情勢の特徴 - 2011年6月前半
●「社会保障と税の一体改革に向けた集中検討会議が2日に提示する改革原案は、2015年度までに消費税率を段階的に10%まで引き上げる方針を盛り込む。そこから読み取れるのは、現行5%の消費税率を2段階で引き上げ、まず2013年にも7%か8%にするシナリオだ。増税による税収を確保するため、欧州で生活必需品などに適用している軽減税率の導入は見送る。低所得者に配慮した税の還付も実施しない方向だ。」(『日本経済新聞』2011.06.01)
●「政府は、東日本大震災で中断していた新成長戦略実現会議(議長・菅直人首相)を5月19日、4カ月ぶりに再開した。東日本大震災と原発事故を踏まえ、2010年6月に閣議決定した新成長戦略の内容を5つの戦略分野に沿って設計し直す。9月までには議論の中間的な整理を行い、年末に成長戦略の具体案をまとめる。エネルギー政策の見直しなど議論の行方は、建設産業にも影響を及ぼすことになる。」(『建設通信新聞』2011.06.01)
●帝国データバンクが1日に発表した東日本大震災関連企業倒産に関するリポートによると、震災関連倒産の累計が131社となった。震災による倒産は、被災地だけでなく、全国的に広がっている。5月の倒産件数は65社、そのうちもっとも多い関東で45社となっている。新宿区では内装工事関係の会社が、震災の影響で資材の仕入が困難となっていることを理由に倒産した。東北は34社、次いで中部が13社となっている。(『しんぶん赤旗』2011.06.02より抜粋。)
●「東日本大震災の被災地に限って規制緩和を進める『復興特別区域(特区)』制度の概要が10日、明らかになった。再開発事業を担う不動産開発業者らを税優遇や低利融資で支援する。固定資産税や不動産取得税を減免する。農地の宅地転用など土地利用に関する規制も大幅に緩和する。民間活力を生かして被災地の円滑な再生や産業振興を後押しする。」(『日本経済新聞』2011.06.11)
●「国土審議会(国土交通相の諮問機関)政策部会は2日、東日本大震災を踏まえて災害に強い国土を再構築するため、『防災国土づくり委員会』を設置することを決めた。リスク管理など防災面の重要課題を整理し、大規模災害が発生した際に被災地を国土全体で支え合う体制を具体化。ハード・ソフトを組み合わせて基礎的災害対応力を高め、災害発生で深刻な事態を回避する社会システムづくりも検討する。7日に初会合を開き、議論に入る。…発生頻度の高い比較的軽度の災害と、発生確率は低いが深刻な被害をもたらす大規模な災害を区分し、それぞれのリスク管理の考え方を整理。その上で、各地域の交通インフラやライフライン、官庁施設などの防災機能をハード・ソフト両面から強化し、災害への対応力が高い強じんな国土基盤づくりを目指す。」(『建設工業新聞』2011.06.03)
●「東北地方整備局は、東日本大震災関連の本復旧工事および業務の発注に指名競争入札を導入する。ダンピング(過度な安値受注)対策として、工事に施工体制確認型総合評価方式、業務には履行確実性評価型総合評価方式をそれぞれ適用。ともにWTO(世界貿易機関)対象以外の予定価格1000万円以上の案件に採用する。」(『建設通信新聞』2011.06.06)
●「宮城県は3日、東京・平河町の都市センターホテルで、第2回震災復興会議(議長・小宮山宏三菱総研理事長)を開き、震災復興計画の第1次案(事務局原案)を提示した。『従来とは違った新たな制度設計や思い切った手法を取り入れていくことが不可欠』と『提案型』の復興を強調。…7月13日に開く次回会合までに第2次案を作成する。原案によると、基本理念は、@災害に強く安心して暮らせるまちづくりA県民一人ひとりが復興の主体・総力を結集した復興B『復旧』にとどまらない抜本的な『再構築』C現代社会の課題を解決する先進的な地域づくりD壊滅的な被害からの復興モデルの構築――の5つで、計画期間は10年間とし、復旧3年間、再生4年間、発展3年間の3期に分けて2020年度を復興の目標に定めている。その上で、緊急重点事項として、被災者の生活支援、公共土木施設とライフラインの早期復旧、被災市町村の行政機能の回復、災害廃棄物の処理など10項目を明記。さらに、計画実現に向けて、災害に強いまちづくり宮城モデルの構築、再生可能なエネルギーを活用したエコタウンの形成、災害に強い県土・国土づくりの推進など10項目も示した。ただ、実現に当たっては、財源の確保が最大の課題となっており、委員からは、富裕高齢者層を対象に、相続税を減免する無利子国債を発行するなど民間資金を何らかの形で集める方法を国に提案していく必要性が唱えられた。」(『建設通信新聞』2011.06.06)
●「国土交通省は、東日本大震災の被害状況を踏まえ、港湾の総合的な津波対策のあり方を検討した中間素案をまとめた。津波の大きさや発生頻度に応じた防災・減災目標を明確化した上で、防波堤など防護施設の設計上の留意点などを設定。防護施設の復旧計画については、複数の代替案を設定し、被災地の復興まちづくり計画と整合性を図りながら策定することを求めている。…中間素案では、構造物による防災機能の限界を再認識し、災害規模に応じた防災・減災対応のあり方を検討することを打ち出した。」(『建設工業新聞』2011.06.06)
●福島県は震災・原発による復旧・復興に向け、空き工場・空き店舗を使った事業再開に最大2500万円、工場・店舗などの再生支援に最大3000万円の県独白補助を行うことを決めた。対象となるのは震災・津波被害に加え、福島第1原発事故によって避難を余儀なくされた警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域の中小企業と中小企業団体。事業再開支援は、空き工場、空き店舗を借り上げるための費用(土地・建物)、被災した工場などから設備を移設する費用、改装費、設備の借り上げ費用を補助するもの。補助率は全壊と3区域内の中小企業・団体は500万円を上限(製造業の場合は2500万円)に、その4分の3を、半壊の場合は2分の1となっている。(『全国商工新聞』2011.06.06より抜粋。)
●「福島県相馬市の立谷秀清市長は4日、自治体が処理する震災がれきの撤去・リサイクル・最終処分までの業務を、全国ゼネコンの受注を念頭に、プロポーザル方式で公募する考えを明らかにした。立谷市長は3日に初会合を開いた『相馬市復興会議』を踏まえ、被災者の生活支援や医療・介護、教育、経済対策など『復興の柱はソフト事業。ただそのためにハード事業が必要だ』とした。…これまで原発事故の影響で国から一次仮置き場から中間処理・最終処理することが認められていなかったため、がれきの本格的な撤去・処理ができなかった。環境省が今後、これまで認めていなかった福島県内のがれき処理についても認める対象地域を拡大することを踏まえ、相馬市はプロポーザルによるがれき撤去に踏み切る。」(『建設通信新聞』2011.06.07)
●「政府の東日本大震災復興構想会議(議長・五百旗頭真防衛大学校長)は、6月末の第1次提言の取りまとめに向けた議論に入った。4日に首相官邸で開いた8回目の会合で、下部組織の検討部会が地元優先雇用や再生可能エネルギーの導入加速、地域づくりでの減災の必要性を指摘。これを参考に、御厨貴議長代理(東大教授)は11日に開く次回会合で提言のたたき台を示す考えを明らかにした。検討部会は、4日の会議に、これまでの検討状況を▽地域経済社会の再生▽エネルギー・環境▽減災・地域づくり―の3点にまとめて提示した。」(『建設工業新聞』2011.06.07)
●「宮城県の村井嘉浩知事は6日に会見し、震災廃棄物(がれき)の処理について、国に要望していた直轄事業での実施を断念し、県事業として行う考えを示した。開会中の6月県議会に、がれき処理費用などを追加上程する。現行の廃棄物処理法では廃棄物処理は自治体事務とされているが、宮城県内の震災廃棄物は約1800万トンにも上るため、2次仮置き場移動後は直轄事業として処理することを政府に要望していた。仙谷由人内閣官房副長官らが直轄事業化に前向きな姿勢を示していたが、『法改正なども必要となる。このまま平行線をたどっていては、進むものも進まない』(村井知事)として、県事業により行う方針を固めた。また村井知事は、応急仮設住宅の建設事業者について、『スピードを最優先するため、プレハブ建築協会に委託して取り組んできたが、造成工事が必要で時間的に余裕がある地域は、県内事業者への発注も検討していきたい』との考えを示した。…村井嘉浩知事は『(県が)まちづくりにも関与し、(市町と)調整ながら産業振興にもかかわっていきたい』との見解を示した。」(『建設工業新聞』2011.06.07)
●「東京都多摩市は、公契約条例の制定に向け、8−10月をめどに外部の有識者らによる検討委員会を立ち上げる。現在、庁内では、条例で定める労働者の最低賃金について、工事は公共工事設計労務単価、業務委託は生活保護基準、建築保全業務労務単価、市職員の給与などを参考に協議を進めており、検討委設置前にはたたき台をまとめる方針だ。」(『建設通信新聞』2011.06.08)
●「内閣府は、2011年度に創設した地域自主戦略交付金(一括交付金)の第2次配分限度額(計220億円)を公表した。2次配分は、今後の自治体への配分算定方法の基となる『客観的指標』で配分額を決めた。2次配分限度額の最多は、東京都で10億円を超えた。同交付金への拠出額や過去の実績額を使って事業道路や河川といった種類ごとに割り当てを決め、その上で、種類ごとに長さなどの指標で配分額を決めた。…配分方法は、将来的な配分方法として制度設計時に決まっていた『客観的指標』を採用した。第1次配分限度額は、継続事業への配分として算定したため、客観的指標は採用していない。」(『建設通信新聞』2011.06.08)
●民主、自民など超党派の改憲派議員約100人が7日、憲政記念館で、「憲法96条改正を目指す議員連盟」の設立総会を開いた。改憲の発議要件を衆参各議員の「3分の2以上」の賛成から「過半数」に変え、9条改悪などに向けたハードルを引き下げることをねらうものだ。総会には、両党のほか、みんなの党、たちあがれ日本などの各党の議員が参加。西岡武夫参院議長も出席した。(『しんぶん赤旗』2011.06.08より抜粋。)
●「東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の公共工事の発注スピードに格差があることが国土交通省の調べで分かった。公共工事前払金保証事業会社(東日本、西日本、北海道)がまとめる毎月の前払金保証実績を基に、元請契約の累計額について震災後の前年比増減率を調査した結果、4〜5月期は宮城県内が2桁の大幅増になったのに対し、岩手と福島両県内はほぼ4割の大幅な落ち込みになった。国交省は、工事発注時期の違いが復旧・復興の速度に影響を及ぼす可能性もあるとみている。」(『建設工業新聞』2011.06.13)
●「東日本大震災によって発生した震災がれきの仮置き場への搬入量がいまだ、全体量の2割程度にとどまっていることが、環境省調査で分かった。仮置き場確保、民有地へ所有者の了解なしに立ち入れない所有権問題、多くの市町が県に事務代行を委託しても県が最終的に委託した市町に代行費用を求めるための煩雑な事務手続き、一時的にがれき撤去費用の一部負担が求められる基礎自治体の不安といった、広域的ながれき発生量の多さと、現行制度上の課題も理由の一つだ。」(『建設通信新聞』2011.06.15)
●「国土交通省は、東日本大震災の被災地の本格的な復旧・復興に向けた今後の対応を決めた。地域の特性を踏まえてハード・ソフト施策を組み合わせた『多重防御』による津波防災まちづくりを推進する制度を創設し、海岸堤防の復旧・整備や市街地の集団移転、建築制限、土地利用計画の許認可手続きのワンストップ化などを展開。災害公営住宅など恒久住宅の整備も始める。災害に強い国土構造への転換を目指し、東北圏広域地方計画も見直す。…東北経済の再生に向け、基幹産業の水産業を支える港湾の早期復旧、インフラ・物流の再構築と基盤の整備を展開する。東北圏広域地方計画を見直し、エネルギー供給やサプライチェーンの代替性を考慮した東北圏の産業・国際連携の将来像を示す。」(『建設工業新聞』2011.06.15)
●総務省が31日発表した労働力調査によると、4月の完全失業率(季節調整値)は、前月比0.1ポイント上昇の4.7%となり、2010年10月以来、6カ月ぶりに悪化した。東日本大震災の被害が大きかった岩手、宮城、福島の東北3県では、3月に続いて調査が実施できなかった。震災後、11万人を超える休・失業者が出ている東北3県の状況を反映させた場合、公表値より悪化する可能性もある。完全失業者数は309万人で、前月に比べ30万人減少した。失業者の求職理由別でみると、「勤め先や事業所の都合」によるものが82万人(前月比5万人増)と、増加に転じた。…一方、厚生労働省が同日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月比0.02ポイント低下し、0.61倍となった。リーマン・ショックで雇用情勢が急激に悪化した09年11月以来、1年5カ月ぶりに低下した。(『しんぶん赤旗』2011.06.01より抜粋。)
●「厚生労働省は1日、東日本大震災復旧・復興工事安全プロジェクトの核となる『震災復旧・復興工事安全推進本部』が建設業界内に設置され、3日に初会合を東京都内で開くことが決まったと公表した。本部長には、建設労務安全研究会理事長の加藤正勝前田建設執行役員経営管理本部安全部長が就く予定。初会合では、厚労省が震災後の取り組みを説明するとともに、建設業界側の活動状況を紹介する。その上で、復旧・復興工事の実情にあった労働災害防止対策を推進する上での検討事項を確認し、必要な労災防止対策を議論する。」(『建設通信新聞』2011.06.02)
●東日本大震災の被災地では、復旧作業など臨時雇用の賃金が低すぎて、被災者の生活支援としては不十分であることが岩手、宮城、福島3県の本紙ハローワーク調査(5月26〜28日)で明らかになった。被災者からは、「生活できる賃金になっていない」「復興予算があるのに、なぜこんなに安いのか」という声がでている。…震災復興に関する事業のほとんどが日給5000円から6000円という低賃金だ。日給3000〜4000円という異常に低い募集もあった。背景にあるのは、低すぎる最低賃金だ。被災他の最賃時給は、岩手県644円、福島県657円、宮城県674円となっている。岩手県で8時間働いても、最賃で5152円にしかならず、生活できない。宮城県では「むなしい(674)賃金」とまでいわれている。また、国や自治体が発注する事業には、「公共工事設計労務単価」があります。これは公共工事の工事費積算のための農林水産省と国土交通省による2省協定で、この労務単価に基づき、労働者に適切な賃金を支払う配慮が求められる。労務単価の設定が安い「軽作業員」(公園の草むしりや各種作業の軽易な補助など)であっても岩手、宮城両県が1日8700円、福島県が9200円となっており、これを大きく下回る被災地の賃金は異常だ。(『しんぶん赤旗』2011.06.04より抜粋。)
●「積水化学工業は住宅部門の販売・生産体制を再編する。7月1日付で関東、近畿、中部にある規模の大きい販売子会社の下に生産子会社を置き、生産やリフォームなどを一括で運営。コスト削減につなげるほか、地域に合った商品も投入する。住宅着工戸数が低迷するなか、地域密着の戦略で受注増を目指す。」(『日本経済新聞』2011.06.03)
●「建設産業専門団体連合会(建専連)の才賀清二郎会長ら幹部は、1日に東京都内で開かれた通常総会の終了後に記者会見し、本年度以降の活動方針を明らかにした。長期化が見込まれる東日本大震災の復旧・復興事業に対する支援活動を積極展関するほか、ダンピングの起きにくい競争環境整備や重層下請・元下請関係の適正化、地域社会維持に必要な建設会社の再生、広報活動の拡充などに継続的に取り組む考えを示した。ダンピング対策では、▽過当競争の改善▽適正工期・価格の設定▽技能者の評価と人材の確保・育成▽不良不適格業者の排除▽保険未加入業者の排除―を主要テーマに設定した。」(『建設工業新聞』2011.06.03)
●「東京商工リサーチがまとめた11年5月の建設業倒産は294件(前年同月比7.6%増)と2年3カ月ぶりに前年同月を上回った。同社は金融機関に借入金の返済猶予を促す『中小企業金融円滑化法』などの各種金融支援策で倒産が抑制されていたが、政策効果の一巡で増加に転じたとみている。ただ、負債総額は356億5200万円(36.8%減)と4カ月連続で減少している。」(『建設工業新聞』2011.06.09)
●「大和ハウス工業は10日、2012年3月期の連結純利益が前期比72%増の470億円になるとの見通しを発表した。5期ぶりに最高益を更新する。中国で進める不動産事業が今期から適期で収益に貢献するほか、住宅ローン減税などの政策効果で環境配慮型住宅の販売好調が続く。年間配当は5円増やし25円とする。」(『日本経済新聞』2011.06.11)
●「国土交通省の大森雅夫建設流通政策審議官は14日、23日に取りまとめを予定している建設産業戦略の背景として、バブル期から直近まで、元請けの売上高総利益率(粗利率)が建設市場が半減しながらも変わっていないことについて、『この20年間、外注費(労務費)を徹底的に抑えてきた。これが一人親方、(生産システムの)重層化というゆがみ、地域のひずみにつながった』と断言した。一定規模の地域建設業の維持や社会保険未加入企業排除などの施策を今後を行う理由として上げた。」(『建設通信新聞』2011.06.15)
●東日本大震災の液状化現象で全壊家屋が千葉県で2番目に多い我孫子市はこのほど、持ち家が被災し市内の賃貸住宅を借りる市民に対し、家賃補助制度を震災日までさかのぼり実施する方針を決めた。震災被害世帯への家賃補助は県内で初めて。(『しんぶん赤旗』2011.06.02より抜粋。)
●「東日本大震災の被災者向けに建築されている応急仮設住宅に関して、整備を進める上での課題が浮かび上がってきた。設置目標は当初約7万戸だったが、実際には民間の賃貸住宅等への入居を選んだ人も多く、政府は目標を約5万戸に引き下げた。また、およそ1万戸は地場産材を利用して地場工務店が設置することになり、福島、宮城、岩手の3県で公募されたことにより、被災した工務店等の仕事の創出につながると期待されたものの、一部で『期待はずれ』との声も挙がっている。」(『日本住宅新聞』2011.06.05)
●「国土交通省は今秋にも、個人が住宅をリフォーム(改修)する際に商品券などと交換できる新住宅ポイント制度を導入する検討に入った。現在ある住宅エコポイントは7月に打ち切る予定にため、新たな住宅市場の活性化と消費喚起策が必要と判断した。新ポイント制度は対象を省エネ化の改修に限定せず、年160万戸程度の利用を見込んでいる。」(『日本経済新聞』2011.06.06)
●国土交通省が圏央道トンネル工事を進めている高尾山(東京都八王子市)で、トンネルの直上にある観測井戸の水位が急激に低下したことが分かった。自然保護団体が7日、明らかにした。水位が低下していたのは高尾山の散策路1号路に画した布流(ふる)滝の上流にある観測井戸。地下水の水位は高さ363〜365メートルで推移し、昨年秋には365メートル前後だったが、トンネル本坑が井戸の直下を掘り進んだ今年3〜4月にかけ水位が急低下し、4月22日時点で362.6メートルになった。水位が363メートルを割ったのは、1996年3月に362.9メートルに低下して以来だ。(『しんぶん赤旗』2011.06.08より抜粋。)
●「東日本大震災の仮設住宅の入居率が完成戸数の約44%にとどまらていることが9日、厚生労働省などのまとめでわかった。理由は仮設への転居で避難所の食事支援が受けられなくなったり、仮設住宅の立地条件が悪いことなどがある。国土交通省は仮設住宅の建設を急いでいるが、行政側が被災者のニーズを十分にくみ取れていない実態が浮かび上がった。…入居率の悪さの原因として、国交省は『完成から入居まで手続きに時間がかかるのが大きい』と指摘。このほか、避難所や2次避難先のホテル、旅館と異なり、食事や生活物資の支援がなくなるケースが多く、被災生活で経費がかさむことも敬遠される。さらに、地域の人と離れることへの不安や、学校、仕事の問題なども原因とみられる。…入居辞退の一方で、仮設での新生活を待ち望む人が多いのも現状だ。宮城県は『民間借り上げ住宅と合わせ、多くの人が早く部屋に入れるようにしたい』とする。国交省によると、被災地は平地が広範囲に津波被害に遭い、高台に適地が見つけにくく用地確保が難航。一部市町村では別の自治体に建設せざるを得ないケースが増えることも想定される。」(『日本経済新聞』2011.06.10)
●「東日本大震災からの復興に向けて、政府の復興構想会議が11日、第1次提言の素案を示した。6月下旬に正式決定したうえで、復興への具体策を盛り込んだ今年度第2次補正予算案の編成作業を本格化する。…素案は、復興債の償還財源を確保するため『基幹税を中心』に臨時増税を検討する必要性を明記した。基幹税とは所得税、消費税、法人税を指す。政府内では期間を区切って所得税などの税額に一定割合を上乗せする『定率増税』を軸に、消費税率を2年ほどの期間限定で引き上げる案なども浮上している。政府内で有力視されるのが、所得税の定率増税。例えば10%の所得税の定率増税の場合、納税額が年10万円の人は年1万円の増税となる。被災者の課税を免除しやすいのが利点。ただ10%の定率増税で確保できる財源は年1兆円にとどまる。10兆円超の復興費用を所得税だけで賄えば、増税期間は10年超に及ぶ。長期の臨時増税には抵抗感も根強い。法人税を定率増税する案もある。ただ政府が中期的な法人税下げを目指しているだけに法人税増税への慎重論が根強い。…一方、巨額の財源を短期間で確保できる点から、消費税を活用すべきだとの声もある。税率を2〜3%上げれば2年ほどで10兆円超の財源を確保できるからだ。ただ、枝野幸男官房長官は『消費税は社会保障財源で(増税が)検討されており、混乱させることは良くない』と慎重姿勢だ。」(『日本経済新聞』2011.06.12)
●「インドでプレ・フィージビリティー・スタディー(プレFS)の入札が公示されている高速鉄道構想で国土交通省は、日本独自のFS案を作成するための調査を始める。現在、プロポーザル方式で調査業務を公告し、参加者を募集している。インドのプレFSに参加し、日本独白のFS案を提示することで、インド南部の高速鉄道計画の受注を目指す。」(『建設通信新聞』2011.06.02)
●福島第1原発事故を受け、原発撤退へのエネルギ−政策の転換を目指していたドイツ政府は6日、国内にある原発17基の全廃を柱とする原子力法改正案を閣議決定した。原発の代替として風力発電などを今まで以上に促進する再生可能エネルギー法案、エネルギー効率の良い送電網を整備する送電網法案なども決定し、上下両院の審議にかける。福島原発事故後、主要国として初めて脱原発とエネルギー政策の転換へ向かうものだ。(『しんぶん赤旗』2011.06.07より抜粋。)