情勢の特徴 - 2011年7月後半
●「政府は20兆円超と推計する東日本大震災の復旧・復興費の一部を特別会計の積立金で賄う検討に入った。赤字国債の利払い費などに充てる国債整理基金から1兆〜2兆円を活用する案が浮上している。国が保有する資産の売却なども加えると最大3兆円程度を捻出できる公算が大きい。10兆円規模の臨時増税や歳出削減とあわせて2011年度第3次補正予算の財源とする考えで、今秋までに具体策を詰める。」(『日本経済新聞』2011.07.21)
●「建設経済研究所と経済調査会が27日に公表した2011、12年度の建設投資見通し(名目)は、11年度が前年度比7.3%増の44兆1200億円、12年度が2.6%増の45兆2800億円。東日本大震災の復旧・復興によって政府、民間ともに増加するものの、12年度予算の概算要求基準(シーリング)に関する情報や5%執行留保の今後の状況、電力供給制約が民間投資にもたらす影響といった政府の対応によって見通し額に精細を欠いている。依然として被災地域外の地域建設業が抱える不安はぬぐえていない。」(『建設通信新聞』2011.07.28)
●「福島県は12日から、東日本大震災による被災者が入居する応急仮設住宅に関して、同県内工務店による建設事業候補者の2次募集をスタートした。1次募集と同様に、建設する仮設住宅の構造は木造で、『仮設住宅の早期の供給促進と県産材、県内企業の活用を図る』ことを目的に、同県内に本店を置く建設事業者等が対象。募集戸数の総数は1000戸(見込み数。市町村からの要請により減少の場合あり)。」(『日本住宅新聞』2011.07.15)
●原子力発電からの撤退や安全対策の確立、自然エネルギーヘの転換を求めることなどを求める意見書・決議の可決が広がり、15日までの本紙の調べでは299の地方議会で可決されている。本紙は8日までに218議会で意見書・決議の可決があったことを確認し、その後の追加集計で新たに81の地方議会で意見書の可決が判明した。8日時点で集計できなかった青森、山形、宮城、群馬、香川、徳島の各県でも意見書が可決されていることがわかった。埼玉、山梨、福岡の各県など、可決自治体数が大幅に増えた県もあった。…意見書では、事故の早期収束、放射能被害の拡大をくいとめることを求めるとともに、原発の安全基準や原発事故に対する防災体制も根本的に見直すよう主張していることが特徴。▽30年を超す高経年化原発の運転制限▽防災対策重点地域(EPZ)の拡大など防災・安全基準の見直し▽避難道路や避難施設などの早急な整備▽原子力安全・保安院の経済産業省からの分離と独立、権限強化―などが挙げられている。(『しんぶん赤旗』2011.07.16より抜粋。)
●原子力発電を推進するために税金から出されている原子力広報・教育予算は毎年、60億円規模にのぼる。シンポジウムの開催や説明会、新聞や雑誌の広告など多種多様な取り組みを行っている。事業を請け負っているのは、日本原子力文化振興財団などに加え、大手広告代理店の電通、博報堂や産経新聞社などです。税金を使った原発「安全神話」の刷り込みだ。(『しんぶん赤旗』2011.07.16より抜粋。)
●「災害対応、除雪、インフラの維持管理などの『地域維持事業』を包括的に発注する契約制度を導入する動きが地方自治体に広がってきた。公共事業の縮小による事業環境の悪化でこうした事業を担う地元中小建設会社が減少。地域維持事業は1件当たりの発注単価が小さく、採算も悪いことから、関連工事をまとめて発注することで、企業間の人材や建設機械の相互融通を可能にして利益を出しやすい環境をつくり、住民の安全・安心を支える地域維持事業の存続を図る狙いだ。」(『建設工業新聞』2011.07.19)
●「宮城県内のがれき処理は、自治体が抱えるそれぞれの事情により進ちょくに大きな差が生じている。宮城県建設業協会(宮城建協、佐藤博俊会長)が14日に開いた災害対策検討会議の各支部からの報告で実態が明らかになった。仮置き場の適地(平地)が多い仙台市以南の市町はおおむね順調に進ちょく。遅れが指摘される石巻市は建設業に余力があるものの、仮置き場の確保がネックとなっている。石巻市は道路・宅地での進ちょく率が14%にとどまるが、石巻支部が同市から委託された作業はすでに終了している。」(『建設工業新聞』2011.07.19)
●「東日本大震災による下水道被害を受けて国土交通省が設置した有識者会議『下水道地震・津波対策技術検討委員会』(委員長・濱田政則早大教授)は19日、被災施設の本復旧に向けた考え方をまとめた。津波来襲時にも下水道の基本機能が確保されるよう、今回観測された津波の高さを基準に復旧設計を行うとし、各施設の重要度に応じて耐津波性能を設定。地盤の液状化被害を受けた施設の本復旧では、被災状況を三つに分類し、それぞれに必要な具体的対策を示した。考え方では、大震災を教訓にした本復旧の基本方針として、▽施設周辺の住民の命を守る▽被災時の管路・処理場の基本機能(汚水排除など)の確保▽被災後の管路・処理場の全体機能の復旧が迅速にできる▽復興にふさわしい技術の採用―の4点を掲げた。」(『建設工業新聞』2011.07.20)
●「政府が月内にまとめる東日本大震災からの復興基本方針の原案が23日明らかになった。2011〜15年度を『集中復興期間』と位置付け、11年度第3次補正予算以降に合計13兆円を計上し、復旧・復興事業を実施する。財源は歳出削減で3兆円、残る10兆円は所得税や法人税の増税と国有地売却など税外収入で賄う。ただ増税の具体的な内容や時期は明記せず、与野党との調整次第では財源の確保に支障が出る可能性もある。」(『日本経済新聞』2011.07.24)
●「東日本大震災で被災した仙台市など東北3県の主要市の2011年度の税収が、当初予想よりも最大で5割減る見通しとなった。宮城県石巻市や同県気仙沼市が半減、仙台市や盛岡市が1割減を見込む。企業業績の悪化で法人住民税が落ち込むほか、固定資産税の減免などの税制優遇措置が響く。税収低迷は来年度以降も続きそうだ。」(『日本経済新聞』2011.07.27)
●「千葉県八千代市は26日、PFIを導入する(仮称)八千代市学校給食センター西八千代調理場整備・運営事業の落札者を東洋食品グループ(代表企業=東洋食品)に決めたと発表した。総合評価一般競争入札を採用。落札額は69億1749万7000円(税別)だった。同グループは、応札3グループ中、価格点では2位だったものの、性能点で最高点を獲得した。東洋食品グループは、東洋食品のほか、鹿島、夕二コー、伊藤忠アーバンコミュニティ、パシフィックコンサルタンツで構成する。…事前公表した予定価格は80億9961万4000円(金利・物価変動による増減額や消費税を除く)。事業範囲は施設の設計・建設、開業準備、維持管理、運営。事業スキームはBTO(建設・譲渡・運営)方式を採用する。」(『建設通信新聞』2011.07.27)
●「千葉県水道局は、柏井浄水場西側施設高度浄水処理施設整備事業へのPFI導入を見送り、従来方式で発注する。2011年度に県の大規模公共事業等事前評価制度の手続きを完了させた上で基本設計を12年度、実施設計を13年度に委託して完了させる。工事は14年度に着手し、17年度の完成、18年度の稼働開始を目指す。調査費を含めた事業費は315億円を見込む。同事業では、給水ベースの処理能力が1日当たり36万立方メートルの柏井浄水場(千葉市花見川区柏井町430)西側施設に、オゾン、生物活性炭、再凝集の処理工程で構成する高度浄水処理施設を増設する。」(『建設通信新聞』2011.07.27)
●「東京都は東日本大震災による液状化被害を踏まえ、対策を強化する。27日に専門家らを交えた検討委員会を発足、2012年度末をメドに住宅の液状化対策に特化した対応指針を初めて策定する。今後想定される首都直下地震に備え、マンホールの耐震化や隆起防止策も進め、大規模な液状化被害を防ぐ体制づくりを急ぐ。」(『日本経済新聞』2011.07.28)
●「国土交通省は27日、『建設技能労働者の人材確保のあり方に係る検討会』(座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)を開き、最終報告をまとめた。保険未加入排除に向け、特定建設業者による下請指導の責任・内容を明示し、元請けによる施工体制台帳や作業員名簿による加入状況確認を求めた。重層下請構造の是正に向けた一括下請け確認強化や、請負と派遣の判断基準の周知徹底も提言した。」(『建設通信新聞』2011.07.28)
●1世帯あたりの平均所得が15年間で114万6千円も減っている―。厚生労働省の2010年国民生活基礎調査(12日発表)からは、日本国民を覆う所得低下の様相が浮かぶ。同調査によれば、1世帯あたり年平均所得のピークは1994年の664万2千円。その後は低落傾向が続き、2009年には549万6千円に減っています。働き盛りである「児童のいる世帯」に限ってみても、ピークの96年と比べ、09年の平均所得は84万3千円も減っている。所得金額を100万円ごとに階級分けして世帯数の分布をみると、94年から09年にかけて、500万円未満の世帯数が軒並み増加している。300万円未満の世帯は23.5%から32%に、500万円未満の世帯は44.9%から56.3%に増えている。全体として、500万円以上の世帯数が減り、低所得の方へ移動した格好だ。厚労省は「世帯あたり所得が減ってきた要因は給与の低下、非正規雇用の増加、景気の低迷、核家族化、高齢化などではないか」とみている。(『しんぶん赤旗』2011.07.18より抜粋。)
●「日本建設業連合会(日建連)の野村哲也会長は、20日の記者会見で、トンネル工事のじん肺被害者を救済するための基金創設などを民主党の『トンネルじん肺救済法プロジェクトチーム(PT)』が検討していることを受け、原因者負担や被害者認定の公正性などが十分に担保される必要があるとの見解を示した。野村会長は、PTの方針が正式に示されていないため、業界側の対応を明確にできない状況にあることを説明。その上で、じん肺の被害者に対しては『(和解条項に基づき)各社がきちんと対応している流れがある。(基金を)積まなくても対応しているため(基金創設には)疑問を感じるが、(公正な紛争処理機関による認定など)公正さが担保できるのであれば、あえて反対はしない』と語った。」(『建設工業新聞』2011.07.21)
●「東日本大震災の津波被害が激しかった地域で、重機や大型トラックなどの免許取得を希望する人が急増している。ほとんどが震災による失業者で、震災後、がれき撤去作業など建設関係の求人が増えたことが原因。免許がないと働けないケースが多く、因も免許取得の支援に乗り出している。」(『日本経済新聞』2011.07.24)
●「東日本大震災の被災地復旧・復興工事の現場に、労働者派遣法に違反する建設労働者の派遣が行われた問題が発覚したのを受け、厚生労働省は25日、11の建設関連団体に対し、労働者派遣法の順守を徹底するよう求める要請書を職業安定局長名で通知した。今後、復興工事が本格化するのを控え、違法な労働者派遣によって暴力団関連企業に資金が流れたり、違法派遣によって労働環境の悪化を招いたりするのを防ぐ必要があると判断した。」(『建設工業新聞』2011.07.26)
●「労使の代表と学識者で構成する厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は26日午前、2011年度の最低賃金の引き上げ額の目安について全国平均(厚労省試算ベース)で時給6円とすることを決めた。上げ幅は前年度の17円に比べ圧縮された。1ケタ台にとどまるのは5年ぶり。東日本大震災の影響で経済活動が低迷している地域については、最低賃金を『地域の実情を踏まえるべきだ』とした。」(『日本経済新聞』2011.07.26)
●「日本建設産業職員労働組合協議会は、加盟38組合を対象とした2011年賃金交渉結果をまとめた。15日時点で妥結した28組合のうち、月例賃金のベースアップを確保したのはわずか2組合にとどまった。一時金は回答22組合の単純平均で年2.06カ月となり、金額ベースでは前年比3.7%減の落ち込みとなり、いずれも厳しい状況となった。月例賃金は、大多数の組合が定期昇給を確保した。ベースアップを要求した7組合のうちベア確保は2組合だった。一方で2組合はペースダウンを提示されたほか、1組合が人事制度の見直しを示され、現在交渉している状況だ。」(『建設通信新聞』2011.07.27)
●「東京地区の建築工事現場で、鉄筋工不足が深刻化してきた。これまで、不足分は地方からの応援要員でしのいできたが、低価格受注の影響で単価も急落し、応援要員の確保が難しくなっているという。首都圏の建築需要は堅調に推移しており、業界関係者は、このままの状態が続けば工事に影響が出かねないと懸念を強めている。」(『建設工業新聞』2011.07.27)
●「東京商工リサーチがまとめた2011年5月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比7.6%増の294件となり、2009年2月以来、2年3カ月ぶりに前年同月を上回った。これまで中小企業金融円滑化法などの各種金融支援によって倒産が抑制されてきたものの、政策効果の一巡化もあって増加に転じた。負債総額は36.8%減の356億5200万円で、4カ月連続して前年同月を下回った。負債100億円以上がゼロ件(前年同月1件)だったのに対し、負債1億円未満の小規模倒産が8.6%増の188件(構成比63.9%)と増加した。これに伴い、平均負債額は41.2%減の1億2100万円となり、5月としては最近20年間で最小規模にとどまった。」(『建設通信新聞』2011.07.26)
●「建設産業専門団体連合会(建専連、才賀清二郎会長)は28日、国土交通省との定例意見交換会を東京都内で開いた。建専連から才賀会長ら幹部、国交省から大森雅夫建設流通政策審議官や深澤淳志技術審議官らが出席。6月から建専連が行ってきた各地方整備局との意見交換会を踏まえて六つの共通議題を抽出し、基幹技能者の積極的活用やダンピング対策の強化、保険未加入企業排除の推進策などについて議論した。6課題は、▽登録基幹技能者の積極的活用▽『最低制限価格制度と低入札価格調査制度』の実施、『低入札価格調査制度における失格業者への発注の排除』の自治体への周知徹底▽社会保険未加入会社の排除施策を講じるために実施すべき検討事項▽大震災に対応するシステム確保と建設事業の安定的な確保▽元請・下請関係の適正化と法令順守の徹底▽公共工事設計労務単価と公共事業労務調査のあり方。低入札価格調査制度では、本来は失格となる業者に工事を発注している自治体があると建専連側が指摘。これに対し国交省は27日に開いた中央建設業審議会(中建審)で了承された入札契約適正化指針改正案の中に数値的失格判断基準の設定を盛り込んだことを示し、今後自治体に実行を要請すると説明した。」(『建設工業新聞』2011.07.29)
●「全国知事会(会長=山田啓二・京都府知事)は12、13の両日、秋田市内で開催した全国知事会議で東日本大震災からの復興に関する提言をまとめ、発表した。被災者支援施策の充実・強化の項目では、被災者の住宅確保に関して、国が全面的に支援することを要望。さらに被災住宅の修繕なども含め、必要な財政措置を講じることを求めた。提言では、地震・津波や原子力災害で避難を余儀なくされ、慣れない環境で生活再建に取り組んでいる被災者に対し、『住宅・雇用をはじめ生活全般にわたるきめの細かい支援を機動的に実施すること』を要望。避難所で生活している被災者が『一刻も早く、安心して生活できるよう』、応急仮設住宅の迅速な建設支援や公営・民間住宅等の活用促進を求めた。さらに、今後は恒久的な住宅供給対策として、災害公営住宅、地域優良賃貸住宅、改良住宅などの整備が大量に必要となると指摘。補助率の引上げや地方負担に係る全額交付税措置、被災住宅の修繕・再建に対する手厚い支援など、『国による全面的な支援と財政措置を講じる』ことを訴えた。また、液状化で被害を受けた住宅に対する支援の充実・強化も要望。『被害認定基準の見直しが行われたが、新たな基準で判定しても、被災者生活再建支援法の対象となる世帯は非常に少ない』と指摘し、更なる基準の見直しと、独白支援を行った自治体への財源措置も求めた。」(『日本住宅新聞』2011.07.15)