情勢の特徴 - 2011年5月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省がまとめた10年度の新設住宅着工戸数は、前年度を5.6%上回る81万9020戸と前年度の減少から再び増加に転じた。ただ、81万戸台という着工戸数は1964〜65年度とほぼ同水準。100万戸割れも2年連続で、『低水準で推移していることに変わりはない』(総合政策局)としている。3大都市圏の新設マンションは増加し、持ち直しの傾向も見られるが、東日本大震災が11年度の着工戸数にどの程度影響を及ぼすか、現時点では不透明だとしている。」(『建設工業新聞』2011.05.02)
●「東日本大震災の復旧対策を盛り込んだ11年度第1次補正予算が2日の参院本会議で可決、成立した。総額4兆0153億円の規模で、被災者向けの仮設住宅整備や、津波被災地のがれきの撤去などの緊急対応の施策を中心に予算を計上した。併せて、予算執行を裏付ける財源確保法も可決。基礎年金の国庫負担2分の1を維持するための『埋蔵金』2.5兆円を復旧費費用に転用するほか、高速道路無料化実験の一時凍結と高速道路料金割引(利便増進事業)の見直しなどによって新規国債を発行せずに財源を捻出することも決まった。 補正予算の内訳をみると、10万戸超の仮設住宅の建設・供給を柱とする災害救助関係費に4829億円を計上。津波の被災地で大量に発生したがれきなどの災害廃棄物の処理には3519億円を充てる。被災した公共インフラの復旧事業では、公共土木施設(河川・海岸・道路・港湾・漁港・下水道等)に8235億円、農地・農業用地に500億円、有料道路に492億円、既設公営住宅に468億円、空港に237億円、水道・工業用水・廃棄物処理施設等に506億円をそれぞれ配分する。政府は、今回の補正予算と法改正などの総合対策によって、20万人程度の雇用を創出する効果と、150万人強の雇用を下支えする効果が見込めると試算。インフラなどのハード面の整備だけでなく、被災地の雇用対策としてのソフト面での波及効果も期待している。」(『建設工業新聞』2011.05.06)
●民間信用調査会社の帝国データバンクは6日、東日本大震災の影響による企業倒産が、4月末時点で66件(負債総額約371億円)に達したと発表した。1995年の阪神大震災の発生後1カ月半と比較して件数は3倍に上った。生産設備の損壊など直接的な被害による倒産は6件だが、東北地方を中心とした被災企業の実態把握が進んでいないことから、件数は膨らむ可能性がある。取引先の被災や消費自粛のあおりで、間接的な被害を受けた倒産が60件と全体の9割を占めた。都道府県別では北海道と東京都が7件、群馬県6件、福島県5件、新潟県4件、青森、宮城、秋田、茨城、愛知、大阪の各府県3件など。倒産が近畿地区に集中していた阪神大震災に比べ、地域的な広がりもみられた。(『しんぶん赤旗』2011.05.07より抜粋。)
● 政府は、2日に成立した2011年度第1次補正予算で、政府系金融機関の財政基盤を強化し、東日本大震災で被害を受けた中小企業に長期、低利の融資などを実施する。日本政策公庫に「東日本大震災復興特別貸付」の別枠を新設する。これによって、地震と津波による直接被害を受けた中小企業と福島第1原子力発電所事故により指定された警戒区域等(計画的避難区域、緊急避難準備区域含む)の中小企業に対し、既存の貸し付けとは別に、中小企業向け(中小事業)で3億円、小・零細向け(国民事業)で6000万円を限度額として貸し付ける。…また、直接被害を受けた中小企業と一定割合以上の取引のある中小企業に対しては、直接被害の中小企業と同様の限度額を、設備、運転資金ともに最長15年間貸し付ける。…このほか、原発の風評被害の影響などで売上額が減少している中小企業に対しても、設備資金で最長15年、運転資金で最長8年、据え置き期間最長3年間の貸付制度を設る。また、商工組合中央金庫(商工中金)も「危機対応業務」(中小企業向け)で同様の貸し付けを実施する。民間金融機関の融資保証を行う公的機関である信用保証協会も、「東日本大震災復興緊急保証」を新設。無担保で8000万円、有担保と合わせると2億8000万円までの融資保証をする。保証料率は0.8%以下。対象は、震災の影響で震災後3カ月間に売上高が前年同期比10%以上減少している被災地域の中小企業と原発事故による警戒区域等の中小企業。または、被災区域内の事業者と取引があり、震災の影響で売上高10%以上の減少など業況が悪化した中小企業。さらに、震災に起因した風評被害で契約が解除されたことなどから売上高が15%以上減少した中小企業も対象となる。(『しんぶん赤旗』2011.05.08より抜粋。)
●「政府は、昨年6月に策定した新成長戦略の見直しに着手する。エネルギー政策では、東京電力福島第1原子力発電所の事故をうけ、安全対策の強化を盛り込むとともに、電力制約のもとでの経済成長の方向性を打ち出す。月内に新成長戦略実現会議での議論を始める。産業空洞化防止などと併せ『日本再生のための戦略』と位置付け、年内に具体案をまとめる。新成長戦略見直しの方針は、東日本大震災を踏まえて政策の優先順位を見直す『政策推進のための全体指針』に盛り込む。全体指針は週内にも閣議決定する。エネルギー政策を巡っては、安全性の確保に焦点をあてる。自然エネルギーの拡充などで温暖化対策の促進にも結びつける狙いだ。日本経済の成長を支える海外市場の開拓や産業空洞化の防止も重要課題。原発や高速鉄道を管理運営も含めて海外から受注する『パッケージ型インフラの海外展開』などの推進策を、震災後の情勢に照らし合わせながら再検証する。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の判断時期については、全体指針で『総合的に検討する』との表現にとどめた。」(『日本経済新聞』2011.05.10)
●財務省が12日発表した4月上中旬の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7868億2300万円の大幅な赤字となった。東日本大震災の影響で、輸出額が前年同期比12.7%減と落ち込みが続いた一方、石油製品を中心に輸入額が増加したことで赤字が膨らんだ。(『しんぶん赤旗』2011.05.13より抜粋。)
●「政府は東日本大震災を受けて、地方債を2011年度に約1兆円増発する計画をまとめた。被災した自治体が復旧・復興対策の地方負担分などに充てる。増発分は財政融資資金と自治体が出資する地方公共団体金融機構が全額引き受ける。民間の地方債市場への影響は限定的とみられるが、国の地方交付税が主な返済原資のため、国の財政負担が増す要因となる。総務省が当初の地方債計画に9857億円積み増し、総額を約14兆7000億円とした。災害復旧事業の地方負担や地方税収の減少分の穴埋めに回す。被災地自治体に配慮して公的マネーで全額引き受ける。」(『日本経済新聞』2011.05.14)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、東日本大震災の復興への適用も想定される同省関係の規制・制度改革をまとめた。8日に閣議決定した『規制・制度改革に係わる方針』のうち、市街化調整区域における風力発電機付随設備に係わる設置許可の柔軟化や、PPP/PFI制度の積極的な活用など、10項目を選定。このほか、『規制・制度改革に関する分科会中間とりまとめ』の中から発電水利権許可手続きの合理化と区分所有法における団地の一括建て替え要件の緩和の2項目を挙げている。『「国民の声」規制・制度改革集中受付に提出された提案等への対処方針』(4月8日閣議決定)からの4項目を加えると計16項目になる。4月27日に開いた民主党の国土交通部門会議の中で示した。」(『建設通信新聞』2011.05.02)
●「東北地方太平洋沖地震による地盤沈下などの海岸地形の変化に対応するための検討が始まった。国土地理院の調査によると、地震によって最大で約1.2メートルの沈下が発生。海岸線の位置が変化し、地元では対応に苦慮する声が上がっている。国土交通省は4月28日、『海岸における津波対策検討委員会』(座長・磯部雅彦東大大学院新領域創成科学研究科教授)の初会合を開き、海岸保全施設復旧に向けた検討を始めた。9月までに基本的な考え方をまとめる予定だ。」(『建設通信新聞』2011.05.02)
●「政府が検討している東日本大震災の被災地の『生活の平常化』に向けた基本方針の素案が4日、明らかになった。被災地のがれき処理について、住宅地や避難所の近くでは『8月末までにおおむね撤去する』と明記。仮設住宅は菅直人首相が表明した『お盆までの入居』を実現するため、自治体の用地確保を支援する。海岸の堤防も8月までに段階的に補強し、台風シーズンに備える。同方針は2日に2011年度第1次補正予算が成立したことを受け、今後3カ月の復旧の具体策や目標などを明示する。夏までに生活環境を一定程度整える狙いで、政府の緊急災害対策本部(本部長・首相)が17日にも決定する。」(『日本経済新聞』2011.05.05)
●衆参両院の3分の2以上の賛成を必要とする改憲発議要件を、2分の1へ緩めるための憲法96条改定をめざす「憲法改正」議連(仮称)を、自民党、民主党などの改憲推進派の有志議員で5月中に旗揚げすることが4日、わかった。同議連は、今通常国会に96条「改正」案を提出し、今年中の成立をめざすとしている。同議連の設立趣意書は「国会の発議要件を緩和することにより、国会が柔軟に憲法改正を提案することができるようにする必要がある」と、設立の目的をのべている。憲法96条改憲を先行提案し、与野党の意見が整わず動き出せない衆参憲法審査会における実質審議を促して、「国会に改憲発議をしやすい環境をつくる」(議連関係者)のがねらいだ。(『しんぶん赤旗』2011.05.05より抜粋。)
●「宮城県は2日、有識者で組織する『宮城県震災復興会議』の初会合を県庁で開き、9月の復興計画策定に向けた本格議論をスタートさせた。有識者は、各種規制などさまざまな障害を突破し円滑に復興を進められる総合特区の活用、アジアダイナミズムを取り入れ産業振興を図るための道路網など基幹インフラの整傭、各被災市町での地域特性に応じた復興グランドデザインの早期作成などを提案した。県は今会合での提案を受け、6月3日の次回会合で復興計画のたたき台を示す。」(『建設工業新聞』2011.05.09)
●「東京電力福島第1原子力発電所の事故の被害者に対する損害賠償(補償)を巡る政府支援の枠組みが10日、大筋で固まった。東電が長期間かけて補償金を支払い、同社による負担には原則として上限を設けないことで決着した。国は東電のリストラなどを監視する組織を新設し、同社の経営を実質的に管理する。電力会社などが東電の支払いを支援する機構をつくり、機構には公的資金も投入する。この枠組みを通じて電力の安定供給と社債など金融市場の混乱回避につなげる。」(『日本経済新聞』2011.05.11)
●「東日本大震災の発生から2カ月がたち、被災地では自治体による仮設住宅の建設やがれきなど災害廃棄物の処理が本格化し始めた。宮城、岩手、福島の3県では予定戸数の4割強にあたる約3万戸の仮設住宅を着工。がれき処理も動き出した。一方で仮設住宅の用地確保が難航し、被災地の復旧度合いに格差も生じている。多くの課題に対処しながらの手探りの前進となっている。仮設住宅の着工戸数は宮城が約1万1300戸(予定戸数3万戸)、岩手が約9700戸(同1万4000戸)、福島は約9400戸(同2万4000戸)。うち完成済みは計約4000戸と1割強にとどまるが、今後の見通しは県によって事情が異なる。岩手は建設用地を比較的早く確保できたといい、7月上旬までに全戸を完成させる予定だ。一方、宮城と福島は国が目指す8月中旬のお盆までの希望者全員の入居が実現するかは微妙な情勢だ。宮城は『内陸部に予定戸数3万戸分の土地を確保した』(土木部)とするものの、もともと住居があった沿岸部での建設を希望する住民が多いことから各市町との調整が付いておらず、1万数千戸分の建設予定地がまだ決まっていない。福島も原発事故で計画的避難区域が指定されたことに伴い、追加建設する1万戸について、用地確保や完成時期の見通しがつかない状況だ。」(『日本経済新聞』2011.05.11)
●「政府が検討中の『東日本大震災復興特別措置法(仮称)』の要綱案が12日明らかになった。被害が大きかった県や市町村単位で特別区域や特定地区を設け、税財政上の優遇措置を取り入れたり、土地利用計画などの手続きを簡単にしたりする。特区では地方自治体の業務を補う官民の復興推進機構をつくる。ヒト、モノ、カネを集中的に投入しやすくすることで、復興のスピードを上げる。」(『日本経済新聞』2011.05.13)
●「岩手県は6日、公募していた応急仮設住宅建設事業者を決定したことを発表。計21社・グループが事業者として選定された。同県は県内の事業者が有する生産能力を最大限活用し、仮設住宅をより迅速に供給するため、4月18日より事業者の公募を開始。結果、今月2日までに89社・グループの応募があった。このほど選定された21社・グループによる供給可能戸数は2494戸。今後は協議のうえ各事業への発注戸数を決定し、今月中旬には着手する見通し。当初の計画では、6月末には事業を完了させ、引き渡す予定となっている。事業者の選定にあたって、同県では総合評価による審査基準を設定。価格評価点と技術評価点をあわせて総合評価点とした。技術評価においては施工能力・実績のはか、経営品質の取り組み(ISO9001等の認証取得)や県産資材・県内事業者の活用等の地域貢献、環境への配慮・再利用等の項目に対する提案も評価基準となっている。」(『日本住宅新聞』2011.05.15)

労働・福祉

●「政府の被災者等就労支援・雇用創出推進会議(座長・小宮山洋子厚生労働副大臣)は4月27日に開いた会合で、東日本大震災の被災地復旧事業などで被災者20万人の雇用を創出することを柱とする『「日本はひとつ」しごとプロジェクト』の第2弾となる雇用支援総合対策をまとめた。建設関連では、復旧工事災害防止対策とし17億円を計上、安全衛生諸問題に対応する拠点を岩手、宮城、福島の3県に設置し、安全衛生教育の実施や安全衛生計画作成支援を行う。また、建設業界が個別企業の枠を超えて『災害復旧・復興工事安全推進本部』を5月中に設置、政府との連携により災害防止対策を推進する。」(『建設通信新聞』2011.05.02)
●「国土交通省は、従業員を社会保険に加入させないことで経費を削減している『保険未加入企業』の実態調査結果をまとめた。元請・下請建設会社に所属する従業員の保険加入率を調べた結果、元請より下請、さらに1次下請より2次、3次下請と末端へ行くほど未加入従業員が多くなることが分かった。経営環境が厳しい業者が、受注のために従業員の保険料を削ってコストを抑えている実態があると同省はみている。国交省は、こうしたデータを元に、有識者会議などで改善策を検討する方針だ。」(『建設工業新聞』2011.05.06)
●「環境、厚生労働の両省は、東日本大震災被災地でのアスベスト(石綿)飛散・ばく露防止対策や、現場でがれき撤去や建築物の解体作業に当たる作業員と被災者の健康被害防止策の検討に乗り出す。両省がそれぞれ同じ専門家による調査委員会を設置、11日に『東日本大震災アスベスト対策合同会議』の初会合を開く。環境省が4月に実施したアスベストサンプル調査を踏まえた本格調査の方法や、健康被害防止などについて委員の意見を求める。震災によって全壊・半壌した建築物の解体やがれきなどの災害廃棄物処理に伴い、アスベストなどの飛散が懸念されている。このため、飛散・ばく露防止対策、現場でがれき処理などに当たる作業員と被災者の健康被害防止策について、専門的な見地から検討するため調査委を設けることにした。調査委は12人の専門家で構成し、神山宣彦東洋大客員教授が委員長に就く。」(『建設通信新聞』2011.05.11)
●「東日本大震災で壊滅的被害を受けた市街地の復旧・復興工事の活発化に備え、厳しい環境下で作業を行う建設業者の労働災害防止に向けた官民連携の取り組みが本格化する。労災対策を統括的に協議する『震災復旧・復興工事安全推進本部』の設置に向けた厚生労働省や建設業労働災害防止協会(建災防)の調整が進み、6月初めまでに1回目の会合を開く予定となった。今夏には被災地で作業を進める上での課題・問題を整理し、対応策を随時打ち出していく方針だ。東北地方の沿岸部を中心にした被災地では、津波で市街地が広範囲にわたって壊滅状態に陥り、大量の災害廃棄物が散乱するなど、復旧・復興工事の作業環境は劣悪だ。被災地では今後、多種多様な工事が同時並行で進められ、建設業に不慣れな被災失業者も作業に加わるとみられることから、労災の発生リスクが一段と高まること予想されている。厚労省はこのため、『東日本大震災復旧・復興工事安全プロジェクト』を立ち上げ、官民が協力して工事の進ちょくに合わせた労災対策をきめ細かく展開できるスキームの構築に着手。まずは活動の受け皿的な組織として、大手や中小・地場ゼネコン、専門工事業者らを中心にした震災復旧・復興工事安全推進本部を設置する。」(『建設工業新聞』2011.05.13)
●「政府は13日、国家公務員の給与1割引き下げに向けて主要労働組合との交渉に入った。政府側は月内の決着を目指すが、過去最大の下げ幅となることから労組側は慎重論も強い。人事院の勧告を待たずに労使協議で引き下げる措置への批判もあり、交渉は波乱含みだ。『大変心苦しいが俸給、ボーナスの1割カットを提案させてほしい』。片山善博総務相は13日の協議でこう切り出した。交渉相手は公務公共サービス労働組合協議会(公務労協)と日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)の2団体。民主党の支持母体である連合系の公務労協とは妥結に向け協議することで合意したが、国公労連は『公務員は(震災対応に)不眠不休で携わってきた。今は賃下げじゃない』などと突き放した。政府が引き下げの理由に掲げるのは@民主党の公約である『国家公務員総人件費の2割削減』A国家財政の逼迫B東日本大震災への対応――の3点。戦後の混乱期を除けば人勧を経ずに労使交渉で給与を決める初のケースとなる。」(『日本経済新聞』2011.05.14)

建設産業・経営

●「五洋建設などのマリコン(海洋土木会社)は5月にも東日本大震災の港湾復旧工事の受注活動に乗り出す。震災直後はマリコンの業界団体が窓口となり、被災した港湾に船が入れるようにする『航路啓開』工事を五洋建設などが請け負った。同工事の請負額は約18億円となる見通し。本格的な復旧工事はさらに規模が大きくなるため、各社が個別に入札準備を急ぐ。」(『日本経済新聞』2011.05.04)
●「47都道府県の産業廃棄物処理業協会が加盟する全国産業廃棄物連合会は4月26日、『東日本大震災廃棄物処理支援特別対策本部』の初会合を開いた。岩手、宮城、福島の3県だけでも約2490万トンに上る、ビルや家屋などの建物のがれき(災害廃棄物)の適正処理へ向けた産廃処理業界の取り組み支援が目的だ。ぼう大な災害廃棄物の処理については、量的側面とともに、海水に浸かった泥が付着するなどの質的側面からも課題をクリアしなければならず、さらにリサイクルを含めた処理システム構築が早期の本格的復旧・復興に欠かせない重要課題になっていた。初会合では、『被災地県の協会会長による現状説明と、全国団体として共通認識を持つこと」』(仁井正夫全産連専務理事)を確認した。」(『建設通信新聞』2011.05.09)
●「東日本大震災の影響で倒産した企業が66社(4月30日現在)に上ることが帝国データバンクの調査で分かった。震災後1カ月半で関連倒産が22社判明した95年の阪神大震災時の3倍。負債総額は371億円で、倒産企業の従業員数も計1229人と1000人を突破している。倒産パターン別にみると、会社の建物や工場設備などに甚大な被害を受けたことによる『直接被害型』の倒産は6社にとどまり、得意先や仕入れ先が被災した影響などによる『間接被害型』が60社に上った。年間売り上げ規模が1億円以上10億円未満の企業の倒産が7割を占めている。」(『建設工業新聞』2011.05.10)
●「建設業許可業者数が1981年以来30年ぶりに50万者を割り込んだ。国土交通省が11日に発表した2011年3月末時点の建設業許可業者(個人含む)数調査によると、許可業者数は前年同月比2.8%減の49万8806者となった。ピークだった00年3月末時点からは17.0%減で10万2174者減った。」(『建設通信新聞』2011.05.12)
●「国土交通省が12日発表した建設工事受注動態統計調査によると、10年度の建設業者の工事受注高は前年度比0.1%減の41兆6647億円で、00年度の調査開始以来、最低となった。最低記録の更新は3年連続。民間工事は微増ながらも回復に転じたが、国を中心に公共工事の発注量がさらに落ち込み、結果的には前年度を若干下回った。11年度は東日本大震災関連の復旧・復興事業が本格化し、被災地を中心に一定の工事量が見込まれるが、国内景気の先行きは楽観できず、受注環境にも不透明感が強まっている。」(『建設工業新聞』2011.05.13)
●「プラント大手3社の2011年3月期の連結決算が13日、出そろった。工事価格が想定を上回り、採算が改善した日揮と千代田化工建設が経常増益だった一方、10年3月期まで2年間の受注低迷が影響した東洋エンジニアリングの経常利益は半減した。」(『日本経済新聞』2011.05.14)
●「ゼネコン(総合建設会社)大手4社の2011年3月期連結決算が13日出そろい、大成建設を除く3社で最終損益が前の期に比べ改善した。民間設備投資の低迷で全社で売上高が2ケタ減ったが、低採算工事の削減などが寄与し利益率が向上。東京電力株の下落による投資有価証券評価損を吸収した。業績の先行指標となる建設受注高(単独)は鹿島など2社で増加し復調の兆しが見え始めたが、リーマン・ショック以降の低水準がなお続いている。」(『日本経済新聞』2011.05.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「松本龍防災担当相は2日の閣議後の記者会見で、東日本大震災による液状化現象に関して、住宅被害の認定範囲を広げるよう運用方針を見直したと発表した。従来の『全壊』に加え、傾きが比較的小さい場合にも程度に応じて『大規模半壊』や『半壊』として認定する。住宅の基礎が地盤に一定程度潜り込んだ場合も被害を認定する。」(『日本経済新聞』2011.05.03)
●「東日本大震災の復興ビジョンの策定に向けた有識者会議の議論が活発化している。先月14日に発足した政府の『復興構想会議』(議長・五百旗頭真防衛大学校長)や、下部組織の検討部会がこれまで各3回の会合を開催。地震や津波で壊滅的な被害を受けた被災地の復興まちづくりの方向性や事業スキームなど、各委員らが持論を展開した。検討部会は7日の次回会合で論点の取りまとめを行う。これを踏まえ、同会議では6月下旬の第1次提言の前に、緊急性の高い施策を今月中旬にも打ち出す方針だ。」(『建設工業新聞』2011.05.06)
●「東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所の放射能漏れ事故の影響が、建設資材にも波及してきた。福島県内で発生した下水汚泥を処理してできる溶解スラグから高濃度の放射性物質が検出された。汚泥はセメント会社が再生利用しており、事故発生後に計約500トンの汚泥が運搬されたとみられており、県が実際に再利用されたかなどの追跡調査に乗りだした。県の要請を受け、国土交通省と経済産業省原子力安全・保安院の検討チームも発足。関係機関と調整を図りながら対応していく。」(『建設工業新聞』2011.05.06)
●中部電力は9日、臨時取締役会を開き、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の全面停止を決定した。現在運転している4号機と5号機を停止し、現在、定期点検中の3号機の運転再開を見送ることにした。1号機と2号機はすでに廃炉が決まっている。中部電力の水野明久社長は同日の会見で浜岡原発の停止を決めた理由について「首相の要請は極めて重いと受け止めた」と語った。また、「50ヘルツ地域への電力融通を取りやめる」と述べ、東京電力管内への供給を停止することを明らかにした。(『しんぶん赤旗』2011.05.10より抜粋。)
●環境エネルギー政策研究所(ISEP、飯田哲也所長)は9日、2020年には東北電力管内で消費される電力をすべてバイオマス、小水力、地熱、風力、太陽光といった再生可能エネルギーでまかなうプランを発表した。東北地方の年間電力需要は、08年に956億キロワット時で、その内訳は家庭部門26%、業務部門27%、農林水産および建設業3%、製造業45%。一方、大規模水力を除いた再生可能エネルギーは、東北地方全体で全電力需要の6%程度。同研究所は、20年にはエネルギー効率の向上などによって、全電力需要が08年から2割削減されると想定。大規模水力を含む再生可能エネルギーの域内導入割合を100%とするシナリオを検討した。(『しんぶん赤旗』2011.05.10より抜粋。)
●「国土交通省は、海外で生産された輸入住宅ユニットを使って東日本大震災の被災者向け応急仮設住宅を供給する建設事業者からの提案(事業者リスト)をまとめ、若手、宮城、福島の被災3県にリストを送付した。提案は合わせて322件。今後、各県が採否を判断する。国交省は、震災発生直後に住宅生産団体連合会に対し2カ月で3万戸の仮設住宅を供給できるよう協力を要請。その後、3カ月でさらに3万戸の追加供給を求めた。一方、被災3県などから要請があった必要総戸数は現時点で約6万8000戸で、不足分の約8000戸分については輸入品と地元業者からの供給で補うとし、海外製品の供給について4月15〜25日に提案を受け付けていた。仮設住宅の発注主体は被災県で、各県は今後、このリストを基に提案内容を総合的に検討し、発注先を選定する。」(『建設工業新聞』2011.05.11)

その他

●「日本の新幹線方式を導入するベトナムの『南北高速鉄道』整備計画が再始動する。5月下旬に日本の支援で初の本格的な事業化調査(FS)がスタート。べトナム政府は調査の進捗状況をにらみながら、プロジェクトの詳細を固める方針。国会承認が得られれば事業は具体化に向けて動き出す。」(『日本経済新聞』2011.05.02)