情勢の特徴 - 2011年6月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府と京阪電気鉄道、丸紅などは共同で、ベトナム、モンゴル、インドネシアのアジア3カ国で鉄道整備事業に参画する方針を固めた。車両や信号システムの輸出だけでなく、事業に出資して経営に加わる。事業費は合計5350億円で、3カ国と日本側の参加で基本合意した。政府は官民連携のインフラ輸出の強化を打ち出しており、国内で成長性が乏しい鉄道事業が海外で収益を得るビジネスモデルを目指す。」(『日本経済新聞』2011.06.17)
●東日本大震災で農漁業の主要産地が大きな打撃を受けた中でも、菅直人内閣は、環太平洋連携協定(TPP)への参加を進める立場を変えていない。農業者から復興の妨げだと批判があがっている。菅内闇は5月17日、東日本大震災後の政策運営を定めた「政策推進指針」を閣議決定した。TPP交渉参加を決める時期については、「総合的に検討する」との表現で先送りした。TPP参加に向けて昨年11月に閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」を堅持することも「指針」で決めた。(『しんぶん赤旗』2011.06.21より抜粋。)
●「矢野経済研究所はこのほど、住宅リフォーム市場の短期的な市場トレンド調査の結果を公表した。今年第1四半期の住宅リフォーム市場規模は、東日本大震災の影響で前年同期比約13.1%減。今年の市場規模は昨年からほぼ横ばいの5.7−6兆円と予測した。同調査で規定する住宅リフォーム市場とは▽10uの増改築工事▽10u以下の増改築工事▽設備修繕・維持関連▽家具・インテリア等――の4分野。調査方法は同社専門研究員による市場規模算出、文献調査(国土交通省『建築着工統計』、総務省『家計調査年報』、総務省『住民基本台帳』、国立社会保障・人口問題研究所〈予測値〉)調査結果によると、今年第1四半期の住宅リフォーム市場規模は前年同期比約13.1%減で、1兆517億円と推計。昨年の同時期が好調に推移したこともあるが、2000年以降で3番目に低いスタートになった。要因として挙げているのが、震災による消費低迷、建材・設備機器の搬入遅延。1−2月時点ではむしろ昨年同月より6.6%増加で推移していたが、3月は前年同月比35.9%減となってしまったことからも、震災の影響が見て取れる。」(『日本住宅新聞』2011.06.25)
●「内閣府は24日、東日本大震災の被害額が16兆9000億円になったと発表した。各県や府省からのストックの被害額を積み上げた。被害額の内訳は、建築物(住宅・宅地、店舗・事務所、工場、機械など)が約10兆4000億円、ライフライン施設(水道、ガス、電気、通信・放送施設)が約1兆3000億円、社会基盤施設(河川、道路、港湾、下水道、空港など)が約2兆2000億円、農林水産関係(農地・農業用施設、林野、水産関係施設など)が約1兆9000億円、その他(文教施設、保健医療・福祉関係施設、廃棄物処理施設、その他公共施設など)が約1兆1000億円。地震や津波などで直接被害のあった施設の復旧費用の積み上げで、東京電力福島第1原子力発電所そのものの被害額は含まれるが、放射能汚染による被害額は含まれない。95年の阪神大震災の被害額は約9兆6000億円と推計され、内閣府は『800億円程度だった阪神と比較して、農林・水産関係の被害が大きい』(小滝晃政策統括官付参事官)としている。3月の地震発生数日後に公表された内閣府経済財政分析担当による被害推計額は約16兆〜25兆円だった。」(『建設工業新聞』2011.06.27)
●「政府は29日、来月中旬に今国会へ提出する2011年度第2次補正予算案の概要を固めた。東日本大震災の被災者や被災企業が抱える『二重ローン』問題の対策経費に770億円を計上し、東京電力福島第1原子力発電所事故の賠償のため設立する原子力賠償支援機構への出資金を70億円程度盛り込む。総額は2兆円程度で、財源は10年度の決算剰余金1兆5000億円などで手当てし、新規国債は発行しない。」(『日本経済新聞』2011.06.30)
●「国土交通省は29日、11年度の建設投資見通しを発表した。総投資額は前年度比5.1%増の43兆2200億円となり、大型補正予算などの景気対策が打ち出された08年度以来、3年ぶりに増加すると見込んでいる。このうち政府投資は8.3%増の17兆9600億円となったが、東日本大震災の復旧事業の建設投資相当額を2兆4100億円と推計しており、震災の特殊要因を除いた推計では前年度並みの低水準。国交省は『今回の発表値には民間の復興投資は見込んでおらず、第2次以降の補正予算などで政府投資もさらに膨らむことが予相される』としている。今後、新たな財政措置が講じられた段階で11年度建設投資見通しを更新し、随時公表していく方針だ。11年度の建設投資総額の建築・土木別内訳は、建築が23兆4300億円(前年度比5.2%増)、土木が19兆7900億円(4.9%増)。住宅投資は13兆8400億円(7.2%増)で、うち民間分は12兆8300億円(3.2%増)と予測した。」(『建設工業新聞』2011.06.30)

行政・公共事業・民営化

●「『全国の同じ志を持つ地域と森のネットワークを』――東日本大震災発生後、いち早く被災者のための木造の仮設住宅を独自に建設した多田欣一・岩手県住田町長が訴えた。6月11日に東京都内で開催された第3回地域力フォーラムで、多田町長は、震災3日後に専決処分で実施した仮設住宅建設の様子を報告するとともに、森林・林業を産業として抱える全国の自治体に、木造の仮設住宅を協力して準備していくことを提案した。」(『日本住宅新聞』2011.06.15)
●福島県復興ビジョン検討委員会(鈴木浩座長)は15日、福島市で第5回検討委員会を開き、復興の基本方針の第1に「脱原発」の考え方で施策を推進することを確認した。…「基本理念」は1点目に「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」を押し出している。その詳細として、「『脱原発』という考え方の下、原子力ヘの依存から脱却し、再生可能エネルギーの飛躍的な推進を図るとともに、省エネルギーやリサイクルなどを強力に推進する」としている。(『しんぶん赤旗』2011.06.16より抜粋。)
●「国土交通省と農林水産省は、被災地の復旧・復興に向けた市街地と農地の一体的土地利用再編の考え方をまとめた。宅地と農地の換地計画について地方自治体が一定の計画を作成して認定を受ければ、土地区画整理事業と農地土地改良事業といった別の事業でも、一体の計画として一括で換地手続きができる仕組みとする。土地境界の明確化に向けた取り組みと合わせて、15日の民主党の国土交通部門会議(田村謙治座長)で報告した。」(『建設通信新聞』2011.06.17)
●「東日本大震災の発生から100日以上を経た20日、復興基本法が成立した。…政府は同法成立を受け、首相と全閣僚による復興対策本部を近く設置する。各省庁にまたがる案件を総合調整する『司令塔』の役割を担い、内閣官房に事務局を置く。被災自治体などとの窓口となる現地対策本部は岩手、宮城、福島の3県に設ける。これにより、震災・原子力発電所事故に関連する政府の対策本部は@災害対策基本法に基づく緊急災害対策本部A原子力災害対策特別措置法に基づく原子力災害対策本部B復興対策本部――の3本部の態勢となる。基本法は復興構想会謙(議長・五百旗頭真防衛大学校長)を、復興対策本部の下部組織として位置付けた。」(『日本経済新聞』2011.06.21)
●「神奈川県藤沢市の海老根靖典市長は、公契約条例の制定について、先行実施している地方自治体の状況などを踏まえ、検討を始める方針を示した。…公契約条例に対して市はこれまで、議会答弁などで一貫して『制定する考えはない』とのスタンスをとってきた。今回の市長答弁について契約課は、『従来の方針からすれば「一歩前進」』としているが、具体的な検討体制や制定の可否判断時期については未定となっている。…現時点で『具体的な指示は来ていない』(契約課)ことから、検討体制などは未定だが、市長答弁を踏まえ、条例化に当たっての課題や、条例の実効力を担保できる仕組みなどについて内部検討を進める方針だ。」(『建設通信新聞』2011.06.23)
●「特定の地域に規制緩和や税優遇などの措置を適用して産業の国際競争力強化や地域の活性化を図る『総合特区』制度を創設するための総合特区法が、22日の参院本会議で可決、成立した。政府は同日、自治体からの特区申請の受け付けを開始。今秋にも第1回の指定地域を発表する予定だ。特区は『国際戦略総合特区』と『地域活性化総合特区』の二つに区分される。工業地域の用途規制や特別用途地区内の用途制限の緩和といった建築基準法の特例をはじめ、PFI方式を活用した民間事業者による特別養護老人ホームの設置許可、他の水利使用に従属する小水力発電の許可手続きの簡略化といった特例措置などを適用。法人税の軽減措置や国の予算の重点配分などが受けられる。特区ごとに設置する国と地方の協議会で合意した新たな規制緩和については、国が法令を改正し実施する。総合特区の詳細な制度設計や施行準備のために行った提案プロジェクトに関する事前調査(2月10日〜3月2日)では計295件(地域活性化特区228件、国際戦略総合特区67件)の情報が寄せられた。地域別では東北が43件と最多だったが、震災による影響で取り組み内容も大きく変更される見通し。被災地の復興事業に特区制度を活用する動きもあり、自治体が今後申請する特区計画にも復興ビジョンが色濃く反映されることになりそうだ。」(『建設工業新聞』2011.06.23)
●「国士交通省が設置した『建設産業戦略会議』(委員長・大森文彦東洋大教授)が先週、建設産業の発展に向けて国が取り組むべき政策を盛り込んだ報告書『建設産業の再生と発展のための方策2011』を大畠章宏国交相に提出した。建設業の実態や経営環境の変化などを定量的に分析した上で、そこから生じる課題とその解決策を提示。これらを連動させて施策の効果を高めようとしているのも特色だ。建設業法や入札契約適正化指針の改正も明記した報告書の内容は今後、各社の経営戦略に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。報告書は、建設産業の再生・発展に必要な方策を、▽地域維持型の契約方式の導入▽保険未加入企業の排除▽技術者データベースの整備と業種区分の点検▽入札契約制度改革の推進▽海外展開支援策の強化▽不良不適格業者の排除▽被災地での特別対応−の7項目に分類して提示している。それぞれの方策は、建設産業が現在置かれている状況を、できる限り定量的に分析して抽出した課題から同会議が選んだ。」(『建設工業新聞』2011.06.27)
●「国土交通省は、東日本大震災で損壊した海岸堤防の復旧で、再構築する堤防の高さ(設計津波の水位)の設定方法をまとめた。過去に発生した津波の高さを文献やシミュレーションで推計。この結果に基づき、被災した太平洋沿岸部を、同一の津波外力を設定できる一連のまとまりのある地域海岸線(ユニット)に分割し、ユニットごとに設計津波の水位を決める。併せて海岸堤防・護岸の復旧工法もまとめた。…設計津波の水位を設定するに当たっては、まず過去に発生した津波の高さを歴史的文献や、土木学会など各機関が実施した痕跡調査などを活用して確認する。過去の津波の高さが分からない場合には、シミュレーションを行ってデータを補完する。過去の津波実績とシュミレーションで出た津波の高さを地域海岸線ごとにグラフ化し、堤防で防ぐ対象とする津波の高さを確認する。」(『建設工業新聞』2011.06.28)
●「政府は28日、『官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律』(官公需法)に基づく、2011年度の契約方針を閣議決定した。国や独立行政法人などが中小企業に発注する契約目標率は、10年度目標率と同じ56.2%となった。官公需総額は、第1次補正予算分も含め6兆7467億円のため、中小企業契約目標額は3兆7915億円となる。このうち、工事の総予算額は2兆5012億円で、中小の契約目標額が1兆4222億円、契約目標率は56.9%と全体の目標率を0.7ポイント上回った。東日本大震災の被災地域における中小企業への配慮を盛り込み、受注機会の増大に向け、復旧・復興工事の発注に当たって、地域企業の適切な評価などを求めた。」(『建設通信新聞』2011.06.29)
●福島県の佐藤雄平知事は27日の県議会本会議で、「原子力に依存しない社会をめざすべきとの思いを強く持つに至った」とのべ、初めて原発ゼロの姿勢を明らかにした。…同知事は、「東京電力福島第1原発の事故は、いまだ収束の兆しが見えないきわめて厳しい状況がつづき…原発の安全神話は根底からくつがえされた」と指摘。町村ごと避難に追い込まれた自治体の困難さや、農林水産業、製造業、観光はじめあらゆる分野で危機に直面し、「ふるさと福島が大きく傷つけられたことに断腸の思い」とのべ、転換の考えを明らかにした。(『しんぶん赤旗』2011.06.29より抜粋。)

労働・福祉

●大阪労連は17日朝、働きがいのある人間らしい仕事を求める「ディーセントワークデー」として、大阪市内のJR天王寺駅前で宣伝した。「被災地含め、最低賃金は地域格差なく1000円以上に引き上げよう」と訴えた。現在の地域最低賃金は全国平均が730円で、被災地の岩手県が644円、宮城県が674円、福島県が657円。この最賃レベルが、がれき撤去など被災地での臨時雇用の賃金では生活できないような低額に抑えられている原因になっており、引き上げが急がれている。大阪府は779円だ。…宮武正次事務局長は「世界各国の最賃は、ほとんどが1000円を超え、ヨーロッパでは最賃は1200円、1300円が当たり前。これは岩手県の地域最賃の2倍だ」と話した。(『しんぶん赤旗』2011.06.18より抜粋。)
●厚生労働省が発表した2010年度の労働災害補償状況で、うつ病などの精神疾患の労災請求数と支給決定数が2年連続で過去最高となった。精神疾患で苦しむ人たちは、職場や社会的なサポートがないために労災申請にこぎつけることさえ困難だ。しかも、発病が業務に起因するものだと認められるのは大変難しく、請求した人の4人に1人程度しか労災認定されていない。それでも1年間の申請1181件、支給決定308件という数は、いまの日本で、働く人の「心の健康」が、広く脅かされていることを示している。(『しんぶん赤旗』2011.06.23より抜粋。)
●「東京都地域住宅生産者協議会(都住協)は21日、今年度初の技術講習会を東京都内で開催。今年4月に改正された、廃棄物処理法および廃棄物収集・運搬業概要についての説明会を実施した。潟Cオリナ・村上泰司社長が講師を担当し、出席者の大部分を占める大工や工務店にとって重要な元請業・下請それぞれの処理責任などの点を中心として改正法のポイントを解説。村上氏は『新築元請をやっているならば、どこか一つは処分場と契約しておくベき』と述べ、従来の感覚では違反になるケースが多々あり、今後は注意するよう呼びかけた。今回の改正によって、排出事業者に対しては産業廃棄物管理票(マニフェスト)の保管(5年間)や、事業所外での廃棄物保管の事前届け出(保管場所が300u以上の場合)などが義務付けられた。また、工務店や大工に大きく関係するポイントとして、建設業に関する廃棄物の処理責任が基本的に元請事業者へと一元化されたことも大きな変更点である。以前は下請業者も排出事業者となるケースがあったが、今日の改正後は、下請業者が行えるのは保管・運搬のみ。運搬に関しては厳しい条件が課せられており、運搬に関する請負契約を結ぶこと、持ち込む処理場も元請業者の所有もしくは使用権限を有する(契約している)施設に限られるなど、元請業者の責任が非常に重くなっている。処分場に提出するマニフェストについても、下請事業者が自ら排出事業者として交付することはできない。もし下請業者が何らかの違反をした場合、例え下請業者が事業者とみなされた場合でも、一部の例外を除いて元請事業者が排出事業者責任を負うことになる。現場内での保管についても、下請業者が不明な場合などは元請業者に対してのみ、改善命令が出される可能性もある。…しかし説明会の出席者からは、元請をやっているが処分場とは契約しておらず『全く気にしていなかった』との声が上がった。また団体でも『どれだけの元請工務店が処分場との契約を結んでいるか不明瞭だ』と、改正が現場にまで浸透しきっているとは言いがたい状況のようだ。」(『日本住宅新聞』2011.06.25)

建設産業・経営

●「東京商工リサーチがまとめた2010年度(10年4月−11年3月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年度比11.7%減の3439件となった。1994年度の3467件以来、16年ぶりに3500件を下回った。都道府県別件数では、37都府県で前年度を下回り、全国的な倒産減少が目立った。これは『景気対応緊急保証制度』や『中小企業金融円滑化法』などの政策効果が影響したとみられる。負債総額は、30.4%減の5035億3700万円。これは負債10億円以上の大型倒産が55.3%減の50件と、前年度の112件から大幅に減ったため。また、平均負債額も21.0%減の1億4600万円となり、1989年度の1億1400万円以来の低水準にとどまった。」(『建設通信新聞』2011.06.16)
●「ゼネコンの工事採算の改善が厳しくなりそうだ。日刊建設工業新聞社が連結売上高1000億円以上の24社を対象に、今期の完成工事総利益率(粗利益率、単体ベース)を調査したところ、半数を超える14社が前期より低下すると予想していた。資材費の安定や大型工事の増額設計変更など前期にあった採算改善要因が今期は乏しく、東日本大震災後の民間の投資意欲の冷え込みで競争激化が予想されることや、資機材調達のひっ迫に対する懸念も背景にあるようだ。大手4社は前期、施工の合理化や受注時の採算性審査を徹底したことで、粗利益率がそろって上昇した。『資材費が想定したほど上がらなかった』(清水建設)ことなども要因だ。海外の大型工事の採算割れに苦しんでいた鹿島と大林組も損失処理が進み、上昇、プラス転換した。今期は4社とも、土木の粗利益率がさらに改善すると見込むが、建築も含めた全体では鹿島を除く3社が悪化すると予想している。準大手以下20杜は前期、半数の10社が粗利益率を落とした。改善した社も上昇率はおおむね小幅にとどまった。今期は『物価スライドの条項を契約に盛り込んでいるので、(資材費高騰は)利益の大きな圧迫要因にはならない』」(前田建設)との見方もあるが、資材費・労務費の増加を見込む社が多く、11社が粗利益率の低下を予想する。」(『建設工業新聞』2011.06.22)
●「日本建築士事務所協会連合会は、岩手、宮城、福島の震災復興関連業務を効率的に進めるため、21日、3県の建築士事務所協会に『建築復興支援センター』を開設した。3県の単位会が進める復興への取り組みを日事連が人的・金銭的に後押しする。三栖会長は同日、仙台市青葉区の宮城県建築士事務所協会(宮事協、栗原憲昭会長)で行われた除幕式後に会見し、『センターは全国の単位会が被災地を支えるためのプラットフォームになる』と説明。東北以外の地域から技術者を送り込むなど、3会を全面支援する考えを強調した。」(『建設工業新聞』2011.06.22)
●「日本建設業連合会は、『建設技能者の人材確保・育成に関する提言』(2009年4月発表)に盛り込んだ優良技能者の賃金向上などを実現するため、井上舜三労働委員長名で会員企業145社に協力を要請する。『優秀な職長を評価・認定する制度』の整備を始め、重層構造の改善に向けた下請次数の目標と、その工程の策定など、具体的な取り組みを促すと同時に、これらの取り組みを担当する選任部署を日建連に登録するよう求める。」(『建設通信新聞』2011.06.23)  
●「日本建設業連合会の労働委員会(井上舜三委員長)は、建設技能者の人材確保・育成に向けた11年度の取り組み方針を決め、会員企業に対し具体的対応の実施を要請した。技能者の賃金向上を図るため、優秀な職長を評価・認定する制度を整備するよう努めることや、企業実態を踏まえた重層下請構造の改善を図ることなどを求めた。…日建連は、旧日建連時代の09年4月に『建設技能者の人材確保・育成に関する提言』を策定し、優良技能者の標準目標年収を600万円以上とする目標などを発表。新日建連でもこうした方針を引き継いで技能者賃金の底上げを図る。技能者賃金をめぐっては、優秀な職長に手当を支給する動きが一部の会員企業で始まっている一方で、職長に対する評価制度が未整備の企業も少なくないため、優秀職長を認定する制度の整備を努力目標に掲げ、会員各社に取り組み拡大を促す。重層下請構造の改善では、元請側が発注の平準化などに努めることを掲げた。さらに、各社の実情に応じた下請次数の目標を定めるとともに、目標達成に向けた工程を策定してもらうことも盛り込んだ。建設業退職金共済(建退共)制度に関しては、民間工事の積算への証紙代の算入に努めるほか、建退共制度適用標識シールの掲示などにより、下請企業が証紙を請求しやすくなる環境を整備する。労働環境の改善に向けては、毎年10月の『建設技能者ゆとり創出月間』などで取り組みを強化する。本年度は10月8日を『統一土曜閉所日』と定め、工事現場の一斉閉所に努める。工業高校などの生徒を対象とした見学会の機会も積極的に提供。各種助成制度についてのPRも強化する。」(『建設工業新聞』2011.06.23)
●「日本建設業連合会(日建連)は、民主党の『トンネルじん肺救済法プロジェクトチーム(PT)』が、トンネル工事のじん肺被害者を救済するため新たな基金の創設を盛り込んだ新法の要綱案をまとめたのに対し、反対する方針を表明した。22日の理事会で決定した。PTが21日の会合でまとめた『トンネルじん肺救済法案要綱(案)』には、新規の工事受注者が資金を拠出する基金の創設などが盛り込まれている。これに対し日建連は、過去の工事による被害者は、その工事を実施した企業の負担によって救済するべきだと指摘。無関係の企業が基金に拠出することは受け入れ難いと主張している。さらに、トンネル工事で建設会社は国のガイドラインなどに沿って適正に粉じん対策を講じており、そうした状況下でじん肺被害者が発生した場合は国が救済を行うべきだとの考えも示した。加えて、被害者の迅速な救済が望ましいものの、就労履歴などが明確でないケースもあり、裁判所による和解スキームが不可欠だとも指摘。信頼性の面からも、裁判所の厳格な判断に沿って和解を進めるべきだとした。日建連は、21日のPTの会合でヒアリングを受けた際にも、基金の創設を受け入れるのは難しいとの意向を表明している。」(『建設工業新聞』2011.06.23)
●「国土交通省の『建設産業戦略会議』(座長・大森文彦弁護士・東洋大法学部教授)は23日、最終会合を開き、『建設産業の再生と発展のための方策2011』をまとめ大畠章宏国交相に手渡した。地域の建設業が共同で災害対応や除雪、インフラ維持管理など地域維持事業を担えるようにする地域維持型JV制度の創設や、保険未加入企業の排除に向けた保険加入目標の設定、監理・主任技術者の資質向上や適正配置の徹底にもつながる技術者データベースの整備、二段階選抜方式の導入、片務的な請負契約の解消に向けた『建設業法令順守ガイドライン』の策定などを提示した。今後、中央建設業審議会での審議などを経て、政省令や法律の改正などが必要になる見込み。」(『建設通信新聞』2011.06.24)
●「宮城県の応急仮設住宅建設に関して、地元工務店にはとんど発注が無いことや、入居者が予想より少ない、雨漏り等が発生しているなど、様々な問題が噴出していることから、仙台市民オンブズマンはこのほど、仮設住宅発注元の宮城県と仙台市に対して、発注業者の選定過程等を示す文書の公開を請求した。同オンブズマンは、『開示された情報を元に、仮設住宅の建設が本当に宮城県の復興に役に立っているのかを調べたい』としている。 同オンブズマンによると、今回情報公開請求をした理由として@建設業者の選定が不透明A仮設住宅の欠陥問題――の2つをあげる。…福島県、岩手県の場合は、当初から地場工務店に発注する棟数や選定基準等が明らかにされており、採択事業者に予定通り発注されている。ところが、宮城県は一般社団法人すまいまちづくりセンター連合会が窓口になり、事業者を選定・リスト化して県内市町に配布するシステムで実施した。市町はリストをもとに地元業者に発注できるとされていたが、独自発注は4市町に止まっている。そのため、同オンブズマンは、『どのような理由で業者が選ばれているのか、全く分からない。被災者の救済に結びつく業者がしっかりと選定されているのか、検証する必要がある』と訴える。さらに、プレハブの仮設住宅の一部で、雨漏りや、壁のすき間からアリが入り込むといった欠陥が見つかっている。その点についても『仮設住宅の欠陥問題について、県や市はどのような報告を受け、それに対してどのように対処しているのか、あるいは今後どのように対処していくのか、検証する必要がある』としている。」(『日本住宅新聞』2011.06.25)
●「国土交通省は23日、10年度末(11年3月31日現在)の外国建設業者(外国法人と外資50%以上の日本法人)の建設業許可取得状況をまとめた。許可業者は117社で、前年度末より1社増え、1988年度末の集計開始以来、最多となった。前年度末以降、新規に許可を取得した業者は17社あり、欧州系業者が11社で最多。一方、全廃・失効業者数は14社となり、このうち半数を米国系が占めた。外国法人から日本法人に移行した企業は2社となっている。117社の国別内訳では、米国が40社とトップ。これにドイツ11社、スイス10社、オランダ9社と続く。地域別では欧州が61社、アジアが15社となり、欧米諸国に比べてアジアの業者の参入意欲は低いようだ。業種別では、機械器具設置工事業が49社で最も多く、全体の15.5%を占めた。次いで建築工事業と電気工事業がそれぞれ26社。許可行政庁別では東京都が74社、国交省が18社、兵庫県が4社と続く。」(『建設工業新聞』2011.06.27)
●「日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)が事務局を務める日本創生委員会(寺島実郎委員長)の復興〜未来創生特別委員会(委員長・中村英夫東京都市大総長)は27日、東日本大震災の復興に向け、緊急プロジェクト提言をまとめた。『がれきなどの国直轄による一貫処理体制の構築と復興資材・リサイクル材などへの活用』など4つの緊急プロジェクトとともに、『災害アセスメント法の導入』など8つの早急に政策化すべき項目を提案している。 緊急提言は、『国民が安心・安全な国土の構築に努力を重ねることは当然』と指摘した上で、それに『「非常時モード」という発想を加え、大災害に見舞われても、ハード・ソフト対策の多層的組み合わせにより適応していくことができる、強執(きょうじん)な国土を構築する必要がある』と強調。提案した緊急プロジェクトは、復旧・復興に向けた各種提言との重複を避け、早急に立案、実施が求められる施策のみを各界にアピールし、政府・関係機関に働き掛け、実現を目指す。緊急プロジェクトは、@がれきなどの国直轄による一貫処理体制構築と復興資材・リサイクル材などへの活用A既設ダムの弾力運用による水力発電の増強B漂流がれきの調査C被災地における迅速な地籍調査の促進――の4つ。このうち、がれきなどの国直轄による一貫処理体制構築は、被災地全域の適正・迅速・効率処理などが狙いで、全国から20種類3000台の重機を集中配備するよう提案。試算結果によると、総量3000万トンのがれき処理に通常約1兆5000億円(単価・1トン当たり約5万円)の費用がかかるが、そのコストからリサイクル利用の促進で約4500億円を削減でき、3年間で約5000人の雇用を創出するという。」(『建設通信新聞』2011.06.28)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「土木学会は、ゼネコンをメンバーとする復興施工技術特定テーマ委員会(委員長・吉田明大成建設技術顧問)で、がれきを再利用した盛り土構造物を検討している。技術面の課題を検証するため、8月までにある程度の規模の試験的な盛り土を実施する。同委員会が宮城県、岩手県、仙台市などにヒアリングした結果、膨大ながれきをできるだけ再利用したいという意向が強かった。委員会は、津波堆積土砂やコンクリートガラなどがれきの再利用に重点を置き、地方自治体に現実的な提案をする。構造物としては盛り土道路、宅地造成、盛り土公園などを検討、自治体の意向を踏まえ具体的な場所や規模を決める。既に、仙台東部道路(仙台市)東側の幹線道路を盛り土化することを検討している。再利用構造物の提案には、長期的な堤体の安定性や沈下といった技術的な裏付けが必要となる。6月中に現地で土砂試料を採取して室内土質試験を行うほか、試験盛り土も実施する。」(『建設通信新聞』2011.06.17)
●「日建設計グループの日建設計総合研究所は15日、東日本大震災からの復興へ向けた新しいまちづくりとして、被災者が保有する民有地を国が買い取ることなどを骨子とした提言を明らかにした。同日開いた自民党の『震災後の経済戦略に関する特命委員会』(町村信孝委員長)で説明した。日建総研はこれまでに2回にわたって復興提案をまとめていた。復興における新しいまちづくりとして、▽被災地の早期経済再生▽東北圏の経済再生・強化に向けた仙台の強化▽復興を後押しする内需拡大に向けた大都市の国際競争力強化――を提案した。具体的には、建築制限による被災者保有不動産の利活用停滞と生活再建力低下懸念に対して、早期移転を希望する被災者保有不動産の国費による買い取りや課税減免、被災地近くのゴルフ場や広域レクリエーション施設などへの集団移転検討を提示した。」(『建設通信新聞』2011.06.17)
●「東日本大震災で大規模な液状化の被害が出た首都圏の自治体がインフラの復旧に入れない状態が続いている。東北の被災地に比べて災害査定が遅れ、対策費用が不透明なことに加え、国が復旧基準や対策技術を示していないことも背景にあるようだ。液状化で傾いた民間住宅の復旧は市民からの被害認定申請が増え、7月から徐々に工事に入る地域も出てくる。インフラと住宅の復旧の取り組みに差が開きつつある。東京湾岸に位置し、市内の約8割が埋め立て地という千葉県浦安市。今回の震災で大規模な液状化被害が起きた。市が実施したインフラの被災調査では、市内の下水道管(総延長約120キロ)のうち約25キロ分が破損。仮復旧は終わったものの、本格復旧はいまだ手付かずの状況だ。地盤が沈下して路面が波打った市道も目立つが、抜本的な対策を行うかどうか悩んでいるという。被害が出たすべての市道で抜本的な対策を施せば膨大なコストがかかるため、『原状回復しかできない可能性もある』と市の担当者は不安を漏らす。市は国の災害査定が終わる8〜9月に下水道と市道の液状化対策で方向性を打ち出すとしている。インフラの液状化対策が遅れている理由に、東北に比べ国の災害査定が遅いことを指摘する声もある。被害がひどい東北から災害査定が進み、千葉県はようやく始まったばかり。浦安市の場合、国による財政支援額が判明するまでにこれから3カ月近くはかかる。財政悪化に悩む自治体にとっては自前の予算ではなかなか対策に踏み出せない。激甚災害法に基づく国の財政援助を拡充するよう求める声もある。政府は5月2日、激甚災害法の適用による自治体の復旧事業費への国の補助率を通常よりも引き上げ、事業費の最大9割まで助成する特別措置を講じた年ただ、助成範囲は復旧事業に限られ、抜本的な対策を行うことはできない。さらに、『液状化対策のやり方が分からない』『道路や宅地で生じた段差や陥没をどこまで戻すと復旧なのか』いう疑問の声もあり、国にガイドラインを示してほしいとの要望も出ている。」(『建設工業新聞』2011.06.20)
●「増税や、電気料金引き上げの必要はない」―。公益社団法人「日本経済研究センター」(JCER)の研究本部がまとめたリポート「日本経済の再設計 震災を越えてエネルギー制約を考える」(4月25日)。「原発事故の処理には少なくとも6兆円程度は必要となろう」として「東電の引当金や純資産を充てたうえ、既存の原子力予算の一部を回すべきだ」としている。具体的には、「東電の使用済み核燃料の再処理関係の引当金や利益剰余金など3兆7000億円をまず充てるべきだ」と主張。そのうえで、▽年間4300億円ある原子力予算のうち、高速増殖炉開発や核燃料サイクルの研究などを凍結すれば毎年2000億円が浮く▽青森県六ヶ所村にある再処理工場の操業(40年間操業予定)を凍結すれば、電力業界が再処理費用として積み立て予定の12兆円の一部を充てることができる―としている。リポートは、「これらは既存の仕組みを見直すだけで可能」で、「いわば12兆円の原子力埋蔵金〃といえる」として、「事故処理の財源のために増税したり、電気料金を引き上げたりする必要はない」。また、同センターの6月の「会報」には、研究顧問の「原発被害者の補償と東京電力」という論文が掲載されている。この論文では、「政府支援を議論する前に、東京電力には巨額の資金的余裕あることを忘れてはならない」として、東電の2010年未連結貸借対照表に、将来の使用済み核燃料の再処理費用のための引当金が1.2兆円あること、廃炉費用にも0.7兆円が引き当てられていることを指摘。「再処理引当金の大きな部分を取り崩して、被災者の補償に充当できる」としている。(『しんぶん赤旗』2011.06.23より抜粋。)
●「政府の復興構想会議(議長・五百旗頭真防衛大学校長)は25日の提言で、復興の出発点となる産業再生を『特区』で後押しする方針を打ち出した。税制優遇を念頭に『経済的支援を検討』と示したほか、『土地利用の手続きを一本化する』と規制緩和も求めた。主力の農漁業は集約化や新規参入で基盤強化する。雇用の確保で被災地の中長期的な経済再生を図る狙いがあるが、地元の利害調整は難航が予想され、構想実現には高いハードルが残る。」(『日本経済新聞』2011.06.26)

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