると、風力や太陽光、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギー発電で、年間1億2000万ドルのCO2が削減され、昨年より3万人多い37万人の雇用につながったとしている。(『しんぶん赤旗』2011.04.08より抜粋。)
●「経済産業省の原子力安全・保安院と国の原子力安全委員会は12日、東京電力福島第l原子力発電所の事故を原発事故の深刻度を示す国際評価『国際原子力事象評価尺度(INES)』で最悪の『レベル7』へ2段階引き上げたと発表した。レベル7は、過去に旧ソ連で1986年に起き、史上最悪といわれるチェルノブイリ原発事故しかない。東日本大震災で原発を安全に止められず、1カ月たっても復旧に手間取っていることが、事故の重大さを際立たせている。」(『日本経済新聞』2011.04.12)
●「東日本大震災による公立学校の建物被害は、19都道県で5538校に上ることが文部科学省の被害状況(12日午前7時時点)まとめで明らかになった。このうち建物の被害が大きく建て替えや大規模復旧工事が必要とされるのが180校ある。これら建物の本格復旧事業費は、6月以降に編成する2011年度第2次補正予算案に盛り込まれる見通しだ。」(『建設通信新聞』2011.04.13)
●「東日本大震災で強い揺れに見舞われた仙台市内で、斜面や谷を土砂で埋めた『盛り土』で造成した住宅地に地滑りが発生し、大きな被害が出ている。京都大防災研究所の調査で分かった。仙台市は余震や降雨による2次被害の恐れがあるとして緊急調査に乗り出した。」(『日本経済新聞』2011.04.15)
●「マンション販売に陰りか出ている。不動産経済研究所(東京・新宿)が14日発表した3月のマンション市場動向によると、首都圏(東京、神奈県、埼玉、千葉の1都3県)の新規発売戸数は3685戸と前年同月並みとなった。市場は復調傾向にあったが、同研究所は『首都圏では4月は10〜15%程度は減る』と予測する。」(『日本経済新聞』2011.04.15)
●「シャープと住生活グループのLIXIL(リクシル)は14日、省エネ住宅向けの商品開発や販売などで提携すると発表した。折半出資での新会社設立で5月末までに正式契約する見通し。目指すはパナソニックが手がける『家まるごと』戦略への対抗軸だ。住宅やオフィスビルで使う建材や家電を一括供給する体制を整え提案力を高める。」(『日本経済新聞』2011.04.15)

その他

●ドイツの労働組合が現在取り組んでいる春闘≠ナ、デモや警告ストを行って使用者側に圧力をかけ、3〜5%の賃上げを相次いで勝ち取っている。労組側は「景気回復を労働者の懐まで持ってきた」(鉱山・化学・エネルギー労組=IG・BCE=のバシリアディス委員長)と評価している。(『しんぶん赤旗』2011.04.05より抜粋。)
●「北京市政府は外資企業の最低賃金を中国企業の1.5倍以上に引き上げる指導を始めた。独シーメンスなど北京市の外資企業100社弱は共同で労使交渉を行い、1.5倍以上の水準で合意した。賃金上昇を求める動きが中国各地に波及し、現地進出の日本企業には経営の圧迫要因となる恐れがある。外資の最低賃金を中国企業より高く設定することに対し、『外資企業に対する差別だ』との反発も出ている。」(『日本経済新聞』2011.04.07)
●福島第1原発の事故を受け、ドイツでは脱原発≠フ世論と運動が高まっている。その中で、ドイツ政府は「エネルギー政策の転換」を目指し、国民的なコンセンサスをつくろうと模索している。…メルケル首相を再考させたきっかけは、福島第1原発の事故だ。同首相は事故後、「日本のような高い安全技術を持った国で、起こりえないと思ったことが起きた」と発言。国内にある17基の原発の稼働延長計画を3カ月間凍結し、原発を総点検するよう指示した。(『しんぶん赤旗』2011.04.13より抜粋。)
●「ベトナムで工業団地を運営する日越企業が東日本大震災で被災した中小企業の進出支援を始める。越最大規模の民間企業グループ、サイゴン・インベスト(SGI)は工場の賃料割引、住友商事は管理費免除などを提案し、越大手銀行は特別融資の検討に入った。被災企業を誘致するのはSGIの中核企業で、ホーチミン証券取引所に株式を公開している不動産開発大手キンバックシティ(KBC)。ベトナム北部のクエボ工業団地(バクニン省)に整備した中小企業向けのリース工場を対象に、被災した部品メーカーなどに各種の優遇策を提示する。工場の面積は1棟約5千平方メートルで、数社が分割して使う。全体で50〜70社の進出が可能。賃料は通常より5%程度低く設定し、1千平方メートル当たり月額38万円程度となる。最初の1カ月分を無料にする案も検討している。被災企業は社員寮を優先的に利用でき、従業員の確保も容易になる。」(『日本経済新聞』2011.04.14)
●「独立行政法人の日本政府観光局が14日発表した3月の訪日外国人数は、前年同月比50.3%減の35万2800人だった。前年比で減少するのは2009年10月以来、17カ月ぶり。減少幅も過去最大だった。東日本大震災や福島第1原子力発電所の事故の影響で、全国で外国人観光客の予約キャンセルが相次いでいることが背景にある。」(『日本経済新聞』2011.04.15)
●「ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国(BRICS)による首脳会議が14日、中国の三亜で開かれ、世界で新興国の発言力を高める方針を確認した『三亜宣言』を公表して閉幕した。原子力に関して『将来の新興国のエネルギー構成で重要な位置を占め続ける』と表明し、原子力発電所の建設を進める路線を維持する方針を示した。」(『日本経済新聞』2011.04.15)